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11月
23
しおりを挟む頭上で吉良が息をのむのが気配でわかる。
俺は胸に顔を埋めたまま、負担がかからないようやんわり両腕を腰に回した。
「お前のこんな姿見て俺が何とも思わないと思うのか?」
「それはー」
「いなくなった俺を探してくれたんだろ。心配してくれたんだろ。どうしてすぐに顔見せに来ないんだよ」
俺を拉致した奴らとは違う体温に目頭が緩んでくる。
色々あり過ぎて感情が自分でもどうしようない。
「すぐに来て俺を安心させろよぉ…」
「ごめん、ごめんな凪沙」
「俺のがごめんなんだよ、バカ。このマゾ野郎」
「マゾって」
「こんなになるまで痛めつけられて、否定はさせねー。後、後頭部には触んじゃねぇよ。痛いんだよ」
俺の頭を撫でようとする指に、顔を上げれば困惑する水色の瞳とぶつかる。
押し付けてた自身の瞳から一筋の涙が溢れ落ちるが、俺はそれを隠す気はなかった。
ワガママでも理不尽でも何でもいい。謝って傷つけるなら、俺はこっちを選ぶ。
行き場を失った指が代わりに俺の頬にふれてくる。あの少し硬くて冷たい指は襲われたあの時とは全然違う。
好きだなぁ、って思う。
その感触をもっと感じたくて涙で溢れる目蓋を閉じ、触れるそれに頬を擦り付ける。
(これが愛おしいって気持ちなのかな)
「凪沙」
名前を呼ばれ目蓋を開けば、綺麗な水色の瞳はすぐそこで。
俺は再度瞳を閉じれば、柔らかな指とは違うしっとりしたものが唇に押し当てられた。
静かに、何度も。
「しょっぱいね」
「うるせー…」
唇を離し、吉良が嬉しそうに微笑した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
11月編終了です。12月編で話は終了となります。最後までお付き合い頂ければ幸いです。
凪沙が迷い悩みけじめをつけて行く予定です。
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2022.05.28
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次作も頑張って書きます。
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