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第四話「銀髪美少女三原則その三、悲しませない」
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――ホレホレ! ドレドレ⁉ 世界はダァアアアアアアクッ♪
「――うるさ……」
目を閉じたまま手を伸ばしてスマホを探す。多分ここだろう……あれ、どこだ……ああ、あったあった。
掴んでスマホのアラームを解除。
「……あ」
スヌーズにしてたから五分後にもう一回鳴るのかコレ……。
上体を起こしてボサボサになっている髪の毛を押さえる。どの角度から押さえてもどこかしら跳ねている……。今日の寝ぐせは一段とひどいな……。
「はぁ……」
挨拶に行ってから丁度一週間……サークルにも入ってないから体が鈍って仕方ない。中学、高校は父の元で鍛えてもらってたし、このままだとやばいな。
「……」
スマホのメール画面を開き彩芽からのメールを見つめる。
『その、今日はありがと』
挨拶に行った時、気分に任せて素気なくしてしまった……我ながら情けない……。
スマホの画面に映る彩芽からのメール。結局、未だに返信していない。
今更返しても嫌われるだけだろうし、送らない方が無難だろう。
「ふぅ……」
再び布団の上に寝転がる。思っていたよりも自分が情けない……。
過去を振り返って暗くなることは度々あったが、こんなにも長引くとは思ってなかった……。
手を握り締める感覚が前よりも弱い気がする。
「……久しぶりに筋トレするか」
布団から抜け出して父から仕込まれたトレーニングを開――
――ホレホレ! ドレドレ⁉ 世界はダァアアアアアアクッ♪
アラーム消してっと……。最初から消せば良かった……。
腹筋、背筋、腕立て伏せ、スクワット……大学に入ってから怠けていた分の反動が思ったよりもきつい。二週間だけでも怠けるとすぐに駄目になるのか。
「…………はぁ……はぁ……」
休みの日専用のトレーニング終了……。寝ぐせも汗もひどい。
「シャワーだな……」
寝間着を洗濯機に放り込みシャワーを浴びる。
さっと流してタオルで体を拭く。濡れた頭にタオルを被せたまま居間に戻って地べたに座った。
「……」
『その、今日はありがと』
「くそ……」
スマホを触るとついついメール画面を開いてしまう自分に苛々する。気になるとか可愛いとか、そういうものではない。断じて違う。
「好……いやいや……」
俺に人を好きになる資格なんてないしな……。
適当にスマホをいじってみるも、スマホのゲームは最近ログインすらしてない。当分する気にはなれないな……。
「はぁ……何やってんだろ……」
筋トレしてみたけどあんまり気分は変わらない。鬱陶しい思い出が頭の中をぐるぐる回り続ける。
「うーん……」
筋トレで疲れたことには疲れたけど何か物足りない。腕も足も疲労で少し震える。だが、何かが足りない。
なんだろうか。腹筋背筋腕立て伏せにスクワット……。
「あ……ランニングか……」
今は十一時、一時間くらい走るか。でも、また風呂入らないと……。まぁ、いいか。
「……どうせやることないしな」
気持ちを切り替えるためにも走りに行こう。
濡れたタオルを洗濯機に突っ込む。
ランニング用の黒ジャージに着替えて玄関へ。靴を履いて……。
「あ、スマホ……」
うん、まぁ一時間くらいだし大丈夫だろう。どうせ誰からも連絡の無いスマホ持ち歩いても意味無いしな。
「いってきます」
玄関を開ける。鍵を差し込み回す。
「あ……」
右の方から聞き覚えのある声がした。
振り向くと数歩先に彩芽がこちらを向いて立っていた。
麦わら帽子に薄めの白いインナーシャツ。前を開けた黄色いカーディガンと膝丈よりも上の水色のスカート……少し厚底の靴。
「……」
彩芽から視線が外せない。なんですかこれ、どこぞの天使ですか。向日葵がここに咲いてるんですけど誰か植える位置間違えてませんかね。可愛すぎるんですが俺はどうすれば良いんでしょうか。
「……なによ」
頬を膨らませて帽子のつばを握りながら睨む彩香に何故か胸がドキリと動く。
「いや、その、可愛いなと――」
お、思わず本音が漏れてしまったが可愛いは正義……。この真理だけは揺るがない。
「なっ……!」
急激に頬を染める彩芽がそのまましゃがみこんだ。閉じた太ももの隙間から楽園が……。
「その、あ、あや……ごほん、お嬢さん」
「な、なによ……!」
「それでしゃがむと見えるんで……」
「ふぁ⁉」
急いで太ももの間に両手を挟み込んで赤面する彩香。
銀髪美少女に妹とツンデレ属性を付与した上に天然まで上乗せされているだと……そんなバカな……。
「グフッ……!」
あまりの威力に片膝を地面に着いてしまった。ズルくないですか……落ち込んでたこの一週間が馬鹿みたいだ……。
「なっ……そこまでして覗く気なのっ⁉」
彩芽がスカートを押さえながら立ち上がる。
「ち、違う……あまりの衝撃に耐えられなくて……」
「いや、意味分かんないんだけど……」
これ以上、可愛さの暴力を味わうと死んでしまうかもしれない……。話題をどうにか変えなければ……。
「そ、そう言えば女神は……」
「ん? 女神って何?」
怪訝な表情で見下される。これでさえも俺には耐性がないのか――
「グハァッ……!」
「いや、もうほんとにあんたのリアクション意味分かんないんだけど!」
「はぁ……はぁ……すみません……色々とダメージが――」
色々……という言葉でふと我に返る。
そうだ、このままでは余計に惚れてしまう……。それではマズイ……。
「ま、まぁ……」
彩芽は言葉を詰まらせながらもじもじしている。
「な、なんですか?」
「そ、その……元気になったんなら、それで良い……し……」
だんだん小さくなる彩芽の声。
「ん?」
まさか、天使が俺の事を心配してくれていた……?
「――うるさ……」
目を閉じたまま手を伸ばしてスマホを探す。多分ここだろう……あれ、どこだ……ああ、あったあった。
掴んでスマホのアラームを解除。
「……あ」
スヌーズにしてたから五分後にもう一回鳴るのかコレ……。
上体を起こしてボサボサになっている髪の毛を押さえる。どの角度から押さえてもどこかしら跳ねている……。今日の寝ぐせは一段とひどいな……。
「はぁ……」
挨拶に行ってから丁度一週間……サークルにも入ってないから体が鈍って仕方ない。中学、高校は父の元で鍛えてもらってたし、このままだとやばいな。
「……」
スマホのメール画面を開き彩芽からのメールを見つめる。
『その、今日はありがと』
挨拶に行った時、気分に任せて素気なくしてしまった……我ながら情けない……。
スマホの画面に映る彩芽からのメール。結局、未だに返信していない。
今更返しても嫌われるだけだろうし、送らない方が無難だろう。
「ふぅ……」
再び布団の上に寝転がる。思っていたよりも自分が情けない……。
過去を振り返って暗くなることは度々あったが、こんなにも長引くとは思ってなかった……。
手を握り締める感覚が前よりも弱い気がする。
「……久しぶりに筋トレするか」
布団から抜け出して父から仕込まれたトレーニングを開――
――ホレホレ! ドレドレ⁉ 世界はダァアアアアアアクッ♪
アラーム消してっと……。最初から消せば良かった……。
腹筋、背筋、腕立て伏せ、スクワット……大学に入ってから怠けていた分の反動が思ったよりもきつい。二週間だけでも怠けるとすぐに駄目になるのか。
「…………はぁ……はぁ……」
休みの日専用のトレーニング終了……。寝ぐせも汗もひどい。
「シャワーだな……」
寝間着を洗濯機に放り込みシャワーを浴びる。
さっと流してタオルで体を拭く。濡れた頭にタオルを被せたまま居間に戻って地べたに座った。
「……」
『その、今日はありがと』
「くそ……」
スマホを触るとついついメール画面を開いてしまう自分に苛々する。気になるとか可愛いとか、そういうものではない。断じて違う。
「好……いやいや……」
俺に人を好きになる資格なんてないしな……。
適当にスマホをいじってみるも、スマホのゲームは最近ログインすらしてない。当分する気にはなれないな……。
「はぁ……何やってんだろ……」
筋トレしてみたけどあんまり気分は変わらない。鬱陶しい思い出が頭の中をぐるぐる回り続ける。
「うーん……」
筋トレで疲れたことには疲れたけど何か物足りない。腕も足も疲労で少し震える。だが、何かが足りない。
なんだろうか。腹筋背筋腕立て伏せにスクワット……。
「あ……ランニングか……」
今は十一時、一時間くらい走るか。でも、また風呂入らないと……。まぁ、いいか。
「……どうせやることないしな」
気持ちを切り替えるためにも走りに行こう。
濡れたタオルを洗濯機に突っ込む。
ランニング用の黒ジャージに着替えて玄関へ。靴を履いて……。
「あ、スマホ……」
うん、まぁ一時間くらいだし大丈夫だろう。どうせ誰からも連絡の無いスマホ持ち歩いても意味無いしな。
「いってきます」
玄関を開ける。鍵を差し込み回す。
「あ……」
右の方から聞き覚えのある声がした。
振り向くと数歩先に彩芽がこちらを向いて立っていた。
麦わら帽子に薄めの白いインナーシャツ。前を開けた黄色いカーディガンと膝丈よりも上の水色のスカート……少し厚底の靴。
「……」
彩芽から視線が外せない。なんですかこれ、どこぞの天使ですか。向日葵がここに咲いてるんですけど誰か植える位置間違えてませんかね。可愛すぎるんですが俺はどうすれば良いんでしょうか。
「……なによ」
頬を膨らませて帽子のつばを握りながら睨む彩香に何故か胸がドキリと動く。
「いや、その、可愛いなと――」
お、思わず本音が漏れてしまったが可愛いは正義……。この真理だけは揺るがない。
「なっ……!」
急激に頬を染める彩芽がそのまましゃがみこんだ。閉じた太ももの隙間から楽園が……。
「その、あ、あや……ごほん、お嬢さん」
「な、なによ……!」
「それでしゃがむと見えるんで……」
「ふぁ⁉」
急いで太ももの間に両手を挟み込んで赤面する彩香。
銀髪美少女に妹とツンデレ属性を付与した上に天然まで上乗せされているだと……そんなバカな……。
「グフッ……!」
あまりの威力に片膝を地面に着いてしまった。ズルくないですか……落ち込んでたこの一週間が馬鹿みたいだ……。
「なっ……そこまでして覗く気なのっ⁉」
彩芽がスカートを押さえながら立ち上がる。
「ち、違う……あまりの衝撃に耐えられなくて……」
「いや、意味分かんないんだけど……」
これ以上、可愛さの暴力を味わうと死んでしまうかもしれない……。話題をどうにか変えなければ……。
「そ、そう言えば女神は……」
「ん? 女神って何?」
怪訝な表情で見下される。これでさえも俺には耐性がないのか――
「グハァッ……!」
「いや、もうほんとにあんたのリアクション意味分かんないんだけど!」
「はぁ……はぁ……すみません……色々とダメージが――」
色々……という言葉でふと我に返る。
そうだ、このままでは余計に惚れてしまう……。それではマズイ……。
「ま、まぁ……」
彩芽は言葉を詰まらせながらもじもじしている。
「な、なんですか?」
「そ、その……元気になったんなら、それで良い……し……」
だんだん小さくなる彩芽の声。
「ん?」
まさか、天使が俺の事を心配してくれていた……?
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