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第2章 少年期 剣術・魔術成長編
第24話 崩壊
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え……? 死亡……? なんで……? どうして……?
俺は理解が追いつかなかった。そして家族みんなも同じであった。
「ご家族にこちらを」
そう言って、警察官のひとりが近くにいた俺に向かってあるものを渡す。それはお父さんの魔剣であった。
その魔剣から魔力感じられず、まるで息を失っていた。
いつもより重く感じるその魔剣を受け取り俺は叫んだ。
「嘘だ……嘘だ.....嘘だ!!! お父さんがそんな簡単に死ぬはずがない!!! 嘘つくなよ!!! なぁ!!!」
俺は渡された魔剣にしがみつきしゃがみこんで泣き叫んだ。
「どういうことか詳しく教えてください」
お母さんは涙をこらえながら震えた声で聞いた。
「昨晩ダンジョンに入ったパーティが出てこないと情報が入り、今朝調査したところこちらの魔剣だけが見つかりました。調べた結果グラディウス様のものと判明しましたのでお届けに参りました」
それを聞いてエイミーやリューネも涙を流し始めた。
おかしい.....おかしいよ.....そんな事ない.....ありえない.....!!
俺は何も考えられなかった。必死にお父さんの死を受け入れようとしなかった。
その日の夜の記憶は全くもって残らなかった。
──────
俺はそれから気が狂ったようにお父さんの魔剣を持って近くの洞窟に湧くモンスターを狩り続けた。
蜘蛛のようなモンスターにスライムのようなモンスター。どれも俺でも倒せる弱いモンスターだった。
でも、お父さんの魔剣から魔力は全く放たれていたいからか、両手で振るので精一杯だった。
「はぁはぁ.....」
ピュキィーーーー!
俺は無我夢中に魔剣を振り続けた。
毎日毎日。家族と顔も合わせずご飯もほぼ食べなかった。
たまにエイミーが部屋まで持ってきてくれる不味いご飯を2日に1回ほど食べていた程度だった。
俺はこの数日間の記憶が無い。お母さんやエイミー、リューネの声も顔も思い出せない。
思い出せるのはお父さんの顔だけだった。
俺は現実から逃げるためにお父さんの魔剣を振り続けた。
この時完全にバルコット家は崩壊していた。
──────
あれから何日経っただろうか。今日もまた何も言わず玄関を開け外に出た。
生きる意味も忘れてしまった俺は、廃人のようにダンジョンへと歩み進める。
ゆっくりと歩んでいく俺の後ろから追いかけてくる足音が聞こえた。
「グラリス様!!」
それはエイミーであった。
いつも以上に低い声で鳴り響いたその声は俺の頭の中まで響き渡った。
振り返った俺の目の前まで来たエイミーは両手で俺の肩をがっちりと掴んだ。
「はぁ……はぁ……毎日毎日どこに行かれるのですか!! グラリス様!!」
「そんなの……エイミーには関係無いだろ」
俺はエイミーの手を振り払って前に進もうとした。
でも、エイミーはそれをされないように力強く肩を掴み続けた。
「離してよエイミー」
「離しません」
「どうして」
「どうしてもです」
真剣な眼差しで見つめてくるエイミーに少し嫌気がさしてしまった。
「離せって言ってるだろ!!」
俺はエイミーの両手を強く振りほどいた。
エイミーは驚いた顔でこちらを見つめる。
「用があるなら早く言ってくれ」
俺は尖りきった口調でそう尋ねた。
するとエイミーは我慢していたのか大量の涙が溢れ出した。
「.....かぞぐを.....すぐっでぐだざい.....ぐらりずざま.....」
家族を救う。エイミーの願いはこうだった。
何が救うだ。もうお父さんは帰ってこない。いちばん強いお父さんはもう死んだ。何をしたってもう変わらない。
「無理だよ。エイミーの方が家にいた時間長いんだから……僕には無理だよ。何も出来ない僕じゃ」
そう言って振り返り去ろうとした瞬間だった。
パチンッ!!
「.....っ!」
俺は反射的に叩かれた左頬を抑えていた。
俺は理解が追いつかなかった。そして家族みんなも同じであった。
「ご家族にこちらを」
そう言って、警察官のひとりが近くにいた俺に向かってあるものを渡す。それはお父さんの魔剣であった。
その魔剣から魔力感じられず、まるで息を失っていた。
いつもより重く感じるその魔剣を受け取り俺は叫んだ。
「嘘だ……嘘だ.....嘘だ!!! お父さんがそんな簡単に死ぬはずがない!!! 嘘つくなよ!!! なぁ!!!」
俺は渡された魔剣にしがみつきしゃがみこんで泣き叫んだ。
「どういうことか詳しく教えてください」
お母さんは涙をこらえながら震えた声で聞いた。
「昨晩ダンジョンに入ったパーティが出てこないと情報が入り、今朝調査したところこちらの魔剣だけが見つかりました。調べた結果グラディウス様のものと判明しましたのでお届けに参りました」
それを聞いてエイミーやリューネも涙を流し始めた。
おかしい.....おかしいよ.....そんな事ない.....ありえない.....!!
俺は何も考えられなかった。必死にお父さんの死を受け入れようとしなかった。
その日の夜の記憶は全くもって残らなかった。
──────
俺はそれから気が狂ったようにお父さんの魔剣を持って近くの洞窟に湧くモンスターを狩り続けた。
蜘蛛のようなモンスターにスライムのようなモンスター。どれも俺でも倒せる弱いモンスターだった。
でも、お父さんの魔剣から魔力は全く放たれていたいからか、両手で振るので精一杯だった。
「はぁはぁ.....」
ピュキィーーーー!
俺は無我夢中に魔剣を振り続けた。
毎日毎日。家族と顔も合わせずご飯もほぼ食べなかった。
たまにエイミーが部屋まで持ってきてくれる不味いご飯を2日に1回ほど食べていた程度だった。
俺はこの数日間の記憶が無い。お母さんやエイミー、リューネの声も顔も思い出せない。
思い出せるのはお父さんの顔だけだった。
俺は現実から逃げるためにお父さんの魔剣を振り続けた。
この時完全にバルコット家は崩壊していた。
──────
あれから何日経っただろうか。今日もまた何も言わず玄関を開け外に出た。
生きる意味も忘れてしまった俺は、廃人のようにダンジョンへと歩み進める。
ゆっくりと歩んでいく俺の後ろから追いかけてくる足音が聞こえた。
「グラリス様!!」
それはエイミーであった。
いつも以上に低い声で鳴り響いたその声は俺の頭の中まで響き渡った。
振り返った俺の目の前まで来たエイミーは両手で俺の肩をがっちりと掴んだ。
「はぁ……はぁ……毎日毎日どこに行かれるのですか!! グラリス様!!」
「そんなの……エイミーには関係無いだろ」
俺はエイミーの手を振り払って前に進もうとした。
でも、エイミーはそれをされないように力強く肩を掴み続けた。
「離してよエイミー」
「離しません」
「どうして」
「どうしてもです」
真剣な眼差しで見つめてくるエイミーに少し嫌気がさしてしまった。
「離せって言ってるだろ!!」
俺はエイミーの両手を強く振りほどいた。
エイミーは驚いた顔でこちらを見つめる。
「用があるなら早く言ってくれ」
俺は尖りきった口調でそう尋ねた。
するとエイミーは我慢していたのか大量の涙が溢れ出した。
「.....かぞぐを.....すぐっでぐだざい.....ぐらりずざま.....」
家族を救う。エイミーの願いはこうだった。
何が救うだ。もうお父さんは帰ってこない。いちばん強いお父さんはもう死んだ。何をしたってもう変わらない。
「無理だよ。エイミーの方が家にいた時間長いんだから……僕には無理だよ。何も出来ない僕じゃ」
そう言って振り返り去ろうとした瞬間だった。
パチンッ!!
「.....っ!」
俺は反射的に叩かれた左頬を抑えていた。
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