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第21話 波乱万丈!?お城訪問・後編
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「共犯ってなんですか!ルイス様ったら、シャーロット様に変なことさしたら許さないんですからね!!」
「これまで再三シャーロットを振り回し奇行に走っていた君がそれを言うのか……!」
ルイス様の愚痴めいたつぶやきに、ライアン様が一瞬吹き出した。
「くっ……!まぁ落ち着きたまえ、ミーシャ嬢。“共犯”と言うのは言葉のアヤだよ、何も本気で罪を犯そうと言う訳じゃない」
「それはそうでしょうけども!!」
だったら何なのさ!何させる気なわけ!?と怒る私にハーブティーを勧めつつ、さっきまでよりいくらか抑えた声音でライアン様が口を開く。
「ミーシャ嬢は、今の王室に陛下の子が何名いるか知っているかい?」
「それくらいは元平民でもしってますよ。全部で4人ですよね。ライアン様が長子で、弟君である第2王子殿下と、あとは王女様がお二人。ライアン様は王妃様の実子で、他の皆様はそれぞれ異なる側妃様のお子様だとか」
「へぇ、意外ときちんと理解しているじゃないか。偉い偉い。ご褒美をあげよう」
「……馬鹿にしているな?」
ついタメ口で言い返せば、ライアン様は『理解したのか、賢い賢い』なんてあっけらかんと笑った。失礼しちゃうわ、プンプン!
……にしても、ゲームの頃は気にしてなかったけど現実になると生々しいな。オンソレイエ王室。何より王様の節操なしめ!
「まぁ、父上が人様よりいくらか女性関係に対して幅が広いことはさて置き」
「心読まれた!?」
「……いつまで漫才をしているんだ君達は。つまり王の子供が多いと言う事は、それだけ国内の勢力争いが起きやすいと言う事。だからこそ陛下は、ライアン殿下の地位を盤石にするべく国内一の地位を誇るハワード公爵家を後ろ盾に選んだんだ。これは“シャーロット”が殿下と婚姻を結ばなかった場合でも変わらない。ハワード公爵家は今後も全面的に殿下の補佐として力を尽くす所存だ」
この勢力争いのゴタゴタは確かにゲームでも見たので納得して頷く。
「話はわかりました。けどそれで何で私がルイス様の共犯者云々の話になるんです?」
「実は最近、側妃の中で一番高位のご実家を持たれているシルビア様が、ライアン殿下とシャーロットの対抗馬として、息子であるレイヴン第2王子殿下と彼の婚約者であるローズマリー嬢に王太子教育、並びに王妃教育を受けさせようと画策していてね」
「はい!?そんなんアリなんですか!!?」
「ナシに決まっているだろう。だがやり口が巧妙で、罪を問おうにもなかなか尻尾が掴めない。そこで急遽だが、シャーロットがこれまで受けていた王妃教育を更に早めることになった。同時に、僕も殿下の補佐官として特殊な教育を受ける事になる」
「…………結婚しないのに?」
「殿下の立場の安定のためには、対外的に“国内一優秀な令嬢が王太子の婚約者である”ことが大事なんだ。別に実際婚約しなくても、学んだことは本人や殿下の力になるだろうしね」
『知識や教養は社交界の一番の武器です。学ぶ力は何よりも強いと心得なさい』
真剣なルイス様の話を聞いて、以前シャーロット様に言われたその言葉を思い出した。席を外したシャーロット様は今頃、王妃様直々に指導を受けているんだろうか。
「しかし、実際教育範囲を増やそうと思うと今のままではあまりに時間が足りない。何せ内容が内容だからね。そこで、シャーロットは毎月偶数の日に、ルイスには毎月奇数の日に、王宮の隠し部屋で特別講義を受けてもらうことにしたんだ。この話は既にシャーロットも把握しているよ」
「そんなことしたらシャーロット様、出席日数不足で進級出来なくなっちゃうじゃないですか!?今後は月の半分しか学校来れないってことになりますよね!!?」
「いいや、シャーロットはきちんと学園を卒業する」
パニクる私を落ち着けるように落とされた、ルイス様のシンプルな一言。もしや、と、妙に確信めいた予感がした。
「そのもしやだ、ミーシャ嬢。今後、シャーロットが講義日の際には僕が彼女に扮して学園に赴き授業を受ける。看破されるようなヘマはしないつもりだが、念の為君にはそのサポートをしてもらうよ?」
「やっぱりーっ!」
予感が見事大当たり!ほーらねーっ、思った通りだった!私の勘は当たるんだよ昔から!なんてったってウリ坊だもの!!
「それって結局、不正なんではないんですか……!」
「シャーロットも僕も既に学園の3年分の教育内容は把握している。元々学園には学習ではなく人脈を増やす為に通っていたんだ、問題はない」
「はぁ、そうですか……」
って淡々と言い切られたって流されてたまるか!代理出席ってやっぱまずいよね!?
「ち、ちょっと考えさせ……っ!?」
逃げるために私が椅子を下げるが早いか、ライアン様が背後からガッシリ背もたれを押さえ込む。正面では髪を解いたルイス様がそっと私の両手を握りしめた。
「お願いだ、ミーシャ嬢。決して迷惑はかけないから、僕達だけの秘密だと思って内緒にしてくれない?今僕が国に帰ってきていると知られてしまうのは困るんだ」
「~~っ、美形と言う名の暴力!!」
あーっ、普段クールなイケメンの憂いた表情が良心に刺さる!!いや、でもなぁ……
「ぐぬぬぬ……」
「……駄目?」
こてん、とルイス様が小首を傾げたその瞬間、私のなけなしの知性は爆散した。
「不束か者ですが精一杯尽くさせて頂きます!!!!」
「よし、交渉成立だね」
「自分で提案しておいて何だけれど、我が親友ながら恐いな……」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「はぁ、何とか上手く行ったね」
「そうかい?ルイスにしてはかなり力技だったような気がするが……」
「彼女に下手な小細工は通用しないと“シャーロット”で散々学んだからね。ライアン、ブラウス取って」
久方ぶりの男性服を脱ぎ捨て気怠げに投げ出されたその片手に、ライアンがはいはいと柔らかな生地のブラウスを投げる。受け取ったそれに袖を通しながら、ルイスがぼやく。
「それにしても、帰宅の為に着替えなければならないとは言え何故君の部屋なんだ」
「仕方がないだろう?王宮内で侍従が全く立ち入らない場所と言うのはそうないし、何ならここが一番安全だと思うけれど?」
ライアンは王太子だ。彼の部屋に足を踏み入れる資格を持つ者はほんの一握りしか居ない。
納得したルイスは嘆息し、慣れた手付きで“シャーロット”の身なりを整えていく。
「いくら手慣れて居るとは言え大した手際だね。女性の衣装と言うのは男の物より随分と複雑だろうに。このブラウスなんて一体どこから留め具をはめているんだい?」
ヴィッグもつけてあとは胸元のリボンを結ぶのみとなった辺りで、ライアンが興味深そうにブラウスの胸元を掴んだ。そんな事を聞いてどうするんだと思いつつ、まぁ答えるくらいはとルイスも己の衣装に添えられたライアンの手を掴んで誘導する。
「別に見た目ほど複雑ではないさ。まず胸の少し上にある隠し留め具から………」
「シャーロット様~~っ!お支度終わりましたか?一緒に帰りま……っ!!?」
どうしてもシャーロットと帰りたいと客間で待機していたが待ちきれなくなったミーシャは、野生の勘で当てたライアンの部屋に飛び込んだ。そこに居た目当て通りの相手と、彼女のブラウスの留め具を外している(ように見える)ライアンの姿に静止したミーシャは、数秒と経たずして顔を真っ赤にした。
「しっ…………失礼致しましたーーっっっ!!!」
「何なんだ、一体……。ハッ!こら、淑女が廊下を走ってはなりませんと何度も申し上げて居るでしょう!?」
「そんな事を言っている場合かい!?彼女、明らかに誤解しているだろう!待ってくれミーシャ嬢、勘違いだ!!」
その指摘にルイスは第三者から見た先程の自分達の姿がどう見えるかを思い返し、やってしまったと頭を抱える。
直ぐ様我に返った二人は急いでミーシャを追ったが既に門前にフォーサイス伯爵家の馬車の姿は無く、“シャーロット”とライアンの誤解でも“ルイス”とライアンとの誤解でも、どちらにせよ厄介な予感しかしないと男二人はため息をこぼすのだった。
「王子サマの身辺を探ろうと思ってちょっと潜入してみたら、何なのあの猪みたいな娘。ちょっと面白いじゃん」
庭師に扮したとある少年のそんな呟きには気づかずに。
「これまで再三シャーロットを振り回し奇行に走っていた君がそれを言うのか……!」
ルイス様の愚痴めいたつぶやきに、ライアン様が一瞬吹き出した。
「くっ……!まぁ落ち着きたまえ、ミーシャ嬢。“共犯”と言うのは言葉のアヤだよ、何も本気で罪を犯そうと言う訳じゃない」
「それはそうでしょうけども!!」
だったら何なのさ!何させる気なわけ!?と怒る私にハーブティーを勧めつつ、さっきまでよりいくらか抑えた声音でライアン様が口を開く。
「ミーシャ嬢は、今の王室に陛下の子が何名いるか知っているかい?」
「それくらいは元平民でもしってますよ。全部で4人ですよね。ライアン様が長子で、弟君である第2王子殿下と、あとは王女様がお二人。ライアン様は王妃様の実子で、他の皆様はそれぞれ異なる側妃様のお子様だとか」
「へぇ、意外ときちんと理解しているじゃないか。偉い偉い。ご褒美をあげよう」
「……馬鹿にしているな?」
ついタメ口で言い返せば、ライアン様は『理解したのか、賢い賢い』なんてあっけらかんと笑った。失礼しちゃうわ、プンプン!
……にしても、ゲームの頃は気にしてなかったけど現実になると生々しいな。オンソレイエ王室。何より王様の節操なしめ!
「まぁ、父上が人様よりいくらか女性関係に対して幅が広いことはさて置き」
「心読まれた!?」
「……いつまで漫才をしているんだ君達は。つまり王の子供が多いと言う事は、それだけ国内の勢力争いが起きやすいと言う事。だからこそ陛下は、ライアン殿下の地位を盤石にするべく国内一の地位を誇るハワード公爵家を後ろ盾に選んだんだ。これは“シャーロット”が殿下と婚姻を結ばなかった場合でも変わらない。ハワード公爵家は今後も全面的に殿下の補佐として力を尽くす所存だ」
この勢力争いのゴタゴタは確かにゲームでも見たので納得して頷く。
「話はわかりました。けどそれで何で私がルイス様の共犯者云々の話になるんです?」
「実は最近、側妃の中で一番高位のご実家を持たれているシルビア様が、ライアン殿下とシャーロットの対抗馬として、息子であるレイヴン第2王子殿下と彼の婚約者であるローズマリー嬢に王太子教育、並びに王妃教育を受けさせようと画策していてね」
「はい!?そんなんアリなんですか!!?」
「ナシに決まっているだろう。だがやり口が巧妙で、罪を問おうにもなかなか尻尾が掴めない。そこで急遽だが、シャーロットがこれまで受けていた王妃教育を更に早めることになった。同時に、僕も殿下の補佐官として特殊な教育を受ける事になる」
「…………結婚しないのに?」
「殿下の立場の安定のためには、対外的に“国内一優秀な令嬢が王太子の婚約者である”ことが大事なんだ。別に実際婚約しなくても、学んだことは本人や殿下の力になるだろうしね」
『知識や教養は社交界の一番の武器です。学ぶ力は何よりも強いと心得なさい』
真剣なルイス様の話を聞いて、以前シャーロット様に言われたその言葉を思い出した。席を外したシャーロット様は今頃、王妃様直々に指導を受けているんだろうか。
「しかし、実際教育範囲を増やそうと思うと今のままではあまりに時間が足りない。何せ内容が内容だからね。そこで、シャーロットは毎月偶数の日に、ルイスには毎月奇数の日に、王宮の隠し部屋で特別講義を受けてもらうことにしたんだ。この話は既にシャーロットも把握しているよ」
「そんなことしたらシャーロット様、出席日数不足で進級出来なくなっちゃうじゃないですか!?今後は月の半分しか学校来れないってことになりますよね!!?」
「いいや、シャーロットはきちんと学園を卒業する」
パニクる私を落ち着けるように落とされた、ルイス様のシンプルな一言。もしや、と、妙に確信めいた予感がした。
「そのもしやだ、ミーシャ嬢。今後、シャーロットが講義日の際には僕が彼女に扮して学園に赴き授業を受ける。看破されるようなヘマはしないつもりだが、念の為君にはそのサポートをしてもらうよ?」
「やっぱりーっ!」
予感が見事大当たり!ほーらねーっ、思った通りだった!私の勘は当たるんだよ昔から!なんてったってウリ坊だもの!!
「それって結局、不正なんではないんですか……!」
「シャーロットも僕も既に学園の3年分の教育内容は把握している。元々学園には学習ではなく人脈を増やす為に通っていたんだ、問題はない」
「はぁ、そうですか……」
って淡々と言い切られたって流されてたまるか!代理出席ってやっぱまずいよね!?
「ち、ちょっと考えさせ……っ!?」
逃げるために私が椅子を下げるが早いか、ライアン様が背後からガッシリ背もたれを押さえ込む。正面では髪を解いたルイス様がそっと私の両手を握りしめた。
「お願いだ、ミーシャ嬢。決して迷惑はかけないから、僕達だけの秘密だと思って内緒にしてくれない?今僕が国に帰ってきていると知られてしまうのは困るんだ」
「~~っ、美形と言う名の暴力!!」
あーっ、普段クールなイケメンの憂いた表情が良心に刺さる!!いや、でもなぁ……
「ぐぬぬぬ……」
「……駄目?」
こてん、とルイス様が小首を傾げたその瞬間、私のなけなしの知性は爆散した。
「不束か者ですが精一杯尽くさせて頂きます!!!!」
「よし、交渉成立だね」
「自分で提案しておいて何だけれど、我が親友ながら恐いな……」
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「はぁ、何とか上手く行ったね」
「そうかい?ルイスにしてはかなり力技だったような気がするが……」
「彼女に下手な小細工は通用しないと“シャーロット”で散々学んだからね。ライアン、ブラウス取って」
久方ぶりの男性服を脱ぎ捨て気怠げに投げ出されたその片手に、ライアンがはいはいと柔らかな生地のブラウスを投げる。受け取ったそれに袖を通しながら、ルイスがぼやく。
「それにしても、帰宅の為に着替えなければならないとは言え何故君の部屋なんだ」
「仕方がないだろう?王宮内で侍従が全く立ち入らない場所と言うのはそうないし、何ならここが一番安全だと思うけれど?」
ライアンは王太子だ。彼の部屋に足を踏み入れる資格を持つ者はほんの一握りしか居ない。
納得したルイスは嘆息し、慣れた手付きで“シャーロット”の身なりを整えていく。
「いくら手慣れて居るとは言え大した手際だね。女性の衣装と言うのは男の物より随分と複雑だろうに。このブラウスなんて一体どこから留め具をはめているんだい?」
ヴィッグもつけてあとは胸元のリボンを結ぶのみとなった辺りで、ライアンが興味深そうにブラウスの胸元を掴んだ。そんな事を聞いてどうするんだと思いつつ、まぁ答えるくらいはとルイスも己の衣装に添えられたライアンの手を掴んで誘導する。
「別に見た目ほど複雑ではないさ。まず胸の少し上にある隠し留め具から………」
「シャーロット様~~っ!お支度終わりましたか?一緒に帰りま……っ!!?」
どうしてもシャーロットと帰りたいと客間で待機していたが待ちきれなくなったミーシャは、野生の勘で当てたライアンの部屋に飛び込んだ。そこに居た目当て通りの相手と、彼女のブラウスの留め具を外している(ように見える)ライアンの姿に静止したミーシャは、数秒と経たずして顔を真っ赤にした。
「しっ…………失礼致しましたーーっっっ!!!」
「何なんだ、一体……。ハッ!こら、淑女が廊下を走ってはなりませんと何度も申し上げて居るでしょう!?」
「そんな事を言っている場合かい!?彼女、明らかに誤解しているだろう!待ってくれミーシャ嬢、勘違いだ!!」
その指摘にルイスは第三者から見た先程の自分達の姿がどう見えるかを思い返し、やってしまったと頭を抱える。
直ぐ様我に返った二人は急いでミーシャを追ったが既に門前にフォーサイス伯爵家の馬車の姿は無く、“シャーロット”とライアンの誤解でも“ルイス”とライアンとの誤解でも、どちらにせよ厄介な予感しかしないと男二人はため息をこぼすのだった。
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