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第2章 少年期 剣術・魔術成長編
第23話 最悪な出来事
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エイミーの誕生日から数日経ったある日のこと。
「ちょっとお父さん! 冷たいからやめてください!」
「はっはっはっ!! こうやって2人で風呂入るのも久しぶりだな!!」
そう。俺はお父さんに誘われ、今2人でお風呂に入っている。
いきなりでかつ、久しぶりの事だったので俺は少し驚いたが、断る理由もなく一緒に入ることにした。
「でもお父さん。なんでいきなりお風呂なんかに?」
俺はお父さんと湯船に浸かりながら質問した。
「まぁ、グラリスも大きくなってきたから久しぶりに二人で話したくてな」
そう言ってお父さんはニコッと笑って俺の頭を撫でた。
エイミーよりは大きく、でも優しいその手は俺の気持ちを落ち着かせてくれる。
「話って言っても……特に話すこともないですよ?」
「はっはっはっ! まぁそうだな。じゃ、ひとつだけお父さんからいいか?」
その時お父さんはどことなく真剣な表情に変わった。
「は、はい。いいですよ……」
恐る恐る返事をすると、お父さんは「ありがとう」と言って話を始めた。
「グラリス。お前はお父さんたちと血が繋がってないってのは前から話したことがあったよな」
「はい。ありましたけど……それがどうしましたか?」
「いやぁ……まぁ……本当に俺たちが親で良かったって思ってるのかなってな」
お父さんは少し不安そうな表情を見せた。
俺と目を合わせてくれないそのお父さんはなんだか告白してソワソワしてる中学生みたいであった。
「……ぷっ。はははは! お父さん、なんですかその顔は!」
なんだかその表情が面白くて笑ってしまった。
本当に良かったか? そんなの決まってる。
「わ、笑うなよグラリス! こっちは本気なんだよ!」
「当たり前じゃないですか。お父さんたちに拾ってもらえて僕は良かったです。いや、拾ってもらえて幸せです!」
そう答えるとお父さんは何も言わずに俺を抱きしめた。
「ちょ、お父さん! 苦しいです!」
「苦しくない!」
「苦しいです!」
お父さんの声は少し震えていた。
抱きしめてくれたその身体も。
お父さんも何かいろいろ抱えているものがあるのかもしれない。
子どもの俺にはまだ分からない何かを。
「……そうだグラリス。お前にこれをあげようと思ってたんだ」
お父さんは強く抱き締めていた俺を離し、首につけていたネックレスのような物を俺の首につけてくれた。
青白く光る宝石の付いたネックレスだった。
「これは……?」
「これは俺の恩人がくれたネックレスだ。これは俺の大事な人に渡そうとしていたんだけど、グラリス。お前が選ばれたぞ! 喜べ!」
「喜べとか言われたら喜びにくいですよ!」
とか言ってみるけど。
心の底から俺は嬉しかった。
お父さんはほとんど家にいないし、あまり話す機会もなかった。
でもこうしてお父さんの気持ちも知れて、大切な物も授かれた。
やっぱり俺は幸せ者だな。
「グラリス……愛してるぞ」
「柄にも無いこと言わないでください」
「まぁまぁそんな事言うなよ」
「……僕もお父さんのこと大好きです」
「……ぷっ。大好きか! 俺の事!」
「やめてください! この愛してる野郎!!」
俺はお父さんの事が大好きだ。
──────
お父さんとお風呂に入った次の日。何事も無かったかのように、当たり前の生活が始まった。
そして月日が経ち俺は8歳になった。
この数年間、何も起こらずただただ日々が過ぎていった。
魔法の練習をし、お父さんのいる時は剣術の練習をし、毎日楽しく日々が続いていた。
そして今日、俺は無理言って今日は早く帰ってくるようお父さんにお願いをした。
たまには夜ご飯も一緒に食べたいと。お母さん、お父さん、エイミー、リューネ、家族みんなで食べたいと。
「まぁ仕方ない。今日はなるべく早く帰ってくるよ」
そう言ってお父さんは家を出ていった。
そして、いつものように魔法の練習をして、お母さんやエイミー、リューネとたわいない話をして。
その日の夜のことだ。
「お父さん遅くない?」
「確かに遅いわね……もう。せっかく今日はみんなでご飯なのにね。でも仕方ないわ。なにか不都合でもあったんじゃないかな」
「グラディウスさんたちは強いから大丈夫よ。みんなで食べるご飯は今度にお預けね」
「そっか……じゃお腹すいたので食べましょうか」
「そうですねグラリス様。いただきましょう」
俺はモヤモヤした気持ちでご飯を食べ始めた。
俺の悪い勘は大抵当たらない。
でも、当たった場合。
考え得る最悪の出来事が起きてしまった場合。
そんなこと考えるのはやめよう。冒険者という仕事は、しかも最強パーティーの仕事はたいへんなのだろう。
明日お父さんが帰ってきたら、俺からお風呂にでも誘おうかな。
──────
次の日の早朝の事だった。
俺もリューネもまだ寝ているこの時間。外は騒がしかった。
「この世界の諸君。私の名前はディボル」
とても大きな音で世界に響き渡ったこの声で俺とリューネは目を覚ました。
「……なによもう……うるさいわね……」
「ディボルって誰だ……?」
俺とリューネは目を擦りながら起き上がった。
「今この世界の1番上に立つ私は今、魔王への進化を完了させた」
魔王……? 魔王ってまさか……!?
「グラリス! 今聞いた!?」
「あ、あぁ! 魔王って300年前に討伐された悪いやつだよ……な?」
俺たちが驚き眠気が飛んでも尚、話は続く。
「昔の魔王はかなり残酷であった。だが、私は違う。この世界の1番上に立つ者として、より良い世界を作って行ってみせることをここに宣言する。では」
ディボルと名乗る新魔王はそう言って全世界への通信を終えた。
俺とリューネは何が何だかわからず、とりあえず1階に降りた。
「おはようございますグラリス様、リューネ様」
リビングにはエイミーが片付けをしていた。
お母さんはキッチンで朝ごはんの準備をしていた。
「さっきの放送ってなんだったんですか?」
俺がそう聞くとエイミーたちも悩まされていたようで、「まぁ、この世界を良くするって言ってたから大丈夫じゃないですかね?」と、適当に返事をされた。
確かに、今のこの世界に生きている人達は昔の魔王の悪事なんて知る由もなかった。ただの噂程度。
お母さんやエイミーがそう驚かないのも納得いった。
その時だった。
コンコン
ドアをノックする音が家に響いた。
「あらお父さんかしら。グラリス、出てきてちょうだい」
やっとお父さんが帰ってきた!
俺は嬉しくて走って玄関まで向かってドアの鍵を開けた。
「おかえり! お父さん……」
俺の目の前に立っていたのはお父さんでは無く、見知らぬ男二人であった。
「グラディウス・バルコットさんの家で間違いないかな」
硬直してた俺を見てお母さんが恐る恐る玄関へと向かったきた。
「そうよ。ところであなたたちはどちらの方なの?」
「申し遅れました。中央警察のズーロとユーリスです」
中央警察? どうして警察がここに……
「単刀直入に言いますと……グラディウス・バルコット及び、グランディスのパーティメンバーのダンジョンでの死亡が確認されました」
え……?
死亡……? なんで……? どうして……?
──今日は最悪な出来事が起きた日であった。
「ちょっとお父さん! 冷たいからやめてください!」
「はっはっはっ!! こうやって2人で風呂入るのも久しぶりだな!!」
そう。俺はお父さんに誘われ、今2人でお風呂に入っている。
いきなりでかつ、久しぶりの事だったので俺は少し驚いたが、断る理由もなく一緒に入ることにした。
「でもお父さん。なんでいきなりお風呂なんかに?」
俺はお父さんと湯船に浸かりながら質問した。
「まぁ、グラリスも大きくなってきたから久しぶりに二人で話したくてな」
そう言ってお父さんはニコッと笑って俺の頭を撫でた。
エイミーよりは大きく、でも優しいその手は俺の気持ちを落ち着かせてくれる。
「話って言っても……特に話すこともないですよ?」
「はっはっはっ! まぁそうだな。じゃ、ひとつだけお父さんからいいか?」
その時お父さんはどことなく真剣な表情に変わった。
「は、はい。いいですよ……」
恐る恐る返事をすると、お父さんは「ありがとう」と言って話を始めた。
「グラリス。お前はお父さんたちと血が繋がってないってのは前から話したことがあったよな」
「はい。ありましたけど……それがどうしましたか?」
「いやぁ……まぁ……本当に俺たちが親で良かったって思ってるのかなってな」
お父さんは少し不安そうな表情を見せた。
俺と目を合わせてくれないそのお父さんはなんだか告白してソワソワしてる中学生みたいであった。
「……ぷっ。はははは! お父さん、なんですかその顔は!」
なんだかその表情が面白くて笑ってしまった。
本当に良かったか? そんなの決まってる。
「わ、笑うなよグラリス! こっちは本気なんだよ!」
「当たり前じゃないですか。お父さんたちに拾ってもらえて僕は良かったです。いや、拾ってもらえて幸せです!」
そう答えるとお父さんは何も言わずに俺を抱きしめた。
「ちょ、お父さん! 苦しいです!」
「苦しくない!」
「苦しいです!」
お父さんの声は少し震えていた。
抱きしめてくれたその身体も。
お父さんも何かいろいろ抱えているものがあるのかもしれない。
子どもの俺にはまだ分からない何かを。
「……そうだグラリス。お前にこれをあげようと思ってたんだ」
お父さんは強く抱き締めていた俺を離し、首につけていたネックレスのような物を俺の首につけてくれた。
青白く光る宝石の付いたネックレスだった。
「これは……?」
「これは俺の恩人がくれたネックレスだ。これは俺の大事な人に渡そうとしていたんだけど、グラリス。お前が選ばれたぞ! 喜べ!」
「喜べとか言われたら喜びにくいですよ!」
とか言ってみるけど。
心の底から俺は嬉しかった。
お父さんはほとんど家にいないし、あまり話す機会もなかった。
でもこうしてお父さんの気持ちも知れて、大切な物も授かれた。
やっぱり俺は幸せ者だな。
「グラリス……愛してるぞ」
「柄にも無いこと言わないでください」
「まぁまぁそんな事言うなよ」
「……僕もお父さんのこと大好きです」
「……ぷっ。大好きか! 俺の事!」
「やめてください! この愛してる野郎!!」
俺はお父さんの事が大好きだ。
──────
お父さんとお風呂に入った次の日。何事も無かったかのように、当たり前の生活が始まった。
そして月日が経ち俺は8歳になった。
この数年間、何も起こらずただただ日々が過ぎていった。
魔法の練習をし、お父さんのいる時は剣術の練習をし、毎日楽しく日々が続いていた。
そして今日、俺は無理言って今日は早く帰ってくるようお父さんにお願いをした。
たまには夜ご飯も一緒に食べたいと。お母さん、お父さん、エイミー、リューネ、家族みんなで食べたいと。
「まぁ仕方ない。今日はなるべく早く帰ってくるよ」
そう言ってお父さんは家を出ていった。
そして、いつものように魔法の練習をして、お母さんやエイミー、リューネとたわいない話をして。
その日の夜のことだ。
「お父さん遅くない?」
「確かに遅いわね……もう。せっかく今日はみんなでご飯なのにね。でも仕方ないわ。なにか不都合でもあったんじゃないかな」
「グラディウスさんたちは強いから大丈夫よ。みんなで食べるご飯は今度にお預けね」
「そっか……じゃお腹すいたので食べましょうか」
「そうですねグラリス様。いただきましょう」
俺はモヤモヤした気持ちでご飯を食べ始めた。
俺の悪い勘は大抵当たらない。
でも、当たった場合。
考え得る最悪の出来事が起きてしまった場合。
そんなこと考えるのはやめよう。冒険者という仕事は、しかも最強パーティーの仕事はたいへんなのだろう。
明日お父さんが帰ってきたら、俺からお風呂にでも誘おうかな。
──────
次の日の早朝の事だった。
俺もリューネもまだ寝ているこの時間。外は騒がしかった。
「この世界の諸君。私の名前はディボル」
とても大きな音で世界に響き渡ったこの声で俺とリューネは目を覚ました。
「……なによもう……うるさいわね……」
「ディボルって誰だ……?」
俺とリューネは目を擦りながら起き上がった。
「今この世界の1番上に立つ私は今、魔王への進化を完了させた」
魔王……? 魔王ってまさか……!?
「グラリス! 今聞いた!?」
「あ、あぁ! 魔王って300年前に討伐された悪いやつだよ……な?」
俺たちが驚き眠気が飛んでも尚、話は続く。
「昔の魔王はかなり残酷であった。だが、私は違う。この世界の1番上に立つ者として、より良い世界を作って行ってみせることをここに宣言する。では」
ディボルと名乗る新魔王はそう言って全世界への通信を終えた。
俺とリューネは何が何だかわからず、とりあえず1階に降りた。
「おはようございますグラリス様、リューネ様」
リビングにはエイミーが片付けをしていた。
お母さんはキッチンで朝ごはんの準備をしていた。
「さっきの放送ってなんだったんですか?」
俺がそう聞くとエイミーたちも悩まされていたようで、「まぁ、この世界を良くするって言ってたから大丈夫じゃないですかね?」と、適当に返事をされた。
確かに、今のこの世界に生きている人達は昔の魔王の悪事なんて知る由もなかった。ただの噂程度。
お母さんやエイミーがそう驚かないのも納得いった。
その時だった。
コンコン
ドアをノックする音が家に響いた。
「あらお父さんかしら。グラリス、出てきてちょうだい」
やっとお父さんが帰ってきた!
俺は嬉しくて走って玄関まで向かってドアの鍵を開けた。
「おかえり! お父さん……」
俺の目の前に立っていたのはお父さんでは無く、見知らぬ男二人であった。
「グラディウス・バルコットさんの家で間違いないかな」
硬直してた俺を見てお母さんが恐る恐る玄関へと向かったきた。
「そうよ。ところであなたたちはどちらの方なの?」
「申し遅れました。中央警察のズーロとユーリスです」
中央警察? どうして警察がここに……
「単刀直入に言いますと……グラディウス・バルコット及び、グランディスのパーティメンバーのダンジョンでの死亡が確認されました」
え……?
死亡……? なんで……? どうして……?
──今日は最悪な出来事が起きた日であった。
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