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第2章・断罪イベント2日前
2-5 反省タイム
「ふう……回復ポーション、買っておいて良かったですね」
「だな……」
モンスターの群れも一段落したようなので、俺たちは地面に座り込んでポーションを飲む。
市販の安価なポーションを飲むのは初めてだ。シロップ薬を炭酸水で割ったような、なんとも言えない味がする。けれどしゅわしゅわした感覚が、はっきりと体力を回復させているのが分かった。
「とりあえず、帰ったらギルドに壁のことを報告だな……」
「そうですねぇ……結構派手にやっちゃいましたからね」
すぐ目の前には、壊したてほやほやの壁が見える。思ったよりしっかり崩れてしまったので、弁償を請求されないかヒヤヒヤしているところだ。いざとなったら……もう……ガルシア家のツケにでもしちゃうか。使えるものは何でも使わせてもらうとしよう。
「……ところでグレン様、そんなに蜂苦手でしたっけ?」
「いや……だって……怖くない? 刺すじゃん、あいつら」
「噛んだり溶かしたりしてくるモンスターもいますよ」
「それはそうなんだが……」
魔獣とかスライムとかはファンタジーチックな見た目だけど、蜂はまんま蜂じゃん。怖いんだよ。
しかし……これではっきりしたのかもしれない。
『グレン』よりも精神が安定しているはずの『俺』が、それでも魔力暴走を起こしてしまう原因は――おそらく、『トラウマ』だ。
想像するとパニックを起こしてしまうような心の傷。それを目の当たりにすると、魔力制御が出来なくなってしまう。
(もし学園祭の舞台で、さっきみたいな魔力暴走が起きていたらと思うと……)
間違いなく、断罪イベント直行コースだ。
さらに厄介なのは、魔力の制御だけでなく、冷静な思考・判断も出来なくなるという事実。さっきの俺、明らかにパニック状態だったもんな。
今回は『恐怖により起きた魔力暴走』かつ『巻き込んだのがマシュだけだった』から、奇跡的に被害が最小限で済んだものの……世の人々は皆マシュのように頑丈ではないわけだし、俺が怒りに支配されてしまったら、いよいよ取り返しがつかなくなるだろう。
(本当に、この体質を何とかしないと)
俺はいつまでも、日常生活に戻れない。
この問題が解決しない限り……いつ惨事を引き起こすのか、自分で自分に怯えながら、学園生活を送ることになってしまう。
それとも、逃げ続けるか……。
(……それは、なぁ)
何も自慢じゃないが、現実逃避は得意だ。
だからこそ分かってしまう。『逃げる』という選択肢は、一時的な効果しか持たないのだ。
いつかは、向き合わないといけない。目を背けてきたあらゆる現実と。
「……」
瓶に残ったポーションをぐっと呷る。
考え事は尽きないが、ここで悩んでいても仕方が無い。切り替えだ、切り替え。
「よし、っと……そろそろ行くか」
「そうですね――」
マシュに瓶を回収してもらい、ぐうっと伸びをした……その時だった。
――崩れた壁の合間から、ぬっと出てきた『何か』と目が合った。
「……は?」
頭だけじゃない。腕と足、それから胴体。壊した壁の残骸を乗り越えて、人型の『何か』が現れる。
それは――このエリアには出現しないはずのモンスター。ゴーレムだった。
「だな……」
モンスターの群れも一段落したようなので、俺たちは地面に座り込んでポーションを飲む。
市販の安価なポーションを飲むのは初めてだ。シロップ薬を炭酸水で割ったような、なんとも言えない味がする。けれどしゅわしゅわした感覚が、はっきりと体力を回復させているのが分かった。
「とりあえず、帰ったらギルドに壁のことを報告だな……」
「そうですねぇ……結構派手にやっちゃいましたからね」
すぐ目の前には、壊したてほやほやの壁が見える。思ったよりしっかり崩れてしまったので、弁償を請求されないかヒヤヒヤしているところだ。いざとなったら……もう……ガルシア家のツケにでもしちゃうか。使えるものは何でも使わせてもらうとしよう。
「……ところでグレン様、そんなに蜂苦手でしたっけ?」
「いや……だって……怖くない? 刺すじゃん、あいつら」
「噛んだり溶かしたりしてくるモンスターもいますよ」
「それはそうなんだが……」
魔獣とかスライムとかはファンタジーチックな見た目だけど、蜂はまんま蜂じゃん。怖いんだよ。
しかし……これではっきりしたのかもしれない。
『グレン』よりも精神が安定しているはずの『俺』が、それでも魔力暴走を起こしてしまう原因は――おそらく、『トラウマ』だ。
想像するとパニックを起こしてしまうような心の傷。それを目の当たりにすると、魔力制御が出来なくなってしまう。
(もし学園祭の舞台で、さっきみたいな魔力暴走が起きていたらと思うと……)
間違いなく、断罪イベント直行コースだ。
さらに厄介なのは、魔力の制御だけでなく、冷静な思考・判断も出来なくなるという事実。さっきの俺、明らかにパニック状態だったもんな。
今回は『恐怖により起きた魔力暴走』かつ『巻き込んだのがマシュだけだった』から、奇跡的に被害が最小限で済んだものの……世の人々は皆マシュのように頑丈ではないわけだし、俺が怒りに支配されてしまったら、いよいよ取り返しがつかなくなるだろう。
(本当に、この体質を何とかしないと)
俺はいつまでも、日常生活に戻れない。
この問題が解決しない限り……いつ惨事を引き起こすのか、自分で自分に怯えながら、学園生活を送ることになってしまう。
それとも、逃げ続けるか……。
(……それは、なぁ)
何も自慢じゃないが、現実逃避は得意だ。
だからこそ分かってしまう。『逃げる』という選択肢は、一時的な効果しか持たないのだ。
いつかは、向き合わないといけない。目を背けてきたあらゆる現実と。
「……」
瓶に残ったポーションをぐっと呷る。
考え事は尽きないが、ここで悩んでいても仕方が無い。切り替えだ、切り替え。
「よし、っと……そろそろ行くか」
「そうですね――」
マシュに瓶を回収してもらい、ぐうっと伸びをした……その時だった。
――崩れた壁の合間から、ぬっと出てきた『何か』と目が合った。
「……は?」
頭だけじゃない。腕と足、それから胴体。壊した壁の残骸を乗り越えて、人型の『何か』が現れる。
それは――このエリアには出現しないはずのモンスター。ゴーレムだった。
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