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21. 山小屋
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二人が発見した山小屋は、十二×十メートルほどのこぢんまりしたロッジだった。
扉の取っ手や段ボールで塞がれた窓のサッシは古く、だいぶ前に建てられたのだとわかる。
その小屋の中、中央に置かれたテーブルの上に若宮が横たわっていた。半裸に剥かれ、両手両足をそれぞれテーブルの足に手錠で拘束されている。
その右側の壁際には大小さまさまなサイズのボックスが置かれたラックが、奥にはデスクが、左側には三脚にセットされたハンディカメラがある。デスクにはノートパソコンがあり、ビデオカメラはちょうど若宮を見下ろす角度で置かれていた。
近付き、口のテープを取ってやると、若宮は突如として叫び出した。
「うわあぁぁぁ! うわあぁぁぁぁ! 殺さないでくれぇ! やめろぉぉぉぉ! うわぁぁぁぁぁ!」
「ちょっ、静かに!」
咄嗟にテープを貼り直すと、若宮はさらに目を見開いて暴れ出す。明らかに正気ではなかった。
「ちょっと、落ち着いて」
しかし若宮は暴れ続ける。手錠が食い込んで手首が抉れ、血が滲んでいた。
しばらく声をかけたが、一向に落ち着く気配がないので諦めて部屋の探索を始める。更科が奥の机を調べているようなので、手前のハンディカメラを見てみることにした。
電源を入れ、画面を操作して録画データを探すと、日付別に保存されている。一番古いものは十日前で、それから数日間が空き、四日前から昨日にかけては連日撮影されていた。
一番古いデータから見てみることにして再生ボタンを押すと、動画が再生され始める。
全く同じ場所で同じ構図で撮られた動画は、被写体だけが違った。そして、写っていたのは「人間だったもの」とでも形容すべき、血まみれの肉塊だった。
顔はほぼ原型を留めておらず、目も歯もない。真ん中に空いた空洞がかろうじて口と判別できる程度の、酷い有り様だった。
若宮同様裸の上半身は傷だらけで、あちこちに赤黒い血がこびりついている。指の爪は全てなかった。
第一性は男性のように見えるが定かではない。傷だらけで骨格さえ判然としないからだ。
その人物の上に不意に陰が落ちた。それを感じ取ってか身じろぎをして呻き始める。驚くことにまだ生きていたようだ。しかし、叫ぶ力はもう残っていないようだった。
次の瞬間、室内に機械音が響き渡り、回転する刃が画面に出現する。チェーンソーだ。それがテーブルに拘束された腕に近付いてゆき、絶叫と共に血飛沫が上がった。
時籐はその瞬間にビデオカメラを閉じた。そしてわずかに震える手でカメラを三脚に戻す。
これは殺人記録の映像だ。おそらくは若宮の前に捕まり、ここで殺された人の……。
「ッ……」
「どうした? 何か声聞こえたけど。何か録画されてた?」
更科がパソコンから目を上げ、こちらを振り向く。時籐は乾いた唇を舐めて言った。
「ああ、あった……。利人、早くここから出よう」
「ヤバいもんでも写ってた?」
更科が椅子から腰を上げ、近づいてきてビデオカメラに手を伸ばす。時籐はそれを制止して首を振った。
「見ない方がいい」
「何が写ってた?」
「修さんの前に捕まってた人……多分。録画は十日ぐらい前だった。後は四日前から昨日にかけて録画されたやつがあって、それは修さんのだと思う。数日前から家に帰っていなかったらしいから」
更科は神妙な顔になり、腕組みをしてまだ暴れている若宮を見た。
「なるほど……」
「パソコンの方はどう? 何かあった?」
「いや、ロックかかってて見れなかった。けどこれ、机の引き出しで見つけた」
そう言ってA4サイズの茶封筒を渡してくる。宛名を見ると、何と時籐の両親宛てだった。
「何だよこれ……」
封のされていない封筒を開けると、中にはペラ紙一枚だけが入っている。取り出してみると、紙の中央に一言『裁きは下された』と書かれていた。直筆ではなく、ワープロの文字だ。
裏を見ても何もない。これは一体何なのか。宛名を見る限り時籐と関係があることは間違いない。関係があるどころか次の標的は自分なのではないか?
一気に口が乾いてきて、時籐は生唾を飲み込んだ。
「これもしかして……次の標的は俺ってこと?」
その問いを更科は否定しなかった。
「……かもな」
「マジかよ……」
恨みを買うようなことをした覚えはない。しかし、拷問殺人の記録を録画しておくような異常者が標的を選ぶのに理由があるとも思えなかった。
裁き云々もそいつの頭の中でしか通じない何らかの理由付けだろう。オメガであること自体が罪だなどというとんでもない思想の可能性もある。
とにかく、今なすべきことは一刻も早くこの場から立ち去ることだった。同じことを思ったらしい更科が聞く。
「こいつ、どうする?」
「どうするって……」
「助けるか、置いてくか。一応手錠のピッキングはできるけどちょっと時間かかると思う。その前に落ち着かせなきゃないし……助けるなら、今すぐ出発はできない」
「………」
「……俺はどっちでもいいよ。このまま帰っても」
「置いてくってこと?」
「何も見なかったことにすればいい」
更科は驚くほど醒めた目で若宮を見ていた。それに一時言葉を失う。
更科は、こんな奴だっただろうか? これほどに冷たい目をする奴だっただろうか?
「いや、さすがにそれは……」
反駁すると、更科はこちらを見て真顔で聞いた。
「許せんの? こいつのこと」
「許せるかっつったらそれは無理だけど」
「じゃあ置いてきゃいいじゃん。当然の報いだろ」
「……記憶を消せるんならそうするよ。けど、そうじゃないだろ。嫌なんだよ、子供を見る度に思い出すの」
若宮を見殺しにすれば、生涯子供の顔を見る度に今日のことを思い出し続けるだろう。それは嫌だ。
若宮にはこの世から消えて欲しいと思っているが、それはこのような形でではない。自分の預かり知らぬところで自分とは無関係に死んで欲しい。
この小屋にさえ来なければそれが叶ったのにと思うと、複雑な気分だった。
時籐の答えを聞き、更科は少し考えてから頷いた。
「お前がそう言うなら。じゃあ一旦落ち着かせないとな」
「ああ」
二人は若宮に近付いて再び声をかけ始めた。しかし、いくら宥めても一向に落ち着かない。時籐のことさえ認識していないようだった。
よほど恐ろしい思いをして正気を失ったのかもしれない。だとしたらもはや死を願う必要はないのかもしれない。一瞬の死よりも長く続く生の方がその苦しみは大きそうだからだ。
そんなことを考えながら若宮を宥めていると、更科が声掛けを中断してため息を吐いた。
「ダメだなこれ。失神させて運ぶしかないかも」
「それしかないか……」
「うん。ここら辺押さえるとできるからちょっとやるわ」
更科が自分の左顎の下辺りを指し示し説明する。ヒトは、左右の顎の下にある頸動脈の分岐点あたりを圧迫されると、脈拍と血圧が低下して失神する。それをするということだろう。
時籐が頷くと、更科は若宮の首に手をかけた。左顎の下を指で押さえ、反応を待つ。するとまもなくして暴れていた体がぐったりと力を失った。それまで間断なく聞こえていた呻き声も消え、若宮が気を失ったのがわかる。
更科は手を離して呼吸を確認し、リュックから安全ピンを取り出した。そして若宮の左手とテーブルの脚を繋ぐ手錠の鍵穴に差し込んでカチャカチャやり出す。
「本当にピッキングできるんだ」
すると相手は頷いた。
「仕事柄必要なこともあってね」
「ふーん」
それは法に抵触する行為ではないのかと思ったが口には出さず、何かないかとラックの箱を開ける。すると、中にはナイフ類の他、ペンチやドライバーといった工具が入っていた。
その中のペンチを手に取り、若宮の右手の手錠を切りにかかる。簡単には切れなかったが、しばらく鎖を削っていると、やがて切れた。時籐がその一本を切っている間に更科は左手と左足の解錠に成功し、右足に取りかかった。覚えのある甘い香りがしてきたのはその時だった。
昨日加賀を襲い、さっき事件現場でニアミスした青い服のアルファの匂いーー殺人鬼が戻ってくる。
「あいつが来る」
警告すると、更科がはっとしたように顔を上げてこちらを見た。
「あいつってさっきの?」
「ああ。匂いが……近づいてくる」
更科は少し逡巡した後、手元に目線を戻した。そしてピッキングを再開する。それを見ながらどんどん近付いてくる匂いに、見捨てるという選択肢が頭をよぎる。
このままでは間に合わないーー間に合ったとしても若宮を担いで逃げ切るのは無理かもしれないーーならば置いていくか?
それとも篭城するか? ラックと机で扉を塞げばーーいや、そこまでして助ける価値があるのか?
ぐるぐると考えながら床に置かれたリュックを背負い、逃げる準備をする。そしてもう行こう、と口にしかけたそのとき、カチリと音がして最後の鎖が切れた。
「よし、開いた」
更科は素早く若宮を肩に担ぎ、小屋の外に出た。続いて外に出た時籐は匂いのする方角を再度確認し、南を指差す。
「あっちから来る」
それは尾根の方向であり、二人が進んでいた方向だった。鬱蒼と木々が生い茂った山の中、まだ人影は見えない。
こうなると、北へ戻るしかない。二人は出来るだけ足音を立てないようにしながら、北へ向かって早足で歩き出した。
無言で道なき道を下り、北へ北へと進んでゆく。そして沢の音が聞こえてきた辺りでアルファの匂いが消えた。
そのことを伝え、その場で一旦休憩することにする。レジャーシートを敷いて若宮を寝かせ、近くの切り株に腰を下ろす。
時籐は深々と息を吐き出し、額の汗を拭った。山は全然暑くないのに冷や汗をかいている。
「はぁ……」
「水飲む?」
「うん。先飲んでいいよ」
そう言うと、更科はリュックからペットボトル水を取り出し、三分の一ほど飲んで時籐に手渡した。
「あと全部いいよ」
「うん。この辺川近そうだな。後で水汲みにいくか」
「だな。ちょっと見てくるわ」
更科はそう言って立ち上がり、更に斜面を下っていった。
時籐は三分の一ほど残っていた水を飲み干し、辺りを見回した。
岩や木の根で不安定な足場が続く斜面の中腹で、周りには木しか見えない。ずっと似たような景色が斜面の上から続いていた。
それを眺めながらこの後どうするかについて色々考えていると、更科が戻ってきた。
「この先は崖になってて川には降りられなかった」
「そうか」
「でも別ルートで降りられるところあるかも。スマホ貸して」
「ほい」
言われた通りにすると、更科はスマホの地図を眺めて、今いる場所の北東を指差した。
「等高線見たらこの辺の傾斜が緩い」
「じゃあそっち行ってみる?」
「だな。まずは水を確保しないと。水がありゃ一週間はもつ。この時期ならそこまで寒くもないし。秋とか冬じゃなくてよかったよな」
そう言われてハッとする。そういえば、更科は冬に来ようとしたのではなかったか?
もしあの時行っていたら……。
「冬に来なくて良かったんじゃない?」
そう言うと、更科は頷いた。
「マジでそう。俺死んでたかも」
「あいつ……マジで何?」
「R山で見つかったオメガの人を襲った奴じゃない?」
「でも警察が捜査したはずだよな? 何で捕まってないん?」
「警察が捜査したのは多分R山。こっちは調べてないんだと思う」
三人が今いるのはR山の北にあるO山だった。先程の小屋もO山だったはずだ。つまり、犯人が根城にしているのはO山だ。おそらくカモフラージュのために遺体をR山に捨てているのだろう。
納得した時籐は相槌を打った。
「なるほど」
「つうかこの後どうする?」
「そこだよなぁ……。O山は何とか通り抜けるとして……その後のR山は迂回したい。お前は?」
そう聞くと、更科は地図と睨めっこをしながら頷いた。
「俺も。この辺……西側の尾根伝いにぐるっと回って降りれるかも」
更科が示したのは、R山西側のZ峠を通り、K山経由でキャンプ場に戻るルートだった。R山を通るよりは遠回りになるが、危険人物と遭遇する危険性は低くなる。時間はかかってもそちらの方が良いだろうということで、迂回ルートで意見が一致する。
二人は水を確保してからZ峠に向かうことにした。少し進んだ先の沢で空のペットボトルに水を汲み、Z峠に向けて歩き出す。
道はところどころ険しく、転ばないように注意しながら進んだ。アルファの匂いに細心の注意を払い、少しでも気配があったら大回りをするのを繰り返し、ようやくO山を通り抜けたのは昼過ぎだった。
二人は短い昼休憩を取って残り少ないエナジーバーを二本ずつ食べると、再び歩き出した。時折抑えた声で会話をしながら進み続ける。するとやがてZ峠に到着した。
時刻は十四時過ぎ。このままのペースで進んで日没までに間に合うのか不安になってくる。しかし、人一人担いでいる更科にこれ以上ペースを上げろと言うわけにもいかない。
R山と似て倒木が多く、木が繁茂して薄暗いZ峠には誰もいなかった。来るまでの道程でも一人も他の登山客に会っていない。
更科といなかったらパニックになっていたな、と思いながら道順を確認する相手の横に立つ。そして更科の手元の地図を覗き込んでいると、不意に雨粒が落ちてきた。
「雨……?」
見上げると、急に空が暗くなって雨脚が強まってくる。雨は降り始めてすぐに勢いを増し、やがてざんざんぶりになった。
二人は近くの大きな木の下に避難し、レジャーシートの上に若宮を寝かせた。
雷が鳴り始め、空が光る。その空を見上げながら更科が独り言のように呟いた。
「さっきまであんなに晴れてたのになぁ」
相槌を打って山肌に叩きつけるように降る雨を眺めていると、不意に若宮が起き上がった。そうして数秒間は正気を取り戻したかに思えた。
しかし、時籐と更科の姿を目に捉えた途端に悲鳴をあげて立ち上がった。そして二人が止めるまもなく、意味不明な言葉を喚き散らしながら雨の中に飛び出していった。
「あっ、待て!」
そう叫んで追おうとした更科の腕を掴み、止める。
「追わなくていいのか?」
振り返って聞く更科に頷く。
「ああ。もういい」
こんな土砂降りの中を走って追いかければ転倒や滑落の危険がある。そうなったら良くて捻挫、最悪命を落とす可能性すらある。更科をそんな危険には晒せなかった。
それに、追いついたとてあんな状態の若宮をどう落ち着かせるのか。『誘導』や『威圧』が使えない更科は、力で捩じ伏せるしかない。その上、相手は『誘導』や『威圧』を使えるのだ。一体どうやって若宮を制圧するのか。
更科にとってのリスクがあまりに大きすぎる。だから止めたーーそれが若宮の死を意味するのをわかった上で。
二人とはぐれれば、若宮はほぼ確実に遭難するだろう。もちろん、電波が届くところまで下山したらすぐに救助要請を出すが、あの状態ではその前に滑落して死ぬ可能性が高い。
だが、それでも仕方ない。助けるために出来るだけのことはした。これ以上はもうどうしようもない。そう思って更科を行かせなかった。
「わかった」
更科は神妙な面持ちで頷き、戻ってきた。掴んでいた腕を離し、更科と並んで木の根元に腰を下ろす。そうして二人はぽつぽつと会話を交わしながら雨が止むのを待つのだった。
◇
雨はそれから四十分に渡って降り続け、突然やんだ。二人は腰を上げ、雨でぬかるんだ山道を歩き始めた。K山に向かって稜線伝いに南下していく。進んでいくに従い視界が開けてきて、深い緑の山々が連なる奥秩父の絶景が左右に広がる。息を呑むような美しい光景だったが、それを楽しむ余裕はなかった。日暮れがどんどん近づいているからだ。
五月上旬のこの時期、日没は十八時半前後。それまでに下山できなければ山でもう一泊することになる。それだけは避けたかった。
若宮を担ぐ負担がなくなった分ペースを速めて進んでゆくと、やがて切り立った岩場が見えてきた。尾根の片側が崖になっており、勾配もきつい明らかな難所だ。岩場に設置された鎖を使って上り下りするような場所もある。
二人はその手前で立ち止まった。
「うわー、これきついな」
更科が岩場を見上げて言う。その意見には同意だった。とても登山初心者が登れるような場所ではない。その上、岩場は雨で濡れていた。
「どうする?」
「装備もないし、戻るしかないな。地図見して」
時籐はズボンのポケットからスマホを出し、手渡した。それを見て、更科が呟くように言う。
「一旦Z峠に戻ってR山の方通って下山するしかないか……。時間的にギリかもな」
そう言われて時計を見る。時刻は十六時前だった。日暮れまでにキャンプ場に戻れるだろうか。
「じゃあ戻るか」
「ああ。リュック持つよ」
更科はそう言って手を差し出した。
「いいの?」
「うん」
「どうも」
リュックを渡すと更科はそれを背負った。
岩場さえなければK山に入れたのにと思いながら目の前の障害を眺める。日本百名山に選出され、登山客が多いK山まで辿り着ければ何とかなるーーそんな気がしていただけに落胆が大きかった。
迂回ルートを提案しなければ良かったなどと考えていると、不意に脳内に声が響いた。
『こちらへ来い』
その途端に体が勝手に回れ右をし、来た道を戻り始める。その時、視界の先に青い何かがちらっと見えた。
それと同時に風に乗って相手のフェロモン臭が漂ってくる。それを嗅いだ瞬間に確信した。あいつだーー昨晩加賀を襲い、若宮を監禁したアルファ。そのアルファと全く同じ、熟したマンゴーのような匂いがした。
相手は茂みの向こう、四十メートルほど先にいる。その時、再び脳に声が響いた。
『こっちに来い』
それはアルファの使う『誘導』だった。全身に氷水を浴びせられたような恐怖で声が出なくなる。その間にも体は勝手に動いていった。
何とか声を絞り出し、異常を伝える。
「利人、俺今誘導されてる。あのアルファが来てる……」
「えっ、どこ?」
「あっち」
震える手で前方を指差す。怪訝な顔でそちらを見た更科の表情が凍りついた。
「嘘だろ……。啓、行っちゃダメだ」
「んなこと言ったって無理だよ、『誘導』使われてんだから」
歩き続ける時籐の腕を更科が掴み、引き戻そうとする。しかし、意に反して体が勝手に抵抗した。
その場で揉み合っていると、向こうのアルファがこちらへ向かって歩き出すのが見えた。
「ヤバい、あいつ来る」
「啓、背中乗って!」
「無理! お前もう行けよ、死ぬぞ」
このままでは二人とも死ぬ。そう思い、逃げるように言うと、相手は首を振った。
「一緒に行くんだよ! しょうがねえ、担ぐわ。ちょっとごめん」
更科はそう言ってリュックを地面に下ろした。そして時籐の前に回り込み、肩に担いで稜線から降りた。木や茂みに覆われた道なき道を出来る限りの速さで降りてゆく。人を担いで急な岩場を登れるわけもないので、そうするしかなかったのだろう。
視界が逆さまになり、更科の体越しに追ってくるアルファが見えた。加賀を襲い、若宮を監禁した青い服の殺人犯ーーそのアルファにずっと尾けられていたのだ。
こんなに接近するまで気づけなかったのは、雨が降ったせいだろう。雨が降ると、フェロモンを感知しづらくなるのだ。
あの雨さえなければこれほど距離を詰められることもなかったはずだ。
雨さえなければ、と思っていると、次第にアルファとの距離が開き姿が見えなくなる。
茂みや藪が多く、視界が悪いので相手がこちらを見失ったようだ。時籐はほっと息をついた。
更科は時折バランスを崩しかけながらもなんとか持ちこたえ、山を下り続けた。荒く息をつきながら、無言で進み続ける。
その辺りで『誘導』の声が聞こえなくなったので更科に声をかける。
「もう大丈夫。歩ける」
「まあ一応もうちょっと行ってから降ろすわ。また誘導されたらここじゃ対応できないから」
確かに更科の言う通り、傾斜があり足場も悪い山道で再び担ぐのは難しいだろう。
「わかった」
時籐は了承し、そのまましばらく身を任せた。更科は時折後ろを振り返りながら、茂みをかき分けて斜面を降り続けた。
そしてある程度行ったところで立ち止まり、時籐を地面に降ろした。額に滲んだ汗を拭い、後ろを振り返って深々と息をつく。
「ふぅーっ。何とかなったか」
「悪ぃ」
「いいよ。しょうがないことだし」
「声聞こえなかった?」
「ああ。やっぱ行動フェロモンは感じないままっぽいな」
更科はどうやら『誘導』や『威圧』といった行動系フェロモンには反応しないままらしかった。復活したのは性フェロモン受容体だけだったのだろう。
ということは、昨晩加賀を助けられた可能性がある。あの時助けに行こうとした更科を止めなければ、加賀は助かったかもしれなかった。
それにひしひしと後悔と罪悪感を感じる。
時籐は呟くように言った。
「そうか……」
「はぁ、マジでヤバかったな。あいつってさっき小屋に来た奴だよな?」
「うん。匂い同じだったから多分昨日の奴とも同じ奴。ごめんな、雨で近くに来るまで気付かんかった」
「それはしゃーなし。いやでもまずいな、リュック置いてきちまった」
更科は時籐を運ぶ際に邪魔になると判断し、リュックを捨てた。その判断が間違っていたとは思わないが、食料や水やツェルトといった生命線はすべてあそこに入っていた。それなしで長時間生き延びられるとは思えなかった。
しかし救いは地図があることだろう。スマホはズボンのポケットに入れていたのだ。それで現在地を確認し、一刻も早く下山しよう、とポケットに手をやる。しかし、あるはずの膨らみがなかった。
冷や汗が吹き出してくるのを感じながら全てのポケットを確認する。しかしどこにもなかった。
「やば、スマホない」
「マジで?」
「ああ……。落としたかも」
どうやら更科に担がれた時にズボンのポケットから落ちてしまったようだ。
「ちょっと戻って探すか」
更科の提案に頷き、下ってきた斜面を登り返してスマホを探す。しかし三十分以上探しても見つからなかった。そうこうしているうちに夕暮れが迫り、夕日が鬱蒼とした山の中を照らす。
本格的に遭難したのではないか、と思ったのはこの時だった。
「はぁ、腹減った」
探し疲れ、近くの木の根元に腰を下ろして息をつく。驚くほどに空腹だった。それに喉も乾いている。こんなことなら大事に取っておいた携行食を食べておくんだった、と後悔しながら頭上に広がる木の枝葉を仰ぎ見る。水もない、食料もない、防寒具も地図もないこの状態でこの先どうすればいいのか?
日没までに下山できなければ山で夜を越すことになる。しかし、初夏とはいえ山の夜は冷える。時籐はインナーにシャツを羽織っただけの軽装だし、Tシャツに薄手のジージャン姿の更科も似たようなものだ。こんな軽装で夜を越せるのか?
しかも寝袋もないから地べたに寝るしかない。いや、寝ることさえできないかもしれない。
いったいなぜこんなことに、とため息をついていると、更科が周辺の捜索を切り上げ、隣に来て座った。そして深々と息を吐き出し、口を開く。
「腹減った」
「うん。リュックのやつ食っとけばよかったな~」
「はぁ~、スマホも無えし、最悪だな」
「マジで終わってる」
「まあ雨が降ってないのがせめてもの救いかな」
「………」
「スマホは諦めてリュック置いてきたとこに戻った方がいいかもな」
更科が顎を撫でながら言う。時籐はそちらを見て聞いた。
「戻るってこと?」
「ああ」
「でもあいつまだいるんじゃないの? それにリュックなんて取られてるだろ」
「じゃあここで夜を越すか?」
「………道わかる?」
「わからんけどこのまま登っていけば着くと思う」
「思うって……」
「じゃあ何か他に案あんの?」
そう聞かれて答えに窮する。これといった名案は思いつかなかった。
「………」
「登るしかないよ。登って尾根に出たら帰り道がわかる」
「わかった。じゃあ行くか」
「うん。とりあえずZ峠まで行こう」
時籐は頷いて立ち上がった。尻についた泥を払い、更科と共に山の斜面を登り始める。登っている間にどんどん日は暮れ、辺りが薄闇に包まれ始めた。そして日が完全に落ち切る直前、ようやく山の稜線に出た。
視界が開け、周囲の山々の向こうに隠れようとする夕日が見える。二人は辺りを見回して帰り道を探した。夕陽を背にして尾根が左右に延びているということは、向かって右が北、左が南だ。つまり右の道がZ峠に続いている。
夕暮れの中で目を凝らして見ると、木の生え方や周囲の景色に何となく見覚えがある気がした。帰り道を見つけたのだ。
時籐はほっと息をついて右の道を指差した。
「あっちじゃない?」
「俺もそう思う。でも今日じゅうに下りるのは無理そうだな。暗くなる前に寝る場所探した方がいいと思う」
「マジかー……。わかった」
二人は周囲を調べ、稜線から少し降りたところに手頃な窪地を見つけた。周囲に茂みが多く、身を隠せそうな場所だ。近くに大木があるので雨も凌げそうだった。
木の根元に腰を下ろすと、辺りが急激に暗くなり始めた。気温もグッと下がって肌寒くなってくる。
時籐は身震いをして頭上に広がる枝葉を見上げた。その隙間から覗く空から夕焼けの色は消え、薄い紺色になっていた。それで日没を悟る。
時計を見ると、暗い文字盤は十八時半過ぎを指していた。これ以上暗くなったら時計も読めなくなるだろう。
「六時半か……」
呟くと、更科が口を開いた。
「寒くなってきたな」
「ああ。夜が明けたらZ峠に向かおう」
「そうだな。明日にはあのアルファもいないと思うし」
「問題は今晩だな。俺、起きとこうかな。もし近くに来たら分かるし」
更科はアルファのフェロモンを嗅ぎ分けることができないので、時籐が不寝番をするしかないだろう。すると更科が言った。
「俺も起きとくよ。どの道寒くて寝れない」
「ほんと寒いな」
そう言って二の腕をさすると、更科がこちらに身を寄せてきた。そして時籐の肩に手を回して抱き寄せる。眉を顰めてなに、と聞くと、ガラス玉のような目がこちらを覗き込んだ。
「これで寒くないだろ」
「……多少マシだな」
「……ごめんな、こんなことになって」
「何で謝んの?」
「あのキャンプ場に行かなきゃこんなことにならなかったし」
「結果論だろ。そもそも熊が来なかった可能性もあるし。そしたらこんなことになってねえだろ」
「まあ確かに……。でも熊いねえな。ずっとあのキャンプ場辺りにいるのかね?」
確かに昨晩以降、熊の気配は全くない。あるのは殺人鬼と思しきアルファの気配だけだった。
「あの辺り餌場にしてるならそうかもな」
「トシさん……今どこにいるんだろ」
更科の言葉に忘れていた胸の痛みがぶり返す。時籐はぼそぼそと言った。
「な。キャンプ場戻ってるといいけど……」
「そうだなあ。合流できたら車で送ってってあげてもいいかもな。徒歩で来てたっぽいし」
「うん。あと下山したらすぐ通報しよう。救助要請も」
「だな。とにかく明日降りよう」
「ああ」
加賀が生きているというのは希望的観測だった。しかし、今はそれに縋るしかない。嫌な可能性を考えたら心が折れそうだった。
時籐は、ともすれば崩れそうになる心の均衡を保ちながら更科と二人、夜明けを待つのだった。
扉の取っ手や段ボールで塞がれた窓のサッシは古く、だいぶ前に建てられたのだとわかる。
その小屋の中、中央に置かれたテーブルの上に若宮が横たわっていた。半裸に剥かれ、両手両足をそれぞれテーブルの足に手錠で拘束されている。
その右側の壁際には大小さまさまなサイズのボックスが置かれたラックが、奥にはデスクが、左側には三脚にセットされたハンディカメラがある。デスクにはノートパソコンがあり、ビデオカメラはちょうど若宮を見下ろす角度で置かれていた。
近付き、口のテープを取ってやると、若宮は突如として叫び出した。
「うわあぁぁぁ! うわあぁぁぁぁ! 殺さないでくれぇ! やめろぉぉぉぉ! うわぁぁぁぁぁ!」
「ちょっ、静かに!」
咄嗟にテープを貼り直すと、若宮はさらに目を見開いて暴れ出す。明らかに正気ではなかった。
「ちょっと、落ち着いて」
しかし若宮は暴れ続ける。手錠が食い込んで手首が抉れ、血が滲んでいた。
しばらく声をかけたが、一向に落ち着く気配がないので諦めて部屋の探索を始める。更科が奥の机を調べているようなので、手前のハンディカメラを見てみることにした。
電源を入れ、画面を操作して録画データを探すと、日付別に保存されている。一番古いものは十日前で、それから数日間が空き、四日前から昨日にかけては連日撮影されていた。
一番古いデータから見てみることにして再生ボタンを押すと、動画が再生され始める。
全く同じ場所で同じ構図で撮られた動画は、被写体だけが違った。そして、写っていたのは「人間だったもの」とでも形容すべき、血まみれの肉塊だった。
顔はほぼ原型を留めておらず、目も歯もない。真ん中に空いた空洞がかろうじて口と判別できる程度の、酷い有り様だった。
若宮同様裸の上半身は傷だらけで、あちこちに赤黒い血がこびりついている。指の爪は全てなかった。
第一性は男性のように見えるが定かではない。傷だらけで骨格さえ判然としないからだ。
その人物の上に不意に陰が落ちた。それを感じ取ってか身じろぎをして呻き始める。驚くことにまだ生きていたようだ。しかし、叫ぶ力はもう残っていないようだった。
次の瞬間、室内に機械音が響き渡り、回転する刃が画面に出現する。チェーンソーだ。それがテーブルに拘束された腕に近付いてゆき、絶叫と共に血飛沫が上がった。
時籐はその瞬間にビデオカメラを閉じた。そしてわずかに震える手でカメラを三脚に戻す。
これは殺人記録の映像だ。おそらくは若宮の前に捕まり、ここで殺された人の……。
「ッ……」
「どうした? 何か声聞こえたけど。何か録画されてた?」
更科がパソコンから目を上げ、こちらを振り向く。時籐は乾いた唇を舐めて言った。
「ああ、あった……。利人、早くここから出よう」
「ヤバいもんでも写ってた?」
更科が椅子から腰を上げ、近づいてきてビデオカメラに手を伸ばす。時籐はそれを制止して首を振った。
「見ない方がいい」
「何が写ってた?」
「修さんの前に捕まってた人……多分。録画は十日ぐらい前だった。後は四日前から昨日にかけて録画されたやつがあって、それは修さんのだと思う。数日前から家に帰っていなかったらしいから」
更科は神妙な顔になり、腕組みをしてまだ暴れている若宮を見た。
「なるほど……」
「パソコンの方はどう? 何かあった?」
「いや、ロックかかってて見れなかった。けどこれ、机の引き出しで見つけた」
そう言ってA4サイズの茶封筒を渡してくる。宛名を見ると、何と時籐の両親宛てだった。
「何だよこれ……」
封のされていない封筒を開けると、中にはペラ紙一枚だけが入っている。取り出してみると、紙の中央に一言『裁きは下された』と書かれていた。直筆ではなく、ワープロの文字だ。
裏を見ても何もない。これは一体何なのか。宛名を見る限り時籐と関係があることは間違いない。関係があるどころか次の標的は自分なのではないか?
一気に口が乾いてきて、時籐は生唾を飲み込んだ。
「これもしかして……次の標的は俺ってこと?」
その問いを更科は否定しなかった。
「……かもな」
「マジかよ……」
恨みを買うようなことをした覚えはない。しかし、拷問殺人の記録を録画しておくような異常者が標的を選ぶのに理由があるとも思えなかった。
裁き云々もそいつの頭の中でしか通じない何らかの理由付けだろう。オメガであること自体が罪だなどというとんでもない思想の可能性もある。
とにかく、今なすべきことは一刻も早くこの場から立ち去ることだった。同じことを思ったらしい更科が聞く。
「こいつ、どうする?」
「どうするって……」
「助けるか、置いてくか。一応手錠のピッキングはできるけどちょっと時間かかると思う。その前に落ち着かせなきゃないし……助けるなら、今すぐ出発はできない」
「………」
「……俺はどっちでもいいよ。このまま帰っても」
「置いてくってこと?」
「何も見なかったことにすればいい」
更科は驚くほど醒めた目で若宮を見ていた。それに一時言葉を失う。
更科は、こんな奴だっただろうか? これほどに冷たい目をする奴だっただろうか?
「いや、さすがにそれは……」
反駁すると、更科はこちらを見て真顔で聞いた。
「許せんの? こいつのこと」
「許せるかっつったらそれは無理だけど」
「じゃあ置いてきゃいいじゃん。当然の報いだろ」
「……記憶を消せるんならそうするよ。けど、そうじゃないだろ。嫌なんだよ、子供を見る度に思い出すの」
若宮を見殺しにすれば、生涯子供の顔を見る度に今日のことを思い出し続けるだろう。それは嫌だ。
若宮にはこの世から消えて欲しいと思っているが、それはこのような形でではない。自分の預かり知らぬところで自分とは無関係に死んで欲しい。
この小屋にさえ来なければそれが叶ったのにと思うと、複雑な気分だった。
時籐の答えを聞き、更科は少し考えてから頷いた。
「お前がそう言うなら。じゃあ一旦落ち着かせないとな」
「ああ」
二人は若宮に近付いて再び声をかけ始めた。しかし、いくら宥めても一向に落ち着かない。時籐のことさえ認識していないようだった。
よほど恐ろしい思いをして正気を失ったのかもしれない。だとしたらもはや死を願う必要はないのかもしれない。一瞬の死よりも長く続く生の方がその苦しみは大きそうだからだ。
そんなことを考えながら若宮を宥めていると、更科が声掛けを中断してため息を吐いた。
「ダメだなこれ。失神させて運ぶしかないかも」
「それしかないか……」
「うん。ここら辺押さえるとできるからちょっとやるわ」
更科が自分の左顎の下辺りを指し示し説明する。ヒトは、左右の顎の下にある頸動脈の分岐点あたりを圧迫されると、脈拍と血圧が低下して失神する。それをするということだろう。
時籐が頷くと、更科は若宮の首に手をかけた。左顎の下を指で押さえ、反応を待つ。するとまもなくして暴れていた体がぐったりと力を失った。それまで間断なく聞こえていた呻き声も消え、若宮が気を失ったのがわかる。
更科は手を離して呼吸を確認し、リュックから安全ピンを取り出した。そして若宮の左手とテーブルの脚を繋ぐ手錠の鍵穴に差し込んでカチャカチャやり出す。
「本当にピッキングできるんだ」
すると相手は頷いた。
「仕事柄必要なこともあってね」
「ふーん」
それは法に抵触する行為ではないのかと思ったが口には出さず、何かないかとラックの箱を開ける。すると、中にはナイフ類の他、ペンチやドライバーといった工具が入っていた。
その中のペンチを手に取り、若宮の右手の手錠を切りにかかる。簡単には切れなかったが、しばらく鎖を削っていると、やがて切れた。時籐がその一本を切っている間に更科は左手と左足の解錠に成功し、右足に取りかかった。覚えのある甘い香りがしてきたのはその時だった。
昨日加賀を襲い、さっき事件現場でニアミスした青い服のアルファの匂いーー殺人鬼が戻ってくる。
「あいつが来る」
警告すると、更科がはっとしたように顔を上げてこちらを見た。
「あいつってさっきの?」
「ああ。匂いが……近づいてくる」
更科は少し逡巡した後、手元に目線を戻した。そしてピッキングを再開する。それを見ながらどんどん近付いてくる匂いに、見捨てるという選択肢が頭をよぎる。
このままでは間に合わないーー間に合ったとしても若宮を担いで逃げ切るのは無理かもしれないーーならば置いていくか?
それとも篭城するか? ラックと机で扉を塞げばーーいや、そこまでして助ける価値があるのか?
ぐるぐると考えながら床に置かれたリュックを背負い、逃げる準備をする。そしてもう行こう、と口にしかけたそのとき、カチリと音がして最後の鎖が切れた。
「よし、開いた」
更科は素早く若宮を肩に担ぎ、小屋の外に出た。続いて外に出た時籐は匂いのする方角を再度確認し、南を指差す。
「あっちから来る」
それは尾根の方向であり、二人が進んでいた方向だった。鬱蒼と木々が生い茂った山の中、まだ人影は見えない。
こうなると、北へ戻るしかない。二人は出来るだけ足音を立てないようにしながら、北へ向かって早足で歩き出した。
無言で道なき道を下り、北へ北へと進んでゆく。そして沢の音が聞こえてきた辺りでアルファの匂いが消えた。
そのことを伝え、その場で一旦休憩することにする。レジャーシートを敷いて若宮を寝かせ、近くの切り株に腰を下ろす。
時籐は深々と息を吐き出し、額の汗を拭った。山は全然暑くないのに冷や汗をかいている。
「はぁ……」
「水飲む?」
「うん。先飲んでいいよ」
そう言うと、更科はリュックからペットボトル水を取り出し、三分の一ほど飲んで時籐に手渡した。
「あと全部いいよ」
「うん。この辺川近そうだな。後で水汲みにいくか」
「だな。ちょっと見てくるわ」
更科はそう言って立ち上がり、更に斜面を下っていった。
時籐は三分の一ほど残っていた水を飲み干し、辺りを見回した。
岩や木の根で不安定な足場が続く斜面の中腹で、周りには木しか見えない。ずっと似たような景色が斜面の上から続いていた。
それを眺めながらこの後どうするかについて色々考えていると、更科が戻ってきた。
「この先は崖になってて川には降りられなかった」
「そうか」
「でも別ルートで降りられるところあるかも。スマホ貸して」
「ほい」
言われた通りにすると、更科はスマホの地図を眺めて、今いる場所の北東を指差した。
「等高線見たらこの辺の傾斜が緩い」
「じゃあそっち行ってみる?」
「だな。まずは水を確保しないと。水がありゃ一週間はもつ。この時期ならそこまで寒くもないし。秋とか冬じゃなくてよかったよな」
そう言われてハッとする。そういえば、更科は冬に来ようとしたのではなかったか?
もしあの時行っていたら……。
「冬に来なくて良かったんじゃない?」
そう言うと、更科は頷いた。
「マジでそう。俺死んでたかも」
「あいつ……マジで何?」
「R山で見つかったオメガの人を襲った奴じゃない?」
「でも警察が捜査したはずだよな? 何で捕まってないん?」
「警察が捜査したのは多分R山。こっちは調べてないんだと思う」
三人が今いるのはR山の北にあるO山だった。先程の小屋もO山だったはずだ。つまり、犯人が根城にしているのはO山だ。おそらくカモフラージュのために遺体をR山に捨てているのだろう。
納得した時籐は相槌を打った。
「なるほど」
「つうかこの後どうする?」
「そこだよなぁ……。O山は何とか通り抜けるとして……その後のR山は迂回したい。お前は?」
そう聞くと、更科は地図と睨めっこをしながら頷いた。
「俺も。この辺……西側の尾根伝いにぐるっと回って降りれるかも」
更科が示したのは、R山西側のZ峠を通り、K山経由でキャンプ場に戻るルートだった。R山を通るよりは遠回りになるが、危険人物と遭遇する危険性は低くなる。時間はかかってもそちらの方が良いだろうということで、迂回ルートで意見が一致する。
二人は水を確保してからZ峠に向かうことにした。少し進んだ先の沢で空のペットボトルに水を汲み、Z峠に向けて歩き出す。
道はところどころ険しく、転ばないように注意しながら進んだ。アルファの匂いに細心の注意を払い、少しでも気配があったら大回りをするのを繰り返し、ようやくO山を通り抜けたのは昼過ぎだった。
二人は短い昼休憩を取って残り少ないエナジーバーを二本ずつ食べると、再び歩き出した。時折抑えた声で会話をしながら進み続ける。するとやがてZ峠に到着した。
時刻は十四時過ぎ。このままのペースで進んで日没までに間に合うのか不安になってくる。しかし、人一人担いでいる更科にこれ以上ペースを上げろと言うわけにもいかない。
R山と似て倒木が多く、木が繁茂して薄暗いZ峠には誰もいなかった。来るまでの道程でも一人も他の登山客に会っていない。
更科といなかったらパニックになっていたな、と思いながら道順を確認する相手の横に立つ。そして更科の手元の地図を覗き込んでいると、不意に雨粒が落ちてきた。
「雨……?」
見上げると、急に空が暗くなって雨脚が強まってくる。雨は降り始めてすぐに勢いを増し、やがてざんざんぶりになった。
二人は近くの大きな木の下に避難し、レジャーシートの上に若宮を寝かせた。
雷が鳴り始め、空が光る。その空を見上げながら更科が独り言のように呟いた。
「さっきまであんなに晴れてたのになぁ」
相槌を打って山肌に叩きつけるように降る雨を眺めていると、不意に若宮が起き上がった。そうして数秒間は正気を取り戻したかに思えた。
しかし、時籐と更科の姿を目に捉えた途端に悲鳴をあげて立ち上がった。そして二人が止めるまもなく、意味不明な言葉を喚き散らしながら雨の中に飛び出していった。
「あっ、待て!」
そう叫んで追おうとした更科の腕を掴み、止める。
「追わなくていいのか?」
振り返って聞く更科に頷く。
「ああ。もういい」
こんな土砂降りの中を走って追いかければ転倒や滑落の危険がある。そうなったら良くて捻挫、最悪命を落とす可能性すらある。更科をそんな危険には晒せなかった。
それに、追いついたとてあんな状態の若宮をどう落ち着かせるのか。『誘導』や『威圧』が使えない更科は、力で捩じ伏せるしかない。その上、相手は『誘導』や『威圧』を使えるのだ。一体どうやって若宮を制圧するのか。
更科にとってのリスクがあまりに大きすぎる。だから止めたーーそれが若宮の死を意味するのをわかった上で。
二人とはぐれれば、若宮はほぼ確実に遭難するだろう。もちろん、電波が届くところまで下山したらすぐに救助要請を出すが、あの状態ではその前に滑落して死ぬ可能性が高い。
だが、それでも仕方ない。助けるために出来るだけのことはした。これ以上はもうどうしようもない。そう思って更科を行かせなかった。
「わかった」
更科は神妙な面持ちで頷き、戻ってきた。掴んでいた腕を離し、更科と並んで木の根元に腰を下ろす。そうして二人はぽつぽつと会話を交わしながら雨が止むのを待つのだった。
◇
雨はそれから四十分に渡って降り続け、突然やんだ。二人は腰を上げ、雨でぬかるんだ山道を歩き始めた。K山に向かって稜線伝いに南下していく。進んでいくに従い視界が開けてきて、深い緑の山々が連なる奥秩父の絶景が左右に広がる。息を呑むような美しい光景だったが、それを楽しむ余裕はなかった。日暮れがどんどん近づいているからだ。
五月上旬のこの時期、日没は十八時半前後。それまでに下山できなければ山でもう一泊することになる。それだけは避けたかった。
若宮を担ぐ負担がなくなった分ペースを速めて進んでゆくと、やがて切り立った岩場が見えてきた。尾根の片側が崖になっており、勾配もきつい明らかな難所だ。岩場に設置された鎖を使って上り下りするような場所もある。
二人はその手前で立ち止まった。
「うわー、これきついな」
更科が岩場を見上げて言う。その意見には同意だった。とても登山初心者が登れるような場所ではない。その上、岩場は雨で濡れていた。
「どうする?」
「装備もないし、戻るしかないな。地図見して」
時籐はズボンのポケットからスマホを出し、手渡した。それを見て、更科が呟くように言う。
「一旦Z峠に戻ってR山の方通って下山するしかないか……。時間的にギリかもな」
そう言われて時計を見る。時刻は十六時前だった。日暮れまでにキャンプ場に戻れるだろうか。
「じゃあ戻るか」
「ああ。リュック持つよ」
更科はそう言って手を差し出した。
「いいの?」
「うん」
「どうも」
リュックを渡すと更科はそれを背負った。
岩場さえなければK山に入れたのにと思いながら目の前の障害を眺める。日本百名山に選出され、登山客が多いK山まで辿り着ければ何とかなるーーそんな気がしていただけに落胆が大きかった。
迂回ルートを提案しなければ良かったなどと考えていると、不意に脳内に声が響いた。
『こちらへ来い』
その途端に体が勝手に回れ右をし、来た道を戻り始める。その時、視界の先に青い何かがちらっと見えた。
それと同時に風に乗って相手のフェロモン臭が漂ってくる。それを嗅いだ瞬間に確信した。あいつだーー昨晩加賀を襲い、若宮を監禁したアルファ。そのアルファと全く同じ、熟したマンゴーのような匂いがした。
相手は茂みの向こう、四十メートルほど先にいる。その時、再び脳に声が響いた。
『こっちに来い』
それはアルファの使う『誘導』だった。全身に氷水を浴びせられたような恐怖で声が出なくなる。その間にも体は勝手に動いていった。
何とか声を絞り出し、異常を伝える。
「利人、俺今誘導されてる。あのアルファが来てる……」
「えっ、どこ?」
「あっち」
震える手で前方を指差す。怪訝な顔でそちらを見た更科の表情が凍りついた。
「嘘だろ……。啓、行っちゃダメだ」
「んなこと言ったって無理だよ、『誘導』使われてんだから」
歩き続ける時籐の腕を更科が掴み、引き戻そうとする。しかし、意に反して体が勝手に抵抗した。
その場で揉み合っていると、向こうのアルファがこちらへ向かって歩き出すのが見えた。
「ヤバい、あいつ来る」
「啓、背中乗って!」
「無理! お前もう行けよ、死ぬぞ」
このままでは二人とも死ぬ。そう思い、逃げるように言うと、相手は首を振った。
「一緒に行くんだよ! しょうがねえ、担ぐわ。ちょっとごめん」
更科はそう言ってリュックを地面に下ろした。そして時籐の前に回り込み、肩に担いで稜線から降りた。木や茂みに覆われた道なき道を出来る限りの速さで降りてゆく。人を担いで急な岩場を登れるわけもないので、そうするしかなかったのだろう。
視界が逆さまになり、更科の体越しに追ってくるアルファが見えた。加賀を襲い、若宮を監禁した青い服の殺人犯ーーそのアルファにずっと尾けられていたのだ。
こんなに接近するまで気づけなかったのは、雨が降ったせいだろう。雨が降ると、フェロモンを感知しづらくなるのだ。
あの雨さえなければこれほど距離を詰められることもなかったはずだ。
雨さえなければ、と思っていると、次第にアルファとの距離が開き姿が見えなくなる。
茂みや藪が多く、視界が悪いので相手がこちらを見失ったようだ。時籐はほっと息をついた。
更科は時折バランスを崩しかけながらもなんとか持ちこたえ、山を下り続けた。荒く息をつきながら、無言で進み続ける。
その辺りで『誘導』の声が聞こえなくなったので更科に声をかける。
「もう大丈夫。歩ける」
「まあ一応もうちょっと行ってから降ろすわ。また誘導されたらここじゃ対応できないから」
確かに更科の言う通り、傾斜があり足場も悪い山道で再び担ぐのは難しいだろう。
「わかった」
時籐は了承し、そのまましばらく身を任せた。更科は時折後ろを振り返りながら、茂みをかき分けて斜面を降り続けた。
そしてある程度行ったところで立ち止まり、時籐を地面に降ろした。額に滲んだ汗を拭い、後ろを振り返って深々と息をつく。
「ふぅーっ。何とかなったか」
「悪ぃ」
「いいよ。しょうがないことだし」
「声聞こえなかった?」
「ああ。やっぱ行動フェロモンは感じないままっぽいな」
更科はどうやら『誘導』や『威圧』といった行動系フェロモンには反応しないままらしかった。復活したのは性フェロモン受容体だけだったのだろう。
ということは、昨晩加賀を助けられた可能性がある。あの時助けに行こうとした更科を止めなければ、加賀は助かったかもしれなかった。
それにひしひしと後悔と罪悪感を感じる。
時籐は呟くように言った。
「そうか……」
「はぁ、マジでヤバかったな。あいつってさっき小屋に来た奴だよな?」
「うん。匂い同じだったから多分昨日の奴とも同じ奴。ごめんな、雨で近くに来るまで気付かんかった」
「それはしゃーなし。いやでもまずいな、リュック置いてきちまった」
更科は時籐を運ぶ際に邪魔になると判断し、リュックを捨てた。その判断が間違っていたとは思わないが、食料や水やツェルトといった生命線はすべてあそこに入っていた。それなしで長時間生き延びられるとは思えなかった。
しかし救いは地図があることだろう。スマホはズボンのポケットに入れていたのだ。それで現在地を確認し、一刻も早く下山しよう、とポケットに手をやる。しかし、あるはずの膨らみがなかった。
冷や汗が吹き出してくるのを感じながら全てのポケットを確認する。しかしどこにもなかった。
「やば、スマホない」
「マジで?」
「ああ……。落としたかも」
どうやら更科に担がれた時にズボンのポケットから落ちてしまったようだ。
「ちょっと戻って探すか」
更科の提案に頷き、下ってきた斜面を登り返してスマホを探す。しかし三十分以上探しても見つからなかった。そうこうしているうちに夕暮れが迫り、夕日が鬱蒼とした山の中を照らす。
本格的に遭難したのではないか、と思ったのはこの時だった。
「はぁ、腹減った」
探し疲れ、近くの木の根元に腰を下ろして息をつく。驚くほどに空腹だった。それに喉も乾いている。こんなことなら大事に取っておいた携行食を食べておくんだった、と後悔しながら頭上に広がる木の枝葉を仰ぎ見る。水もない、食料もない、防寒具も地図もないこの状態でこの先どうすればいいのか?
日没までに下山できなければ山で夜を越すことになる。しかし、初夏とはいえ山の夜は冷える。時籐はインナーにシャツを羽織っただけの軽装だし、Tシャツに薄手のジージャン姿の更科も似たようなものだ。こんな軽装で夜を越せるのか?
しかも寝袋もないから地べたに寝るしかない。いや、寝ることさえできないかもしれない。
いったいなぜこんなことに、とため息をついていると、更科が周辺の捜索を切り上げ、隣に来て座った。そして深々と息を吐き出し、口を開く。
「腹減った」
「うん。リュックのやつ食っとけばよかったな~」
「はぁ~、スマホも無えし、最悪だな」
「マジで終わってる」
「まあ雨が降ってないのがせめてもの救いかな」
「………」
「スマホは諦めてリュック置いてきたとこに戻った方がいいかもな」
更科が顎を撫でながら言う。時籐はそちらを見て聞いた。
「戻るってこと?」
「ああ」
「でもあいつまだいるんじゃないの? それにリュックなんて取られてるだろ」
「じゃあここで夜を越すか?」
「………道わかる?」
「わからんけどこのまま登っていけば着くと思う」
「思うって……」
「じゃあ何か他に案あんの?」
そう聞かれて答えに窮する。これといった名案は思いつかなかった。
「………」
「登るしかないよ。登って尾根に出たら帰り道がわかる」
「わかった。じゃあ行くか」
「うん。とりあえずZ峠まで行こう」
時籐は頷いて立ち上がった。尻についた泥を払い、更科と共に山の斜面を登り始める。登っている間にどんどん日は暮れ、辺りが薄闇に包まれ始めた。そして日が完全に落ち切る直前、ようやく山の稜線に出た。
視界が開け、周囲の山々の向こうに隠れようとする夕日が見える。二人は辺りを見回して帰り道を探した。夕陽を背にして尾根が左右に延びているということは、向かって右が北、左が南だ。つまり右の道がZ峠に続いている。
夕暮れの中で目を凝らして見ると、木の生え方や周囲の景色に何となく見覚えがある気がした。帰り道を見つけたのだ。
時籐はほっと息をついて右の道を指差した。
「あっちじゃない?」
「俺もそう思う。でも今日じゅうに下りるのは無理そうだな。暗くなる前に寝る場所探した方がいいと思う」
「マジかー……。わかった」
二人は周囲を調べ、稜線から少し降りたところに手頃な窪地を見つけた。周囲に茂みが多く、身を隠せそうな場所だ。近くに大木があるので雨も凌げそうだった。
木の根元に腰を下ろすと、辺りが急激に暗くなり始めた。気温もグッと下がって肌寒くなってくる。
時籐は身震いをして頭上に広がる枝葉を見上げた。その隙間から覗く空から夕焼けの色は消え、薄い紺色になっていた。それで日没を悟る。
時計を見ると、暗い文字盤は十八時半過ぎを指していた。これ以上暗くなったら時計も読めなくなるだろう。
「六時半か……」
呟くと、更科が口を開いた。
「寒くなってきたな」
「ああ。夜が明けたらZ峠に向かおう」
「そうだな。明日にはあのアルファもいないと思うし」
「問題は今晩だな。俺、起きとこうかな。もし近くに来たら分かるし」
更科はアルファのフェロモンを嗅ぎ分けることができないので、時籐が不寝番をするしかないだろう。すると更科が言った。
「俺も起きとくよ。どの道寒くて寝れない」
「ほんと寒いな」
そう言って二の腕をさすると、更科がこちらに身を寄せてきた。そして時籐の肩に手を回して抱き寄せる。眉を顰めてなに、と聞くと、ガラス玉のような目がこちらを覗き込んだ。
「これで寒くないだろ」
「……多少マシだな」
「……ごめんな、こんなことになって」
「何で謝んの?」
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「な。キャンプ場戻ってるといいけど……」
「そうだなあ。合流できたら車で送ってってあげてもいいかもな。徒歩で来てたっぽいし」
「うん。あと下山したらすぐ通報しよう。救助要請も」
「だな。とにかく明日降りよう」
「ああ」
加賀が生きているというのは希望的観測だった。しかし、今はそれに縋るしかない。嫌な可能性を考えたら心が折れそうだった。
時籐は、ともすれば崩れそうになる心の均衡を保ちながら更科と二人、夜明けを待つのだった。
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攻め:アローラ国王太子アルファ「カロール」
受け:田舎伯爵家次男オメガ「リン・ジャルル」
アローラ国の田舎伯爵家次男リン・ジャルルは二十歳の男性オメガ。リンは幼馴染の恋人セレスがいる。セレスは隣領地の田舎子爵家次男で男性オメガ。恋人と言ってもオメガ同士でありデートするだけのプラトニックな関係。それでも互いに大切に思える関係であり、将来は二人で結婚するつもりでいた。
田舎だけれど何不自由なく幸せな生活を送っていたリンだが、突然、アローラ国王太子からの求婚状が届く。貴族の立場上、リンから断ることが出来ずに顔も知らないアルファ王子に嫁がなくてはならなくなる。リンは『アルファ王子に嫌われて王子側から婚約解消してもらえば、伯爵家に出戻ってセレスと幸せな結婚ができる!』と考え、セレスと共にアルファに嫌われるための作戦を必死で練り上げる。
セレスと涙の別れをし、王城で「アルファ王子に嫌われる作戦」を実行すべく奮闘するリンだがーー。
王太子α×伯爵家ΩのオメガバースBL
☆すれ違い・両想い・権力争いからの冤罪・絶望と愛・オメガの友情を描いたファンタジーBL☆
性描写の入る話には※をつけます。
11月23日に完結いたしました!!
完結後のショート「セレスの結婚式」を載せていきたいと思っております。また、その後のお話として「番となる」と「リンが妃殿下になる」ストーリーを考えています。ぜひぜひ気長にお待ちいただけると嬉しいです!
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