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第21話 暁のオークション⑥
しおりを挟むオークションが行われている壇上の両脇には、会場反対側へ繋がる出入口が設置されている。
準備室や倉庫に繋がっているその通路からは給仕係がひっきりなしに出入りを繰り返していた。
彼らは会場にいる数千人規模の客達の胃袋を満たすべく奮闘している最中だった。
そんなドタバタという足音が聞こえてくる空間の中を僕たちは歩を進めていく。
「もう少し早く歩けないのか貴様・・・」
「足がふらついていて、ちょっとこれ以上は無理そうです・・・すみません」
後ろに付いている近衛騎士のお小言に、引け目を感じながら謝罪の言葉を口にする。
すれ違う給仕係の奇異の目に晒されながら懸命に足を運んでいく。
やがて、幾度も枝分かれした回廊を下った先に大きな鉄格子の扉が姿を現した。
「第9近衛騎士団所属、”グレース・ホーカンソン”だ」
「隊長の命で、”この者”を取り調べ室まで連行中だ。ここを開けてくれ」
前を歩いていた近衛騎士が、鉄格子の前で見張りをする兵士に声を掛けた。
「お疲れさまであります!」
「そちらの子供がそうなのでありますか・・・?」
「泥酔して、暴れたようにはとても思えないのですが・・・・・」
兵士は敬礼をしながら、僕の姿を見て不思議そうに彼女に質問を返した。
「いや、こいつはちょっと他の奴らとは違う容疑だ」
「不法侵入、並びに、国家反逆罪の罪に問われている」
えっ・・・?国家反逆罪!?なんだ、それは・・・・・・
初めて聞く恐ろしい容疑に僕は唖然とする
「あ、あの!・・・国家反逆罪なんて何の話ですか!?」
「そんな国家に反逆するような真似なんて僕はしたことありません!」
慌てて僕は目の前の近衛騎士に弁解をした。
しかし、彼女はこちらを振り返ると、厳しい視線を向けて僕を一喝する。
「黙れ!貴様にこの場で発言を許した覚えはない!」
「口も縛られたくなかったから、静かにしていろ!」
「・・・・・っ、はい・・・」
彼女の有無を言わさぬ物言いに僕は、すごすごと引き下がる。
まさか、そんな大事になっているなんて夢にも思ってなかった。
僕が国家反逆・・・!?
なんでそんな事になったんだ!!?
訳がわからない・・・・・
「・・・という訳だ。すぐにここを通してくれ」
「・・・は、はっ!畏まりました!」
近衛騎士の言葉に兵士は再び敬礼を返すと、すぐに門を解錠した。
ギギギッ・・・
鉄の軋む重い音が通路に響き渡ると同時に、石造りの通路が目の前に姿を現した。
「ご苦労・・・入るぞ」
兵士に労いの言葉をかけると、”グレース”と名乗った近衛騎士は僕を引き連れてそのまま通路に入っていく。
彼女に引っ張られながら歩いていくと、やがて通路の両脇に鉄格子で区切られた牢屋が見えてきた。
「ぐがーーーぐがーーーー」
「ひっく・・・さけをおぉっと飲ませろーーーー!」
「おーい。ひゃやくここから出せよぉぉぉぉ!」
そのエリアは酒気の帯びた匂いで充満していた。
辺りから聞こえてくるのは豪快ないびきと呂律の回らないへべれけたちの絶叫。
思わずこのエリアに踏み込むことを躊躇してしまう僕に、グレースさんがこちらを振り向いて注意をしてきた。
「おい。どうした!」
「こんな所で立ち往生なんかするな、バカ!」
彼女が厳しい顔をしながら僕を睨みつけてきた。
手錠をグイッ!と引かれて先への歩行を促される。
そんな彼女は、クラウディア団長旗下の近衛騎士に例をもれず見目麗しい容貌をしていた。
ただでさえ、銀の甲冑と燃えるような赤髪で目立つのに、顔も異性を惹きつけるのに十分だときている。
酔っ払い達の絡み相手として、これ以上相応しい相手はいなかった。
「おーーーい、そこのキレイな姉ちゃん!!俺と一緒に寝ようや!!ひゃひゃ」
「そのきつい顔そそるなあ!俺のチ○ポが立っちまうぜえい!!ひひひひ」
「うぇぇーーい。酔い醒ましにお前の”ミルク”飲ませろよお!!」
男の僕でさえ眉をひそめたくなるような下卑た言葉がグレースさんに投げつけられた。
恐らくここで泥酔している人たちは、会場で騒いでここに連行されてきたのだろう。
彼らの着ている衣服は乱れてはいるが礼装だった。
客としてオークションに参加した者達で間違いない。
ただ、外見は立派だとしても、その言動からは無法者や荒くれ者といった印象しか受けない。
「ちっ・・・ゲスどもめ」
歯噛みをしながら、憎々しげに牢獄の住人たちをグレースさんは睨みつける。
しかし、彼女も酔っ払いの相手をしてもしょうがないことは分かっているのだろう。
彼らの言葉を無視して、ずんずんと僕を伴って進んでいく。
程なくして小窓付きの扉が正面に見えてきた。
ギィー・・・
「入れ」
グレースさんが扉を開けて、僕に中へ入るよう促す。
言われたとおりに中に進むと、中は石造りの小部屋で、机と椅子が2つ3つあるだけの簡素な部屋だった。
窓は扉の上部にしかついていなく、扉は外側からガギが掛かる仕様だった。
囚人が取り調べの際に逃げないようにするためだろう。
「そこの椅子に座れ」
「・・・分かりました」
グレースさんが指差した椅子に僕は言われるまま腰を掛ける。
手錠がされたままなので、どうも落ち着かない・・・
僕が着席すると、グレースさんは後に付いていた近衛騎士の方に振り返った。
「”アイナ”私はここでこいつを見張っている。隊長に取調室まで移送完了の報告をしておいてくれ」
「分かった。ここは頼んだぞ」
ガチャン!
アイナと呼ばれた近衛騎士はグレースさんの言葉に頷くと、そのまま部屋を出ていった。
部屋には僕とグレースさん二人だけが残される。
グレースさんは扉を背にするように僕に向き直って立つと、鋭い視線を向けて忠告してきた。
「分かっていると思うが、おかしな真似はするなよ?」
「逃げようとすれば容赦なくこの剣を抜いてお前を切ることになる。おとなしくしていることだ」
「・・・分かっています」
短く僕はそう答える。
もうこうなったら、後は成るようになるだけだ・・・
おとなしくしていよう・・・
・
・
・
「・・・・・」
「・・・・・」
それから、しばらく沈黙の時間が続く。
僕もグレースさんもあれから一言も言葉を発していない。
彼女は僕の挙動を睨みつけるように監視しているだけだ。
時折、扉の外から酔っぱらい達の騒ぎ声以外にはなにも聞こえてこなかった。
カインに殴られた頬と腹部がヒリヒリと痛む・・・
出血は止まったが、あれから特に手当もしていないし僕の顔は血糊でべったりだろう。
せめて顔を拭きたかったが、今の僕はそれをする自由すらない。
なぜこんな事になったんだろうと、後悔の念が僕の頭をよぎっていく。
落札者の男の人の正体を突き止めようとしたのが悪かったのか・・・?
カインの言葉を無視してオークション会場に入ったのが悪かったのか・・・?
法を犯して2階席に潜り込んだのが悪かったのか・・・?
カインにあの場は素直に謝って、慈悲を請うべきだったのか・・・?
いや、そもそもネクタルなんて大層なものを狙う事自体止めるべきだったのか・・・?
・・・今の僕にはなにが悪かったのか見当がつかない。
胸のうちに罪悪感と虚無感が飛来して、僕の思考をかき乱し続けていた。
コンコン
そんな虚無の渦から抜け出したのは扉のノック音がしてからだ。
「入るぞ」
ガチャ
短い言葉とともに現れたのは金髪の女騎士・クラウディア団長と、メガネを掛けた男の人だった。
男の人の方は甲冑は付けておらず、官僚が付ける宮廷服を着用していた。恐らく彼は書記官だろう。
「隊長、お疲れさまです!」
クラウディア団長が姿を表すと、先程までの無愛想が嘘のようにグレースさんは微笑みながら敬礼をした。
「うむ。対象に変わりはないか?」
「はっ!特に問題ありません」
「反抗する様子も見られませんでした」
グレースさんはクラウディア団長にそう報告する。
「そうか。役目ご苦労だった、グレース」
「これから取り調べを始める。要があったら呼ぶので、お前は外で待機していてくれ」
「はっ!かしこまりました!」
ガチャン!
扉の閉まる音とともにグレースさんは外に出ていった。
彼女が出ていくと、クラウディア団長は無言で僕の前の席に腰掛けた。
書記官の男の人は僕たちとは別のテーブルに行き、なにかの書類を広げている。
「さて・・・」
その言葉とともにクラウディア団長がじっと僕を見つめる。
こんな間近で彼女の顔を見るのは初めてだった。
うわぁ・・・改めて見ると綺麗な人だなぁ・・・
やっぱり彼女はとびきりの美人だ。
こんな状況であれなんだけど、心臓がドキドキしてしまう。
「始める前に自己紹介しておこう」
「私は”クラウディア・フィリア・マリュス・ヒルデグリム”」
「エレオノーラ王妹殿下の近衛騎士団の団長を務めている」
「これから君を尋問することになるわけだが・・・その前に準備がいる」
クラウディア団長はそう言うと、手に持っていた手さげ袋から”魔道具”を取り出した。
その魔道具は水鏡が入った薄い円筒形の容器で、透明の蓋がついていた。
中央には一箇所スライド式の小さな穴が開けられている。
これは”ミーミルの泉”と呼ばれる”嘘を暴く魔道具”だ。
知識の神・ミーミルの逸話にちなみ、
真実を得るために代償が必要なことからその名が付けられている。
・・・この場合の代償とは真実を暴く相手の”血”だ。
「人差し指を前に出せ」
「・・・はい」
言われたとおりに僕は人差し指を水鏡の上に差し出す。
「そのまま動くなよ」
クラウディア団長は懐から小さなナイフを取り出すと、僕の人差し指を軽く裂いた。
人差し指の先からつーと血が流れ出す・・・
そしてポタリと一滴、穴から水鏡の中に落ちていった。
ポチャン!
水鏡の中の水は僕の血で一瞬濁ったが、すぐにまた無色透明に戻っていく。
「・・・よし。これで準備は整った」
僕の血がミーミルの泉に混じり合った事を確認した彼女は、さらに話を続けてきた。
「始める前に説明をしておくぞ」
「これは嘘を暴く魔道具だ」
「尋問の中で君が嘘をついたり、なにかを隠すような発言をするとこの水鏡は赤く濁る」
「聞かれたことには正直に答える事だ」
「嘘や隠し事は君の為にならない。いいな?」
「はい・・・」
僕は頷きながら答えた。
・・・分かっている。
ミーミルの泉の精度はピカイチだ。
対象者の血から出る魔力を抽出し、僅かな心の乱れも機敏に感知する。
隠し事は無意味。聞かれたことに事に対し、素直に答える他ない。
「君には不法侵入以外にも、”ある容疑”の嫌疑がかけられている」
「君の発言はそこにいる書記官によりすべて記録され、この魔道具も裁判では有効な証拠となる」
「尋問では君からの質問は受け付けない」
「なにか弁明があるのなら尋問後に聞く。尋問中は聞かれたことだけに、単刀直入に素直に答えるように」
「以上。分かったか?」
「・・・分かりました」
僕は再度頷いた。
「では、尋問を始める」
クラウディア団長はそう言うと、手を前に組みながら僕をじっと見据えてきた。
ヴァイオレットカラーの瞳が僕を捉えて放さなかった・・・
「・・・まずは、君の身元の確認だ」
クラウディア団長がそう前置きをすると、いくつか質問を続けてきた。
「君の名前は?」
「・・・エノク・フランベルジュです」
「年はいくつだ?」
「16です」
「仕事はなにをしている?」
「魔法技師をしています」
聞かれた質問に簡潔に答えていく。
僕が発言すると、後ろに控えている書記官の人がさらさらと証言を綴っていった。
クラウディア団長の視線がミーミルの泉の方へチラリと向くが、水鏡は無色透明のままだ。
彼女の視線はすぐにまた僕に戻ってきた。
「・・・ふむ。魔法技師なのか、君は」
「エノクといったな。今の年齢だと、君はまだ師弟関係を結んでいるはずだ。どこの工房で従事しているんだ?」
「ガングマイスター工房です。僕の親方はブラッドフォード・ガングです」
「なに?・・・ブラッドフォード殿の弟子なのか、君は・・・」
僕の返答が意外だったのか、クラウディア団長はその目を大きく見開いた。
親方の名前は国内でも有名だから彼女も当然知っているはずだ。
ただ、今の反応の仕方は親方と直接面識がある様な印象を受けた。
王族や貴族とも交流がある親方だから、クラウディア団長とも接点が合っても不思議ではない。
ちょっと尋ねてみたいところだが、それが出来ないのが残念だ。
「なるほど・・・君の身元については分かった」
「では、次の質問に入ろう。ここからが本題だ」
「・・・はい」
彼女の視線の鋭さが増したので、僕の身にも緊張感が入る。
「君がこのオークションに参加した目的はなんだ?」
「・・・・・」
彼女がズバリ核心に迫る質問をしてきた。
僕はすぐに返答せず、一旦間を置いた。
しばし、答え方について戸惑ってしまう。
どう言えば良いのだろうか・・・
別にやましいことはないのだけど、一言で説明するとなると中々難しい。
単純に、神話のアイテムに興味があったから参加したというのもあるし、
神の酒とその落札者の情報について掴みに来たというのもある。
ここは両方述べるのが正解だろうか。
考えをまとめると、僕はゆっくりと言葉を発した。
「・・・目的は大きく分けて2つありました」
「1つ目は神話のアイテムの観覧の為です」
「魔法技師にとって神話のアイテムは特別なもの・・・」
「人生を掛けてまで創作の目標にするくらいの魔法アイテムです」
「それを目にする機会があるなら、どんな遠方な地からでも駆けつけて見たいと思うものです」
「自分の今後の創作の糧にするためにも、何としてもこのオークションには参加したいと思っておりました。・・・これが第1の理由です」
「・・・なるほど。それは最もな理由だな」
僕の言葉にクラウディア団長は頷く。
彼女としてもこれは予想される回答だったのだろう。
「では、もう一つの理由とは?」
素直に1つ目の理由に納得した彼女は、続きを促してきた。
「・・・はい。2つ目は個人的な理由になるのですが、ロットNo.3のネクタルの情報を得るためです・・・」
「ネクタルの特徴、構造、落札者やその金額等、ネクタルに関するあらゆる情報を集めようと思っておりました」
「財力があれば本当は落札して手に入れたいところですが、自分にはその力はありません・・・」
「しかし、僕は魔法技師です。ゆくゆくはそれを自力で創作できるのではないかという淡い期待がありました」
「ネクタルを直に触って調査する機会があれば、創作の大きなヒントになります」
「そのため、その望みを絶たないためにも何としても落札者の情報だけは得たいと思っておりました・・・」
「落札者がどこの誰かが分かれば、いずれ面会するチャンスができます」
「交渉次第ではネクタルに触れられる機会も得られるんじゃないかと思っていました・・・」
ピクッ!
僕の言葉にクラウディア団長が反応する。
「・・・まさかとは思うが、君が2階席に忍び込んだ理由はこれか?」
眉をひそめながら彼女は僕に問いただした。
「・・・はい。ネクタルの落札者を追いかけていたのが理由です」
「2階席がVIP待遇の方達しか入れないことは知っていましたが、ここで彼を逃したらネクタルに辿り着くのが困難になると思ったのです」
「ただの一般人で、お金もない僕には彼のことを知るすべはほとんどありません。あの時は無我夢中でした・・・」
「・・・王妹殿下や騎士団の方には本当に悪いことをしたと思っております。申し訳ありませんでした・・・・・」
そう言って、僕はクラウディア団長に深々と頭を下げた。
今述べたことは全て僕の本心だ。
その証拠にミーミルの泉は無色透明のままだった。
クラウディア団長はそんな僕をじっと見ていた。
「・・・・顔を上げなさい、エノク」
しばし間をおいた後、彼女の声で僕は顔を上げる。
「経緯はとりあえず分かった」
「水鏡は透明のままだし、君が本心で語っていることも私は理解したつもりだ」
クラウディア団長のその言葉で、僕は胸を撫で下ろす。
少しとは言え、彼女がこちらの事情を理解してくれたのは僕にとっても喜ばしいことだった。
「しかし、まだ理解できないことがある・・・君の動機だ」
「なぜネクタルをそこまで求める?伝説の魔法アイテムなら他にもいくらでもあるだろう?」
「そこまで執着する理由はなんだ?」
・・・やはりその質問が来たか。
少し晴れたと思った心に再び暗雲が立ち込み始める。
・・・正直、答えにくい質問だった。
動機を全て話すとなると、レイナのことを喋らざるを得なくなる。
なんとか、彼女のことはボカして話すしかない・・・
僕は言葉少なげに口を開く。
「・・・・・それは、僕の”友達”を助けるためだからです」
「ネクタルは僕の友達を助けるキーになるかもしれないアイテムなんです」
「だから求めました」
もちろんこれも僕の本心だった。
嘘など言っていない。
だが、水鏡は僕の中の隠したい何かを見逃してはくれなかった・・・
先程まで無色透明だった泉が濁り始め、血のような赤い池へと姿を変えていく。
ミーミルの泉は言葉の真偽ではなく、対象者の心のゆらぎから嘘を暴く魔道具だ。
この場合「友達を助けたい」という僕の言葉は”真”ではあるが、隠したい心の動揺があることに違いはなかった。
「・・・濁ったな」
クラウディア団長は呟くように僕に言った。
「エノク。残念だが、きちんとここは確認させて貰う必要があるようだ」
「・・・・・」
その言葉に僕は無言で視線を下げる。
「”友達を助けたいからネクタルを求めた”、この言葉は嘘か?」
「・・・・違います!それは本心です。嘘ではありません!」
僕はかぶりを振って、彼女の質問を否定した。
これだけは絶対に嘘ではないし、後ろめたいことはなにもない。
それは断言できる。
クラウディア団長はじっと僕を見据えた後、再度ミーミルの泉に視線を移した。
泉は僕の言葉に反応するかのように、また無色透明に戻っていく。
「・・・ふむ。動機については本当のようだな」
「とすると、君には隠したいことがあるという事だ」
「・・・その”友達”とは誰だ?」
「・・・・・」
クラウディア団長の詰問が僕の脳天に突き刺さる。
思考がぐるぐると巡るが、何も答えは導き出せない。
下手なことを言って、レイナの事がバレでもしたら彼女を危険に晒す可能性がある。
それだけは・・・・絶対に駄目だ!
「・・・・・言えません」
僕は短くそう返すしかなかった。
その言葉に反応するようにミーミルの泉は再び赤く濁っていく。
クラウディア団長の目つきも先程よりも険しくなった。
背後でサラサラとペンを走らせる筆記の音がやけに大きく感じてしまう。
彼女は僕の返答に「ふう」と一息つくと、諭すように語りかけてきた。
「エノク・・・先程も言ったが、嘘や隠し事は君の為にならないぞ」
「君の処遇についてはまだ決めていないが、もし裁判になった時、裁判官や陪審員の心象を悪くしてしまう」
「行動に不適切なところこそあったが、発言を聞く限り私は君が悪人ではないと確信している」
「”友を助けたい”というその動機は非常に純粋なものだ。変に隠し事をして心象を悪くするな」
「・・・改めてもう一度聞くぞ。その友達とはだれだ?」
クラウディア団長は再度僕に問いかけてきた。
ただ、彼女は僕に尋問をすると同時に、罪を軽くしようと便宜を図ってくれているようにも感じる。
クラウディア団長の正確な年齢は分からないけど、エレノア殿下と同じように20代前半といったところ。
そんなに僕と年が離れているわけでもないけど、今の彼女の言葉からは親心の様な人情が感じられた。
・・・だけど、それでも僕はこう言わざるを得なかった。
「・・・・ごめんなさい・・・言えません・・・」
消え入りそうな声で返答する。
彼女に拒絶の言葉を口にするのは心苦しかった。
「・・・どうしてもか?」
「・・・どうしてもです」
「・・・・ふぅ。そうか・・・」
僕の拒絶の意思が固いことを悟ると、クラウディア団長は一息ついて目を閉じた。
僕の処遇について考えているのだろうか・・・?
目を閉じた彼女の真意を伺うことは出来なかった。
「・・・・・」
「・・・・・」
沈黙の時間が取調室に流れる。
「・・・・ふっ・・・やはり・・・ブラッドフォード殿の弟子だな・・・」
しばしの間をおいた後、彼女は何かをぼそりと呟いた。
その声はあまりにも小さく僕は聞き取れなかったが、なぜか彼女は少し笑っているようにも見える。
彼女は目を開いて僕を見据えると、話を続けてきた。
「・・・君の意志が固いことは分かった」
「私も引き下がるわけにはいかないが、”先の事件”に君の友人が関係があるかどうかさえ知れれば問題ない」
「質問の仕方を変えることにしよう」
「・・・・・」
コクッ
僕は無言で頷く。
「君のその友人は王族・・・もしくは王宮の関係者か?」
「・・・いいえ」
僕は首を振って否定する。
「では、その友人はいずれかの領邦の貴族に従事し王宮に出入りする可能性はあるか?」
「・・・いいえ。それもありません」
「ふむ。では、その者は王家に対して反逆を企てたり、テロリズムを実行するような危険思想の持ち主だったりするか?」
「・・・ありえません!彼女はそんな事をする人じゃないですし、物理的にも実行することは不可能です!」
・・・ってしまった!
つい返答に熱くなって「彼女」という言葉を僕は口にしてしまう。
「ふっ、分かりやすいな君は・・・」
「だが、おかげで君の友人が”シロ”だということは確信できたよ」
そう言うと、クラウディア団長はちらりとミーミルの泉の方に目を向ける。
それに釣られ僕も泉を注視すると、一点の濁りもない無色透明な水になっていた・・・
「友人についての質問はここまでとしよう」
「は、はい・・・・」
は・・・恥ずかしい・・・・
穴があったら入りたかった・・・
「・・・さて、”先の事件”についても話しておこうか」
「君の嫌疑は既にほとんど晴れているが、念のために最後確認させてもらうことがある」
「・・・分かりました」
”先の事件”というのは先程話題に出た、王家に反逆を企てたり、テロリズムに関係したことだろう。
クラウディア団長は僕に一言断りを入れると、先の事件についての説明を始めた。
「・・・つい先刻のことだ」
「王宮の兵舎内で大規模な爆発が続けざまに発生した。棟がいくつも崩壊し、負傷者も数十人規模で出ている災害とも呼べるものだ」
やはり・・・そういう事が起こっていたのか・・・
彼女の言葉を聞いて、僕は得心する。
先程の揺れの正体はその爆発騒ぎによるものだったのだ。
「現在、カーラの騎士・兵の半数以上が動員されて、消火・救助活動の実施と王宮に厳戒態勢が敷かれている」
「爆発の原因については未だ分かっていない」
「魔力結晶体の暴走による事故の可能性もないわけではないが・・・」
「ここまで大規模かつ、複数の棟で爆発が起こっている事を考えると、人為的な事件である可能性が高い」
「・・・君はこの事件についてなにか心当たりはあるか?」
「・・・いいえ、詳しいことはなにも知りません」
「2階席にいた人達の噂話や、上方で揺れのようなものを感じたので何か起こっているとは感じていました」
僕は首を振りながらそう答えた。
「そうか・・・では、改めて確認する」
「君はこの爆発事件の犯行には関係ないし、その犯人についても全く知らない」
「この認識で間違いないな?」
「はい。間違いありません」
今度は頷きながら答える。
僕の回答にクラウディア団長も相槌を打った。
「・・・分かった。では、これが最後の質問だ」
「エノク・フランベルジュ!」
「君はカーラの臣民として、エレオノーラ王妹殿下に忠誠を誓えるか?」
クラウディア団長は両の目でしっかりと僕を見据えてくると、一際張った声で最後の問いかけをしてきた。
それに応えるように、僕は姿勢を正して、彼女に視線を合わした。
「・・・エレノア様はカーラの英雄であり、王国の誇りです!」
「僕の忠誠を王家と王妹殿下に捧げる事を誓います!!」
力強く彼女の問いに返答する。
嘘偽りなく、迷いのない、僕の心からの言葉だった。
ミーミルの泉は見るまでもなかった。
「・・・よろしい。これにて尋問は終了する」
クラウディア団長は僕の力強い返答に再度頷くと、尋問の終了を宣言した。
彼女のその言葉で僕はどっと力が抜ける。
終わった・・・・
とりあえず、僕の目的はクラウディア団長に正確に伝えることは出来たと思う。
まだ僕の身柄がどうなるかは分からないけど・・・少なくとも「国家反逆罪」なんて大それた容疑の誤解は解けたはずだ。
・・・後は彼女の裁定を待つだけだ。
「さて・・・君の処遇についてだが・・・・」
・・・きた。
僕の身体に一瞬緊張感が走る・・・が、それを告げようとしているクラウディア団長は僕の方を見ていなかった。
彼女は下を向いて手さげ袋からごそごそと何かを取り出していた。
「それを告げる前に一息つくことにしよう」
「君はここまで話詰めだったし、喉が渇いた事だろう?」
「は、はい?」
ゴトッ
僕の目の前にガラスのコップが置かれる。
クラウディア団長は手さげ袋からさらに瓶を取り出した。
テーブルの上にそれを置くと、蓋を開けてコップに注いでいく。
トクトクトク・・・・
赤い液体が目の前のコップに満たされていった。
訳が分からない・・・
いきなりどうしたんだ彼女は?
先程まで漂っていた緊張感が嘘のような光景だった。
一応これは休憩ということなんだろうか・・・?
「エノク。まずはそれを飲んで喉を潤せ」
「話はそれからにしよう」
「は、はい・・・」
彼女の意図はよくわからないが、喉が渇いていたのは事実だった。
僕は手錠が掛けられた両手でコップを覆うように持つと、中の液体を喉に流し込んでいった。
!!!?
「ゴホッ・・・ゴホッ・・」
・・・しかし、予想もしてなかった液体の正体に思わずむせてしまう。
「あ、あの・・・これって!」
「ブドウジュースだ」
いや、ワインでしょ、これ!?
しかも、かなりこれ度数がキツイ。
「・・・では、喉が潤ったところで君の処遇を告げよう」
「どうやら君は酔っているようだな・・・しかもかなり泥酔していると見える」
「・・・はっ、はぁ?」
いきなりとんでもない事を言われだしたので僕は混乱した。
だが、彼女はそんな僕のことをお構いなしに話を続けてくる。
「今宵はカーラ王国上げての祭典ゆえ、浮かれるものも多くてなぁ」
「何人もの客が酒によって暴れて、君のように連行されてきているのだ。・・・私達も正直困っている」
「・・・だが、せっかくの慶事なのに厳罰は似つかわしくない」
「そこで王妹殿下は”大赦”を出され、本日の祭典で酒に酔って暴れた者達の罪を許すというお達しが来ている」
「エレオノーラ王妹殿下に感謝することだな、エノク・フランベルジュ」
「・・・・・あ」
彼女の思わぬ言葉に僕はポカーンと口を開けてしまう。
そういうことか・・・!
「流石に暴れる者を会場に戻すわけにはいかないので、牢には勾留させてもらうが、酔いが覚めるであろう翌朝には君は解放だ」
「・・・以上。この決定に不満があるのなら、異議申し立てや弁明を受け付けるが、何かあるかエノク?」
「・・・・い・・いえ!ありません!!」
僕はぶんぶんと頭を振った。
・・・涙が出そうだった。
ただでは出られないと思っていたのに、こんな形にしてくれるなんて・・・・
「あ、あの!ありがとうございます。クラウディア団長!」
「この恩は忘れません!」
僕はクラウディア団長に深々と頭を下げた。
彼女には感謝してもしきれない。
「礼にはおよばない。私は手続きに従って処理しただけのことだ」
「これからは飲酒をほどほどにすることだな、エノク・フランベルジュ」
「泥酔して貴賓席に迷い込むなど、正直目も当てられない行為だぞ・・・」
彼女は何食わぬ顔でこちらに振り返ると、何の事だと言わんばかりに、しれっとそう答えてきた。
そして、今度は書記官の方に振り向くと小声で彼に話しかける。
「・・・・という筋書きだ、”キース”。後は任せたぞ」
「・・・了解です、団長。お任せを」
クラウディア団長の言葉に書記官の男の人はニヤリと笑った。
団長って言っているから彼も騎士団の一員なのかもしれない。
「グレースはいるか!!」
クラウディア団長が扉の外に向かって名前を叫ぶと、ガチャリと扉が開いた。
「はっ!お呼びでしょうか?隊長」
「うむ・・・・この酔っぱらいの護送を頼む」
そう言ってクラウディア団長は僕を指差す。
「はっ・・・?」
グレースさんのポカーンとした顔が印象的だった・・・・
・
・
・
・
・
「よぉし!いくわよぉーー」
コクッ
リリーが私の言葉に頷くと、それを合図に私は小さく振りかぶった。
「おりゃ」
ヒュン
”丸めた消しゴムのカス”を、彼女に投げつける。
ひょい!
しかし、私の投げた消しゴムのボールは彼女にあっさりと避けられてしまう。
私とリリーの距離は50cm程。
人間の大きさに換算すれば僅か5メートルの距離だ。
野球のピッチャーマウンドからホームベースまで18メートルあることを考えると、目と鼻の先の距離ということになる。
そんな近距離から投げたにもかかわらず、リリーはその場からほとんど身体を動かすことはなかった。
もちろん彼女は飛んでなどいない。
僅かに軌道から横に逸れるだけの最小限の動きでボールをかわしたのだ。
リリーの見切りの上手さに私は素直に感心してしまう。
ほう・・・やるじゃない。
尻もち付くくらい大げさに避けるものかと思ったけど、余裕でかわすとわね。
まあ・・・私も全力で投げたわけじゃないけど。
「やるじゃない!リリー」
「でも、今のは小手調べよ。次はちょっと本気だすからね?」
コクッ
私の言葉に頷くと、リリーは”クイクイッ”と手のひらを内側にあおった。
どうやら私を挑発しているようだ。
「かかってこいよ、カモーン!」とでも言っているのだろう。
こいつめぇ・・・見てなさいよ。
心のなかに小さな火が付いた私は、再度消しゴムのカスを拾ってボール状に丸めた。
そしてリリーの方に向き直ると、先程より大きく振りかぶる。
「おりゃぁ!」
ビュン!
ムキになって今度は割と本気で投げつけてみる。
ひょい
・・・だが、投げたボールはあっさりまた避けられてしまった。
しかも、やはりリリーの動きには一切無駄がない。
フフン!
彼女の口角がニヤリと上がる。
その態度に私の心はメラメラと燃え上がった。
ふふ、リリー・・・私を本気にさせてしまったわね・・・!
その余裕綽々の態度崩してやろうじゃないの!
彼女を「ギャフン」と言わせてやるべく、私は消しゴムのカスをいくつも”コネ”始めた。
リリーにボールを当てる作戦を考えながら、作ったボールを足元に用意していく。
なぜこんな状況になったのか?
それはリリーがその能力を発動した後の話になる。
彼女が青白い光の衣をその身にまとうと、ふわりと机に上に舞い降りてきた。
その状態で彼女は消しゴムのカスを指差した後、文字を書いて私に言ってきたのだ。
”それを・わたしに・あててみな。できる・もんならな”、・・・と。
そんな彼女の挑戦状に応えるべく、私は必死になってボールを作っているという訳だ。
全力で投げたとしても、1つだったら先程のように避けられてしまうかもしれない。
・・・だったら数で勝負だ。
波状攻撃で畳み掛けるように投げていけば、リリーもいずれ体勢を崩す時が来るだろう。
その時こそ、奴の最期よ・・・ふふふふ。
私の足元にはいつの間にか無数のゴムボールが山のように積まれていた。
勝利を確信して、私は心のなかでニヤリと笑う。
・・・準備は整った。
「さ~て準備は整ったわよ、リリー。今度こそ本気の本気!」
「覚悟はいい?」
挑戦状を叩き返す勢いで、彼女に向かって人差し指を突き立てて言ってやった。
クイクイッ!!
こいつぅ・・・先程よりも大袈裟にあおりやがって・・・
だったらやってやろうじゃないの・・・!
このレイナ様の放つ魔球の凄さ思い知るがいいわ!!
「おら!おら!おら!」
足元のボールを次から次へと掴み、マシンガンのように射出していく。
ひょい!ひょい!ひょい!
・・・だが、リリーはまたしてもボールを華麗にかわしていく。
その動きに一糸の乱れも感じられない。
それはまさに風に舞う木の葉のように・・・
ステップを軽やかに踏むリリーの姿はまるで踊っているようだった。
「まだまだぁ!!」
「おら!おら!おら!おら!おら!おら!」
ひょい!ひょい!ひょい!ひょい!ひょい!ひょい!
・・・・くっ!この・・・!!
なんで当たらないのよ!?
どれだけボールを投げ続けてもリリーにはカスりもしないし、体勢を崩す気配すら見えなかった。
「だったら・・・・これなら・・・どうだぁ!!」
私は複数の消しゴムボールを右手の指の隙間にはめていくと、これまで以上に思いっきり振りかぶった。
弓引く弦のように大きく身体をしならせると、振り下ろした足の先に全体重を移動させ、ボールを一斉に解き放った!!
「おりゃあああああああぁぁぁ!!!!!」
渾身の掛け声とともに、放たれたボール達はショットガンから打ち出された弾のようにリリーに襲いかかった!
1つのボールなら軌道が読まれるかもしれないが、複数同時なら軌道はバラバラだし予測もつきにくい。
加えて、この至近距離での投擲だ。
いくらなんでもあたるだろう・・・と私は思っていた。
・・・しかし、ここでリリーは予想もつかない動きをして私を愕然とさせる。
ひょいーーーん!!!
彼女は上体を大きく後ろにそらすと、羽をパタパタと震わせて逆ブリッジの体勢を取った。
そして、ホバークラフトの要領で身体を器用に浮揚させながら、襲いかかってきたボールを全て紙一重でかわしたのだ!
絶対に当たると思っていた私は流石にこれには驚きを隠せなかった。
「・・・う・・・嘘でしょう!?」
今の避けられるの・・・?
マ○リックスか、おのれは!
確かにボールの進行方向に対して表面積をなくせば、被弾率は減らせるかもしれない。
でも、予測困難な動きをする複数のボールを全て躱すなんて神業としか思えなかった・・・
私は茫然自失の状態でその場に立ち尽くしてしまう。
・・・テクテクテク
身体を起こしたリリーは何を思ったのか、鉛筆と紙を取ってきて私の前にやってきた。
そして、私の前に「わさーー!」と紙を大げさに広げた彼女は、何かの文字を書き始める。
カキカキカキ・・・・
え・・・なによ・・・?
リリーの突然の行動に困惑する私だったが、とりあえず彼女の書いた文字を読んでみた。
”ど・やぁ~~”
・・・・・
「いちいち、そんなの書かんでええわ!!」
リリーはこれでもかというくらい口角を上げて、勝ち誇った笑みを浮かべてきた。
さらには、吹けもしないのに、ピーピーと口笛を吹く真似をしてごきげんな様子をアピールしてくる。
「・・・・♪」
くぅ~・・・調子に乗りやがって・・・悔すぃ・・・
不敵な笑みの用法第3段階を相手に決められるとは、私の一生の不覚・・・
・・・・・
・・・・だけど。
私は今しがた神業を披露してくれたリリーの姿を眺める。
「・・・・?」
私の視線を受けてリリーは不思議そうな顔をするが、構える様子は見られない。
既に消しゴムボールの残弾は尽きているし、こちらの戦意が消失していることは彼女にも分かっているんだろう。
勝負は残念ながらこちらの負けだ。
だが、私には悔しさと同時に嬉しさもこみ上げてきていた。
悔しい・・・んだけど、これは凄いわ・・・
妖精の能力は運を上げる事だとは聞いていたけど、これはそんな生易しいものじゃない・・・
運は運でもこれは”運命を読む”というべき能力だろう。
・・・ハッキリ言ってこれは”未来予知”だ!
でないと、リリーの今の動きに説明がつかない。
・・・私と彼女の距離が人間の感覚で5メートルくらいしかない。
この距離で、ボールの軌道を見てから避けるなんて普通の人間には無理だ。
常人を超える動体視力を持っていなければそんな芸当はできない。
・・・先程の状況を私は思い返す。
リリーはこちらが投擲すると”全く同時”に避けるポイントへ動いていた。
こちらがボールをリリースした時点で、この子は”ボールがどこを過ぎるのか知っていた”ような振る舞いをしたのだ。
彼女には数瞬先の未来が見えていたとしか思えない・・・
まだ、能力の一端しか見ていないにも関わらず、その凄さに私は身震いしてしまう。
・・・これをもし覚えられたら、間違いなく今後の生存戦略における強力な武器になる・・・そう確信出来るほどだった。
「リリー、私の負けよ」
「凄いわね・・・感心しちゃったわよ、貴方の能力」
「良いもん見せてもらったわ。ありがとう!」
「・・・・!?」
私は素直に敗北宣言をすると、お礼を言うと同時に握手を求めた。
予想外の私の対応にリリーは面食らったような顔をする。
私が素直に敗北を認めて、お礼を言ったのが意外だったのかしら・・・・失礼なやつめ・・・
「ほら、お互いの健闘を称え合う為の握手よ!」
「いいゲームや、いい対戦をした後にはやるもんなのよ!」
「リリーも手を出しなさい!」
「・・・・・」
私が差し出した手をしばらく呆然とリリーは見ていた。
やがて観念してプイッと横を向くと、おずおずと手を差し出してきた。
・・・ツンデレか、おのれは。
私は再度それを自分からガシッと掴みに行く。
ギュ!
「ありがとーう!」
ブンブンブンブン!!!
友誼をしっかりと分かち合うべく、大きく何回も振る。
目を細めてやはりダルそうな顔をするリリー。
青白い衣を纏う彼女からは淡い光が放たれ、月明かりと共に部屋を幻想的に照らしていた。
・・・だが、私達の状況はすぐに一変する。
青とは真逆の光が部屋にもたらされたので、私は”その異変”にすぐに気づくことになる・・・
「な・・・なに、あれ・・・」
王宮の空を焦がす赤い光・・・
そして、オークションが行われている会館から、巨大な人影が出てくるのを私は目撃したのだ・・・・
・
・
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・
To Be Continued・・・
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