心ゆくまで異世界観光

natuumi

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砂と骨の都市、サザノール

心優しき巨人、サザン

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「サザン・デ・テゥルティン。サザン様が砂に伏した、という意味じゃ。それがカーニバルの合言葉にになる」
 手綱を持つ老人がぼやくように喋る。

 もう2000年も前になるかの。その頃この地で栄華を極めていたのは巨人じゃった。彼らは神が最初に創られた似姿じゃから、その体も力も知識も神の如く恵まれておった。神は巨人をもって世界を管理しようと画策しておったから、それなりの力を持たせたんじゃろう。
 しかしの、神の思惑は思いもよらぬ方向に向かってしまう。地上を征服した巨人たちは欲をかき、愚かにもこの世界の創造主たる神アルマドールに宣戦布告したのじゃ。
 争いは100年にも及んだが一向に激しさが衰える事はなかった。戦士達は疲弊し戦争に反対するものも現れた。
 その1人がサザン様じゃ。彼は元々敬虔な神の信徒で、戦士として戦いながらも決して生き物を殺めぬ心優しい巨人じゃった。
 しかしやがて神は非道な方法で巨人の滅亡を目論む。熟練の巨人の戦士に呪いをかける事は不可能じゃ。だからその妻子に目をつけ、彼女達から生まれる子供から力と知性を奪ったんじゃ。生まれた子供は巨人からしたら掌に収まるほど小さく、非力で無能じゃった。
 そして戦いを後継する者がいなくなった巨人達は更に10年、20年と経つに連れて次第に劣勢になりやがて滅亡の危機に瀕した。
 神アルマドールは更に追い討ちをかけるように2つ目の太陽を創り、夜を無くして地上の生き物という生き物が砂になるまで世界を干からび上がらせた。
 巨人の滅亡を悟ったサザン様は最後の力を振り絞り、か弱い小人達を抱えて砂の上に伏した。
 自らの身体で小人を強烈な日差しから守り、懐の小人達にこう囁きかけた。
「祈るのだ。罪のない君達を神は裁いたりしない。神が怒りを収めるまで、炙られた我が肉を食とし、苦しむ我の涙を飲み水とせよ」
 小人達はサザン様のいう通りにかの肉を食べ、涙を飲んだ。その間サザン様は苦しみに声を震わせながらも神への祈りを絶やさなかったという。
 そしてサザン様の懐で十月と十日が過ぎた頃、サザン様の祈りの言葉が止まり、涙が枯れた。
 小人達は彼の懐から出るとそこには美しい夜が広がり、二つ目の太陽は白い灰の星となっていた。
 神はサザン様の命を持って赦しを与え、太陽の火を消したのじゃ。
 サザン様に命を助けられた小人達はその後も骸に寄り添うように生活を続け、毎夜月に向かって祈りをささげるようになった。
 その小人こそが今サザノールに住む人間の先祖と言われておる。
 そして以来十月と十日毎にサザン様を祀る謝肉祭カーニバルを行っているのじゃ。

「良いか旅の方、今から向かうサザノールの風習、特に明後日から始まるカーニバルは余所者からしたらかなり衝撃的かもしれん。じゃが、サザノールは信心深い者も多くてな、非難などしようものなら町を追い出されるで済まんじゃろう。態度には気をつけるんじゃぞ」
 老人はハッと強い掛け声と共に手綱を振るった。ソリを引いているマダウーラ(毛が無く巨大な捻れたツノを二本持つラクダ)が唸りを上げて砂丘を登ろうと懸命に崩れる砂を蹴る。
 忠告がてらの御伽噺だろうが、なかなか興味深い話だった。おかげで退屈にもならず極寒の砂漠の夜の下眠って凍死せずに済んだ。
 毎回こういう優しい人が荷台に乗せてってくれると嬉しいんだがな…。
「それ、見えてきたぞ」
 山のようにそびえ立つ巨大な砂丘の頂に登ると目当ての街が眼下に広がった。
「あれが巨人の寵愛を受けし町、サザノールじゃ」
 話では骸に寄り添って生きていたと聞いていたが、まさか本当に巨人の骨の下に街があるとは…。
 跪くような体勢の巨大な人骨。その巨大な肋骨ですっぽりと覆われた街があり、家々の灯りが見える。
 一つの大きな命が多くの小さな命に伝播していく様子を体現したかのような外観。サザノール…趣深い町だ。

 滅ぶには惜しい程に。
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