12 / 31
第1章
第10話 修行
しおりを挟む
「もっと腰下げろ! そんでもって俺の動きを読め!」
「くっ! はい!」
毎日来ていた洞穴で修行は始まった。
木刀を使った修行は基本実践形式で進んで行った。
「おそーい!」
「うわーー!」
痛てて……こんなに人って簡単に吹っ飛ばされるのか?
「ちゃんと腰下げてますし、ちゃんとストローグさんの動きも読めてはいます。でも、全く自分の攻撃が刺さる気がしません……」
「動きは子どもにしては悪くないんだけどな。常に平均点しか出せてねぇんだよ」
「平均点しか?」
「そうだ。お前は常にゴールを決めちまってる。腰を下げよう、俺の動きを読もう、ってな」
確かに。俺は動きを読んだあとの自分のするべき動きが分かっていない。
って言うか分からないんだ。ストローグさんは常に俺の上の動きをする。
「相手を読んで動く。その動きに対してどうしてくるかをまた読む。それの繰り返しでやっと戦いになる」
「なるほど……もう一本お願いします!」
剣術なら2年間しっかり学んだつもりだった。でも、たかが2年。やる気のなかった俺がストローグさんほどに強くなっているわけがなかった。
今ならやれる。やる気もある。未来も分かる。やるしかないんだ。強くなるしかない。
「うわぁーーー!」
こうして俺とストローグさんの修行が始まった。
☆☆☆
数日後。またまた洞穴にて。
「ぐへっ!!」
「初めよりは良くなってきてるぞバッドよ。はははは!」
何となく分かるようになってきた。視野を広く持ち、相手の動きでいちばん注意しなければいけない所を観察する。
今ならストローグさんが木刀を持っている右手。この手さえ注意してれば飛ばされることは無い。まぁ、実力が無ければ一本取ることもないんだが。
「てか、ストローグさん。ひとついいですか?」
「ん? なんだ?」
「魔力って剣とか身体に纏わせたりできるんですか?」
「あぁ、ちょっとそれは特殊でな。一応出来るぞ。決闘した時、最後にお前の事吹き飛ばしただろ? それも纏わせるってやつの応用だ」
魔力を纏わせる。魔力は魔法を使うためだけにあるものだと思っていた。でも、ストローグさんの戦いを見て分かった。魔力にも色々な使い方がある。前世に俺がケイトを救った時のように。
「それって僕でも出来ますかね?」
「あんまりおすすめしねぇな」
「どうしてですか?」
「俺は魔力量が少ないから魔法は基本使えねぇ。だから少量で使えること考えてここにたどり着いたんだ」
「俺は魔力量も多くて、見た感じストローグさんのそれはめちゃくちゃ強いように見えるんですが……」
少量で出来るなら俺ができないはずがない。
「言っておくがこの技は調節が死ぬほど難しい。簡単に全部魔力が出ちまう。ってことはすぐ死んじまうってことだな」
難しいのか……ならやらない方が得策か?
「ストローグさんはどのくらいで体得したんですか?」
「んー、魔法科落ちてからちょうど卒業するくらいだから3年弱ってとこかな」
「3年!?!?」
3年は無理だ。多分俺なら5年はかかる。
「まぁやりたいってんなら教えるぞ。これは魔法じゃないから法律は破ってねぇしな。どっちにする?」
「でも……ストローグさんが3年かかったなら俺は……」
「その3年は前例なしの3年だ。今なら俺って言う前例がある。先生もいる。これでどうだ?」
そういう事か。俺は新しく産む側じゃなくて受け継がれる側。
ストローグさんの作った力。欲しい!
「お願いします! 俺にその力……教えてください!」
「じゃ、明日からは実践に合わせて魔力の修行だ」
「はい!」
「あ、今日から筋トレメニュー追加だからよろしくな」
「はい……」
腹筋背筋スクワット100回を課せられた俺は、重たい足を頑張って動かして家へと帰った。
☆☆☆
「まず、この水の流れに合わせて魔力を流してみろ」
「はい……」
俺は近くの川で修行をしていた。
川に両手を突っ込み、魔力を集中させる。
「流す流す流す……」
来てる来てる! 流れてる!
「ストローグさん!」
「あぁ。しっかり流れてる。じゃぁそれ止めて見ろ」
両手に気を集中させ、止めろと願う。
「止まれ止まれ止まれ……止まれ止まれ止まれ! 止まりません!」
やばいやばい! 魔力全部流れちまう……どうしよう!
「ははは! 難しいだろ!」
「ちょ! どうすればいいんですか!!」
「死ぬかと思ったら手出せば止まるぞ」
「は、はい!」
俺はすかさず川から両手を出した。
「今の修行は魔力を流したり止めたりする修行だ。これが第一段階。初めから流れがある物に魔力を流すのは簡単だが、止めるのが難しい。その修行だな」
「……頑張ります」
俺は先が見えない中、気合いを入れ直し、もう一度川に両手を突っ込んだ。
「はえぇぇ……」
「今日はこれくらいだな」
魔力を使い果たした俺は千鳥足で家へと帰った。
☆☆☆
「バッド君……大丈夫?」
「あ、う、うん。大丈夫大丈夫~」
俺は筋肉痛の身体を必死に隠しながら、プルプル震える右手でグッドマークを作った。
こんな状態でデート……ごめんなさい! ケイトさん!
「じゃ、今日はゆっくり座れる所行こっか」
「ごめん……助かる……」
とぼとぼ歩みを始め、1週間ぶりのデートが始まった。
「くっ! はい!」
毎日来ていた洞穴で修行は始まった。
木刀を使った修行は基本実践形式で進んで行った。
「おそーい!」
「うわーー!」
痛てて……こんなに人って簡単に吹っ飛ばされるのか?
「ちゃんと腰下げてますし、ちゃんとストローグさんの動きも読めてはいます。でも、全く自分の攻撃が刺さる気がしません……」
「動きは子どもにしては悪くないんだけどな。常に平均点しか出せてねぇんだよ」
「平均点しか?」
「そうだ。お前は常にゴールを決めちまってる。腰を下げよう、俺の動きを読もう、ってな」
確かに。俺は動きを読んだあとの自分のするべき動きが分かっていない。
って言うか分からないんだ。ストローグさんは常に俺の上の動きをする。
「相手を読んで動く。その動きに対してどうしてくるかをまた読む。それの繰り返しでやっと戦いになる」
「なるほど……もう一本お願いします!」
剣術なら2年間しっかり学んだつもりだった。でも、たかが2年。やる気のなかった俺がストローグさんほどに強くなっているわけがなかった。
今ならやれる。やる気もある。未来も分かる。やるしかないんだ。強くなるしかない。
「うわぁーーー!」
こうして俺とストローグさんの修行が始まった。
☆☆☆
数日後。またまた洞穴にて。
「ぐへっ!!」
「初めよりは良くなってきてるぞバッドよ。はははは!」
何となく分かるようになってきた。視野を広く持ち、相手の動きでいちばん注意しなければいけない所を観察する。
今ならストローグさんが木刀を持っている右手。この手さえ注意してれば飛ばされることは無い。まぁ、実力が無ければ一本取ることもないんだが。
「てか、ストローグさん。ひとついいですか?」
「ん? なんだ?」
「魔力って剣とか身体に纏わせたりできるんですか?」
「あぁ、ちょっとそれは特殊でな。一応出来るぞ。決闘した時、最後にお前の事吹き飛ばしただろ? それも纏わせるってやつの応用だ」
魔力を纏わせる。魔力は魔法を使うためだけにあるものだと思っていた。でも、ストローグさんの戦いを見て分かった。魔力にも色々な使い方がある。前世に俺がケイトを救った時のように。
「それって僕でも出来ますかね?」
「あんまりおすすめしねぇな」
「どうしてですか?」
「俺は魔力量が少ないから魔法は基本使えねぇ。だから少量で使えること考えてここにたどり着いたんだ」
「俺は魔力量も多くて、見た感じストローグさんのそれはめちゃくちゃ強いように見えるんですが……」
少量で出来るなら俺ができないはずがない。
「言っておくがこの技は調節が死ぬほど難しい。簡単に全部魔力が出ちまう。ってことはすぐ死んじまうってことだな」
難しいのか……ならやらない方が得策か?
「ストローグさんはどのくらいで体得したんですか?」
「んー、魔法科落ちてからちょうど卒業するくらいだから3年弱ってとこかな」
「3年!?!?」
3年は無理だ。多分俺なら5年はかかる。
「まぁやりたいってんなら教えるぞ。これは魔法じゃないから法律は破ってねぇしな。どっちにする?」
「でも……ストローグさんが3年かかったなら俺は……」
「その3年は前例なしの3年だ。今なら俺って言う前例がある。先生もいる。これでどうだ?」
そういう事か。俺は新しく産む側じゃなくて受け継がれる側。
ストローグさんの作った力。欲しい!
「お願いします! 俺にその力……教えてください!」
「じゃ、明日からは実践に合わせて魔力の修行だ」
「はい!」
「あ、今日から筋トレメニュー追加だからよろしくな」
「はい……」
腹筋背筋スクワット100回を課せられた俺は、重たい足を頑張って動かして家へと帰った。
☆☆☆
「まず、この水の流れに合わせて魔力を流してみろ」
「はい……」
俺は近くの川で修行をしていた。
川に両手を突っ込み、魔力を集中させる。
「流す流す流す……」
来てる来てる! 流れてる!
「ストローグさん!」
「あぁ。しっかり流れてる。じゃぁそれ止めて見ろ」
両手に気を集中させ、止めろと願う。
「止まれ止まれ止まれ……止まれ止まれ止まれ! 止まりません!」
やばいやばい! 魔力全部流れちまう……どうしよう!
「ははは! 難しいだろ!」
「ちょ! どうすればいいんですか!!」
「死ぬかと思ったら手出せば止まるぞ」
「は、はい!」
俺はすかさず川から両手を出した。
「今の修行は魔力を流したり止めたりする修行だ。これが第一段階。初めから流れがある物に魔力を流すのは簡単だが、止めるのが難しい。その修行だな」
「……頑張ります」
俺は先が見えない中、気合いを入れ直し、もう一度川に両手を突っ込んだ。
「はえぇぇ……」
「今日はこれくらいだな」
魔力を使い果たした俺は千鳥足で家へと帰った。
☆☆☆
「バッド君……大丈夫?」
「あ、う、うん。大丈夫大丈夫~」
俺は筋肉痛の身体を必死に隠しながら、プルプル震える右手でグッドマークを作った。
こんな状態でデート……ごめんなさい! ケイトさん!
「じゃ、今日はゆっくり座れる所行こっか」
「ごめん……助かる……」
とぼとぼ歩みを始め、1週間ぶりのデートが始まった。
20
あなたにおすすめの小説
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
勇者の隣に住んでいただけの村人の話。
カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。
だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。
その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。
だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…?
才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる