あの日振られた君へ

雨森

文字の大きさ
5 / 5

動揺と後悔

しおりを挟む
 私は逃げるように家に帰った。帰り道もずっと頭の中が真っ白だった。

 家につき、少し落ち着いた私はあらためて告白の返事について考え、頭を悩ませていた。様々な疑問が次々と浮かび、整理が追いつかなかったからだ。
 まず、彼は七瀬ちゃんのことが好きだったはずだ。それは彼の口から聞いたのだから間違いない。だが、これを確認しない訳にもいかないため、彼に連絡した。

“北沢、七瀬ちゃんのことが好きなんじゃなかった?”

 すぐに返信がきた。

“好きってことばれたくなくて嘘ついた”

 私は、いっそのこと聞きたいことを全て聞いてしまおうと思い、質問を続けた。

“えっと、好きって恋愛的な意味?”

 今思えば、告白してきた相手にわざわざこんなことを聞くのもどうかと思うが、その時の私は、初めての告白にどうすれば良いか分からず、自分のことで精一杯だったのだ。

“うん、そうだよ”

 本当にそうなんだと実感したことで私は少し混乱していた。そのせいだろうか、私は結局告白を断ってしまった。早く答えを返さなければいけないという焦燥感で正常な判断が出来なかったのだろう。
 






 それから約一年半がすぎた後も、私はふとした時に彼のことを考えてしまう。あの時断らなければよかったという後悔と、上手く対応出来なかったことに対する後悔が込み上げてくるのだ。
 
 私は、混乱によって正常な判断が出来なかったと述べたがそれは嘘だ。本当は彼の言葉を信じることが出来なかった。彼自身に問題があった訳ではない。私の自己肯定感の低さが問題だったのだ。
 彼からの告白を受けた時、自分の中を様々な考えが巡った。

“私なんかを好きになるはずない”

“真剣だった。嘘じゃないはず”

“嘘の告白かもしれない”

“好きになってくれて嬉しい”

“本当かどうか分からない…”

 そうやって考えを巡らせた結果、結局私を好きだと言う彼の言葉を信じきれなかった。自分勝手な自分。
 
“私は彼のことが好きだった”

 時が経つほどに降りつもっていく想いに、私は気づかずにはいられなかった。
 失ってから気づいても、もう遅いのに。
 彼は、勇気をだして告白してきっと傷付いたはずだ。
 自分勝手な考えで彼を傷付けてまで、何がしたかったのか分からない。その上、実は好きでした、なんて笑えない話だ。
 
 私は、後悔してもしきれないこの想いをどこかに吐き出したくて、この文章を書いた。
 
 もし彼に一言伝えられるなら…いや、そう考えることすらもおこがましいだろう。この苦しみが自分への罰だ。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

うまくやった、つもりだった

ひがん さく
恋愛
四大貴族、バルディストン公爵家の分家に生まれたオスカーは、ここまでうまくやってきた。 本家の一人娘シルヴィアが王太子の婚約者に選ばれ、オスカーは本家の後継ぎとして養子になった。 シルヴィアを姉と慕い、養父に気に入られ、王太子の側近になり、王太子が子爵令嬢と愛を深めるのを人目につかぬよう手助けをし、シルヴィアとの婚約破棄の準備も整えた。 誠実と王家への忠義を重んじるこの国では、シルヴィアの冷徹さは瑕疵であり、不誠実だと示せば十分だった。 かつてシルヴィアはオスカーが養子になることに反対した。 その姉が後妻か商家の平民に落ちる時が来た。 王太子の権威や素晴らしさを示すという一族の教えすら忘れた姉をオスカーは断罪する。 だが、シルヴィアは絶望もせずに呟いた。 「これだから、分家の者を家に入れるのは嫌だったのよ……」  

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

なくなって気付く愛

戒月冷音
恋愛
生まれて死ぬまで…意味があるのかしら?

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

嫌われたと思って離れたのに

ラム猫
恋愛
 私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。  距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。

処理中です...