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第四話「銀髪美少女三原則その三、悲しませない」
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「あんた、前来た時、その……元気なかったし……大丈夫かなって……――ぁあああああ何言ってんだ私ぃ!」
頭を抱えて狂喜乱舞の彩芽。
「……もしかして」
「なっ、なによ!」
「心配してくれてたんですか?」
「なっ……!」
彩芽がムキになってこちらを睨みつけてくる。
「は、はぁ⁉ 心配なんかしてないし! 変態の心配なんかしてないし! メール返してこない事にイライラしてるだけなんですけど! もうっ! ちょっと、買い物行くんだからそこどいてよバカ!」
「うっ……」
近付いてきた彩芽に玄関側に蹴飛ばされ、鉄の扉に頭を打ちつけた。
水色パン……いや、蹴られる瞬間に見えたのは黙っておこう。
「ふんっ!」
彩芽がそのまま歩いていく。
左にある鉄の階段を降りようと階段の手すりを掴もうと……したが、高さが合っていないのか掴もうとしてやめた。
可愛い……じゃなくて――
「ちょっと待って――」
「知るかバカ! 変態! そのまま散りくたばれ! ばーかばーか!」
めちゃくちゃだ……が、そこがまた良い……。これがツンデレの魔力なのか……。
守りたいあの笑顔……。
立ち上がって二階の手すり越しに歩いていく彩芽を見つめる。プンスカしながらアパートの敷地を出て行く。
「……」
……近付いてしまえば好きになってしまいそうで、その度に自分に課した戒めが蘇る。誰とも付き合わない。人を好きになってはいけない……。
彩芽ともっと話したい想いと自分への戒めが頭の中で駆け巡る。
「ぁあああ……らしくない、らしくないぞ銀治……」
髪をくしゃくしゃにして雑念を振り払う。
「よし、とりあえず走ろう」
階段を駆け下りて屈伸、手首足首回して――
「よし」
アパートの敷地から大学と反対方向に向かって走る。
一車線の道、目の前を彩芽が歩いている。
「……」
今はまだ話しかけないでおこう。気持ちの踏ん切りが付かないまま話しかけるなんて相手に失礼だ……。
「ぁ……」
彩芽の隣を走り去った。後ろで微かに聞こえた。だが、今は無性に走りたい気分なのでそのまま走り続ける。
人気のない路地裏を走っていく。大通りに面した所は人が多いので絶対に行かない。同じ大学の学生らしき集団が出歩いているかもしれない。基本的にリスクは避けるべきだ。
「はぁっ……はっ……」
だんだんと汗が滲んでくる。
そういえば、大学と家の行き来しかしないから、この辺の土地ってよく知らないな……。
まぁ、迷子にはならんだろう。
少し飛ばそう。
「……はっ……はっ……」
息が上がる。
呼吸が荒くなる。
吸い込む量が減っていく。
「はっ……はっ……」
喉が乾いてきた……が、財布は持ってきていない。走りながらポケットを確認するも鍵だけしかない。
「あ、やば……」
ゆっくりとスピードを下げてひと気の無い路地を歩く。
「ここ……どこだ……」
走り回った挙句、迷子……スマホも置いてきた……。
くっ……まさか大学生になって道に迷っただと……?
と、とりあえず見覚えのある道を辿ろう。まずは大通りに出ればどうにかなるだろう。
「しんど……」
汗をジャージで拭う。久しぶりに走ると気持ちいいが、体力落ちすぎだろ……。
大通り、片側二車線の国道に出た。道路上の書かれた標識を見てもどこかサッパリ分からない。
今何時だろうか。
「汗が止まらん……」
ジャージで汗を拭いながら、なんとなく来たであろう道に向かって歩いていく。
「お、あのスーパー……」
見通しの良い真直ぐの車線に大きなスーパーが見えた。確か、あのスーパーを通り過ぎて左に曲がれば大きな公園に辿り着くはず。そこからなら帰り道も分かるか。
目印を発見したので再びランニング開始。
歩道の数人を追い抜かしてひたすらスーパーを目指す。
駐車場が手前に見えて奥の方にスーパーの建物。
「はっ……はっ……」
駐車場の真ん中には細い鉄柱の上に大きな丸時計が付いていた。
十二時過ぎか……ちょうど一時間くらいか。
帰るか。
スーパーの角を曲がって一車線の道、公園の芝生が見えた。
大人の膝丈くらいしかない柵の向こう側には、柵と並行するかのように点々と四人掛けのベンチが並んでいた。
無駄に広い公園……平日の昼食時だし、さすがに人の気配はないか。
「あ……」
公園突っ切れば近道かもしれない。
ふとした好奇心で柵を乗り越えて芝生を踏みつける。アスファルトとは違って柔らかい感触が靴の下から伝わってくる。なんだか懐かしい。
「っ……!」
目の前を飛び交う虫が鬱陶しい……さっさと走り抜けよう……。
足を上げて助走をつけようとするも、足が「もうやめて……」と訴えてきた。いや、自分自身で限界を決めているだけ……だが、さすがに疲れたな。虫を避けながら歩こう。
「すー……はー……」
真直ぐアパートの方へと向かって呼吸を整えながら歩く。
「ん……?」
視界にの端にこじんまりとした建物と人影が映った。
こんな平日の昼間から大人二人と子どもらしき姿。自然と目が寄っていく。
「あれ……」
十メートルほど先には何か見覚えのある金髪と茶髪に……彩芽が居た。公衆便所の前で何をしているんだろうか。
茶髪の手にはスーパーの買い物袋。彩芽は嫌がっている素振りを見せているように感じる。
少しずつ距離を詰めていく。
「っ!」
金髪の手が彩芽に触れた。嫌な予感がして走る。無性に腹が立っている俺がいるのはなぜなのか……。
駆け寄りながら息を吸い込み声をかける。
「おい!」
頭を抱えて狂喜乱舞の彩芽。
「……もしかして」
「なっ、なによ!」
「心配してくれてたんですか?」
「なっ……!」
彩芽がムキになってこちらを睨みつけてくる。
「は、はぁ⁉ 心配なんかしてないし! 変態の心配なんかしてないし! メール返してこない事にイライラしてるだけなんですけど! もうっ! ちょっと、買い物行くんだからそこどいてよバカ!」
「うっ……」
近付いてきた彩芽に玄関側に蹴飛ばされ、鉄の扉に頭を打ちつけた。
水色パン……いや、蹴られる瞬間に見えたのは黙っておこう。
「ふんっ!」
彩芽がそのまま歩いていく。
左にある鉄の階段を降りようと階段の手すりを掴もうと……したが、高さが合っていないのか掴もうとしてやめた。
可愛い……じゃなくて――
「ちょっと待って――」
「知るかバカ! 変態! そのまま散りくたばれ! ばーかばーか!」
めちゃくちゃだ……が、そこがまた良い……。これがツンデレの魔力なのか……。
守りたいあの笑顔……。
立ち上がって二階の手すり越しに歩いていく彩芽を見つめる。プンスカしながらアパートの敷地を出て行く。
「……」
……近付いてしまえば好きになってしまいそうで、その度に自分に課した戒めが蘇る。誰とも付き合わない。人を好きになってはいけない……。
彩芽ともっと話したい想いと自分への戒めが頭の中で駆け巡る。
「ぁあああ……らしくない、らしくないぞ銀治……」
髪をくしゃくしゃにして雑念を振り払う。
「よし、とりあえず走ろう」
階段を駆け下りて屈伸、手首足首回して――
「よし」
アパートの敷地から大学と反対方向に向かって走る。
一車線の道、目の前を彩芽が歩いている。
「……」
今はまだ話しかけないでおこう。気持ちの踏ん切りが付かないまま話しかけるなんて相手に失礼だ……。
「ぁ……」
彩芽の隣を走り去った。後ろで微かに聞こえた。だが、今は無性に走りたい気分なのでそのまま走り続ける。
人気のない路地裏を走っていく。大通りに面した所は人が多いので絶対に行かない。同じ大学の学生らしき集団が出歩いているかもしれない。基本的にリスクは避けるべきだ。
「はぁっ……はっ……」
だんだんと汗が滲んでくる。
そういえば、大学と家の行き来しかしないから、この辺の土地ってよく知らないな……。
まぁ、迷子にはならんだろう。
少し飛ばそう。
「……はっ……はっ……」
息が上がる。
呼吸が荒くなる。
吸い込む量が減っていく。
「はっ……はっ……」
喉が乾いてきた……が、財布は持ってきていない。走りながらポケットを確認するも鍵だけしかない。
「あ、やば……」
ゆっくりとスピードを下げてひと気の無い路地を歩く。
「ここ……どこだ……」
走り回った挙句、迷子……スマホも置いてきた……。
くっ……まさか大学生になって道に迷っただと……?
と、とりあえず見覚えのある道を辿ろう。まずは大通りに出ればどうにかなるだろう。
「しんど……」
汗をジャージで拭う。久しぶりに走ると気持ちいいが、体力落ちすぎだろ……。
大通り、片側二車線の国道に出た。道路上の書かれた標識を見てもどこかサッパリ分からない。
今何時だろうか。
「汗が止まらん……」
ジャージで汗を拭いながら、なんとなく来たであろう道に向かって歩いていく。
「お、あのスーパー……」
見通しの良い真直ぐの車線に大きなスーパーが見えた。確か、あのスーパーを通り過ぎて左に曲がれば大きな公園に辿り着くはず。そこからなら帰り道も分かるか。
目印を発見したので再びランニング開始。
歩道の数人を追い抜かしてひたすらスーパーを目指す。
駐車場が手前に見えて奥の方にスーパーの建物。
「はっ……はっ……」
駐車場の真ん中には細い鉄柱の上に大きな丸時計が付いていた。
十二時過ぎか……ちょうど一時間くらいか。
帰るか。
スーパーの角を曲がって一車線の道、公園の芝生が見えた。
大人の膝丈くらいしかない柵の向こう側には、柵と並行するかのように点々と四人掛けのベンチが並んでいた。
無駄に広い公園……平日の昼食時だし、さすがに人の気配はないか。
「あ……」
公園突っ切れば近道かもしれない。
ふとした好奇心で柵を乗り越えて芝生を踏みつける。アスファルトとは違って柔らかい感触が靴の下から伝わってくる。なんだか懐かしい。
「っ……!」
目の前を飛び交う虫が鬱陶しい……さっさと走り抜けよう……。
足を上げて助走をつけようとするも、足が「もうやめて……」と訴えてきた。いや、自分自身で限界を決めているだけ……だが、さすがに疲れたな。虫を避けながら歩こう。
「すー……はー……」
真直ぐアパートの方へと向かって呼吸を整えながら歩く。
「ん……?」
視界にの端にこじんまりとした建物と人影が映った。
こんな平日の昼間から大人二人と子どもらしき姿。自然と目が寄っていく。
「あれ……」
十メートルほど先には何か見覚えのある金髪と茶髪に……彩芽が居た。公衆便所の前で何をしているんだろうか。
茶髪の手にはスーパーの買い物袋。彩芽は嫌がっている素振りを見せているように感じる。
少しずつ距離を詰めていく。
「っ!」
金髪の手が彩芽に触れた。嫌な予感がして走る。無性に腹が立っている俺がいるのはなぜなのか……。
駆け寄りながら息を吸い込み声をかける。
「おい!」
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