フィクサーへファントムからの言伝を

ぽよクリット

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プロローグ2

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「ひぃっ!いやっ!!来ないでぇ!!!食べないで!!」

 食べられると思った広沢は泣きながら命乞いをし、逃れようのない死を覚悟もしていた。 

 だが、そんな彼女の恐怖とは裏腹にしばらくしても、ワイバーンはただ制止して一向に広沢を食べる気配を見せない。

 ワイバーンはただ何をするでもなく、その鋭い瞳でジッと見つめ続け、まるで品定めをするかのように彼女を見つめるだけだ。

「……??」

広沢は今起きている状況が全く理解できずに混乱する。

だがワイバーンはそんな彼女の瞳を更に詳しく覗こうと更に顔を近づけ静止する。

 そして何故か白鷺和臣はずっとその様を緊張しく見守っていたのだ
が、

ついに彼女らに近寄り、従えいるワイバーンに向かって口を開いた。

「おい……?タマ……。どう?僕は良い筋だと思うけど…。ほら…彼女はあっちでまだ眠ってる、2人と違って、こうやって3時間で起きてるし…。ほら……。魔力の質は申し分ないと思うけど……。」

 白鷺和臣の口調はなぜだか不安気で眉間には皺が寄っていた。

 主人に声を掛けられたワイバーンは一瞬だけ白鷺和臣の方を見たが、すぐにまた視線を戻すと、次は広沢凛の顔をペロッと舐めた。

「ひゃあっ!?」

突然のことで広沢は思わず悲鳴を上げる。ワイバーンの目は依然として、広沢の事を何か確かめるかのように
じっと見つめ続けていたが、やがて突然その顔は白鷺和臣に向き、ワイバーンは何かを訴えるような素振りを見せる。

「はぁ……。わかったわかった。もういいよ。戻ってこい。」

するとワイバーンは白鷺和臣の言葉に納得したように頷くと、くるりと身体を反転させ、広沢を解放した後、主人の元へと戻る。

「え?あの……?」

解放されて自由になった広沢は呆気に取られて困惑する。

すると今度は、ワイバーンは主人の指示を待たずに自ら進んで膝を折り、正座のような姿勢をとる。 

「よし……合格みたいだね……。流石だ」

白鷺和臣は満足げな表情を浮かべると、安堵からかホッと胸を撫で下ろす。

「じゃあそのワイバーン…。私のこと…。食べない?」

「あぁ…食べない」

和臣はゆっくりと首を横に振る。

「私を食べようとしたんじゃ……?」

広沢は震える声でそう尋ねた。すると、白鷺和臣は隣で大人しく座るワイバーンを撫でながら答えた。

「場合によってはね…。だが君はタマの選定に合格した。君は実に良い
魔力を持ってる……。将来有望なサモナーになる可能性が高いだろう…。僕と同様か或はそれよりも」

「私が……サモナーに……?」
広沢はまだ状況を飲み込めていなかった。
そもそも目の前の男は何を目的にこんなことをしているのかさえわからないままなのだ。

「そうだ……。僕はね……。今の日本を変えたいと思っているんだ……。よりもっとサモナーのために。そのためにはまず国を変える必要があると思っている。そのための計画の一端として君たちに協力してもらいたいんだよ。」

白鷺和臣は淡々と語り出した。
その内容は確かに、この男の行動が何かしらの大義の元で起こされるものだと言うこと示していた。

しかし、だからと言って簡単に協力するなどとは言えないし、そもそもこの男は危険だ。

 現に自分を攫って監禁しているのだ。だが幸いにも今この男は自分を殺すつもりはないようだ、だがもし協力を拒めば殺される事は確実だと直感的に感じていた。

 広沢凛の心は揺れていた。この男に従うべきか、拒むべきか、なかなか答えを出せずに黙り込んでいた。

 その時ふと、近くでまだ眠っている自分と同じ用に運び込まれた高校生カップルが目に入った。

そして思わずその災いの口を開いてしまったのだ。

「ねぇ…白鷺さん…。あの…あの二人も今から私と同じ選定を?」

 広沢は咄嗟に出た言葉がそれだった。そしてこの言葉がこの後悲劇を招くとは、彼女は思わなかった。

 白鷺和臣はその言葉に一瞬ピクリと反応すると、広沢の方をチラリとみて、少し間を置いた後に返答した。

「あぁ…あれらはその必要ない。だってまだ眠ってんだもん」

「え?」

広沢は白鷺の言葉の意味を理解できず思わず首を傾げると、白鷺はポケットから小瓶を取り出して口を開いた。

「これは強力な睡眠薬でね…。これを使って君たちを攫ったんだが…。本来これは効き目が10時間も続くんだ。だが君は、そこの2人と違って3時間で起きた。それは君に宿った魔力が強力で、肉体にまで良い影響を与えたからだ…」

白鷺はへたり込む、広沢の前に立ち更に言葉を続ける。

「君…。今まであまり風邪とかひかなかっただろ?それは君の中の魔力が強力で肉体がその恩恵を受けていたからなんだ。今は抵抗力程度だけど…。君はすぐに人並み外れた身体能力を獲得するよ?その可能性を見せたからこそあんなに時間をかけてタマが君を選定したんだ…。あの二人とは違う」

 白鷺和臣の話を理解するにつれ、徐々に広沢の顔は青ざめていった。

「じゃ…じゃああの二人は…。」

 広沢は眠っている二人に目を向けて震えながら尋ねる。すると平然とした顔で白鷺はワイバーンに命令を出した。

「あぁ…タマ…。殺れ」

「ちょっと待ッ!!」

 広沢の必死の静止も虚しく、ワイバーンは咆哮を上げながら大きく口を開き、黄金の炎が放たれた。

その業火は瞬く間に高校生カップル2人を包み込むと、一瞬で骨一つ残らず灰に変えてしまった。

広沢はその光景を目の当たりにして絶句し、絶望に打ちひしがれた。

「酷いことを……ッ!」

広沢は涙を浮かべながら睨みつけるが、当の白鷺和臣は全く悪びれもせず涼しい顔をしながら、なんと今だに燃え盛っている炎に近寄り、その炎の一部を平気な顔で手に取る。

 そして廃ビルの壁に近寄り、なんと手に取った小さな黄金の炎状の魔力を壁に当てると、たちまちそこから黄金の蝶の紋様が現れた。

 広沢凛は、その一連の異常さに怯えながら泣き崩れる。そして声を震わせながら白鷺和臣を睨みつけた。

「誘拐に…殺人…。いくら…サモナーでも犯罪よ?ただではすみません」

 その言葉は怯えながらも、かろうじて絞り出した声だった。

だがその言葉を聞いた白鷺はまるでその言葉を待っていましたといった様子で目を見開き声を張り上げこう言った。

「そう!!犯罪だ!サモナーでもね!それが問題なんだよ!」

「?何を言っているんですか?こんな犯罪行為しておいて今更……。」

広沢は混乱しながらも必死に抗議するが、白鷺和臣は一切怯まず、むしろ得意げに言葉を続けた。

「いいかい?それが間違いなんだ…。発見当初、神聖視されていた僕たちサモナーは近年どんどん、魔力宿さない凡人と等しく扱われるようになった。

 ノーマルと同様に待遇を受け、また同様に裁かれる。

唾棄すべき、異常な思い上がりだ!!

僕は伝えなければならない。サモナーこそ絶対な存在だってこうして動いている」

 白鷺和臣の狂気的な演説を聞き、広沢凛は言葉を失い、ただその場にへたり込んだまま呆然とする。

 するとそんな広沢凛に白鷺和臣は手を差し出した。

 「君は僕の選別に通った。僕が君を攫う前、君は呟いていただろう?いつか僕のように、亡魔を操るサモナーになりたいと…。

 叶えてやる。僕が君にふさわしい強力な亡魔との契約を助け、君にサモナーが操る魔術の真髄を、教える」

 「う…うぅ」

 手を差し出され、言葉をまくし立てられる中、広沢凛はただ怯え、混乱し泣き崩れることしか出来ない。

 それでもお構い無しに白鷺和臣は言葉を綴る。

 その様ははまさしく、彼の独善的かつ狂信的な正義感によるものだった。

「君も同じ志を持って欲しい……。我々こそが真なるサモナーとなるべきなんだよ」

和臣は広沢の手を強く握る。そしてその手に更に力を込め、訴えかけるように言う。

その表情は真剣そのもので、本気でそう思っている事が伺えた。

 すると広沢は小さな言葉を震わせながら心の底から絞り出した。

「う……。うぅ…。嫌……!貴方のような人殺しについていくなんて……」

広沢は震えながらも、キッパリと言い放つ。

 するとそれを聞いた和臣は少し驚いた顔をしたあと、落胆したように肩を竦める。

「そうか……残念だよ。君なら将来僕以上のサモナー…。いや…もしかしたらあの少年。『フィクサー』にすら近い存在になれると思ったのに…。タマ!ヤれ」

 白鷺和臣は心底残念そうに舌打ちをして、広沢の手を解放した後、後ろに下がり、ワイバーンの方を見て指を鳴らす。

その直後ワイバーンは咆哮を上げると、広沢の方に勢いよく駆け出して行く。

「きゃあっ!?」

広沢は悲鳴を上げ、身を守ろうとするも、ワイバーンの持つ圧倒的な速度を前に為すすべなく、壁際に追い込まれる。
そしてその勢いのまま、ワイバーンは広沢を壁に突き飛ばした。

ドゴッ!!!

「うっ……!くっ……」
鈍い音を立て壁に叩きつけられると同時に、背中に激しい衝撃が走る。

「ああっ……!」

あまりの激痛に息が出来なくなり、苦痛の声を漏らしてその場にうずくまる。

「やめて!殺さないで!」

広沢は悲痛な叫びを上げて助けを求める。

しかしワイバーンは、ワイバーンは構わず、口を開け、黄金の炎を吐き出す準備を始めた。

「嫌だ……誰か助けて!お母さん!お父さん!!怖いよぉ!!」

 広沢は涙を流しながら叫ぶが誰も助けに来てくれない。当然だ。ここは廃ビルの一室なのだから。

 やがてワイバーンは一際大きく息を吸い込み、口の中からはバチバチと
音を鳴らし、金色に輝く炎が大きな龍の口内に現れる。

「死にたくないぃ!いやぁぁあ!」

 広沢が逃れられぬ死に打ちひしがれていたその時だった。

「待てタマ!!……聞こえるか?」

白鷺和臣は、今に広沢を焼き殺そうとしていたワイバーンを制止させると、目を閉じて耳を澄ます。

 やがて、和臣の耳に聞こえて来たのは、この廃ビル内を高速移動する足音だった。

 やがてその音は広沢にも聞こえ、それは急速にこちらに迫って来ているようだった。

「誰…?警察が助けに来たの?」
「いや…警察ではない…。『メイジガード』だが似たようなものだ」

 広沢はワイバーンの足元で声を震わせながら、希望を口にする。

 すると白鷺和臣は目を開けニヤリと笑う。

 その瞬間だった。突如ワイバーンの喉から刃物を擦り合わせたような甲高い音が鳴り、同時に広沢の視界が紫色の閃光に包まれた。

「グギャァァァァア!!!」

鼓膜を突き破るような断末魔の叫びと共に、ワイバーンはドスンと地響きを立て、その巨体を地に沈めた。

「きゃっ!?」

広沢は一瞬何が起こったのか理解できなかったが、気づけば目の前には先程まで広沢を殺そうとしていたワイバーンの姿は無く、代わりに自分の身体が、誰かに抱えられていると気づく。

 顔を上げるとそこには、紫色の雷光のようなエネルギーを纏う奇妙な形状の刃物を片手に握った自分と同い年位の美少女の姿があった。

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