小人女子高生の異世界冒険譚~転生したらグロースとミニマムが使えない件~

異世界サボテン

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第19話 暁のオークション④

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司会者の声がまるでエコーが掛かったかのように会場に響き渡る。

・・・直後、観客たちは万雷の拍手と喝采でそれに応えた。







ウワワワァァァァァァァッ!!!!!!

パチパチパチパチ!!!!!!!!







これまでよりさらに一段大きい歓声が会場を包みこむ。

大観衆の興奮の波が会場全体に伝播し、地鳴りのような喝采が壇上に向けられていた。







「1503番の方!!誠におめでとうございます!!!!!」


「これより授与式を行います!!壇上中央までお越し下さい!!!!!」







司会者もそれに負けじと大音声で司会を進行する。

1503番の男の人は軽く手を上げそれに応えると、迎えに来た護衛兵達と共に壇上に向けて歩き出した。

そんな彼の様子を僕は目で追いながら、心の中は驚愕と消沈の感情で溢れそうになっていた・・・







「・・・124億・・・」







ポツリと落札額を噛みしめるかのように呟く。

・・・正直、想像以上だった。

流石に最低落札価格で落札されるとは思ってはいなかったが、それでもせいぜい70~80億くらいには収まるんじゃないかと思っていた。

しかし、結果はご覧の通り。100億を優に超える数字で落札されてしまった。







はぁ・・・まさか100億いくなんてな・・・

レイナに知らせたらどんな反応するだろう・・・







・・・まあ、1億だろうが、10億だろうが、50億だろうが「手の出せない金額」であることに変わりはないのだが、

それでも3桁を超える金額というのはやはりインパクトが有る。

当初設定されていた最低落札価格の2.5倍もの金額で落札された事実は、僕を意気消沈させるには十分だった。

しかし、そんな僕の心情などまったく関係なく、落札者の男の人は悠々と壇上に向けて歩いている。

彼のきらびやかな衣装も相まって、その様は威風堂々たる行進だ。

彼に対し観衆も惜しみない賛辞と祝福を送る・・・







「素敵ィィーー抱かせてあげるから、私にもお酒分けてーーーー!!!!」


「おめでとう!羨ましいぞぉ~!!」


「成金風情が落札しやがって!!!くたばれええええ!!!!」


「調子こいてんじゃねーぞ!!この野郎!!!!」


「今後の夜道には気をつけろよぉ~!!」







ははっ・・・

だから怖いんだって・・・







落札者を素直に祝福しているものもいれば、嫉妬と敵意に満ちたヤジを飛ばしている者もいた。

観客達の反応が相変わらずだったので、僕は思わず苦笑してしまう。

少しだけど僕の心もそれで晴れた。







僕が壇上に視線を向けると1503番の男が丁度到着していた。

司会者が彼を宝箱の前まで迎え入れると、祝いの言葉を口にする。







「改めてご落札おめでとうございます!!」


「ふむ。当然のことだよ」







自然に彼は言葉をそう返す。







「落札をされた感想はいかがですかな?」


「神々もさぞ安堵されたであろう・・・」


「”それ”を所持するにふさわしい本当の主のもとに戻って良かったとな!」







ブウウウウゥゥゥゥ!!!!







今の彼の言葉を聴いていた群衆の一部からブーイングが上がった。

なにせ彼の言葉を違う角度で解釈すると、”自分こそが神々に選ばれた人間だ”と言っているようなものだ。

それに加え彼の装飾品が余りにも異質過ぎた。

頭に身につけた金の冠。

左右10本の指に余すところなく付けられた色とりどりの宝石の指輪。

両耳にはクリスタルのイヤリング。

そして、帯の様に広いプラチナのリンクチェーンネックレス。

身につけている装飾の全てが見る者の注意をこれでもかというくらい惹きつけている。

その異常とも言える富貴のアピールに、今の優越感丸出しの発言だ。

批判が出るのも当然だろう。







「まさに、神の酒を手にされるにふさわしい方のお言葉です!」


「我々商人ギルド連盟も貴方様のような方に落札頂きまして、誠に幸甚の至りでございます!」







そう言って司会者は慇懃に一礼をした。

司会者も当然こういう場は慣れているのだろう。

会場の反応も特に気にした様子はなく、落札者を持ち上げる言葉を口にする。







「・・・それでは手続きに入りますのでこちらにお越し下さいませ」


「うむ」







落札者の男の人はそのまま壇上横に設置されている署名台に誘導された。

しばしの間、そこで購入手続きが行われている。







ざわざわ・・・・







その間、落札者の男の人は衆目を一身に集めることになった。







「おい・・・あの成金野郎に見覚えあるか・・・?」


「いや、ねぇな・・・少なくともカーラの奴じゃねえと思うぜ・・・」


「あんな金ぴかな冠付けている趣味の悪い奴、ここらへんじゃ確かに見たことねぇ・・・顔つきや色も見慣れないしな」


「カーラの王族という線もひとまずないな。・・・王妹殿下がこの会を主催しているんだからよ」


「・・・”イドゥン連盟”のうちのどこかの富豪じゃないか?」







僕の周囲の人々は落札者の男の人に好意的ではないようだった。

彼らの言葉の端々に落札者への侮蔑の色を感じることができる。

そんな彼らの関心事はもちろん落札者の身の上の事だ。

・・・そして、それは僕も例外ではなかった。







あの人は一体、どこの、誰なんだ・・・

見慣れない風貌に、彫りが深い顔つき。浅黒い肌。

周囲の人間が言うように、カーラ王国の人間ではなさそうである。

・・・

それともまさか・・・魔族とか?

褐色の肌を持つ種族として、魔族を連想してしまうのは無理からぬ事だ。

この会場にも魔族がいることは既に確認済みだしな・・・

でも「魔族=褐色の肌を持つ」というのは、この国の人間の偏った認識によるものだ。

褐色の肌を持つ人間だって当然いるし、最北端の大森林付近の魔族はむしろ真っ白いらしい。

人間の国と交流がある魔族は比較的褐色の肌を持つものが多かったから、そういう認識になった。・・・それだけのことだ。

しかし、人間と魔族の交流はそもそもほとんどない。

あるとすれば大河を挟んだ北方の国々”ルベン”、”シメオン”、”レビ”の3カ国のみ。

これだと母数が余りにも少なすぎるし、人間と魔族の違いを外見だけで判断するのは危険なのだ。

それに、仮に彼が魔族だっとしても、得られる情報が限られて来るから彼の正体を知るには雲を掴むに等しい。

それこそ、また大金払って冒険者に依頼でもしない限り彼の正体は分からないだろうな・・・

彼を魔族だと思うのは一旦置いておくとしよう。







・・・・・







う~ん・・・しかしだからといってなぁ~

彼が人間だとしても、どこの国出身とかまではわからない。

僕が思うに彼は”イドゥン連盟”の人間ですらない気がする。

カーラ王国を含む8カ国で構成されるクレジット加盟国は人間の生活圏の中では最も大きい規模の内の一つだ。

しかし、別に人間が住んでいる場所はここだけではない。

冒険者の人達から小耳に挟んだ情報によると、はるか南方に住んでいる人達は浅黒い肌を持っている人種が多いとの事。

彼はその地方の人間なのかもしれない・・・

・・・・・

・・・だめだな。

今、僕の持っている知識じゃこれ以上はなんとも・・・・・・って、もう終わりそうだな。







落札者の男の人がちょうど書き物を終えたところで、僕は一旦思考を打ち切った。

手続きがどうやらもう終わったようだ。

契約書類を鑑定士が確認し終えると、司会者と落札者がその場で握手を交わした。







「おめでとうございます!!これで正式にネクタルはあなたの物になりました!!」


「・・・うむ。出来るだけ早く届けてくれたまえよ?」







司会者に念を押す形で彼は返答する。

彼としては当然高い金を払ったんだから、一刻も早く品物が届くことを願うだろう。







「もちろんでございますとも!!」


「我々商人ギルド連盟の威信に掛けて、貴方様に遅滞なくお届けすることをお約束いたします!!」







司会者は仰々しく一礼をしながら彼に言葉を返した。

これは司会者のリップサービスなどではなく、商人ギルド連盟としての総意だろう。







「結構だ。頼んだよ、キミ」







彼は司会者に指をさして、命令口調で依頼をした。

うわ、えらそうだなぁ・・・

そういう感想が思わず出てきてしまうほどの上から目線だった!

しかし、司会者はニコリと微笑み「はい」と答えると、会場の方へと振り向いた。

そして、最後の締めと言わんばかりに居並ぶ観衆に向けて声を発した。







「皆様!!改めて落札されました1503番の方に拍手をお願いいたします!!!」







ワーワー!!!

パチパチパチ!!!







壇上にいる司会者と落札者に対し、観衆は暖かい拍手でそれに応える。

僕も一応周りに合わせて彼らに拍手を送った。

一部落札者に対し敵意と嫉妬のヤジを飛ばす人々もいるが、基本的に会場にいる群衆はこの催事を楽しんでいるものがほとんどだ。

素直な喝采が向けられている。

一方、落札者の男の人は右手を上げてそれに応えると、彼の護衛と思われる者たちと一緒に2階席に上がる階段に向かっていった。

彼も当然VIPの一人だということだろう・・・







「・・・・・・あっ!やばい!!」







反射的に僕はその場で声を上げた!

僕は途中まで傍観者の一人だったのだが、ここに来て急に焦燥感に駆られてしまう。

周囲の人達が突然奇声を上げた僕に対し、訝しげな視線を送っているがそんな事を気にしている余裕はなかった。







彼を・・・見失ってしまう!!!







少しでも彼の情報を得なくちゃ・・・!!

僕は壇上の裾に設置された階段に向かって滑るように歩き出した!







彼を見失わないように背伸びをしながらなんとか前に進もうとする。

しかし、周辺には競りの参加者達で埋め尽くされている為、思うように前に進むことが出来ないでいた。

ああ、もうっ!・・・人が多いなぁ!







「―――さて、皆様。ここでまたオークションは休憩を挟みます」


「次のロットNo.4”賢者の石”の落札は20時開始を予定しております」


「おくつろぎの上お待ちくださいますようお願い申し上げます―――」







パチパチパチパチ!!!







司会者が深々と頭を下げて一礼をすると、観客達から労いの拍手が送られた。

それを合図に落札に参加していなかった観客達も席を立ち上がり行動を開始した。

「ガヤガヤガヤ!!」という喧騒と共に、激しい人流の波が会場全体に巻き起こる。







「・・・すっ・・・すみません!!そこ、通してください!!」







そんな中、必死に声を上げながら僕は突き進んでいった。

途中、何回も人にぶつかって突き飛ばされそうになったが、それでもめげずに人波を掻き分けて行く。

ようやく群衆を抜けて壇上の裾近くに到達した時、落札者の後ろ姿は既に見る影もなくなっていた。







はぁ・・・見失っちゃったか。

でも、あれだけ目立つ人だ。2階席に上がれば見つけ出すのは容易だろう。

問題なのは・・・・







楽観さと一抹の不安を抱えながら、僕が階段に近づいていった時・・・

鋭い視線と怒気を含んだ声が僕に投げかけられた!







「・・・おい。そこのお前・・・!止まれ!!」







階段入り口を警備する騎士団の声だった。







・・・くそぅ・・・素通しは流石にしてくれないか・・・







さっきの落札者に随伴していた護衛達は顔パスで入っていった所を遠目で目撃していた。

だから、自分も行けるかも・・・と思っていたのだが、流石にその考えはあまかったようだ。

2階のVIP達の警護ということもあり、階段入り口付近では実に10人以上もの騎士が配置されている。

僕に威圧するような声を掛けてきたのは、階段正面を警備する騎士だった。

彼は疑いの眼差しを僕に向けてくると、さらに尋問を掛けてきた。







「お前・・・見慣れない奴だな。どこの所属だ?」







・・・くっ、仕方ない。

僕は彼の方へ向くと平静を装い返答する。







「あっ・・・どうも!お疲れさまです!」


「僕はエルグランデ伯爵領のカイン公子の従者の者なんですけど、伝わっていませんかね・・・?」







大ぼらを吹いた!

でも、あいつは僕の事を”下僕”とかほざいていた気がするから、あんまり嘘付いている気はしない・・・







「・・・・なにっ?」







僕の意外な返答を受けた騎士は僅かに驚きの表情を出すと、さらに問い詰めてきた。







「それならお前・・・貴賓席用の入場許可証は持っているな?それを提示しろ」







・・・くそっ・・・やっぱりそういうものがあるのか・・・

心のなかで舌打ちをしながら彼に返答する。







「・・・あ、はい。ちょっと待ってくださいね」







そして如何にも入場許可証を持っている様に見せかけて、カバンの中をゴソゴソと探った。







「あ、あれ、おかしいな・・・?」


「・・・どうした?」







低く唸るような声で彼は言葉を返す。

明らかに僕を信頼していない様子だ。







「す、すみません!なんか、どっかに置き忘れてしまったみたいです・・・!」


「なんだと?」







訝しがる視線が更に強くなる。

彼は続けて僕を問い詰めようとしてきた、が・・・







「ちょっと待ってろ。今か―――」


「―――あっ!そうだ!!さっきビュッフェテーブルに立ち寄ったんです!!もしかしたらあそこに置いて来たかもしれない!」


「僕、探してきます!!!」







彼がなにか言おうとする前に、僕はさも突然思い出したかのように声を張り上げた!

そしてすぐその場から離れると、会場の中心へと猛然と駆け出す!







「あっ!おい、貴様、待て・・・」







彼の声が後方から聞こえてきたが、ここでさすがに立ち止まるわけにはいかない。

僕は群衆の中になだれ込むと、そのまま会場の人混みの中に紛れた・・・













・・・ほっ。どうやら追っては来ていないようだな・・・







数瞬後、僕は相変わらず人混みの中にいた。

階段からある程度の距離を稼ぐと、今度は周囲に合わせて目立たないよう歩いている。







チラッ







再度後ろへ軽く視線を流す。

「ガヤガヤ」と観客達が歓談に興じているのみで、騎士たちが探しに来ている様子はなかった。

よかった・・・とりあえずなんとか切り抜けることが出来たようだな。

でも、混み合っている群衆の中を往来したせいで身なりがすっかりぐちゃぐちゃだ。

一回化粧室に行って整えたいな・・・







周囲を見渡して化粧室を探しながら散策する。

しばらく歩いていると会場の端にそれらしき大きめの部屋が2つ見つかった。

男性用・女性用のそれぞれの部屋に多くの紳士・淑女が出入りしている。







あ、あった!

ふう・・・一息つけそうだ・・・







中に入ろうとした瞬間、2人組のワーウルフの亜人とすれ違いそうになったので彼らに道を譲る。







「おう、坊主すまんな!」


「いえいえ・・・」







ワーウルフの一人が流暢な人の言葉で感謝を口にする。

彼等が長い銀髪をたなびかせながら横を通り過ぎていく時、僕はとっさに先程のオークションを思い出した。







あれ・・・この人はもしかして・・・・

あの人じゃないか?







1503番の落札者と最後までネクタルを掛けて争っていたワーウルフの亜人だった。

特徴的な長い銀髪と鍛え上げられた身体・・・間違いない。

もうひとりの方も銀色の長髪だがこちらはヒョロっとした身体をしている。

彼らは化粧室から出ていくと、しばらくワーウルフの言語で何かを話しているようだった。







「<・・・ちっ!おい、なんであいつらがあんな所にいやがるんだ?>」


「<さあな?あいつらもオークションを見に来たんだろ・・・>」


「<”獲物”を落札できなかったんで、今気が立っているんだ・・・あいつらちょっと絞めてやる・・・>」


「<やめろ!こんな所で問題を起こすな!ネクタルも落札できなかったし、これ以上の長居は不要だ。国王陛下にも急いで報告せねばならん>」


「<・・くそっ!・・・・しかたねぇ・・・!>」







筋骨隆々のワーウルフが吐き捨てるようにそう言うと、彼らは会場入り口の方に向かっていった。







誰だったんだ彼らは・・・?

国王とかいう単語が出てきているところを考えると、彼らもどこかの国の要人ということなのだろうけど・・・

僕はそのまま物思いにふけようとするが、すぐに思い直す。







考えても仕方ないか・・・それに今彼らは関係ない。

もっと他に考えないといけないこともあるし、身だしなみも整えたい。

とにかく、一旦化粧室に入ろう・・・

そう結論を下した僕はそのまま化粧室の中に入っていった。







化粧室の中に入るとまず驚いたのが中が非常に綺麗だということだ。

大理石で作られた洗面台が数多く設置されていて、フローリングや洗面台の光沢がとても眩しかった。

用を足すところももちろんあるが、館内は清潔に保たれておりカビや悪臭がまるで感じられない。

洗浄の魔道機械クラフト・スイーパーが完璧に機能している証拠だろう。

さらに化粧室の奥の方を見ると客人用の更衣室が多数用意されていた。

中には木製の額縁が付けられた大きな姿見が設置されており、身だしなみを整えるスペースもある。

更衣室は一部使用中だが、そのほとんどは空いていた。







洗面台にも大きな鏡が設置されているけど、そこだと人通りが多くて落ち着けそうもないな・・・

丁度いい・・・僕も更衣室を借りるとしようか・・・







僕はそのまま奥の部屋に進み更衣室の中に入った。

すぐさまカーテンを閉めて、ふぅーーと息を吐く。







なんか、どっと疲れた・・・

それに今気づいたけど・・・手足がめっちゃブルブル震えてる・・・

ははっ・・・こんなことにも気づかないほど僕は切羽詰まっていたんだな・・・







心臓の動悸が止まらない・・・

先程までの行動を思い返した途端、急に怖くなってしまった。

なんて危ない橋を渡ろうとしてたんだ僕は・・・・

今思い返してもとんでもない無茶な行動をしてしまったと思う。

あの騎士が追いかけてこなかったから良かったものの、あそこで捕まっていたらアウトだった。

拷問を受けて、牢にぶち込まれていたかもしれない。

そんな危険を犯してまで、今、落札者の正体を確かめる必要本当にあるのか・・・?

しばし、そこで考え込んでしまう。







・・・・・







・・・僕も一応、アザゼルギルドの工房メンバーの一人だ。

冒険者達からの依頼を受けることもあるし、彼らと世間話程度だが話す機会もある。

もちろん熟練の冒険者のような本当のエキスパートとの交流は稀だけど、冒険者達を通じてある程度の情報は得られるだろう。

特に神話のアイテムの落札者の正体は誰もが知りたいと思うハズだ。

今、危険を冒さなくても街の人々や冒険者達との世間話を通じて、なんらかの情報が入ってくる可能性は高い。

・・・・・

しかし、少し考えて僕は頭を振る。







いや、やっぱりだめだな・・・

僕の経験上、噂話や世間話で得られた情報なんて7割が”デマ”だった。

3割は本当だとしても、それを判別するために結局別の情報が必要になってくる。

そんな不確かな情報に踊らされてアテもない冒険に出るなんて危険すぎる・・・

信用のおける冒険者に高額な情報料を支払って確実な情報を手に入れたほうがまだマシだろう。

しかしそうなったら、今度こそ10万クレジットじゃ済まない。

・・・20万、30万。いや、下手したら100万以上掛かるかもしれない。

いずれにしろ、その金額を貯めるまで膨大な時間を要するのは間違いない。

一体、何年掛かることやら・・・・







「はぁ・・・」







深いため息を付いてしまう。

どうすりゃいいんだ・・・僕は。

今、自分がどう行動するべきか、何を考えるべきなのか方針が定まらない。







「・・・・・」







目の前には大きな姿見。

そして、そこには暗い表情の顔をした僕が映っていた。

・・・・なんて顔をしてんだ僕は。

レイナがこの場にいたらきっと僕を叱ってくるな。

「ほら、男の子でしょ?しゃきっとしなさい!!」ってね・・・

その光景を思い浮かべて、わずかに頬が緩む。

気持ちが少し楽になったので、気分転換も込めて自分の身だしなみを整えていく。







さっ・・・さっ・・・







「よし。こんなもんか・・・」







乱れた髪を整え、フロックコートのシワを伸ばし、蝶ネクタイの位置をもとに戻す。

先程よりは大分気分が落ち着いた。

鏡の映った自分を見ながら、改めて今後の行動方針を考えることにする。







・・・とりあえず、当初の目的だったネクタルの確認は済んだ。

後は、落札者とコンタクトを取れるようにあの人がどこの誰なのかを知れれば十分だ。

VIP席がある2階に上がれるのならそれに越したことはないけど、現状ではそれはリスクがある。

くそっ・・・あの人の事を誰でもいいけど、知っている人いないのかなぁ~・・・

・・・そう、例えば会場を警備している騎士はどうだろう?

彼らは当然主催者側だ。

要人の警護のためにVIP達の情報を持っているだろう。

なんとか、彼等から聞き出すことは出来ないかなぁ・・・

世間話でもしながらしれっと聞いてみたりとかさ・・・うーん・・・

しばらくそんな感じで鏡の前でうんうんと唸る僕。







バンバン!!







・・・すると突然、外からカーテンをバンバンと叩かれた。

さらにドスの利いた濁った声が部屋の中に響く。







「はいはい、お兄ちゃん!いつまで部屋占領してんだ!」


「後ろつっかえてんだから、さっさと出てってくれよ!」


「・・・あっ、す、すみません!今、出ます!!」







しどろもどろになって、カーテンの外にいる人に返事をする。

どうやら苦情のようだ。意外に時間が経ってしまってたのだろう。

僕はシルクハットを深く被って、顔を隠しながらそそくさと更衣室の外に出た。

苦情を入れてきた人は「ちっ!」と舌打ちをしながら、手荷物を持ってすぐに更衣室の中に入る。

入れ違いに外に出た僕は更衣室の状況を確認すると全て使用中だった。







いつの間にか埋まってたんだな・・・







さっきまで更衣室はほとんど空いていたのに、いつの間にか満室になっていた。

想像以上に時間を費やしてたのかもしれない。

やばい・・・急がないと次のオークションが始まっちゃうな・・・

とにかく、一旦会場に戻ろうか・・・







「うううぇえ、ぎもぢわるい・・・・ねむい・・」


「おい!あんたしっかりしろ。飲みすぎだっつーの!」







声のした方向へ目線を向けると、洗面台に顔を突っ込んでいる人が何人かいた。

彼らが甲冑を着ているところを見ると、倒れているのは皆兵士達だろう。

勤務中に酒でも飲んだのだろうか?

複数の給仕係が横について兵士達を介抱していた。

周りの客たちは白い目を向けながら、避けるように通り過ぎている。







まあ、祝い事ではあるから羽目を外してしまったんだろうな・・・

ははっ・・・後で上官に叱られそうだけど。







そんな光景を少し微笑ましいと思いながら、僕は化粧室を後にした。













僕が会場に戻ると観客達の声で相変わらず騒がしかった。

ビュッフェテーブル付近で食事を頬張る者。

ワイン片手に優雅に立ち話に興じている者。

見目麗しい美女を口説いている者。

空いているテーブルでなにかの賭け事をしている者。

酒に酔っ払って騒ぎを起こし、地下牢に連行されている者。

既にオークションに興味をなくしたのか、会場から出ていこうとする者までいた。

僕はそんな彼らを尻目に、懐に持っていた懐中時計を出して時間を確認する。







19:32







あれ・・・まだ、そんな時間だったんだ?

次のオークションが始まるまで、まだ30分くらいある。

これだったらもうちょい会場の中を歩き回れるな・・・








次のオークションまで、もうほとんど時間がないと思っていたからこれは嬉しい誤算だった。

聞き込みをするにしても、次のオークションが始まるまでにしたい。

でないと落札者のことに関して、自然に世間話を仕掛けるのは難しくなる。

しかし、問題はどこの誰に聞きに行くかだけど・・・・







そこで僕は改めて会場を見渡した。

壇上を中心に半円形の形状をした会場だ。

会場の外周に沿って神々の巨大な像が立ち並び、その間をカーラの兵士たちが埋めている。

壇上の両脇には2階席へ向かう階段があり、そこは騎士団が警護していた。

そしておそらくVIP席にも彼らは配置されているだろう。

騎士団は要人警護を主に担当しているとみるべきだ。

VIP達の警護に加え、彼らと世間話や暇つぶしの相手もさせられるとなると、武力と知性両方を兼ね備えていなければならない。

警護する方にも品格が求められるし、これは一般兵士には荷が重いだろう。

だから本当は騎士の誰かに聞きに行けたら良いんだけど、さっきちょっとやらかしちゃったしなぁ・・・

仕方ない・・・試しに兵士の方に聞きに行ってみるか・・・

兵士は会場の中も巡回しているし比較的話しかけやすい。

手近な誰かにちょっと話しかけてみるか。

そう決心した僕は、化粧室入り口付近を巡回していた兵士の一人に近づいていく。







「あのぅ、すみません!ちょっといいですか?」


「・・・・・」







兵士に声をかけたのだが、無反応だった。

・・・あれっ?

周りがうるさかったので聴こえなかったのかなぁ・・・

疑問に思いながらも僕は話を続けた。







「いやぁ・・・さっきのオークション興奮しませんでしたか?」


「落札価格があんなに高額になるなんて夢にも思わなかったですよ、ぼく」


「・・・・・・」


「それに見ました?あの落札した人の姿!!?あれも凄かったなぁ・・・」


「あれだけ金ピカな衣装だったら嫌でも印象残っちゃいますよねぇ~」


「・・・・・・」







兵士は相変わらず僕をスルーしていた。

・・・なんで反応しないんだよ!?

しかし、僕も必死だったから止める訳にはいかなかった。

めげずに兵士に話しかけ続ける。







「僕が思うにですねぇ・・・あれは絶対どこかの国の王族だと思うんですよ!」


「100億クレジットなんてさらっと出せるあたり、どこか大きな国の出身なのは間違いないと思います!」


「・・・・・」


「例えば有名な魔法大国である”シグルーン”あたりの王子様とかだったりして。ははっ・・・そんなわけないか」


「・・・・・」


「・・・ねえ!どう思いますか?」


「・・・うるさい」


「・・・・はい?」







ようやく彼が反応したと思ったら、不機嫌そうな声が返ってきた。

彼はゲンナリした顔でこちらを振り返ると、威圧する様な声で言葉を続けてきた!







「・・・今、任務中だ。話しかけるな!」


「これ以上続けてきたら、公務執行妨害で地下牢にぶち込んでやるぞ・・・!」


「あっ・・・す、すみませんでした!!」







ギラついた目を向けてきた兵士に僕は急いで頭を下げた。

彼は「ふんっ」と鼻をならすと、そのまま巡回任務に戻っていく。







うわぁ・・・こわっ!

冗談通じなさすぎじゃないか?・・・あの兵士・・・

任務なのだから仕方ないのかもしれないけど、いくらなんでもあの態度はないよな。

少なくともこの会場にいる客達は各国のギルドの推薦を受けたか、高額な入場料を支払って入場している人達なんだ。

先程のワーウルフの人達みたいに他国の要人だっているかもしれない。

客に愛想よくしろとまでは言わないまでも、あんな敵意剥き出しで対応するのは絶対まずいと思うんだよね。

下手したら、異種族との外交問題にも発展しかねないだろ。

まったく・・・カーラ王国の兵士達はどういう教育・指導を受けているんだよ・・・







僕は心のなかで不満をぶーたれながら、兵士の背中を見送った。

正直、逆ギレも良いところである。

僕の悪い癖だ・・・

余裕がなくなると、理論武装で相手を言い負かそうとする。

・・・彼に悪態付いている場合じゃないだろう!







僕はブンブンブン!と頭を振って邪念を振り払った。







・・・仕方ない。他の場所に行こう。







僕は心を切り替えると、化粧室周辺から歩き出した。

そのまま会場外周に沿って進んでいく。

会場の中心にも兵士はいるが、彼らの多くは外から中心を伺うような形で外周に配置されているからだ。

歩きながら警備している兵士をチラチラと伺い、話しかけやすそうな人はいないか探していく。

・・・酒飲んでぶっ倒れている兵士もいるくらいなんだ。

ちょっと世間話に応じてくれる兵士だってどこかにいるだろう。

雑談している兵士がいたならしれっと近づいてみよう・・・







・・・しばらくすると手持ち無沙汰にしてそうな兵士の一団を見つけた。

半円形の会場の外周にちょこんと窪んだ場所があり、神々の像の背後に隠れるように小さな部屋が設置されている。

その吹き抜けの部屋の壁一面には、青白い光を放つ巨大な”ルーン文字”が描かれていた。

・・・例のルーン結界が施されている場所だ。ここだけでなく会場の四方の隅に結界用の部屋が設置されている。

人目を避ける場所に設置されているせいか、いかにもサボれそうな所だ。

会場の中を巡回している兵士たちは職務を忠実にこなしていた印象があるんだけど、ここの人達はちょっとだらけちゃっている気がする。

そのまま部屋に近づいていくと、兵士達の雑談の声が聞こえてきた。







「はぁ・・・退屈だな、おい」


「ああ、こんな場所で警備とかダルくてやってらんねぇよ・・・」


「会場の中を巡回している奴らは羨ましいよな。うまいメシをこっそりつまみ食い出来るんだからよ・・・」


「ああ、まったくだ・・・」


「いいさ。交代時間が来たら、俺達も浴びるくらい酒飲んで、たらふく食ってやろうぜ!」


「当たり前だ!」


「・・・ああ、それだけが楽しみだ」


「お前ら、小隊長殿がいないからって、気を抜きすぎだろう!・・・まあ、俺も楽しみだが」


「なんだ!おめえもじゃねぇかよ!!」


「はっはっはっは!!」







兵士達の笑い声が聞こえてくる。

・・・よしっ!ここの人達は比較的ノリが良さそうだ。

僕は観光でもするかのように会場をキョロキョロと見渡しながら、兵士の一人に声をかけてみた。







「あのぅ、すみません!」


「・・・んっ?何だ坊主。どうした?」







特に拒絶感もなく彼は言葉を返してきた。

言葉の感触が良かったので僕は胸を撫で下ろす。







「物珍しいなと思ってちょっと観光に来ちゃいました・・・それ、なんですかね?」







そう言って、僕は兵士達の背後に描かれた巨大なルーン文字を指差した。







「・・・ああ、これか。こりゃルーン文字だ」


「これは”結界のルーン”を表していてな。会場のいる人間に能力の制限を掛けているのさ。来場客の安全のためにな」


「・・・なるほど。そんなものがあったんですねぇ。どおりで能力が使えないなぁ~と思ってたんですよ。あははは」







もちろん、これは知ってた。

話の取っ掛かりに利用させてもらっただけだ。

ちなみに会場を警備している兵士は、この能力の制限を一部解除されているはずだ。

僕は相槌を打つ傍ら、兵士の手首をチラリと伺う。

そこにはルーン文字が刻み込まれた真鍮の腕輪が装着されていた。

・・・これは”巫女の腕輪”ヴォルヴァ・バングルと呼ばれるものだ。

ルーン結界の中において、特定系統の能力の使用を開放する魔道具の一種である。

何の種類が開放されるかは腕輪の種類と刻み込まれたルーン文字に依る。

”真鍮”の腕輪の場合、開放対象は補助能力系統だ。

兵士達の場合は低級補助能力が開放されているのだろう。

彼らは有事の際自分のステータスをアップさせたり、相手をダウンさせたりするくらいの事は出来るはずだ。







「・・・でも、そうすると皆さんも警備大変なんじゃないですか?能力が使えないなんて・・・」


「ふふん。そう思うか?だけどな。俺たちはちょっと例外なんだわ。ここじゃ俺たちにかなう奴はいないと思うぜ?」


「・・・例外ですか?」


「・・・坊主。流石にそういうことは機密上ほいほい言えねぇんだわ。上官に俺がどやされちまうよ」


「あはは・・・すみません!大丈夫ですよ!ただ、好奇心で聞いただけですから!」








僕は苦笑いをしながら取り繕った。

すっとぼけるのもこれくらいでいいだろう。

・・・さっさと本題に入ろう。







「・・・そう言えば、先程のオークションは皆さんもご覧になられたんですか?」


「さっきのオークション?・・・ああ、あのネクタルとかいう酒のオークションだろう?」


「もちろん見たぞ」







僕の問いに対し、目の前の兵士はニヤリと笑う。







「ここからだと死角になっていてよく見えねえからよ。覗きに行ってやったぜ!」


「神々が飲む酒なんて、そうそう拝めるもんじゃねえからな。任務中だろうがなんだろうが絶対に見てやると思ってた!」


「はっはっはっは!!」







そう言って兵士は高らかに笑った。

背後にいた彼の同僚たちからツッコミの声が上がる。







「本当、”クルト”はサボることに関しちゃ一流だよな!」


「ああ!全くだ!この間なんて巡回任務と言っておきながらパブの姉ちゃんと遊んでたしなぁ」


「うるせえ!それは町の治安維持の一環だっつーの。お前らだって”あの酒”に興味津々で覗いてただろうが!」







クルトと呼ばれた目の前の兵士が後ろの同僚たちにそう言い返す。

彼の言葉に後ろの兵士達は顔を見合わせると、バツが悪そうに答えた。







「いや、まあ、そりゃあ・・・なぁ・・・」


「ああ・・・だって不老不死の酒だぜ?興味がわかないわけないーっつの」


「本当は俺たちもこんな場所で警備なんてしてなかったら、堂々と間近で見れたのになぁ」


「うちの隊長さんの引きが悪かったんだからしょうがねえよ・・・」







うんうん、と同僚の兵士達は頷く。

警備する場所はクジで決められたのかもしれない。

ネクタルに話題が切り替わった所で、僕は彼らの会話に割り込んだ。







「僕は幸運にもオークションを間近で見ることが出来ましたよ」


「ネクタルはもちろんですけど、落札した人も全身金ピカで凄かったですよ」


「やっぱりあれくらいの財力がないと、神の酒なんて手に入れることが出来ないんでしょうねぇ・・」







話をなんとか落札者の方に持っていこうとする。

すると、彼らもあの落札者については思うところがあったのだろう。

僕が話題に出すとすかさず話に食いついてきた。







「ああ!あいつか!あの、えっらそう~なやつだろう?」


「あの成金野郎・・・金に糸目つけずに競り落としてきやがったもんな」


「不老不死によっぽど興味があったんじゃないか?金と権力を手に入れたやつの行き着く先は不老不死っていうのはよく聞く話だろう?」


「・・・ああ、かもな。俺たち見たいな愚民なんかには絶対くれてやらんという執念を感じた。正直、ムカついたよ」


「態度からして気に食わねえ奴だったもんな・・・同じ金持ちでも王妹殿下と比べたら月とスッポンだぜ!」







”クルト”さんが王妹殿下の名前を出して落札者の男の人を批判すると、

周りの兵士達も賛同するように「うんうん」と頷いた。

みんな仲いいんだなぁ・・・







「みなさんはあの落札者についてはなにかご存知なんですか?」


「なんか、顔つきといい、佇まいといいここら辺の人じゃなさそうですよね」







心の中で彼らの仲の良さに感心しながら、僕はいよいよ核心に迫る情報について聞いた。







「確かにあいつは見ねえ顔だよな。お前らはなんか知ってるか?」







クルトさんはどうやら何も知らないようだ。

彼は同僚に質問を振る。







「知らねぇよあんなヤツ。まあ、少なくともカーラのヤツじゃねえとは思うが」


「俺もわかんねぇな。・・・でも、どうせどっかの王族や貴族なんだろう?」


「だろうよ。結局、ああいうものは俺たち平民には縁がないってこった」


「まったく、不公平な世の中だぜ・・・」







・・・うーん、駄目か。

全員知らないっぽい。

少し期待したんだけどな。。。







僕が当てが外れて肩を落としていると、別の兵士が一人近づいてきた。







「・・・おう。今帰ったぞ」


「”ラルフ”か、随分遅かったな。そんなに便所混んでたのか?」


「それがよぉ。酔っ払った兵士達がいて洗面所を占領してやがったのよ」


「うげぇ・・・まじかよ。そいつら懲罰もんじゃねぇか」


「命知らずなやつらだな~。下手したら首が飛ぶかもしれんつーのに」







どうやら彼らの同僚の一人のようだ。

ラルフと呼ばれた兵士の話に同僚の兵士達は驚きを露わにしている。

彼が話題にした”洗面台を占領していた兵士”って、僕も見たあれかな?

確かにあれは酷かった・・・

軍の法には詳しくないけどあれは懲罰されても仕方ない気はする。

ラルフさんは話を続ける。







「そう言えば、小隊長殿も化粧室で見かけたぞ?」


「声をかけたんだが、人が多かったせいかこっちには気づかれなかったが・・・」


「タイミング的にそろそろ戻ってくる頃合いじゃないかな?」


「げぇ、やべえ!」







ラルフさんの言葉にクルトさんは狼狽える様子を見せる。

クルトさんはこちらを振り返ると、焦って僕に声を掛けてきた。






「おい、坊主!一応この近辺は一般人は立入禁止なんだ」


「小隊長殿からお咎めを喰らう前にさっさと失せな!」


「あっ!はい、わかりました・・・」







仕方ない・・・

聞き込みは空振りだった事だし、ここにはもう用はない。

さっさと離れよう。







僕は帽子のつばに手を掛けて彼らに一礼すると、そそくさとその場から離れた。

そして、僕が会場に戻る通路の出口で別の兵士とすれ違う。

しかし、彼は通路から出てきた僕のことを気に留める事もなく、そのままルーン結界が張られた小部屋に向かっていった。







・・・話の流れからすると、彼が”小隊長”なのかな?

その割には完全に僕をスルーだったんだけど・・・







通路は短い一本道。

入口の先にはあの吹き抜けになっている小部屋以外存在しない。

そこから出てきた僕のことを彼は少しも気に留める様子がなかった。

少し気になった僕は通路入口の横に隠れると、そのまま顔を覗かせる様に聞き耳を立てた。







「―――お前らご苦労だった。交代の時間だ」







To Be Continued・・・
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