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第1章
第9話 決闘
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危ない……忘れるところだった……
何を忘れかけていたのか。
それは……
「昨日のあの態度はなんだ? あぁん?」
「ごめんなさい……す、すと……」
「ストローグだよ!」
俺を助けてくれたストローグさんの力を教えてもらう、という約束をしたことだ。
そして今、待ち合わせ場所から移動し、近くのカフェに来ている。
「んで、まぁいい。なんで力が欲しいんだ」
「なんでって言われると難しいんですけど……今の俺じゃ誰も助けられないんです。だから、大切な人を守れる位には強くなりたいんです」
ストローグさんがズズズっ、とコーヒーをすする。
「そんな半端な気持ちじゃ無理だな」
「半端じゃないですよ!」
「いーや、半端だ。まず、魔法はまだ使っちゃダメだろ? ……使えないとか言ってたけど。なんだ? 剣術を教えて欲しいって言うのか?」
確かにそうだ。俺は行き当たりばったりでお願いをしていた。魔法っぽい力を使っていた、という根拠の無いものにビビっと来てしまっただけだった。
普通に考えて今、俺が魔法を使おうとしてること自体おかしい。
未来を分かってこその行動だ。だからといって剣術を教えてもらおうにもそんなに意味は無さそうだ。
元々俺は剣士科を卒業している。それなりに剣の振り方は分かってるはずだ。
ここで教えを乞うのもいいが……
「じゃ、こうしましょう。今から俺と決闘してください。勝てないのは分かってます。だから、一本、一本でも取れたら。俺になんでも教えてください」
何考えてんだ。できることは全部やれバッド。千載一遇のチャンスじゃないか。見ただろ、昨日のストローグさんの力を。
真剣な眼差しを見たストローグさんは少し驚いた表情を見せ、考えた。
「やりゃ、そう言う顔出来るんじゃねぇかよ。昨日のその顔に俺は引かれたんだよ。分かった。俺がお前を拾ったとこでいいか?」
「はい! お願いします!」
「言っとくが手は抜かねぇぞ」
こうして、俺とストローグさんの決闘が始まった。
☆☆☆
ここは、俺が隠れて修行している洞穴。
「本当に2本使うのか?」
「はい。使えるものは使っとく主義なんで」
俺はストローグさんに木刀を二本借り、準備を始めた。
「それよりストローグさんこそ、本当に何も使わなくていいんですか?」
「バッド。お前は俺を舐めすぎだ」
「それこそストローグさんも俺を舐めすぎです」
俺は両手に木刀をかまえ、ストローグさんも少し足を開き体制を整えた。
「いつでもいいぞ」
「では!」
俺は低い姿勢を保ったまま、ストローグさん目掛けて走り出した。
「おりゃぁーー!」
大きく振りかぶり、木刀をストローグさんに振り下ろした……が、
「あれ?」
「おいおいそんなんか?」
俺の攻撃はひょい、とかわされてしまった。それから何度も何度もヒラヒラとかわされる。
くそ……全部読まれてる。本当に俺は舐めすぎていた。
こんなに差があるなんて……ってばか! まだ諦めんな! 今までの単調な攻撃は俺の作戦だろ!
何度かわされても、俺は低い姿勢を保ちつつ、攻撃へと向かった。
「お前が辞めると言うまで続けるが……このままだと目瞑ったままでも勝てちまうぞ?」
……今だ! 相手が気を抜いた瞬間。気を抜いただけじゃスキにはならない……なら!
自分でスキを創る!!
「おんどりゃぁぁぁあ!」
俺は洞穴の天井にある鉱石に向かって木刀を投げた。
「なに!?」
その鉱石は地上にいるストローグさん目掛けて落ちて行く。
「そんなんで驚く人じゃないですよね!!」
「……まぁな」
ストローグさんは大量に降ってきた鉱石を軽く避けようとした。
そこだ! これを外せば……負け!
「おらくそおらーーー!!」
もうひとつの木刀をストローグさんの避けた先を目掛けて本気で投げた。
「やべぇな」
小さな声でストローグさんは呟いた。
体制が崩れながら木刀をキャッチしたストローグさんだが、俺はもう目の前に着いていた。
「くそおらくそーーー!!」
拳を握り、ストローグさんの顔面目掛けて突き出した。
「……ちょっと俺も舐めすぎてたみてぇだな」
ストローグさんがそう言い放つ。その時だった。
「うわぁぁあ!」
殴れる寸前、なにかに吹き飛ばされてしまった。
「ぐへぇ!」
俺は壁に叩きつけられた。なんだよ今の……絶対無理じゃんか……
「悪ぃなバッド。魔力使っちまった。俺の負けだ。今日からお前は俺の弟子だ!」
身体が痛すぎて話が全く入ってこない。
「あ、ありが、とう、ございます……?」
でも、何とかなったみたいだ。この人は強い。それも再確認出来た。剣術も教わる価値しか無さそうだ。
今日から俺の師匠はこのストローグさんだ。
☆☆☆
決闘からの帰り道。
「とりあえず今日は休んで明日からだ」
「はい。分かりました。あと、ゴスイの入学試験まで半年無いくらいなんで……それくらいで強くなれますかね?」
「お前ゴスイ受けるのか。俺もゴスイだぞ? 魔法科落ちの剣士科だけどな。ははははは!」
魔法科落ちの剣士科。前世の俺と似たような境遇だ。
でも、明らかに違うところがある。
それは力だ。そしてその力はきっと、元からあったものじゃない。
戦って分かった。一つ一つの動きに無駄がなく、魔力も上手く使える。
剣士科を卒業したから分かるが、ここまでしっかり教えられはしなかった。
ストローグさんは全然ゴスイの恥なんかじゃない。
もう、尊敬できる師匠だ。
「てか、ストローグさんはなんでこの洞穴に来たんでしたっけ」
「ん? あぁ、変な絵買わされちまってな。借金しちまって借金取りから逃げてたんだよ。ははは!」
「それ……詐欺られてません? よく笑ってられますね……」
「あと五年もすれば価値が上がるらしいぞ! はははは!」
剣術や魔力の使い方以外ではあんまり尊敬しない方が良さそうだな……
俺を病院に連行した時も全く俺の暴れに気が付いてなかったよな……
こうして、俺とストローグさんの師弟関係が出来上がった。
何を忘れかけていたのか。
それは……
「昨日のあの態度はなんだ? あぁん?」
「ごめんなさい……す、すと……」
「ストローグだよ!」
俺を助けてくれたストローグさんの力を教えてもらう、という約束をしたことだ。
そして今、待ち合わせ場所から移動し、近くのカフェに来ている。
「んで、まぁいい。なんで力が欲しいんだ」
「なんでって言われると難しいんですけど……今の俺じゃ誰も助けられないんです。だから、大切な人を守れる位には強くなりたいんです」
ストローグさんがズズズっ、とコーヒーをすする。
「そんな半端な気持ちじゃ無理だな」
「半端じゃないですよ!」
「いーや、半端だ。まず、魔法はまだ使っちゃダメだろ? ……使えないとか言ってたけど。なんだ? 剣術を教えて欲しいって言うのか?」
確かにそうだ。俺は行き当たりばったりでお願いをしていた。魔法っぽい力を使っていた、という根拠の無いものにビビっと来てしまっただけだった。
普通に考えて今、俺が魔法を使おうとしてること自体おかしい。
未来を分かってこその行動だ。だからといって剣術を教えてもらおうにもそんなに意味は無さそうだ。
元々俺は剣士科を卒業している。それなりに剣の振り方は分かってるはずだ。
ここで教えを乞うのもいいが……
「じゃ、こうしましょう。今から俺と決闘してください。勝てないのは分かってます。だから、一本、一本でも取れたら。俺になんでも教えてください」
何考えてんだ。できることは全部やれバッド。千載一遇のチャンスじゃないか。見ただろ、昨日のストローグさんの力を。
真剣な眼差しを見たストローグさんは少し驚いた表情を見せ、考えた。
「やりゃ、そう言う顔出来るんじゃねぇかよ。昨日のその顔に俺は引かれたんだよ。分かった。俺がお前を拾ったとこでいいか?」
「はい! お願いします!」
「言っとくが手は抜かねぇぞ」
こうして、俺とストローグさんの決闘が始まった。
☆☆☆
ここは、俺が隠れて修行している洞穴。
「本当に2本使うのか?」
「はい。使えるものは使っとく主義なんで」
俺はストローグさんに木刀を二本借り、準備を始めた。
「それよりストローグさんこそ、本当に何も使わなくていいんですか?」
「バッド。お前は俺を舐めすぎだ」
「それこそストローグさんも俺を舐めすぎです」
俺は両手に木刀をかまえ、ストローグさんも少し足を開き体制を整えた。
「いつでもいいぞ」
「では!」
俺は低い姿勢を保ったまま、ストローグさん目掛けて走り出した。
「おりゃぁーー!」
大きく振りかぶり、木刀をストローグさんに振り下ろした……が、
「あれ?」
「おいおいそんなんか?」
俺の攻撃はひょい、とかわされてしまった。それから何度も何度もヒラヒラとかわされる。
くそ……全部読まれてる。本当に俺は舐めすぎていた。
こんなに差があるなんて……ってばか! まだ諦めんな! 今までの単調な攻撃は俺の作戦だろ!
何度かわされても、俺は低い姿勢を保ちつつ、攻撃へと向かった。
「お前が辞めると言うまで続けるが……このままだと目瞑ったままでも勝てちまうぞ?」
……今だ! 相手が気を抜いた瞬間。気を抜いただけじゃスキにはならない……なら!
自分でスキを創る!!
「おんどりゃぁぁぁあ!」
俺は洞穴の天井にある鉱石に向かって木刀を投げた。
「なに!?」
その鉱石は地上にいるストローグさん目掛けて落ちて行く。
「そんなんで驚く人じゃないですよね!!」
「……まぁな」
ストローグさんは大量に降ってきた鉱石を軽く避けようとした。
そこだ! これを外せば……負け!
「おらくそおらーーー!!」
もうひとつの木刀をストローグさんの避けた先を目掛けて本気で投げた。
「やべぇな」
小さな声でストローグさんは呟いた。
体制が崩れながら木刀をキャッチしたストローグさんだが、俺はもう目の前に着いていた。
「くそおらくそーーー!!」
拳を握り、ストローグさんの顔面目掛けて突き出した。
「……ちょっと俺も舐めすぎてたみてぇだな」
ストローグさんがそう言い放つ。その時だった。
「うわぁぁあ!」
殴れる寸前、なにかに吹き飛ばされてしまった。
「ぐへぇ!」
俺は壁に叩きつけられた。なんだよ今の……絶対無理じゃんか……
「悪ぃなバッド。魔力使っちまった。俺の負けだ。今日からお前は俺の弟子だ!」
身体が痛すぎて話が全く入ってこない。
「あ、ありが、とう、ございます……?」
でも、何とかなったみたいだ。この人は強い。それも再確認出来た。剣術も教わる価値しか無さそうだ。
今日から俺の師匠はこのストローグさんだ。
☆☆☆
決闘からの帰り道。
「とりあえず今日は休んで明日からだ」
「はい。分かりました。あと、ゴスイの入学試験まで半年無いくらいなんで……それくらいで強くなれますかね?」
「お前ゴスイ受けるのか。俺もゴスイだぞ? 魔法科落ちの剣士科だけどな。ははははは!」
魔法科落ちの剣士科。前世の俺と似たような境遇だ。
でも、明らかに違うところがある。
それは力だ。そしてその力はきっと、元からあったものじゃない。
戦って分かった。一つ一つの動きに無駄がなく、魔力も上手く使える。
剣士科を卒業したから分かるが、ここまでしっかり教えられはしなかった。
ストローグさんは全然ゴスイの恥なんかじゃない。
もう、尊敬できる師匠だ。
「てか、ストローグさんはなんでこの洞穴に来たんでしたっけ」
「ん? あぁ、変な絵買わされちまってな。借金しちまって借金取りから逃げてたんだよ。ははは!」
「それ……詐欺られてません? よく笑ってられますね……」
「あと五年もすれば価値が上がるらしいぞ! はははは!」
剣術や魔力の使い方以外ではあんまり尊敬しない方が良さそうだな……
俺を病院に連行した時も全く俺の暴れに気が付いてなかったよな……
こうして、俺とストローグさんの師弟関係が出来上がった。
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