妻を寝取ったパーティーメンバーに刺殺された俺はもう死にたくない。〜二度目の俺。最悪から最高の人生へ〜

橋本 悠

文字の大きさ
42 / 49
第3章

第40話 トム

しおりを挟む
 シュナに謝罪をしてから数分後、ヒュームが登校してきた。俺の席の近くでグルドと会話していると、ヒュームは少し驚いたように1度止まり、また席へと歩き出した。

 ヒュームにもお礼言わないとなぁ……
 ヒュームは静かに席につき、今日の授業の支度を始めていた。
 しかし、やっぱり俺とグルドが話しているのが気になるようで、つんつん、と俺の方を叩いてきた。

 俺はぐるり、と身体を回転させヒュームの方を向いた。

「……仲直り出来たのか……?」

「まぁ……うん。あの時の言葉のおかげで……俺の間違いに気が付けたよ。ありがとう」

 それが小さな声でお礼を言う。すると、ヒュームは嬉しそうな顔をして、「ジュースな」と小声で言って見せ、何事も無かったかのように授業の支度を再開した。

 ヒュームもこんなこと言うんだなぁ……友達になれた証拠……かな?
 意外な一面を見せるヒュームに驚きつつも、グルドの方にまた、身体を戻す。

 ラストはトムだけか……って遅いな相変わらず。朝のHRホームルームまであと約2分。果たして彼は間に合うのだろうか。

 1分ほどが経ち、サラン先生が教室に入ってくる。それと同時にみんなが席へと戻って行った。

 キーンコーンカーンコーン

「んじゃぁ……出席とるぞ……」
「あっぶねぇ!!  ギリセーフ!!」
「ギリアウトだ」
「なんで!!」

 教室内に小さな笑いが起きる。トムだ。やっぱり彼は何か周りの者を惹きつける力がある。俺も惹き付けられた人の一人だ。

 でも、遅刻されちゃったから……謝れなかった。あとはトム。1番大事なトムだ。トムはシュナと同様、俺から距離を置いてしまった人物。そして、俺を友達と言ってくれた人だ。

「今日は謹慎組も帰ってきたな。てな感じで今日から中間テスト一週間前だ。ちゃんと準備するように。バッドとグルドは課題を出すように」

 サラン先生に課題を出し、午前の授業が進んで行った。そして、昼休み。心做しか休み時間もグルドとは話さなかったが、トムもまた、今日はソワソワしていた。

 そろそろ行かないとな……よし。行こう。立ち上がれ、俺。

 勢いよく立ち上がった俺は、トムの元へと向かおうとした。しかし、

「……あれ?」

 さっきまでいたはずのトムの姿がなかった。おかしい……どこに……
 その時だ。

「バッド!  今日……飯食わねぇか!!」

「うわぁ!  ……って飯?」

「おう。そうだ」

「い、いいけど……」

 トムにいきなり肩を組まれ、飯に誘われた俺は何が何だか分からず、とりあえず一緒に食堂へと向かった。

 なんとか席を見つけ、昼ごはんを買いに行こうとしたその時だった。

「バッド何食いたいとかあるか?  一緒に買ってくるから」

「え、あ、じゃあ……ゴスイうどんの普通盛りでお願い。……お金は後で渡すね」

「うどん把握!  ちょっと待っとけよ!」

 そう言ってトムは1人で食券機の方まで行ってしまった。
 トムの圧に押されて忘れていたが、俺は今ちゃんと気まづい。それはあっちも同じはずだ。でも何故だろう。今飯に誘われたのは。考えれば考えるほど……わからん!

 ぐぅ~~

 ……とりあえず待つか。

 ──────

「ちょ……何これ!!」

「来る時何回も落としそうになったぜ……」

 トムが持って帰ってきたトレイの上には、大盛りうどん2つに特大パフェであった。

「特大パフェが今日からに早まったって書いてあったから……俺の奢りだ!  食え!  うどんも大盛りにしといた!  奢りだ!  食え!」

「ちょ、待ってよ。なんでそんないきなり……」

 その時、俺は思い出した。やらなければいけないことを。そう。謝らなきゃ。また友達に戻るために……

「マジですまんかった!!」

「……え?」

 先に謝ったのはトムの方であった。

「バッドのこと1人にしちまって……でも、グルドが言ってたのも事実で……魔法使えないバッドを少しいじっちまって……でも、やっぱ死ぬほど後悔したんだ。だからすまん。これで許してくれ!」

 俺は唖然としてしまった。彼から放たれた柄にも無い行動に。でも、確実に分かるのは、俺よりも大人だったということだった。

「いやいや、謝るのは俺の方だよ!  突き放しちゃって……ごめん。トムがそんなにしっかり考えてくれてるなんて思ってもなくて……ごめん」

「なんで謝んだよ!  1人は辛いだろ!?」

「大丈夫だよ。もう、1人じゃないから。トムもグルドもいる」

「仲直りしたのか!?」

「……まぁね」

「それ、早く言えよ!!」

 俺とトムは大笑いした。そして俺は救われた。彼の温かさに。本当に俺はバカだ。こんな良い友達を失うところだったんだ。本当に……バカだよ。

「……でも、これひとりじゃ食べれないよ……?」

「……食っていいか?」

「うん。一緒に食べよう」

 トム。彼がいるだけで場が明るくなる。人が幸せになる。これはたまたまじゃなく、彼の力なのかもしれない。そんな力に俺は救われてしまった。

 自分を、周りを救うために始まったであろうこの二周目チャンス。今まで救われてばかりじゃないか。
 ……次は。次からは。俺が救う側の人間になるために。もっともっと、もっともっともっと。正しい努力をしよう。

 こうして、俺は友達と学食を食べた。


 その頃グルドは────

「ねぇ、グルド!?  今日から特大パフェスタートしてるけど早く奢りなさいよ!」

「エアリスちょっと待てよ!  今日はそんなに金持ってないってば!!」

 適当に吐いた言葉に追い詰められていた。

「どこにいるんだよバッド!  トム!」


                  ──第3章 完結──
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...