完璧地球人は魔法無しで異世界を救う

前方に瓜

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第7章『人外の里オルミナ』

第四十七話『一致団結』

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翌朝。

「うわぁ……よく寝た……」
ハルトが大きく伸びをする。

「なんだこれ。体の調子、めちゃくちゃいいぞ」
「そうなんです。魔力も完全に満タンです」
「……うわぁ、リヴィアがもう起きてる!」
「なんですか! 人がいつも寝てるみたいに言わないでください!」

その横で、ルドが欠伸をした。
「んー……よく寝た。って、うわっ、リヴィアがもう起きてる」
「ルドさんまで!」
その時だった。

ゴゴッ。

再び、地面が大きく揺れた。
「また……」
「ああ。昨日ほどじゃないけど……でかいな」
揺れは一分ほどで収まった。

しかし――外が、やけに騒がしい。

嫌な予感を覚え、三人は外へ飛び出す。

そこでは、顔色を失った住民たちが、同じ方向へ逃げ惑っていた。

ハルトは走り去ろうとするエルフの男の腕を掴む。
「おい、何があった」

「ダ、ダンジョンから……ド、ドラゴンが外に……!」
エルフは震える声で叫んだ。

「ドラゴン?」
聞き返しながら、ハルトは男の肩越しに視線を向ける。

ダンジョンのある方角

巨大な岩山のほうだ。

次の瞬間、はっきりと見えた。

岩の上から、黒い影がせり上がる。

岩盤を踏み砕き、翼を広げながら姿を現したそれは、紛れもなくドラゴンだった。

鱗に覆われた巨体が朝の光を反射し、空気そのものが震える。
「……本物かよ」
背筋を冷たいものが走る。

「も、もう離してくれ!」
エルフの男はハルトの腕を振りほどくと、恐怖に駆られたまま走り去っていった。

ハルトは一瞬、呆然と立ち尽くす。
だが、すぐに歯を食いしばった。
「マジかよ……」

次の瞬間には踵を返し、全力で駆け出していた。

向かう先は一つ――オルミナの長、イセリオのもとだった。

イセリオの館の前。
広場には、すでに数十人の住民が押し寄せていた。

恐怖と焦燥に駆られた声が、あちこちから飛び交う。
「イセリオ様! 早くオルミナを解放してください!このままじゃ、みんなドラゴンに食われてしまいます!」 
「逃げるしかない! 町なんて捨てろ!」 
「何とかしてくれよ、イセリオ様!」

混乱する群衆を前に、イセリオは眉間に深い皺を刻み、低く響く声で叫んだ。
「静まれ! 今は恐れるより、考える時だ!」

だが、その声は不安に掻き消され、誰の耳にも届かない。

その時

一人の青年が前に出た。

ハルトだった。
「落ち着けって!」
張りのある声が、広場に響く。

「逃げたい気持ちは分かる。でも聞いてくれ。オルミナは結界に守られてる。ドラゴンがこの町に気づくにも、まだ時間がかかるはずだ」
ざわめきが、わずかに弱まる。

ハルトはその隙を逃さず、続けた。
「でも今、外に出たらどうなる? 結界を離れた瞬間、気づかれて終わりだ。一瞬で、殺される」

空気が、凍りついた。
「外は危険だ。俺たちが生き残るには、この町を守るしかない。結界がある限り……まだ勝機はある!」

だが、すぐに弱々しい声が上がる。
「でも……ドラゴンだぞ? あんな化け物、どうやって……」
不安が、再び広がり始める。

ハルトは、迷いなく言った。
「みんなで戦おう」

「無理だ!」
「俺たちは戦えねえ!」
「昨日の地震で、怪我人だって大勢いるんだ!」
次々と反論が飛ぶ。

ハルトは首を振った。
「誰も、全員が戦えなんて言ってねえ」

その一言で、空気が変わる。
「戦える奴は前に出る。戦えねえ奴は、支える側に回ればいい」

指を折りながら、言葉を重ねる。
「矢を運ぶやつ。魔具を補充するやつ。怪我人を運ぶやつ……やることはいくらでもある」

群衆の一角で、腕を組んでいた鍛冶屋の男が、低く唸った。
「……支える、か」

しばしの沈黙の後、ぼそりと呟く。
「古い矢尻の在庫がある。鉄の質は悪くねえ。炉を起こせば、使い物になるかもしれん」

それに応じるように、狩人の女が一歩踏み出す。
「じゃあ、私が矢を作る! 森の素材もある!」
「なら、わしは防御陣の刻印を引き受けよう」
老魔導士の声が続き、
ぽつ、ぽつと、協力の意思が灯り始める。

それでも、完全には拭えない不安。
若いエルフが、震える声で尋ねた。
「……でも、本当に勝てるのか?」
誰もが、心の奥で抱えていた問いだった。

ハルトはその若者をまっすぐに見据え、一歩前に出る。
「正直に言う。勝てる保証なんてない」

息を呑む音。

「でも――逃げたら、確実に全滅だ」
拳を握りしめ、叫ぶ。
「だったら、ここで踏ん張る方が、まだマシだろ!」

沈黙が落ちる。
やがて、群衆の中から、力強い声が上がった。
「……だったら、やってみよう。この町を、俺たちで守るんだ」

イセリオは、静かに頷いた。
「……そうだ。それでこそ、オルミナの民だ」

杖を鳴らし、告げる。
「今から作戦を考える。各自、いつでも動けるよう準備し、戦えるものをできる限り集めよ」

「おおおお!」
歓声が、恐怖を押し返す。

イセリオはハルトに視線を向けた。
「ハルト。一緒に作戦を考えてくれんか?」

ハルトは迷いなく頷く。
「もとより、そのつもりだよ」

オルミナの民がドラゴン討伐に向け、一致団結し始めた頃。

リヴィアが不意にハルトのもとへ駆け寄ってきた。
「ハルトさん」

「どうした? リヴィア」

少し戸惑った様子で、彼女は手にした魔法陣を見下ろす。
「ジャンヌさんにいただいた魔法陣から……ジャンヌさんの声がしたんです。ハルトさんに代わってほしいって言われて、それで……」

「ジャンヌから……?」
ハルトは一瞬目を見開き、すぐに頷いた。
「わかった」

リヴィアの持つ魔法陣に、ハルトがそっと手を伸ばす。
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