7 / 18
私の葛藤2
学生時代
しおりを挟む
階段の踊り場で、私はただ静かに泣いていた。
誰にも見られないように。
音を立てないように。
そのときだった。
階段の下の方から、足音がした。
私は慌てて涙をぬぐって、顔をそらす。
でも、聞きなれた声が、小さく響いた。
「……泣いてるの?」
顔を上げると、そこには――
帽子を深くかぶり、マスクとサングラスで変装したにぃにが立っていた。
「……なんで、ここに……?」
「なんでって、決まってるじゃん。お前の顔が浮かんで、収録抜けてきたんだよ」
にぃには、私の隣に腰を下ろした。
そして、何も言わずに肩に手を置いてくれた。
私は、小さく鼻をすする音をこらえながら、肩に置かれたにぃにの手のぬくもりを感じていた。
あったかくて、優しくて、何も言わないその手が、言葉よりもずっと響いてくる。
「……怒られるかと思った」
私はぽつりとつぶやいた。
「何を?」
にぃには、少し首をかしげる。
「……自分から謝りに行ったのに、結局また嫌われて、突き飛ばされて……。
やっぱり私、何も変われてなかったんじゃないかって……」
言いながら、声が震える。
悔しさと情けなさと、どうしようもない悲しさが、ぐちゃぐちゃに絡まっていた。
にぃには、少しだけ間を置いて、静かに口を開いた。
「バカだな。変わったよ。ちゃんと伝えに行っただろ? それだけで、すごいじゃん」
私は目を見開いた。
にぃには、にっこりもせず、ただ真面目な顔で続ける。
「伝えるって、怖いんだよ。どんなに優しいこと言っても、拒絶されるかもしれない。
それでも、お前は言った。謝った。気持ち、まっすぐぶつけた。
……それって、もう十分、強くなってる証拠じゃん」
私は、言葉が出なかった。
にぃにの言葉が、胸にまっすぐ届いて、じんわりと沁みていく。
「ちゃんと見てる人は、絶対いる。お前の言葉、きっとどっかで届いてるよ」
にぃにはそう言って、ポケットからそっとガムを取り出して私に渡した。
子どものころ、泣いてる私にくれたのと、まったく同じやつ。
「……食べる?」
私は、うん、とだけうなずいて、それを受け取った。
ガムの包みを開けると、少しだけ気持ちが軽くなった気がした。
ミントの香りが鼻を抜けて、少しだけ前を向ける気がした。
誰にも見られないように。
音を立てないように。
そのときだった。
階段の下の方から、足音がした。
私は慌てて涙をぬぐって、顔をそらす。
でも、聞きなれた声が、小さく響いた。
「……泣いてるの?」
顔を上げると、そこには――
帽子を深くかぶり、マスクとサングラスで変装したにぃにが立っていた。
「……なんで、ここに……?」
「なんでって、決まってるじゃん。お前の顔が浮かんで、収録抜けてきたんだよ」
にぃには、私の隣に腰を下ろした。
そして、何も言わずに肩に手を置いてくれた。
私は、小さく鼻をすする音をこらえながら、肩に置かれたにぃにの手のぬくもりを感じていた。
あったかくて、優しくて、何も言わないその手が、言葉よりもずっと響いてくる。
「……怒られるかと思った」
私はぽつりとつぶやいた。
「何を?」
にぃには、少し首をかしげる。
「……自分から謝りに行ったのに、結局また嫌われて、突き飛ばされて……。
やっぱり私、何も変われてなかったんじゃないかって……」
言いながら、声が震える。
悔しさと情けなさと、どうしようもない悲しさが、ぐちゃぐちゃに絡まっていた。
にぃには、少しだけ間を置いて、静かに口を開いた。
「バカだな。変わったよ。ちゃんと伝えに行っただろ? それだけで、すごいじゃん」
私は目を見開いた。
にぃには、にっこりもせず、ただ真面目な顔で続ける。
「伝えるって、怖いんだよ。どんなに優しいこと言っても、拒絶されるかもしれない。
それでも、お前は言った。謝った。気持ち、まっすぐぶつけた。
……それって、もう十分、強くなってる証拠じゃん」
私は、言葉が出なかった。
にぃにの言葉が、胸にまっすぐ届いて、じんわりと沁みていく。
「ちゃんと見てる人は、絶対いる。お前の言葉、きっとどっかで届いてるよ」
にぃにはそう言って、ポケットからそっとガムを取り出して私に渡した。
子どものころ、泣いてる私にくれたのと、まったく同じやつ。
「……食べる?」
私は、うん、とだけうなずいて、それを受け取った。
ガムの包みを開けると、少しだけ気持ちが軽くなった気がした。
ミントの香りが鼻を抜けて、少しだけ前を向ける気がした。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
後宮恋歌――人質妃は、皇帝になる男にただ一人選ばれた
佳乃こはる
キャラ文芸
大陸の宗主国・夏。
北の辺境国・胡から人質同然に送られ、百人目の妃として後宮に入った少女・小蘭。
ある夜、彼女は奔放で軽薄に見える皇子・蒼龍と出会う。
だがその仮面の奥には、皇帝となる宿命と、誰にも明かせぬ孤独が隠されていた。
理不尽な運命に翻弄されながらも、自ら選び取る強さを失わない小蘭。
守るために距離を取ろうとする蒼龍。
嫉妬と陰謀が渦巻く後宮で、二人は惹かれ合い、やがて運命そのものに抗い始める――。
青春リフレクション
羽月咲羅
青春
16歳までしか生きられない――。
命の期限がある一条蒼月は未来も希望もなく、生きることを諦め、死ぬことを受け入れるしかできずにいた。
そんなある日、一人の少女に出会う。
彼女はいつも当たり前のように側にいて、次第に蒼月の心にも変化が現れる。
でも、その出会いは偶然じゃなく、必然だった…!?
胸きゅんありの切ない恋愛作品、の予定です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる