perfect divide

丸ニカタバミ

文字の大きさ
19 / 25
対抗戦編

いつきの決意

しおりを挟む
 午前の部はあっという間に過ぎて午後の部も気がつけば夕方になっていた。修行のほうは息を飲み、手に汗握る熱い展開だった。短期間で強くなった理由があたしにはわかった。
「お疲れ様。どうだった、うちの子の修行風景は」
「とても、びっくりしました。ルミだけじゃなくてさやもあんなにすごいなんて・・・。いかに自分がクラスに甘えていたのかがよくわかりました。なんかショックです」
「別にあなたは甘えてたわけじゃなくて、戦闘系じゃなかっただけでしょ」
「ほんとうに何でも知ってるんですね・・・」
 本当によく知っている。この分じゃ、あたしの異能のことも筒抜けだろう。隠したところでいずればれるだけだ。
「なんでもは知らない。ただ、防衛に必要な知識や人材あとは重要な事件は覚えておくようにはしている。それに、親父さんから聞いてたし」
「なら、どうしてあたしを受け入れてくれたんですか」
事件のことを知っているなら、あたしを近づけるのは危険のはずだ。あたしは、それぐらい取り返しのつかないことをした。
「公人がこういうことを言っちゃいけないのかもしれないけど、あれは当然の報いだと思うよ」
「えっ・・・」
 本当にとんでもないことを言いだした。誰かに聞かれれば辞任を要求されても仕方がないほどの発言だ。
「でも、あたしはもう少しで人の命を奪っていたかもしれないんですよ。本当に後数センチずれていたらあの子は死んでいたかもしれない・・・。今も、後遺症で苦しんでいるのに」
「さすがに胸を張れとは言わないけど、そこまで自分を責めることはないと思うよ。だって、その数センチはずれたんじゃなくてずらしたものでしょ。それに、その子は自業自得だよ。いくら、異能に優れているからって人の尊厳を踏みにじっていいわけじゃない」
「でも・・・」
「今君が牢屋にいないのは鍛示家の助けと被害者本人が反省したからだよ。その人たちのためにも前を向いて進まないと・・・・・・。むしろ、そっちのほうが失礼だよ。それにね、わたしはあなたに感謝しないといけないの」
 あたしは、そんな感謝されるようなことは全くしていない。むしろあたしはルミを私怨に巻き込んで余計なものを背負わせてよくない方向に進ませているかもしれない。
「あの子がね。最近、心の底から笑うようになったの。それに、今日友達と楽しそうにしゃべっているの久々に見れたし、最近いまいちだったけど今日は吹っ切れたみたいでここ一番の動きをしていた。全部、あなたのおかげなの。だから、後悔なんてしないでそれに不安そうな顔もしないで後輩が心配するわ」
 そう言って休憩しているルミのほうへ、ルアさんは歩いて行ってしまった。本当に本当にあたしは助けてもらってばっかりだ。これから、なんとかして少しでも返せるように頑張ろう。微力でも、助けになるならなんでもしよう。
「はーい、じゃあ講評するからみんな集まって!」
 まずはここからだ。そう思って、あたしは駆け出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...