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藍我 side
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ただのゴミ。
だけどよく見たらそこに書かれた文字が全部同じ人間のものだってわかってしまう。
つまり、オレがズルをした証拠がそこに残っている!
「これってあの動画にあったクジでしょ?」
「……ポケットに入れて捨て忘れてただけで……」
ゴニョ とは歯切れ悪く言い返した段階でオレの負けだった。
桃路は確信した顔で三枚のクジの切れ目を合わせてみせて、してやったり顔でくるくると部屋の中央で回る。
「つまり、アレは藍我のズルだったんだ!」
強めの口調でズバリと言われて、オレは風呂でさっぱりしてきたばっかりだっていうのに変な汗が背中を伝うのを感じた。
改めて人に指摘されると……あの時の今がチャンスだってドキドキしながらやってしまったことが、本当はせこくて卑怯で、姑息でみみっちいことなんだって、胸をどすどす刺してくる。
今にも泣きそうな顔でオレを睨み上げてくる桃路に気まずくなりながら、しどろもどろと言い訳を考えて……
「まこちゃん、そういうの嫌いだよ!」
「っ!」
ドキッ として口から心臓が飛び出すんじゃないかと、咄嗟に胸を押さえた。
驚くくらい跳ね上がった脈拍は、初めてまことの唇を盗んだ時の速さと似ているって思った。
「卑怯なの、嫌いだったのちゃんと覚えてるんだから!」
そんなの、言われなくてもオレが一番わかっている話だ。
だから今回のことは墓まで持っていかなきゃいけないって思っているし、まことの意識がない間に何度も何度もキスしているってバレたらどうなるか……考えただけでも怖い。
「…………」
「それでなくともっ藍我だけずっとまこちゃんの側にいてずるいのにっ」
「ずるいって……そこは仕方ないだろ」
両親が離婚した際、オレ達はまだおねしょしていたような年頃だ。
恋愛に絡む算段をつけることができるような年じゃない。
「ずるいずるい!」
「っ……ずる……く、ない」
言い返せたけど、強がりだ。
嘘をついてまことにキスしたことは、覆しようのない事実だから……近所のガキ共が集まって遊んでいた時から、まことはズルをするとめちゃくちゃ怒っていた。
悪いことはしちゃいけないって、おばさんの教育の賜物だと思うんだけど、意地悪することとか卑怯なこと、人を虐めるようなことは許さない性格だ。
コソコソとオレがしたことを知ったら、きっと軽蔑されてしまう。
「ふんだ。そんなしょげたって俺は許さないんだからね」
なんで桃路に許されないのかわからない。
許す許さないで言うのならその権利はまことにあるだろうということを説いても、興奮している桃路には言っても無駄だろう。
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