ガンズ・アンド・シッスル

前原博士

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アーチ

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 一向は洞窟の中で車を止め、徒歩で進んでいく。途中あちこちで、トンネル掘削用の自動機械が動いているのが見える。
 ダレル社が配置したものだろう。

「なんだかわくわくするね! もしアーチが出てきたらどうしよう!」
「心配いらないわ、アーチはとっくに滅んでしまったんだもの」
「ふむ、詳しく教えてくれ 何故彼等は滅びたのだ?」
「アーチ・エネミーよ」

「アーチ・エネミー? なにそれ?」
「私が勝手にそう呼んでるだけなんだけどね どうやらアーチは何者か、強大な存在と戦って滅びたみたい」
「戦争があったのか?」
「それが、よくわからないの でもアーチは、その存在に支配を受けていたと思われるわ」
「そしてそいつらに滅ぼされたという事か?」
「ええ、恐らくはね ただその敵も一緒に滅びたと考えられる でなかったら私たちも存在していないもの」
「相討ちだったってこと?」
「疑問の答えはこの先にあるかもしれないわ さ、先を急ぎましょう!」

 エリーは早足で迷路の様な鉱路を歩いていく。アーチの遺跡に辿り着くのが、待ち遠しくてたまらない様子だ。
 リベルタとZERO-NEMOは彼女の、急に童心に返ったかのような様子を見て、互いに肩をすくめた。
 出し抜けにエリーが立ち止まり、そのせいでリベルタはぶつかってしまった。

「ちょっと、エリー?」
 リベルタは抗議の声を上げるがエリーは答えない。
 リベルタが覗くと、前方に開けた空間があり、採掘機のものと思われる破片が散らばっていた。そしてまだ立ち止まったままのエリーの視線の先にあったものは。
 三人は息を呑んだ。そこには石の玉座に座る、人間の形をした赤く輝く鉱石、アーチファッソルが鎮座していた。

「なにこれっ!? どういう事!?」
「スゲーサイズだゾ! こリャぁ大金持チになれるナ!」
「アーチファッソルは鉱石ではなかったのか?」

「なんて事…… まさか私の推論が当たっていたなんて……」
 エリーが口を開く。それはさっきまでとうって変わって、苦々しく履き捨てるような口調だ。
「詳しく聞かせろ、エリー」

「すごーい! これだけあれば銃が何丁作れるかな!? 想像も付かないや」
「間違いナク、銀河最大サイズだろウな!」

 通常、銃に使われている程度のアーチファッソルはほんの砂粒か小石程度の量だ。それでもかなりの回数の射撃に耐える。
 実際ここまでの旅の間にも、リベルタは銃に使われている鉱石の補充は一度もしていない。それほど強力なエネルギーを持った石なのだ。
 それが人間大のサイズであるというのは、恐るべきエネルギー量だ。

「近くで見よう!」
 好奇心を押さえきれなくなった少女は、玉座の下へと駆け出していく。
「ちょっと待ちなさいリベルタ!」

 エリーが静止するが既にリベルタは玉座の前まで来ていた。玉座の背後には、二つの球体同士を繋ぐアーチの図柄が描かれた壁がある。
「リベルタ! 何があるかわからないわ 慎重に行動しなさい!」
 エリーは苛立たしげに、早足でリベルタの元へと歩み寄った、その時。
<<BEEP! BEEP! BEEP! BEEP!>>

 警告音と共に何も無かった空間から突如、奇妙な球体が現れた。球体は黒く、車のタイヤほどのサイズで、つなぎ目の様な、亀裂のような、赤いラインが幾つも走っていた。

「うわぁ、これあからさまにヤバイやつじゃない? ガーディアンとかそんな感じの名前のやつ!」
「そのようね リベルタ、ゆっくり下がって ZERO-NEMOも早まらないようにね」
「了解した」
「どうする気なの?」
「これは多分、アーチの遺跡を守っているのよ だったらアーチの力を持った私なら解除できるかもしれない」
「なるほど」
「頑張ってエリー!」

 球体は丁度エリーとリベルタの間に位置している。エリーは慎重な足取りで球体に近づき、そっと手を伸ばした。
<<警告! この先はヒト専用のエリアです ヒト以外の生物、またはロボットはヒトの許可なく侵入できません>>
「なるほどやっぱりセキュリティね ヒトってのは当時の人、つまりアーチを意味するのだと思うわ」
「じゃぁさっさと許可出してよエリー!」
「やってみるわ」

 エリーの赤い瞳が奇妙に揺れ動いた。彼女の体の内側から赤い光が生まれ、周囲を、そして球体も包んでいく。

「またあれか」
 ZERO-NEMOは光を避けて、距離を取った。

「さぁ応えなさい丸いの そうねアーチ・スフィアなんて名前でどうかしら」
「いちいちそのネーミングセンスどうにかなんない?」
<<BEEP!BEEP! 退出の意思なしと判断します BEEP!BEEP!>>
「ええっ?」

 ZAPZAPZAPZAPZAPZPAZAPZAP!
 球体から危険なビームが降り注ぐ!
「そんな! どうして動けるの!? っていうかなんで攻撃してくるのよ!」
「アーチ認定されなかったね」
「くそっ、そいつを解除しろエリー ワタシが近寄れない」
「わかった! リベルタ気をつけて!」

 力を解除したエリーも、拳銃で応戦するが、球体は高速で動き回りながらビームを断続的に発射してくる。エリーもZERO-NEMOもそれを避けるので精一杯だ。しかし一瞬の動きを見切ったニンジャは壁に足をかけてロケットのごとき速度で自らを射出!
 その勢いを乗せてブレードの一撃をたたきつけた。
<<ビガガガgg!!>>
 果たして、幾万年前の超文明の兵器にも、ニンジャのブレードは効果があった。球体は真っ二つになり、その場に落ちた。

「ふう、流石ねニンジャさん」
「いや、どうやらそうでもないらしい」
「?」

<<BEEP!BEEP!>><<BEEP!BEEP!>><<BEEP!BEEP!>><<BEEP!BEEP!>>
 周囲の空間に、さらに幾つもの球体が現れる!
 ZAPZAPZAPZAP!ZAPZAPZAPZAP!ZAPZAPZAPZAP!ZAPZAPZAPZAP!
 狭い室内をビームの嵐が暴れまわる!

「ちょ、ちょっとまって…? なんかあたしだけ狙われて無くない!?」
「妙だナァ 試しに命令シテみらたドウだ?」
 少女の言うとおり、先ほどから撃たれているのはZERO-NEMOとエリーだ。まるで球体はリベルタを認識していないかのように近くを素通りしていく。
「止まって!」
 試しにリベルタが静止を命じると、それに従い球体がその動きを止めた。ZERO-NEMOとエリーが互いに顔を見合わせた。

「あーこれってマジ? あたしがアーチってこと?」
「ソのようダな! 驚いたゼ! 球っコろが止マってル!」
「驚いたわ…… 薄々そうなんじゃないかとは思ってたけれど、まさか貴女がエンジェルだったなんて」
「そのエンジェルってやめて! パパにもそんなの言われたことない!」
「今まで妙な事とかなかった? 突然機械が壊れるとか、動き出すとか」
「うーん…… わかんない」
「結構あるゾ! 土壇場の時ニ何でカタレットや銃ノ調子が良クなったリしたダロう!」
「あー、あの手裏剣船の時とか」
「バレットトゥースを吹き飛バシた時モお前、引キ金引かズニ撃ってタぞ」
「ワタシを死体のガトリングで撃った時もか」

「すごいわ…… これでもう一つ判った アーチの力はもっと色々あるって事ね 私たちエンジェルはアーチの力の、ほんの一部しか使えないみたいだわ 私はアーチファッソルの力を止める あなたはファッソルの力を引き出す! これってどれだけ凄い事か貴女にわかる?」
 エリーは瞳孔の開いた目でリベルタに詰め寄り、まくし立てる。

「お、落ち着いてエリー 興奮しすぎだから!」
「それでどうしてリベルタの命令は聞いたんだ?」
「そうね…… 覚醒度合いみたいなものに、違いがあるんじゃないかしら ねぇ貴女のDNA調べさせてリベルタ!」
「うぇぇ…… 勝手にしてよもう……」

「とりあえず先に進めないのか? いつまでこの球を見てるつもりだ」
「それもそうね そこの壁の紋章は、まさにアーチの紋章だわ きっとココが入り口ね どこかに制御端末があるはず」

 エリーは土塊のこびりついた壁を手で払い続けていた。
「ねぇエリー、ところでこの座ってるのってもしかしてアーチなの?」
「おそらくね アーチの遺跡と大きな鉱山が、いつもセットで出てくる所から推察はしてたの それに、発掘されたアーチの機械には動力源が見当たらないのよ」
「つまり、かつてアーチは自分自身の力で、機械を動かしていたのか」
「そうね そして今はその代わりにアーチファッソルを使っているわけ」
「どうしてこんな事に……?」
「さぁ、もしかしたらこれから判るかもしれないわね」

 幾万年の過去からか、石の玉座に座り続ける赤く輝くアーチの慣れ果て。一体過去に何があったのだろうか。そんなことを考えているうちに、リベルタは気が付いたことがあった。

「ねぇエリー!」土壁を磨き続けるエリーに声をかける。
「なぁにリベルタ?」
「この人さ、大きくない? 立ち上がったら2メートル以上ありそう」
「それで?」
「制御盤も、もっと高い位置にあるんじゃない?」
「賢いわね」
 エリーは指で拳銃を作り、リベルタに向けて撃つジェスチャーをした。それから手を伸ばして高い位置を探る。

「あった! これよ! リベルタお願い!」
 ZERO-NEMOにされつつ、リベルタは適当に四角く浮き出た制御版を撫で回してみた。
 すると警告音と共には壁の一部が左右に開く。
 人だけでなく機械などの搬入も考慮しているのだろう。扉はたっぷりの広さがあった。
 かくしてアーチの遺跡は銀河で始めて暴かれる事となる。
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