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まこと side
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しおりを挟む藍我には、大事な人がいるじゃないか。
体を繋げている恋人がいるのに、浮気なんてさせられない。何よりも浮気相手なんかになりたくなかった。
「いた! いたーっ! もうっもうっ!」
桃路の怒りはもっともだ。
僕だって恋人が他の人とこんな怪しい状況になってたら怒る。
「い、井上くん……ごめ ごめんね でも、何もなかったから ――――ヒェ⁉︎」
謝っている最中に顔を掴まれて……これは殴られるんだって覚悟を決めた瞬間、視界が全てスローモーションになった。
ゆっくりと瞬く綺麗な猫の目のような桃路の両目と、艶のあるぷるんとした唇……がっしりと体を掴まれて逃げられない! って思うと同時に、桃路はちゅ! って可愛らしいリッピ音を響かせる。
僕に向けて?
「はえ?」
すぐ目の前で聞こえたキスの音に素っ頓狂な声をあげた。
とはいえ僕に被害は一切ない。
「っっっ! 藍我っ! なんで邪魔するのっ!」
僕と桃路の間に差し込まれた藍我の掌がかろうじて桃路のキスを防いでくれている。
寸でで止められた桃路は恨みがましい目で藍我を睨みつけていて、その表情は恋人に向けるような優しいものじゃなかった。
「いきなり襲いかかるような奴、邪魔して当然だろうが!」
さっきのことで赤いのか、怒りで赤いのか……藍我の顔は今にも爆発しそうなくらい真っ赤だ。
僕を庇った手でそのまま抱え込むように桃路から引き離す。
「ちょ……藍我のバカ! バカバカバカ!」
「バカでいいよ! まことから離れろ!」
「まこちゃんは藍我のじゃないんだからいいでしょ!」
「よくない! 全然良くない!」
まるで小さな子供同士のような言い合いを始めた二人の間で、僕は文字通り地に足がつかないままおろおろと左右を見渡す。
「自分だけまこちゃんといてズルい! まこちゃんと二人きりにならないって約束だったよね⁉︎」
「…………あんなの、約束じゃねぇし」
「な、な、なんでそんな強気なの⁉︎」
真っ赤な藍我とは対照的に、桃路はさぁっと顔を青くしていく。
「ぬ……抜け駆けしないって、言ってたよね⁉︎」
「抜け駆けしてない! 抜け駆けじゃ……ないし」
語尾がニヤニヤとしたその言葉で何か感じ取ったのか、桃路は青い顔を更に青くして僕の方へと飛びかかろうとした。
「まこちゃん⁉︎ こいつはダメだよ! 汗臭いし気が利かないし短小だし!」
「おい待て、誰が短小だ!」
僕を桃路から庇う背中の頼もしさに、気づけばポッとほっぺが熱くなる。
「まこちゃん! 藍我なんかと付き合っちゃダメだよ! 俺っ! 俺のが絶対にいいよ!」
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