出来損ないの僕に第2の人生を。

蓼丸ゆた

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第1章 始まりの国

01

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「…んー、葵?」
目を開けるとそこは、僕の部屋だった。やっぱり、夢か。
そりゃあ、そうだよね。神谷先生と出会ってからちょっと調子乗ったのだろう。
それにしても、楽しい夢だった。
まるで、僕が勇者にでもなったような夢だった。
「…さて、準備するか。」
独りで暮らす。それが現実の僕だろう。
「月くん、おはよう。」
月くんの写真に手を合わせる。
月くん。また、会いたいな…。


「…龍心様?」
「…あおい?…あれ、これ、夢?」
「夢じゃありませんよ。」
ふふっと笑われる。泊まった宿の窓から外を眺めると確かにそこは日本ではなかった。
「…さて、今日は私の村へ向かってもよろしいでしょうか。」
「あ、うん。エルフがいっぱいいるんでしょ?」
「ええ…まぁ、ここの世界の話は歩きながらでも…。とりあえず、出発しましょう。」



「それでは、この世界についてお話しますね。」
「うん、お願い。」
僕らは宿を出て、歩き始める。
「この世界には十の国があります。ひとつは、ここ。アンファングスランドです。主にエルフが暮らしています。すべての生き物がアンファングスランドの山で生まれたと言われたことから別名、始まりの国とも呼ばれています。あとは吸血鬼の国バンピーヤ天使の国エンエングーコウモリの国スネーガー植物の国エンプランツ狼の国ヴァイダーエファルクネ巨人の国エンマリーズこどもの国キンダーゾンビの国ゾンビエンディー機械の国マシンナーがあります。」
「いっぱい、あるんだね…。」
まるで、他人事のように考えていると、葵は立ち止まった。
「そこで、私は他の国の安全を守る仕事に携わり。国の長が適任者かどうかを見極めているのですが、貴方様を案内する傍ら、その仕事を行っていくという流れで行こうと思うのですが、どうでしょうか。」
僕は意味が少しわからずきょとんとした後にふと、頭を使う。
葵は、国々を旅する。それについて行くと、僕も周り各国を見ていくことになる。
まるで、勇者のようだ。
何かと戦う訳では無い。ましてや、戦う力もない僕には無理がある。
だけど、楽しそうなのは確かだ。
「…どうなされますか?私の知り合いもいることなのでここの村に残っていただいても大丈夫ですが…。」
それに、ここの世界には月くんがいるのではないかと僕は勝手に思ってる。
だって、最初に葵が言ったもの。
ならば、僕は会いに行くべきだ。
「僕も、ついて行くよ。」
「そうですか、なら、良かったです。…本音を言うと、1人で国々を回っていくのは少し寂しいものですからね。」
そう言って、葵はまた歩き始めた。
「……話の続きはまた私の村に着いてからにしましょう。もうすぐですので…。」


「ここが、私の村です。」
「すごい…全部、木でできているの?」
「ええ、さぁ、足元が悪いのでどうぞ。」
そう言われて出された手を持つ。すると、前から人集りがやってきた。
「葵様!おかえりなさいませ。」
「ただいま、百乃もものはいるか。」
「あ、はい!ここに!」
人集りからぴょんぴょんと手を上げる少女。百乃というらしい。
「百乃、こちらは私の主になられた龍心様だ。挨拶を。」
「はい。私は葵の許嫁の百乃と申します。よろしくお願い致します。」
しっかりした女の子だ。着ていたスカートの裾を少し上げながら深々と礼をする。でも…
「許嫁?……も、百乃さんは何歳…ですか?」
「はい!百乃でよろしいですよ。今年で12になります。」
12。そう少女だ。
「…こちらでは、これくらいの年の差は指して問題はないのです。もっと年下の子を許嫁にする方もいらっしゃいますから。それに、結婚は百乃が20歳の儀式を行う時ですので、まだまだですよ。」
「葵って何歳なの?」
「今年で22になります。」
ということは、10歳差ということになる。
「さぁ、龍心様。こちらへ、今日は葵が帰ってきたので宴会ですよ。」
百乃はそう言って僕の手を引っ張り村の中へ連れてきてくれた。


「それでは、みなさん。葵様の無事ご帰宅されたことを祝い。乾杯!」
眼鏡をかけた青年の言葉でみんなが飲み食いを始める。こんな宴会、初めてだ。
「龍心様、何を食べますか?」
「おまかせするよ、ありがとう。」
葵にそう言われてそう返すと、葵が綺麗によそってくれた。
美味しい。
味もそうだけど、やっぱりみんなと一緒に食べるとどんなものでも美味しく感じるんだろう。
「…葵。」
「はい、どうされましたか。」
「あのね、ありがとう。この世界に連れてきてくれて。」
僕がそう言いながら笑うと葵は微笑んだ。
「いえ、私も貴方様のその笑顔が見れて、光栄です。」



「…ん、今何時くらいだろ…。」
夜、目が覚めた。夕方の宴会は本当に楽しかった。お酒を飲む人がいたり、大食い大会が始まったり、踊り始める人だっていた。
僕がテントのような家から外へ出ると、そこに、葵がいた。
お酒を飲まされていたようだから酔いでも冷ましているのだろうか。
僕も葵の横に立つ。
「…龍心様、目が覚めましたか?」
「んー、そうだけど。なんとなく、星が見たくて。」
「そうですか、ここはとても綺麗に見れますからね。でも、風邪を引いては行けませんから、これでも飲んでください。」
そう言って葵は目の前にポンッと暖かいココアを出した。
ここは、魔法というものがある。使えるものは限られているが、葵は使えるようだ。それは、一番最初に教えて貰った。
「ありがとう。…葵には、夢ってある?」
「夢ですか?貴方様の幸せが私の一番の夢であり、希望ですよ。龍心様が幸せだったら私も幸せですし、生きていける。逆に言えば、私は龍心様がいないと生きていけなくなる。大げさに言うとそうなりますかね?」
微笑む葵。僕は、そっかという。
「…僕は、仲間が欲しい。友達が欲しい。家族だって…欲しいな。」
夢。ではないが、願望のようなものを呟くと葵はまた口を開いた。
「…それじゃあ、もうそのは叶いましたね。仲間は私がいます。友達だって、今日。いっぱい出来ました。それに、家族だって。私たちの村では一緒にご飯を食べて笑いあったらもう家族です。血は繋がってなくてもそれでも、家族なんだって私は思っていますよ。」
そうやって言われて微笑まれるともう何も言い返せなくなる。
「うん、そうだね。葵がいてくれたおかげだ。」
そう言いながら僕は暖かいココアが冷めないようにゆっくりと味わいながら飲んだ。
この幸せが冷めないように体を温めながらゆっくりと飲んだ。
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