「わたしの世界に咲く色」

文月 凛音

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私の葛藤2

学生時代2

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ちょっとだけ寄り道をして、学校の近くのコンビニに立ち寄った。
明日のノートが足りないのを思い出したから。

でも、出てきたところで思わず足が止まった。

そこにいたのは――
さっき、あの子を抱きしめていた人。
帽子にマスク、サングラス。だけど、間違いない。

目が合ったわけじゃないのに、なぜか彼はすっとこちらを見た。
そして、ゆっくりと歩いてきた。

「……さっき、学校の近くにいたよね?」

ドキッとした。
どうしてわかったんだろう。
でも、その声は思っていたよりも低くて、やさしくて。
怒ってる感じじゃなかった。

私は、黙ってうなずいた。

彼はふっと笑って、ポケットから飴をひとつ取り出した。
それを、私に差し出す。

「アイツがね、すごくがんばってるって話、したい気持ちになっただけ。押しつけじゃないよ」

受け取るか迷ったけど、なんとなく、その言葉が嘘じゃない気がして、私は手を伸ばした。

「……あの子、ちゃんと強いよ。たまに泣くけど。ちゃんと、自分で立とうとしてる」

彼の目が、やわらかく笑った。

「もし、クラスでまた何かあったら……見ててやってくれると、うれしいな」

私は、胸の奥が少し温かくなるのを感じながら、小さくうなずいた。

「……うん。わたし、ちゃんと見てみる」

「ありがと。じゃ、内緒の話ってことで」

にぃにはウィンクしたような仕草をして、静かにその場を離れていった。

その背中が見えなくなるまで、私は飴をぎゅっと握りしめたまま、動けなかった。


【翌日の朝、教室】

いつもより少し早く教室に入った。
教室の窓から、柔らかい光が差し込んでいる。

私は、自分の席にカバンを下ろしてから、何気なく周りを見回す。

その子――昨日話しかけてくれたあの子――は、すでに席についていた。
目が合いそうになって、私はとっさに視線をそらした。
でも次の瞬間、彼女の方から、そっと立ち上がって近づいてきた。

「……おはよう」

小さな声。でも、確かに私に向けられた言葉だった。

私は一瞬戸惑ったけれど、顔を上げて、ゆっくりと返す。

「……おはよう」

彼女は少しだけ表情を緩めて、机の端に手を置いたまま言った。

「昨日ね、あなたのこと、ちょっと考えたんだ」

私は目を瞬かせる。

「わたし、ちょっと意地悪だったかもって。……ごめん」

その言葉が信じられなくて、少しだけ胸が詰まった。

「……ありがとう」

それしか言えなかった。でも、その一言が、ちゃんと届いた気がした。

彼女はふわっと笑って、自分の席に戻った。
なんてことない朝。だけど私の中では、何かが静かにほどけた。

にぃにが言ってた通り。
ちゃんと向き合えば、届くこともあるんだ。

私は机の中から、にぃにからもらった小さなメモ帳を取り出した。
そこには、手書きの文字でこう書かれていた。

「今日、いいことあった? 書いてみてな。俺、読むの楽しみにしてる」

私は、そっと一行目に書いた。

――「ありがとう」って、言えたよ。
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