【完結】グレン・ガルシアの運命逃避行 ~悪役令息なんてやってやれるか!~

阿月杏

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第2章・断罪イベント2日前

2-7 戦利品

「……すご……」

 ばたりと地面に倒れ、動きを止めたゴーレムを眺めながら……俺は思わず呟いた。
 あまりに見事なハンマー捌きに、心の中で拍手を送る。

「マシュ……お前、本当に冒険者デビュー初日なのか……?」
「ええ、まあ……一応……」

 ゴーレムを倒した際に付いたと思われる土汚れをぱっぱっと払いながら、マシュは言う。

「とはいえ、いざという時のために体は鍛えていたので……。使用人たるもの、主人に危害を成そうとする者がいたら、応戦しなければなりませんからね!」
「……ハンマーを使ったのは、今日が初めてなんだよな?」
「そうですね……でもモップやフライパンの扱いなら心得ているので、その応用で何とか!」

 なんでモップやフライパンの扱いを心得てるんだよ。まあたぶん『いざという時に日用品で敵を撃退する方法』とかを仕込まれたんだろうな~とは思うが……。
 マジでこいつのこと、敵に回したくない。味方でいてくれることに全力で感謝しないといけない。

「はあ……本当に、マシュがいて助かった。俺一人だったら、炎魔法でゴーレムの体をじっくり焼き尽くすしかないかと……」
「ゴリ押しすぎません?」

 俺もそう思う。
 本来の『グレン』なら、もっと賢い戦法を思い付いていたかもしれないが……『俺』はそんなに器用じゃないのだ。むしろいきなり魔法の世界に放り込まれて、よくやってる方だと思う。そこに関しては許してほしい。
 すると、マシュがぽつりと呟いた。

「でも……僕、グレン様に謝らなきゃいけませんね」
「え?」
「僕、グレン様のことを勝手に『守らなきゃいけない存在』だと思い込んでいました。……無意識のうちに、あなたのことを侮っていた」

 一歩、俺の方に近付く。
 年上のマシュは、いつも俺より背が高かった。彼はずっと俺のことを見下ろして……優しい視線を注いできたのだと思う。
 だけど。

「違いましたね。……グレン様は、強い人間です。僕よりもずっと」

 今、初めて……同じ目線に立てたのかもしれないと思った。
 『主人と従者』でも『保護者と子ども』でもなく。一人と一人の、同じ人間として。

「俺からしたら、マシュの方がずっと強く感じるけどな」
「そんなことないですよ……!」
「そんなことあるって」
「いいえ、グレン様は本当にすごいんですよ! 誇ってください!」
「お前にそっくりそのまま返すよ」

 くすぐったいくらいの軽快なキャッチボールが、不思議と嬉しい時間に感じる。
 それもこれも、俺が咄嗟に『逃げない』選択をしたから。
 俺が、俺自身の意思で、マシュと共に戦うことを選んだからだ。

(……いつかは)

 俺の運命にも、ちゃんと向き合えるだろうか?
 ……なんて。

「――ん?」

 と、マシュと謙遜合戦を繰り広げていたところ……半分崩れたゴーレムの残骸の中に、きらりと光るものを見つけた。土を払い、手に取ってみる。

「これは……」

 蜂蜜色の、やや歪な形をした結晶だ。無機物なのに、ほんのりと温かさを感じる……これは、魔力が籠もっている証拠だ。

「魔晶石……ゴーレムの体に埋まっていたのか」

 魔晶石というのは、魔力を溜め込む鉱石の総称だ。
 吸収した魔力の属性や濃さによって、色合いが変わるのが特徴である。装飾品やアクセサリーに使われることもあれば、魔法を利用した回路に組み込まれることもある。
 見たところ、これはそれなりに魔力の濃いものなんじゃないだろうか。

「持って帰りますか」
「そうだな。売れば金にもなるだろうし」

 クエストの報酬に加えて、魔晶石も換金すれば……それなりの収入が見込めるだろう。
 ……こうして、俺たちの初めてのクエストは、終わってみれば上々の結果となったのだった。
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