ある日、友達とキスをした

Kokonuca.

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藍我 side

7




「ねぇ……これ、本当にキスしてんの?」

 ぎゅぎゅっと眉間に皺を寄せてこちらに詰め寄ってくる桃路から逃げながら、ホントって答えたかったけど、そんなことになったらギャアギャアうるさく騒ぎ続けるのは目に見えている。
 できることなら自慢したけど、まこととオレとの大事な思い出だ。

「内緒」
「内緒って何だよ! まこちゃんの初キスだよ⁉︎ すごく大事なことじゃんっ」
「コメントは差し控えさせていただきます」
「同じことでしょ⁉︎」
「ノーコメノーコメ」

 いい加減面倒くさくなって押しのけるが、それで納得しないのが桃路だ。
 自分の体のことより感情を優先させるから、いつも周りをハラハラさせる。

「っ……いいじゃんっ答えてよっ」
「ほら、息上がってるだろ? ちょっと大人しくしてろよ」
「話そらすなよ!」
「そらすも何もねぇよ。ほら、なんかあったらまた小森んとこに連れてくぞ」
「うっ」

 その名前を出すと流石に桃路も怯んで大人しくなった。
 小森は高校の隣にある個人病院の名前だ。そこのじいちゃん先生がかつては大病院で心臓の権威だったとか何とかで、こっちに移ってからでも桃路のことを診てくれている。
 派閥競争に疲れての引退だったから腕が落ちたわけじゃないし、すぐに診てくれるというのもあって桃路の引越しを後押ししてくれた人でもあった。

 その病院にいる孫を、桃路は苦手だ。

 小森のじいちゃん先生の孫、「小森辰雄」をオレは別に苦手にも何とも思わないが、昔のしがらみだとか口うるさく注意されるのが嫌だとか、桃路はいつも文句を言っている。
 傍で見て小森の態度は別に悪者じゃないし……何ならオレとまことのために、小森に兄を売ってしまえたら……と企む程度には……てか、オレの心の平穏のために売り払ってしまいたい。

 そんなことを思っていたからバチが当たったんだと思う。


「――――これ、なぁーんだ」


 人を揶揄ってくるおかんと同じ表情だ。
 小さい頃からこの表情で何度揶揄われたかわからない。こうして見てみると桃路は母親似なんだなって本当に思う。

「……何」

 風呂に入って寝転がって、まことの写真でも見て……って思っているところにこれだ。
 胡散な表情で桃路を見ていると、にやにやと笑いながら背中に隠していたものを目の前に突き出してきた。

 言ってしまえば、ゴミ……でいいんだけど、オレはどうしてもそれを捨てることができなくてこっそり持ち帰っていた。

 三つに切られた割り箸の袋……

「っ! おい! 人の机勝手に漁ったのか⁉︎」
「勝手に漁ったとか、人聞きの悪いこと言わないでよ。長い間、離れて過ごしてたから藍我のことよく知りたいなぁって思って、ちょっと調べただけじゃん?」
「それを漁ったって言うんだよ! それ返せ!」
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