3 / 50
プロローグ三人分!
彩香「愛しの妹の元に戻ろうと思ったら、見知らぬ男が妹を持ち上げてるんだけど……」
しおりを挟む
彩芽の姉、柊彩香は妹と別れた後、バレーサークルへの勧誘をされていた。
部室の中、扉から左右に並ぶは数十人分の上下別々のロッカー、目の前には背もたれの無いプラスチックでできた水色のベンチが二つ縦に置かれ、その上には半袖短パンの女学生がベンチを跨ぐようにして足を開き彩香を見つめる。
茶色い髪が後ろで一つにまとめられた見事なポニーテールだった。
そして、彩香の後ろには扉を守るように立つ先輩がもう一人。彩香と同じく短い活発なイメージを受ける見た目だが、彩香の髪は銀色であり、彼女の髪は黒い。
早く戻らないと彩芽のやつ、絶対怒ってるよなぁ……まぁ、怒ってるのも可愛いからいいんだけど。怒ってたらあれだな。帰って一緒にゲームしてその後無理矢理お風呂だな。途中で優しくしてデレた所を愛でよう。
――何を隠そうこの姉、柊彩香は妹が大好きな妹至上主義者であった。
「彩香さん! ぜひバレー部に来てください!」
先輩がベンチに両手をついて見上げてくる。この人、胸でかいなぁ……。私と同じか、それ以上かな。
入るつもりなんだけど、上目遣いでこう頼まれると意地悪したくなるんだよなぁ。どうしよう。ちょっと焦らして――
「ひゃっ!」
後ろに居た先輩に両肩を掴まれた。
「入ってくれるよね!」
いかにもバレーをしてますって感じの先輩だなぁ。身長もまぁまぁ高い。一七〇ある私の方がちょっとだけ大きい。
胸は……妹以上だろうけど、B……いや、Cかな?
ハッ! 彩芽が私の帰りを待っている! 気がする!
「先輩すみません! 妹待ってるんでそろそろ!」
この場で返事をするのもなんだし、首筋に手を当てながら申し訳なさそうに謝ってみる。そもそも、本当なら今は講義室に居なきゃいけないんだけどなぁ。
「柊さん、妹が居るの!?」
やっちゃった……。
ポニーテール先輩が跳び箱のように跳ねて目を輝かせながら私の目の前までやってきた。揺れる胸もまぁ悪くない。
「え、ええ……」
「妹さんとぜひ!」
後ろから両肩を掴まれ正面から両手を握られ……なんだこれ、私誘拐でもされるのか?
「いやぁ……それはちょっと……妹は……」
ポニテ先輩に否定しつつどうにか掴まれた手を振りほどく。
「ん? でも、柊さんって一年生よね? 高校生?」
「ひっ……」
急に耳元で囁いてきた黒髪先輩の息が耳に……。私は妹以外にそっちの趣味はない。
――そう、何を隠そうこの姉、柊彩香は妹が大好きな妹至上主義者である。
「いや、双子なんで同い年で――」
「双子!? 同い年!? 妹さん!?」
「あ、なんていうか私の方が先に生まれたので姉ってだけですよ」
説明するのめんどくさーい。
「なら姉妹揃ってスーパープレイヤーなのね!?」
ポニテ先輩の猛攻撃が鬱陶しい……。ちょろちょろ視線の下で揺れる胸も……これは、まぁいいか。
「いやぁ……妹は引っ込み思案でスポーツ系はしてないんですよ」
「あら、そうなのね……」
ポニテがしゅんと大人しくなった。よしそろそろ逃げ――
「そういえば、柊さんを誘った時に隣に居ましたね。妹さんサークルは?」
くっそー、次は耳元で黒髪先輩かぁ。妹じゃない分何も感じないよぉ……。彩芽成分が……彩芽成分が足りない……。あ、返事しないと。
「妹はアニメなどが好きなんでそっちに入るんじゃないんですかねー」
「そうですか……」
黒髪先輩の手の力が弱くなった。
ふんっ、っていうか妹にサークルなど入らせるものか。彩芽は私の妹。私だけのスーパープレイヤーならぬスーパーコスプレイヤー。他の誰にも譲れない渡さない!
――そう、この姉、柊彩香は妹が大好きな上、コスプレをさせている妹至上主義者であった。
「っとと、ほんとに妹が待ってるんですみません!」
両肩を掴んでいる黒髪先輩の脇腹にすっと手を伸ばす。
「ひゃんっ……」
ふっふっふ。こそばゆい部位は妹で心得ている! でも思ったより反応良くて焦ったわ。じゃなくて……。
「すみません、手が滑りました! では、また来ると思いますので失礼しまーす!」
黒髪先輩を中心にステップを踏み、後ろに回り込んで私はその場を逃げた。
「あ! 柊さん待ってー!」
ふっ……ポニテ先輩の髪も綺麗だけど、妹には劣る。
――何を隠そうこの姉は(以下略。
「また来ますからー!」
多分だけどね。
ガチャンと閉まる音がする時にはもう、私は数メートル先まで全速力で駆け出していた。
「彩芽ー! 今すぐ行くからねー!」
階段を数段飛ばしながら駆け下り一階まで猛スピードで到着!
「え、大学って広すぎない?」
正面には大きな広場で先輩であろう人達が必死に勧誘に燃えていた。右に図書館って書いてある看板、左にはアニメーションって棟がある。
あれ……私って今どこに居るんだ……。
「……ハッ!」
そういえば入学の時、正門で渡された地図!
「どれどれ……」
サークル関係の集められたここが部室棟……そのままだなおい。んで、確か愛しの妹と別れたのが本館だから……。
「あのでっかい所か!」
待っててね愛しの妹よ!
――もう何も言うまい
まっすぐ広場に向かって全速力! そこから一番でっかい建物まで猛進!
ガラス張りの壁に備え付けられた自動ドアを抜けて右手の階段へ!
「は……?」
目に映ったのは親が子を持ち上げているようなシーン……。
「はぁ!?」
うちの妹が見知らぬ男に持ち上げられている!?
「……あいつ、許さねぇ」
彩香はそのまま敵意むき出しの目で、敵である芥川銀治へと駆けて行ったのであった。
部室の中、扉から左右に並ぶは数十人分の上下別々のロッカー、目の前には背もたれの無いプラスチックでできた水色のベンチが二つ縦に置かれ、その上には半袖短パンの女学生がベンチを跨ぐようにして足を開き彩香を見つめる。
茶色い髪が後ろで一つにまとめられた見事なポニーテールだった。
そして、彩香の後ろには扉を守るように立つ先輩がもう一人。彩香と同じく短い活発なイメージを受ける見た目だが、彩香の髪は銀色であり、彼女の髪は黒い。
早く戻らないと彩芽のやつ、絶対怒ってるよなぁ……まぁ、怒ってるのも可愛いからいいんだけど。怒ってたらあれだな。帰って一緒にゲームしてその後無理矢理お風呂だな。途中で優しくしてデレた所を愛でよう。
――何を隠そうこの姉、柊彩香は妹が大好きな妹至上主義者であった。
「彩香さん! ぜひバレー部に来てください!」
先輩がベンチに両手をついて見上げてくる。この人、胸でかいなぁ……。私と同じか、それ以上かな。
入るつもりなんだけど、上目遣いでこう頼まれると意地悪したくなるんだよなぁ。どうしよう。ちょっと焦らして――
「ひゃっ!」
後ろに居た先輩に両肩を掴まれた。
「入ってくれるよね!」
いかにもバレーをしてますって感じの先輩だなぁ。身長もまぁまぁ高い。一七〇ある私の方がちょっとだけ大きい。
胸は……妹以上だろうけど、B……いや、Cかな?
ハッ! 彩芽が私の帰りを待っている! 気がする!
「先輩すみません! 妹待ってるんでそろそろ!」
この場で返事をするのもなんだし、首筋に手を当てながら申し訳なさそうに謝ってみる。そもそも、本当なら今は講義室に居なきゃいけないんだけどなぁ。
「柊さん、妹が居るの!?」
やっちゃった……。
ポニーテール先輩が跳び箱のように跳ねて目を輝かせながら私の目の前までやってきた。揺れる胸もまぁ悪くない。
「え、ええ……」
「妹さんとぜひ!」
後ろから両肩を掴まれ正面から両手を握られ……なんだこれ、私誘拐でもされるのか?
「いやぁ……それはちょっと……妹は……」
ポニテ先輩に否定しつつどうにか掴まれた手を振りほどく。
「ん? でも、柊さんって一年生よね? 高校生?」
「ひっ……」
急に耳元で囁いてきた黒髪先輩の息が耳に……。私は妹以外にそっちの趣味はない。
――そう、何を隠そうこの姉、柊彩香は妹が大好きな妹至上主義者である。
「いや、双子なんで同い年で――」
「双子!? 同い年!? 妹さん!?」
「あ、なんていうか私の方が先に生まれたので姉ってだけですよ」
説明するのめんどくさーい。
「なら姉妹揃ってスーパープレイヤーなのね!?」
ポニテ先輩の猛攻撃が鬱陶しい……。ちょろちょろ視線の下で揺れる胸も……これは、まぁいいか。
「いやぁ……妹は引っ込み思案でスポーツ系はしてないんですよ」
「あら、そうなのね……」
ポニテがしゅんと大人しくなった。よしそろそろ逃げ――
「そういえば、柊さんを誘った時に隣に居ましたね。妹さんサークルは?」
くっそー、次は耳元で黒髪先輩かぁ。妹じゃない分何も感じないよぉ……。彩芽成分が……彩芽成分が足りない……。あ、返事しないと。
「妹はアニメなどが好きなんでそっちに入るんじゃないんですかねー」
「そうですか……」
黒髪先輩の手の力が弱くなった。
ふんっ、っていうか妹にサークルなど入らせるものか。彩芽は私の妹。私だけのスーパープレイヤーならぬスーパーコスプレイヤー。他の誰にも譲れない渡さない!
――そう、この姉、柊彩香は妹が大好きな上、コスプレをさせている妹至上主義者であった。
「っとと、ほんとに妹が待ってるんですみません!」
両肩を掴んでいる黒髪先輩の脇腹にすっと手を伸ばす。
「ひゃんっ……」
ふっふっふ。こそばゆい部位は妹で心得ている! でも思ったより反応良くて焦ったわ。じゃなくて……。
「すみません、手が滑りました! では、また来ると思いますので失礼しまーす!」
黒髪先輩を中心にステップを踏み、後ろに回り込んで私はその場を逃げた。
「あ! 柊さん待ってー!」
ふっ……ポニテ先輩の髪も綺麗だけど、妹には劣る。
――何を隠そうこの姉は(以下略。
「また来ますからー!」
多分だけどね。
ガチャンと閉まる音がする時にはもう、私は数メートル先まで全速力で駆け出していた。
「彩芽ー! 今すぐ行くからねー!」
階段を数段飛ばしながら駆け下り一階まで猛スピードで到着!
「え、大学って広すぎない?」
正面には大きな広場で先輩であろう人達が必死に勧誘に燃えていた。右に図書館って書いてある看板、左にはアニメーションって棟がある。
あれ……私って今どこに居るんだ……。
「……ハッ!」
そういえば入学の時、正門で渡された地図!
「どれどれ……」
サークル関係の集められたここが部室棟……そのままだなおい。んで、確か愛しの妹と別れたのが本館だから……。
「あのでっかい所か!」
待っててね愛しの妹よ!
――もう何も言うまい
まっすぐ広場に向かって全速力! そこから一番でっかい建物まで猛進!
ガラス張りの壁に備え付けられた自動ドアを抜けて右手の階段へ!
「は……?」
目に映ったのは親が子を持ち上げているようなシーン……。
「はぁ!?」
うちの妹が見知らぬ男に持ち上げられている!?
「……あいつ、許さねぇ」
彩香はそのまま敵意むき出しの目で、敵である芥川銀治へと駆けて行ったのであった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる