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第2章 少年期 剣術・魔術成長編

第14話 友達

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 フレムイ村での依頼から数週間が経ち、リューネが我が家に来てから、約半年が経った。
 これはある日のリビングでのこと。

「そーいえばやっと新しいベッドが届いたわよ」

 お母さんが玄関近くにある、大きなダンボールのようなものを指さす。

「これをどこの部屋に置くかなんだけど……どうしようかしら」

「今まで通りで行くと……僕の部屋に置いてエイミーがそこで寝るとかですかね?」

 俺がそう言うと反対意見が二票出てきた。

「グラリス様!  もうエイミーを卒業してみたらどーですか!?」

「……そ、そうよ!  そろそろエイミーさんじゃなくて……私にしたらどうなの……よ……」

 楽しそうな人一人に恥ずかしそうな人一人。
 なんだか俺は薄々気が付いていた。

 そう……リューネは俺に惚れてしまったのだ!!
 根拠?  そんなの無いよ。行動が全部そう言ってるんだ。

「……えーっと……リューネがいいなら僕もそれでいいですけど……」

 俺が苦笑いしながら頬をポリポリ掻いて答えると、「ほんとっ!?」と言って、リューネが俺の方に飛んできた。

 近くで見るとやっぱり可愛い彼女は、目をキラキラさせて「じゃ、ベッド早く組み立てちゃいましょ!」と言って、スキップしながら玄関の方へと向かった。

 あの一件体調不良があってから、俺とリューネの関係はずっと良好だ。
 毎日話してくれるようになったし、話しかけてくれるようにもなった。

 ふぅ……初めはどうなるかヒヤヒヤしちゃったよ。
 でもとりあえずは一件落着。今はただの恋する乙女になっている模様。

 エイミーちゃんもいいが、リューネも今後の成長に期待大だ。

 モテる男は……辛いぜ……キラッ。

「……グラリス、何やってるの。早く運ぶの手伝って」

「ご、ごめん。今行くよ」

 俺は駆け足でリューネの元へと向かった。

 ──────

 ただいまベッドを製作中。しかし、問題が一つ……

「あぁーー!  もう!  こんなの見ても分からないわよ!」

 そう言って説明書を投げ飛ばすリューネ。

 これは遡ること30分前───

「御二方。今は自由時間ですので、ベッドの制作のお手伝い致しましょうか?」

「あー、えーっとそうだな、エイミー頼むよ……」

 俺がエイミーに頼もうとしたその時だった。
 俺の言葉を遮るようにリューネが話し出した。

「だ、大丈夫よ!  エイミーさんは休んでて!  こ、こんなの2人で十分よ!  ね、グラリス!」

 そう言って俺に顔を向け眼力で発言を誘導される。

「や、やっぱり大丈夫だよ。エイミーは休んでて」

 ……てな感じで今に至る。はぁ……俺もこういうの苦手なんだよなぁ……

「なぁ、リューネ。やっぱりエイミーにも手伝ってもらった方が良かったんじゃないのか?」

 リューネが投げ飛ばした説明書を拾い上げながら言った。

 今まで俺の中でのリューネのイメージは、冷酷、繊細、天才と言った感じだった。
 でもそれは一瞬にして崩れ落ちた。

「そ、そんなの分かってるわよ……グラリスと一緒に作りたかっただけなのよ……」

 リューネが俯きながらか細い声で本心を言った。
 いつもなら心の中で、なんだなんだ可愛いなぁおい!  とか言いそうなんだが、リューネの顔を見てそんな気にはなれなかった。

 まぁ、可愛いのは変わらんけどな。

「……そっか!  そういうことなら二人で協力して作ろう!  俺もあんまり得意じゃないけど……」

 俺は、ははっと笑いながらリューネの元に説明書を届けに行った。

 それでもリューネの顔は上がらない。
 ……え?  もしかしてやっちまった?  なんかまた気に触ることしちゃった!?

 俺が焦っていると追い打ちをかけるように、ある音が聞こえてきた。

 ……ぐすん……ぐすん……

 鼻をすするこの音……泣いてる!?
 え!?  ちょ、待って待って!!

 俺は急いでリューネの背中を摩った。

「ご、ごめん。なんか嫌なこと言っちゃったか?」

「……ちがう……い、いま、まで……こ、こんなに……やさしくして……もらったこと、なかったから……ともだち……なんて、いなかった……から……」

 泣きながら話すリューネの涙は加速した。
 友達。リューネが発したこの言葉の重みは俺には分からない。
 でも、俺も友達はいなかった。リューネを入れても、今までの生涯で2人だけだ。

 若くして両親を失った彼女の気持ちも正直、上手く理解してあげることは出来てなかった。
 俺も生前、両親を亡くしている。でも、あれは中学生の時だった。辛くなかったわけではない。でも、物心付いてもう数年経っていた。

 俺はそれなりに生活出来ていた。すごく楽しかったわけじゃないし、高校に入学する前も色々あった。だからそれなりにだ。あの出来事NTRが起きるまでは。

 俺の当たり前が、リューネの当たり前なわけじゃない。
 でも、だからこそ。俺にはリューネの気持ちがわからなかった。

 俺はまだ小さい手でリューネの頭を撫でた。
 もう片方の手で涙を拭ってあげた。

「リューネ。これからは僕がずっと友達だよ。だからもう心配しないで……泣かないで?」

 こんな当たり前のことを言ってどうするんだ。
 まず第一に俺なんかが……

 俺がべちゃくちゃ心の中で話していると、リューネが俺に飛びついてきた。

「……ありがとう……グラリス……友達……」

 俺の胸に頭を埋めるリューネ。それを静かに撫でる俺。
 何秒経っただろうか、いや何分だろうか。

 リューネが鼻をすする音しか聞こえないこの部屋は、無駄に広く感じた。

 しばらくしてリューネが顔を上げた。
 その顔は、笑顔だった。

「グラリス!  続き頑張りましょ!」

 そう言ってリューネは俺を突き飛ばし、説明書を手に取った。

「いててて……もっと友達は優しく扱えよな!」

「なによ、友達だからって優しくするつもりなんてないわ!」

 いつものリューネだ。

 冷酷で、負けず嫌いで、かなり不器用で、少しやんちゃで、ちょっぴり寂しがり屋なリューネ・ストラスだ。

 てか……友達ってことは……全然俺に恋なんてしてないんじゃね!?!?

 それから二人でベッド制作に三時間かかりました。

 ──────

「やっと……できた……」

 俺たちは完成したベッドの上に見事なほどの大の字で、寝っ転がっていた。

「……ありがとう……グラリス……あなたがいなかったらもう少しかかってたわね……」

 ……多分俺がいなかったら完成してませんよ。
 なんてこと言ったらまた怒られちゃうから我慢我慢。

 俺たちは完成したベッドを既存のベッドの隣に置いた。
 簡易ダブルベッドの完成って言ったところかな。

「ふぅ~これで今日はゆっくり寝れそうだな」

「はぁ~そうね」

 リューネは大きく伸びをしていた。
 顔ももう疲れていて、今にも寝てしまいそうだ。
 さっき泣いてたからそれも相まってだろう。

「ご飯までまだ時間あるし……少し寝たらどうだ?  新しいベッドきっと気持ちいぞ」

 ポンポンっと新しいベッドを二回叩いた。

「そうね……ちょっと寝ようかな」

 そう言ってリューネは新しい布団に潜った。

「グラリスは寝ないの?」

「僕はちょっとだけ魔法の練習してきます。いつかエイミーみたいにすっごい魔法使いたいから、毎日コツコツ頑張ろうって思って」

「……そっか。おやすみグラリス」

 少し寂しそうに告げたリューネを背中に俺はドアを開けた。
 ……まぁ疲れているだけか。そっとしておこう。

 その時だった───

「グラリス。私の事……好き?」

 ……!?  好き!?  これって……告白!?
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