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プロローグ3
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少女は肩ほどの長さの髪、淡く鮮やかなピンク色の髪で黒い花の髪飾りがその綺麗な髪を奇妙だが美しい形で整えていた。
身長は高く170センチ以上あり、体格もかなり良い方だ。そしての上からでもわかるほど豊満なバストとくびれたウエストにすらりと伸びた美脚はあまりにも魅力的で、見る者を魅了してしまう程の美しさを誇っていた。
だがその顔立ちから年齢は15.6と推測でき、まだ幼さが残るもの、凜とした顔つきをしており、非常に整った容姿をしている。
しかし彼女の外見で最も特徴的なのはその服装で、まるで軍服のような、それでいて、警察官や或は要人専用の警護士ような、明らかに公権力に属する者であることを示し、更にその中でも何かしら特別な役割を持った人物で在ることを匂わせるかのような高級な制服を着用していた。
または彼女のその制服の上から高い背にすらオーバーサイズで、夜の暗闇に溶けてしまいそうな、真っ黒な長い丈のコートを身に纏っており、スカートは膝上のミニスカタイプで太ももが大きく露出しており、黒のストッキングとブーツを着用していた。
「大丈夫?怪我はない?!」
少女は深刻そうな表情で広沢の顔を確認すると開口一番に安否の確認をする。
その声色は、少女が広沢に向けた、純粋な心配が現れたのような、焦燥に満ちたものだったが、その声は透き通る様に綺麗で聞き心地が良く、とても安心感を与えた。
「うん……大丈夫……」
広沢は涙ぐんで答え、その様子を見た少女は広沢を抱えたまま、安堵の息を漏らす。
広沢は地面に倒れ伏すワイバーンに視線を移す。
ワイバーンの喉元には深い切り傷があり、血飛沫が飛び散っていた。
よく見るとその傷跡は剣の様なもので切られた跡のようだ。
つまり彼女は何らかの武器を使い、一瞬にしてワイバーンを切り裂いたのだ。
それを理解した瞬間、広沢は戦慄した。
何故ならワイバーンの肉が焦げ臭い匂いを発しながら煙を上げているにも関わらず、少女の着ている制服には一切の焦げ目も無く、汚れひとつ付いていないのである。
その事実が示す事実はただ一つ、彼女が持つ実力が桁違いであることを証明している。
「あなたは……一体」
広沢は戸惑いながら口を開くと、彼女は答える。
「私は公安所属のメイジガード、桜庭玲奈です。遅くなってごめんね、怖かったよね」
桜庭玲奈と名乗った少女は優しい声色で語りかけると、そっと広沢を抱きしめた。
柔らかく暖かい感触に包まれる。そして鼻孔をくすぐる甘い香りが漂ってくる。
「う……ううん……ありがとう……。あの私……広沢凛。助けに来てくれて本当にありがとう」
広沢は照れたように目を伏せながら言った。
桜庭玲奈はそれを聞いて安心したようで、ニコリと微笑む。
そして次に地面に倒れ伏すワイバーンに視線を移す。
「広沢さん…立てる?」
「うん……」
桜庭は広沢を抱き抱えたまま立ち上がる。
そして広沢を離してから、ゆっくりと手を離した。
その一方でそんな二人の様子をニヤついた顔で見ながら、傷ついたワイバーンに歩み寄る存在がいた。
そう白鷺和臣だ。
「あらら…。タマ…。痛そう…。不意を打たれるなんて、お互いにらしくない事しちゃったなぁ」
白鷺和臣は自らに従えているワイバーンの頭を撫でた。ワイバーンに付けられた傷は明らかな深手だったが、凄まじい自然治癒力でみるみるうちに完治していった。
やがて完全に傷が癒えると、その様子を見た白鷺和臣は立ち上がり、ニヤついた目線で桜庭玲奈の方へ視線を向ける。
「いや…まさか君たちが出てくるとはね…。国家機関メイジガード……。
まぁ正確には、国内のサモナー及びその他特殊能力者の凶悪犯罪者、まさに僕のようなサモナーを取り締まっている政府直轄秘密防衛機関だよね?よく僕を裁きに来てくれたね、公安のエリートさん」
白鷺和臣は皮肉交じりに嫌味を言うが、桜庭玲奈は顔色一つ変えず冷静な態度で答える。
「えぇ……これも仕事ですから。よくご存じですね」
桜庭玲奈の表情には先ほどまで、広沢凛に見せていた柔らかい表情はなく、鋭い目つきでこちらを見据えている。
「そりゃもちろん知ってるさ……。僕は君たちのような組織が大っ嫌いだからね…。いやいやこれは誤解を招く言い方だ…すまない。君たちが嫌いな訳では無い。君たちようなサモナーを従えている、政府のあの汚い手口が嫌いなんだ!!」
桜庭玲奈は怒気のこもった白鷺和臣の言葉を聞くと僅かに眉を動かす。
「家族を…おっと…。失言だったかな?」
白鷺和臣がそう言った直後、桜庭は素早く手に握られていた、奇妙な形状のブレードを振るい、目にも止まらぬ速さで斬撃を放つ。
その一撃は非常に素早かったが、その動きにはどこか迷いが見えた。
「さすがはエリート様……。動きが素人じゃない」
桜庭の攻撃を避けつつ、感心したように呟く。
「何…今の何も見えなかった。」
広沢は唖然としながらつぶやく。
「すごい…これがサモナーの力?」
広沢は目の前で繰り広げられている戦いを見て思わず息を呑む。
それは最早人間が出せるスピードをはるかに超えていた。
特に桜庭玲奈の動きは凄まじかった。
桜庭の振るうブレードが放つ斬撃は速すぎて見えないほどだった。
しかもその攻撃範囲も広い。
時には敵の死角から、時には死角外から襲いかかる。
まるで舞を踊るかのように美しく可憐な動きであったが、その動作一つ一つには殺気に満ち溢れている。
対する白鷺は、巧みなステップで剣技を交わしながら、指先からあの黄金の炎のような魔力を牽制射ちするが、桜庭はそれを軽々と躱していく。
「くぅ~!やっぱりやるね。流石はメイジガードだ」
白鷺は攻防の最中泣き言を漏らす。実際拮抗しているように見えたが、実は劣勢を強いられているのは白鷺の方であった。
桜庭はこの高速攻防の中で置いて汗一つかかず、呼吸すら乱れてなかった。
一方で白鷺はこの攻防の中、深手こそ負わないものの、防ぎきれない、桜庭の剣撃により、確実に体力を奪われていく。
そして遂に二人の攻防の均衡が崩れる。
以外にもその膠着を破り仕掛けたのは桜庭の方だった。
というのも今まで細かく、堅実な剣技で圧倒していた桜庭が、突然大振りの上段斬りを仕掛けて来たのだ。
「隙ありッ!」
白鷺は好機と見て桜庭の渾身の一撃をヒラリと交わすと、大技の反動で体勢の崩れた桜庭に対して、すかさず魔力で桜庭を焼き払うべく、掌を向ける。
「もらったァ!」
「いいえ、貰いません」
桜庭は大振りによって体勢を崩し、隙を晒したように見えたがそれは巧妙な彼女の罠だった。
桜庭は逆にこの瞬間を狙っていたかのように白鷺の攻撃をひらりと受け流すと、カウンター気味に白鷺の腹に回し蹴りを叩き込んだ。
「ぐぅ!?」
「やった!」
白鷺は強烈な一撃を喰らい、うめき声をあげるながら、地面に転がり込む。
それをみた広沢は歓喜の声を上げた。
「はぁ… ここまでやるとは…」
白鷺はヨレヨレと立ち上がると、服についた土埃を払う。
「まだやりますか?正直これ以上の戦いは無意味だと思いますけど……」
桜庭は構えを解くことなく、そう告げる。
「そうだね……確かに無意味だ……。
君が強すぎる。この強さははっきり言って反則的すぎる。
これでは勝負にならないよ……。
でも…それは僕だけならね…。」
白鷺がそう返した次の瞬間だった。突如桜庭の横から凄まじい速さで突進してくる影が現れる。
その影はワイバーンで、その鋭い牙で桜庭に飛びかかる。
「なっ!?いつの間に!?クッ!」
桜庭は慌てて、紙一重のところでかわすが、バランスを崩してしまい、よろめいてしまう。
その隙を逃さず、ワイバーンはすぐさま追撃を仕掛けてくる。
「しまった!」
桜庭は咄嵯に身を翻したが間に合わず、右腕を噛みつかれてしまう。
「グッ!あああぁっ!」
苦悶の表情を浮かべながら悲鳴を上げる。
ワイバーンはそのまま桜庭の腕を咥えたまま離さない。
「桜庭さんっ!きゃぁぁぁぁぁっ!」
その様子を見ていた広沢は悲鳴をあげる。
しかし、絶体絶命かのように見えた桜庭の目は死んでいなかった。
その瞳の奥には確固たる意志の光が灯っていた。
「かかったわね」
桜庭は小声で呟くと、左腕で握っていたブレードの刃が液体のよう変形する。
すると次の瞬間、白銀色に輝いていた刀身の色が紫に染まり、それと同時に眩い輝きを放ったかと思うと、一瞬にして辺り一面を覆い尽くすほどの紫色の雷光が廃ビルの一室を包み込んだ。
「グエエエッ!」
と言うおびただしい悲鳴を上げて、桜庭の腕に噛みついていたワイバーンは雷光を上げて白鷺のそばまで吹っ飛んだ。
「うむ…。紫の雷のようなものを内包し…。液状にも固形の刃物にもなる性質…。それが君の魔力か…」
白鷺は自身の亡霊であるワイバーンのことなんて気にまとめず、関心した様子で、桜庭を観察するように見ている。
一方で桜庭は右腕の負傷も感じさせないほど、しっかりした動きで刀を構え直す。
しかし桜庭はその時、廃ビルの壁に描かれた、人骨の灰で描かれた紋章に気づく。
「あれは……?もしかして……蝶の紋章…。まさか貴方が…!」
「桜庭さん…?」
広沢は桜庭の様子を見て困惑した。
なぜなら、白鷺があの高校生2人を殺した時に描いた蝶の紋章を見た桜庭は、突然怯えるように震えだしたからだ。
「桜庭さんどうしたの?!大丈夫?」
広沢は心配そうに声をかける。が桜庭は何も答えない。そんな彼女の様子に困惑するのは、何も広沢だけではなかった。
「あら…。突然どうしたの?メイジガード」
白鷺は桜庭から伝わる、先ほどとは比べ物にならない、異様な緊張感に疑問を呈する。
すると桜庭は震える手で、獲物を白鷺に向けて重々しく口を開いた。
「殺人現場に蝶の紋章…。やはり貴方が…【フィクサー】なの?」
静まった緊張感の中で、桜庭の怯えが現れたのような震える声が並びく。
しかし暫しの沈黙の後に、桜庭の問いかけを聞いた白鷺の頬が膨らんだかと思うと、彼は突然吹き出したかのように大きな笑い声を轟かせはじめた。
「アッハッハ!アヒャヒャ!僕が?僕があの【フィクサー】?!そんなわけないだろ!冗談きついなぁ~。」
白鷺和臣は高笑いしながら否定する。 その様子を見た桜庭は訝しげに目を細める。
白鷺はひとしきり笑い終えると再び口を開いた。
「ふぅ…。僕あのフィクサーなら、君をもう7万回は殺せてる。彼はこの世でもっとも恐ろしい存在だ」
白鷺和臣は恍惚とした表情で語る。
「この世で最強のサモナー。いや…サモナーを超え、全てを超えし者。僕たちサモナーが、魔力を宿さない人々とは別の高次元にいるように、フィクサーは僕たちのようなサモナーなんかの更に上を行く別次元の存在なんだよ」
「フィクサー…。」
白鷺の言葉を聞いた広沢は、桜庭が怯える理由を理解した。フィクサー。その名は知らない者がいない程の伝説級の脅威だった。
「そう貴方は…ともかく違うのね…。」
桜庭は落胆したような…それでいて何処か安心したような声色を漏らした。 それに対して白鷺は再びニヤニヤと笑みを浮かべて口を開いた。
「例えば、僕がフィクサーだとして…。君はまさかフィクサーかもしれないこの僕を一人で相手するつもりで来たの?あんなの彼以外の全生命体で挑んでも勝率0パーセントなのに?はっきり言って無謀も良いとこだよ…。」
「貴方には関係ありません」
「ここまでしてフィクサーとの一騎打ちに固執するわけは…。ははーん。家族とフィクサーの首が引き換えか…。やっぱり屑だねぇ国は」
「………。」
白鷺の言葉に図星を疲れたのか、桜庭は黙り込んだ。
「なるほどねぇ……。フィクサーの存在は厄介だからね。気持ちはわからなくもないけどね」
白鷺は顎に手を当てて考えるそぶりを見せる。
「あのさぁ…。フィクサーがこんなところにいるわけないだろ?彼が居場所は【花宇町】だよ…。だって普通に考えてそうじゃない? あの街は世界一金持ちが集まり、暮らす子供たちは何故か皆魔力を持ってる、まさにフィクサーが根城にするに相応しい特別な街だ」
「え?」
白鷺の言葉に広沢は驚愕する。花宇町の名前は世界一優雅で穏やかな街として知られ、誰もが一度は行ってみたいと思う理想郷だからだ。その街にそんな危ない存在が潜んで居るとは当然思わない。
しかしこの場でそう思っているのは広沢凛だけだった。
「真っ先に調査しました!!けれど花宇町の何処を探しても彼の痕跡は何処にも…」
「君たちに見つけられるわけないでしょ?彼を」
屈辱的に言葉を遮られた、桜庭は悔しそうに唇を噛み締める。
その様子を見た白鷺はニヤニヤとした笑みのまま二人に背を向けた。
「安心しなよ…彼は再び動き出す。きっと尻尾を出すよ…。花宇町に彼はいるよ」
「待って!何処へいくの?!」
二人に背を向け、夜風が通る廃ビルの崩れた窓へ歩き出す白鷺を桜庭は呼び止めた。
「興が削がれた…。今日のところは御暇するよ…。」
「逃がすとでも?」
桜庭は背を向けて撤退しようとする白鷺に容赦なく剣を振り下ろすも、その切っ先が届く前に、広沢の悲鳴が上がる。
「キャァァァァッ!!熱い!!体が燃えるぅぅ!!!」
「広沢さん!?おのれっ!」
桜庭は急いで振り向き、広沢の元へ向かうと、白鷺の燃え盛る黄金の魔力苦しむ広沢を抱きしめながら、即座にその魔力を振り払い、彼女の身体を消火させた。
「広沢さん!大丈夫ですか!?」
「はい……何とか……」
広沢は桜庭の問いかけに息を切らしながら返事をした。
桜庭は安堵するように息をつき、その後周囲を見渡した。
既に白鷺の姿はなく、またワイバーンの姿も消えていた。
周囲には戦いの跡、焼けた鉄骨やコンクリート片などが散乱し、まるで爆心地のようだった。
「…逃げられたか。仕方ありません」
桜庭は肩を落として、小窓の残骸から夜空を見上げた。
「花宇町…。やはりフィクサーはそこに居る」
身長は高く170センチ以上あり、体格もかなり良い方だ。そしての上からでもわかるほど豊満なバストとくびれたウエストにすらりと伸びた美脚はあまりにも魅力的で、見る者を魅了してしまう程の美しさを誇っていた。
だがその顔立ちから年齢は15.6と推測でき、まだ幼さが残るもの、凜とした顔つきをしており、非常に整った容姿をしている。
しかし彼女の外見で最も特徴的なのはその服装で、まるで軍服のような、それでいて、警察官や或は要人専用の警護士ような、明らかに公権力に属する者であることを示し、更にその中でも何かしら特別な役割を持った人物で在ることを匂わせるかのような高級な制服を着用していた。
または彼女のその制服の上から高い背にすらオーバーサイズで、夜の暗闇に溶けてしまいそうな、真っ黒な長い丈のコートを身に纏っており、スカートは膝上のミニスカタイプで太ももが大きく露出しており、黒のストッキングとブーツを着用していた。
「大丈夫?怪我はない?!」
少女は深刻そうな表情で広沢の顔を確認すると開口一番に安否の確認をする。
その声色は、少女が広沢に向けた、純粋な心配が現れたのような、焦燥に満ちたものだったが、その声は透き通る様に綺麗で聞き心地が良く、とても安心感を与えた。
「うん……大丈夫……」
広沢は涙ぐんで答え、その様子を見た少女は広沢を抱えたまま、安堵の息を漏らす。
広沢は地面に倒れ伏すワイバーンに視線を移す。
ワイバーンの喉元には深い切り傷があり、血飛沫が飛び散っていた。
よく見るとその傷跡は剣の様なもので切られた跡のようだ。
つまり彼女は何らかの武器を使い、一瞬にしてワイバーンを切り裂いたのだ。
それを理解した瞬間、広沢は戦慄した。
何故ならワイバーンの肉が焦げ臭い匂いを発しながら煙を上げているにも関わらず、少女の着ている制服には一切の焦げ目も無く、汚れひとつ付いていないのである。
その事実が示す事実はただ一つ、彼女が持つ実力が桁違いであることを証明している。
「あなたは……一体」
広沢は戸惑いながら口を開くと、彼女は答える。
「私は公安所属のメイジガード、桜庭玲奈です。遅くなってごめんね、怖かったよね」
桜庭玲奈と名乗った少女は優しい声色で語りかけると、そっと広沢を抱きしめた。
柔らかく暖かい感触に包まれる。そして鼻孔をくすぐる甘い香りが漂ってくる。
「う……ううん……ありがとう……。あの私……広沢凛。助けに来てくれて本当にありがとう」
広沢は照れたように目を伏せながら言った。
桜庭玲奈はそれを聞いて安心したようで、ニコリと微笑む。
そして次に地面に倒れ伏すワイバーンに視線を移す。
「広沢さん…立てる?」
「うん……」
桜庭は広沢を抱き抱えたまま立ち上がる。
そして広沢を離してから、ゆっくりと手を離した。
その一方でそんな二人の様子をニヤついた顔で見ながら、傷ついたワイバーンに歩み寄る存在がいた。
そう白鷺和臣だ。
「あらら…。タマ…。痛そう…。不意を打たれるなんて、お互いにらしくない事しちゃったなぁ」
白鷺和臣は自らに従えているワイバーンの頭を撫でた。ワイバーンに付けられた傷は明らかな深手だったが、凄まじい自然治癒力でみるみるうちに完治していった。
やがて完全に傷が癒えると、その様子を見た白鷺和臣は立ち上がり、ニヤついた目線で桜庭玲奈の方へ視線を向ける。
「いや…まさか君たちが出てくるとはね…。国家機関メイジガード……。
まぁ正確には、国内のサモナー及びその他特殊能力者の凶悪犯罪者、まさに僕のようなサモナーを取り締まっている政府直轄秘密防衛機関だよね?よく僕を裁きに来てくれたね、公安のエリートさん」
白鷺和臣は皮肉交じりに嫌味を言うが、桜庭玲奈は顔色一つ変えず冷静な態度で答える。
「えぇ……これも仕事ですから。よくご存じですね」
桜庭玲奈の表情には先ほどまで、広沢凛に見せていた柔らかい表情はなく、鋭い目つきでこちらを見据えている。
「そりゃもちろん知ってるさ……。僕は君たちのような組織が大っ嫌いだからね…。いやいやこれは誤解を招く言い方だ…すまない。君たちが嫌いな訳では無い。君たちようなサモナーを従えている、政府のあの汚い手口が嫌いなんだ!!」
桜庭玲奈は怒気のこもった白鷺和臣の言葉を聞くと僅かに眉を動かす。
「家族を…おっと…。失言だったかな?」
白鷺和臣がそう言った直後、桜庭は素早く手に握られていた、奇妙な形状のブレードを振るい、目にも止まらぬ速さで斬撃を放つ。
その一撃は非常に素早かったが、その動きにはどこか迷いが見えた。
「さすがはエリート様……。動きが素人じゃない」
桜庭の攻撃を避けつつ、感心したように呟く。
「何…今の何も見えなかった。」
広沢は唖然としながらつぶやく。
「すごい…これがサモナーの力?」
広沢は目の前で繰り広げられている戦いを見て思わず息を呑む。
それは最早人間が出せるスピードをはるかに超えていた。
特に桜庭玲奈の動きは凄まじかった。
桜庭の振るうブレードが放つ斬撃は速すぎて見えないほどだった。
しかもその攻撃範囲も広い。
時には敵の死角から、時には死角外から襲いかかる。
まるで舞を踊るかのように美しく可憐な動きであったが、その動作一つ一つには殺気に満ち溢れている。
対する白鷺は、巧みなステップで剣技を交わしながら、指先からあの黄金の炎のような魔力を牽制射ちするが、桜庭はそれを軽々と躱していく。
「くぅ~!やっぱりやるね。流石はメイジガードだ」
白鷺は攻防の最中泣き言を漏らす。実際拮抗しているように見えたが、実は劣勢を強いられているのは白鷺の方であった。
桜庭はこの高速攻防の中で置いて汗一つかかず、呼吸すら乱れてなかった。
一方で白鷺はこの攻防の中、深手こそ負わないものの、防ぎきれない、桜庭の剣撃により、確実に体力を奪われていく。
そして遂に二人の攻防の均衡が崩れる。
以外にもその膠着を破り仕掛けたのは桜庭の方だった。
というのも今まで細かく、堅実な剣技で圧倒していた桜庭が、突然大振りの上段斬りを仕掛けて来たのだ。
「隙ありッ!」
白鷺は好機と見て桜庭の渾身の一撃をヒラリと交わすと、大技の反動で体勢の崩れた桜庭に対して、すかさず魔力で桜庭を焼き払うべく、掌を向ける。
「もらったァ!」
「いいえ、貰いません」
桜庭は大振りによって体勢を崩し、隙を晒したように見えたがそれは巧妙な彼女の罠だった。
桜庭は逆にこの瞬間を狙っていたかのように白鷺の攻撃をひらりと受け流すと、カウンター気味に白鷺の腹に回し蹴りを叩き込んだ。
「ぐぅ!?」
「やった!」
白鷺は強烈な一撃を喰らい、うめき声をあげるながら、地面に転がり込む。
それをみた広沢は歓喜の声を上げた。
「はぁ… ここまでやるとは…」
白鷺はヨレヨレと立ち上がると、服についた土埃を払う。
「まだやりますか?正直これ以上の戦いは無意味だと思いますけど……」
桜庭は構えを解くことなく、そう告げる。
「そうだね……確かに無意味だ……。
君が強すぎる。この強さははっきり言って反則的すぎる。
これでは勝負にならないよ……。
でも…それは僕だけならね…。」
白鷺がそう返した次の瞬間だった。突如桜庭の横から凄まじい速さで突進してくる影が現れる。
その影はワイバーンで、その鋭い牙で桜庭に飛びかかる。
「なっ!?いつの間に!?クッ!」
桜庭は慌てて、紙一重のところでかわすが、バランスを崩してしまい、よろめいてしまう。
その隙を逃さず、ワイバーンはすぐさま追撃を仕掛けてくる。
「しまった!」
桜庭は咄嵯に身を翻したが間に合わず、右腕を噛みつかれてしまう。
「グッ!あああぁっ!」
苦悶の表情を浮かべながら悲鳴を上げる。
ワイバーンはそのまま桜庭の腕を咥えたまま離さない。
「桜庭さんっ!きゃぁぁぁぁぁっ!」
その様子を見ていた広沢は悲鳴をあげる。
しかし、絶体絶命かのように見えた桜庭の目は死んでいなかった。
その瞳の奥には確固たる意志の光が灯っていた。
「かかったわね」
桜庭は小声で呟くと、左腕で握っていたブレードの刃が液体のよう変形する。
すると次の瞬間、白銀色に輝いていた刀身の色が紫に染まり、それと同時に眩い輝きを放ったかと思うと、一瞬にして辺り一面を覆い尽くすほどの紫色の雷光が廃ビルの一室を包み込んだ。
「グエエエッ!」
と言うおびただしい悲鳴を上げて、桜庭の腕に噛みついていたワイバーンは雷光を上げて白鷺のそばまで吹っ飛んだ。
「うむ…。紫の雷のようなものを内包し…。液状にも固形の刃物にもなる性質…。それが君の魔力か…」
白鷺は自身の亡霊であるワイバーンのことなんて気にまとめず、関心した様子で、桜庭を観察するように見ている。
一方で桜庭は右腕の負傷も感じさせないほど、しっかりした動きで刀を構え直す。
しかし桜庭はその時、廃ビルの壁に描かれた、人骨の灰で描かれた紋章に気づく。
「あれは……?もしかして……蝶の紋章…。まさか貴方が…!」
「桜庭さん…?」
広沢は桜庭の様子を見て困惑した。
なぜなら、白鷺があの高校生2人を殺した時に描いた蝶の紋章を見た桜庭は、突然怯えるように震えだしたからだ。
「桜庭さんどうしたの?!大丈夫?」
広沢は心配そうに声をかける。が桜庭は何も答えない。そんな彼女の様子に困惑するのは、何も広沢だけではなかった。
「あら…。突然どうしたの?メイジガード」
白鷺は桜庭から伝わる、先ほどとは比べ物にならない、異様な緊張感に疑問を呈する。
すると桜庭は震える手で、獲物を白鷺に向けて重々しく口を開いた。
「殺人現場に蝶の紋章…。やはり貴方が…【フィクサー】なの?」
静まった緊張感の中で、桜庭の怯えが現れたのような震える声が並びく。
しかし暫しの沈黙の後に、桜庭の問いかけを聞いた白鷺の頬が膨らんだかと思うと、彼は突然吹き出したかのように大きな笑い声を轟かせはじめた。
「アッハッハ!アヒャヒャ!僕が?僕があの【フィクサー】?!そんなわけないだろ!冗談きついなぁ~。」
白鷺和臣は高笑いしながら否定する。 その様子を見た桜庭は訝しげに目を細める。
白鷺はひとしきり笑い終えると再び口を開いた。
「ふぅ…。僕あのフィクサーなら、君をもう7万回は殺せてる。彼はこの世でもっとも恐ろしい存在だ」
白鷺和臣は恍惚とした表情で語る。
「この世で最強のサモナー。いや…サモナーを超え、全てを超えし者。僕たちサモナーが、魔力を宿さない人々とは別の高次元にいるように、フィクサーは僕たちのようなサモナーなんかの更に上を行く別次元の存在なんだよ」
「フィクサー…。」
白鷺の言葉を聞いた広沢は、桜庭が怯える理由を理解した。フィクサー。その名は知らない者がいない程の伝説級の脅威だった。
「そう貴方は…ともかく違うのね…。」
桜庭は落胆したような…それでいて何処か安心したような声色を漏らした。 それに対して白鷺は再びニヤニヤと笑みを浮かべて口を開いた。
「例えば、僕がフィクサーだとして…。君はまさかフィクサーかもしれないこの僕を一人で相手するつもりで来たの?あんなの彼以外の全生命体で挑んでも勝率0パーセントなのに?はっきり言って無謀も良いとこだよ…。」
「貴方には関係ありません」
「ここまでしてフィクサーとの一騎打ちに固執するわけは…。ははーん。家族とフィクサーの首が引き換えか…。やっぱり屑だねぇ国は」
「………。」
白鷺の言葉に図星を疲れたのか、桜庭は黙り込んだ。
「なるほどねぇ……。フィクサーの存在は厄介だからね。気持ちはわからなくもないけどね」
白鷺は顎に手を当てて考えるそぶりを見せる。
「あのさぁ…。フィクサーがこんなところにいるわけないだろ?彼が居場所は【花宇町】だよ…。だって普通に考えてそうじゃない? あの街は世界一金持ちが集まり、暮らす子供たちは何故か皆魔力を持ってる、まさにフィクサーが根城にするに相応しい特別な街だ」
「え?」
白鷺の言葉に広沢は驚愕する。花宇町の名前は世界一優雅で穏やかな街として知られ、誰もが一度は行ってみたいと思う理想郷だからだ。その街にそんな危ない存在が潜んで居るとは当然思わない。
しかしこの場でそう思っているのは広沢凛だけだった。
「真っ先に調査しました!!けれど花宇町の何処を探しても彼の痕跡は何処にも…」
「君たちに見つけられるわけないでしょ?彼を」
屈辱的に言葉を遮られた、桜庭は悔しそうに唇を噛み締める。
その様子を見た白鷺はニヤニヤとした笑みのまま二人に背を向けた。
「安心しなよ…彼は再び動き出す。きっと尻尾を出すよ…。花宇町に彼はいるよ」
「待って!何処へいくの?!」
二人に背を向け、夜風が通る廃ビルの崩れた窓へ歩き出す白鷺を桜庭は呼び止めた。
「興が削がれた…。今日のところは御暇するよ…。」
「逃がすとでも?」
桜庭は背を向けて撤退しようとする白鷺に容赦なく剣を振り下ろすも、その切っ先が届く前に、広沢の悲鳴が上がる。
「キャァァァァッ!!熱い!!体が燃えるぅぅ!!!」
「広沢さん!?おのれっ!」
桜庭は急いで振り向き、広沢の元へ向かうと、白鷺の燃え盛る黄金の魔力苦しむ広沢を抱きしめながら、即座にその魔力を振り払い、彼女の身体を消火させた。
「広沢さん!大丈夫ですか!?」
「はい……何とか……」
広沢は桜庭の問いかけに息を切らしながら返事をした。
桜庭は安堵するように息をつき、その後周囲を見渡した。
既に白鷺の姿はなく、またワイバーンの姿も消えていた。
周囲には戦いの跡、焼けた鉄骨やコンクリート片などが散乱し、まるで爆心地のようだった。
「…逃げられたか。仕方ありません」
桜庭は肩を落として、小窓の残骸から夜空を見上げた。
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