王様とただのおっさん。 入れ替ったら断頭台でした。異世界はキャットGPTとともに。

PYON

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第5章 ガルバン帝国

比留間明夫55

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 花粉症の薬、その言葉にベリアード大帝は反応する。
 わかる。つらいんだよな。花粉症。
 鼻を取り出して水洗いしたいと思うくらい。
 たぶん、ぼくと違って重度のものらしいから、大変だよな。
 ぼくは戦争のあと、キャットGPTさんに聞いたんだ。
 この花粉症って治るんだよねって。
 でもキャットGPTさんの回答は、まだ治療方法は確立されていませんだった。
 ぼくは悪魔の所業だと思った。
 でも、対症療法で軽減できる薬があるので、それを精製させてもらった。

「その薬というのは」

「完全に治るわけではありませんが、症状を軽くできます」
 ぼくはそう言って、キャットGPTさんに作ってくれた薬を置く。
 ベリアード大帝は薬を手に取って確認する。
 それで、交渉に戻る。

「この薬はニャール王国の秘薬です。
 精製方法は明かすことはできません。
 もちろん敵対国にはわたすことはできません」
 キャットGPTさんが化学的な精製方法を使っているから、この時代の技術では再現できないだろう。

「それにこれは警告にすぎません」
 ぼくは続ける。
「数年前にガルバン帝国でも伝染病が流行りましたよね」

 そう、ぼくたちの世界と同じようにこの世界でも伝染病が流行った。
 中世のペストのような感じだったみたいだ。
 人口の三分の一が死んだといわれ、その恐怖は語り継がれている。

「ひどい病気だった」

「今回の花粉症で死ぬことはありませんし、伝染もしません。
 しかし、もしこれが伝染病のようなものだったらどうでしょう?」

「まさか。そんなことは」

「そう、そんなことはしません。
 人道に反しますから」

「そうだろうな」

「しかし、もし、ガルバン帝国が人道に反する戦争を続けるなら別です」

「そんなことをしたら世界は破滅する」
 ベリアード大帝はおびえた顔を向ける。

「だから、和平の道を探りませんか。
 もう戦争はこりごりです。
 ベリアード大帝はそんなふうに思いませんか」
 ぼくはそう言って悪い笑顔を浮かべるのだった。
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