転売スレイヤー ~この異世界から転売ヤーを絶滅させます~

natuumi

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序章 私が転売ヤーに殺されるまでの話

次に転売ヤーを破滅させた

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 多分、それからの私は他の人間の目からは異常に映ったはずだ。

 小学校の将来なりたい職業の作文には国税局査察部と書いた。
 中学校では社会の教科書を開く傍らで「はじめてのマルクス経済学」を読んだ。
 高校では赤本の傍らで公務員試験の過去問を解いていた。

 周りでは部活や恋愛、学校行事で盛り上がる中、そのいずれにも関心を示さず、黙々と勉強に打ち込むその姿。とても多感な10代とは思えない、執念すら感じる勉強姿勢だったと思う。

 でも周りの目なんて気にしない。
 すべては転売ヤーを駆逐するためだ。

 国税局は全ての国民の出納を調べ、未納税者には取り立てを行うことができる唯一の機関だ。
 小遣い稼ぎのつもりでやっている転売ヤー共は転売で稼いだ分を申告していないことが多く、また儲けは次の転売の仕入れに使うことが多いため、突然の未納税分の徴収と追徴課税をされると払えないこともある。つまり、転売ヤーを合法的に破滅させる事ができる唯一の方法、それが国家公務員になり、国税局査察部、通称マルサとなることなのだ。

 すべては、エマを奪われた復讐の為、同じ悲しみを生まないために…!

 家族を奪われた憎悪は、何十年経っても消えることはない。
 お前らがネットの闇に身を隠すなら、私は地獄の窯の底をさらってでもお前らを見つけてやる。
 こんな風にな。

「おい、何だよあんたら」
「国税局査察部の○○です。悪質な脱税の疑いがあるため家を調査させていただきます」

 そういうとともに了解も取らず5人で一気に家に押し入る。裁判所の了解を取っていることを最後尾の職員が説明して男を入り口付近に押しとどめてくれる。その間に俺たちは家をさらって証拠集めだ。実はこうして押し入る時点で9割の確証は得ている。銀行での入出金、フリーマーケットやショッピングサイトでのアカウントの特定、IPアドレスの入手。すべて調査済みだ。こうして無理やり押し入って間違えましたじゃシャレにならないからな。
 で、あとは収支が分かる通帳なりサイトの取引履歴なりを見つけて物的証拠にすればこの男は破滅だ。この1LDKの狭い部屋に転売のために仕入れたと思しき最新のゲームハードが積み上げられている様子を見ればその未来は明らかだ。
 馬鹿め。欲をかくからだ。

 おそらく数日中にこの男には千万単位の申告漏れの通告と、数百万の追徴課税を命じる書状が出されるだろう。
 ちなみにこの未納税と追徴課税には時効はない。もしこの男が追徴課税を無視して雲隠れしようとも、国家が滅びぬ限り永遠に追われ続け、宇宙の上からでも見つけだして必ず払わせる。それがマルサ。そして私だ。

 転売ヤー共、私は絶対お前らを許しはしない。


 …しかし、転売ヤーを駆逐するために国税局に入ったものの、脱税している悪質な転売ヤーを一匹一匹潰していくだけで、転売ヤーを丸ごと駆逐するのはとても困難だ。
 
 まずそもそも転売自体は違法ではない。転売とは商品を買って他に売る事。古来より商人たちが行ってきたもので、現代でもスーパーやコンビニなどの卸売・小売業がやっている事だ。フリマアプリにしたって、本来は自分が不要になったものを他に必要としているものに売る、いわゆるシェアリングエコノミーの考えに則ったものだ。下手に転売を制限をすれば経済を滞らせることになりかねない。
 
 そもそも、転売ヤーが問題なのはエマの時のように、転売自体ではなく大量購入によって買い占めのような状態になることだ。転売ヤーたちが商品を大量に買う事で市場から商品が消え、転売ヤーが如何様にも値段を吊り上げることができる。いわゆる独占のような状態になるのだ。
 こうなると独占禁止法なんかで罰せられそうなものだが、ここでも難しいのが転売ヤーはあくまで複数の個人で商品を大量に買うのであって、一組織として買い占めているわけではない。独占禁止法は企業や法人などの事業主が対象であり、今まで個人に対して適用された例はないため、転売ヤーをこれで裁くのは難しいのだ。

 他にも古物営業法なんてのもあり、許可を得ていないと古物(一度最終消費者に売買されたもの。未開封などは関係ない)を売買して営業してはいけないという物もあるが、これは盗品の売買防止が目的であり転売にどこまで適用されるのか…。

 この問題はとても難しい。
 エマが死んではや10年以上経ち、その間ずっと考えてきたことだがいまだに答えが見つからない。
 もっと新しい抜本的な解決策が必要なんだ。それが思いつかない自分の無能さが恨めしい。

 だから、今の俺はマルサとして国民に唾を吐かれながらも未納税を摘発して、その中に何割か交じった未納税の悪質な転売ヤーを破滅に陥れるしかないのだ。
 書類上で副業として収入の申告をしている転売ヤーには、正しいものだと認めて苦虫を噛みつぶしながらも見逃さなければならないのだ。
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