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ひざまずかせてキス
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しおりを挟むもう何度目だったか……畳んでおいた筈の服がまた散らかっている。
きちんと分けていた筈なのに、邪魔だから蹴り飛ばした みたいな散らかり方だ。
「もうこんな事ばっかりするんなら片付けないからな!」
「え~?そう言いつつも毎回ナオちゃん片付けてくれるしぃ」
「違う、これはコピーを探しているんだ!」
そのついでにちょっと服を畳んでいるだけだ。
この部屋を家探ししようにも、まず片付けないと何も始まらない。もっとも、片付けても片付けてもなのだけれど……
「ほら、そんなの置いといて、せっかく時間できたんだから、ちょっと恋人っぽくイチャイチャしようよ~」
「誰が恋人だ」
つん と拗ねて返事をするが、相良はへらへらと嬉しそうにして、オレを抱えて膝の上に対面で座らせてしまった。
この重量をあっさりと持ち上げて膝に乗せるなんて、どう言う筋肉がついているのかが不思議で、へらへらしている顔を無視してその胸に手を置く。
柔らかな脂肪の感触は一切しない。
引き締まった、鍛え上げられた体の感触だ。
だからと言って体の動きを邪魔する程のマッチョと言う訳でもなくて……
「積極的だね」
そう言われて、ぼんやりと相良の体を弄っていた事に気が付いた。
鎖骨から緩やかに張りを主張しながら続く胸板は、決して太い方ではなかったけれど、押してもびくともしないだけの筋肉量があるようでがっしりしている。
「いや、硬いなと思って……」
「下はもっと硬いけどっ」
語尾にハートマークをつけそうなくだらない言葉を聞いて、気分とかそう言った物が一気に下がったのを感じた。
のそのそと膝から降りて放り出されたシャツを摘まみ上げる。
「あれ?ナオちゃん?ナオさーん」
「うるさい。邪魔をするな」
物を隠すなら、自分の目の届く場所 と聞いた事があるがここまで散らかっていると普段どこを気に掛けているのか分からない。
虱潰しに探して行くしかないのかと、台所を見た。
「台所とかどうだろうか?」
「えー?何が?ねーほらほら、脱いで脱いで」
するりと差し込まれた手がスーツを剥ぎ取り、床に放り出す。
「あっまた皺に……」
「今日はいい物貰ってきたからさぁ」
ふんふん と鼻歌を歌って機嫌の良さそうな相良が、放り出されていた帆布布で出来たトートバックを漁り始めた。
小さな子供が買って貰った玩具を見せびらかす姿に似ていて、呆れた溜め息で何を見せるのかと相良が振り返るのを待つ。
「じゃーん!」
コップ一杯分の容量 が売り文句の小さなピンクの水筒だった。
なぜだか、ざわりとした悪寒がした……
「 それ、何を っ」
嫌な予感のせいで、蓋を開ける手を止めるのが遅れた。ゆっくり開いて行く水筒に隙間が出来るにつれて、脳味噌を殴られたかのような眩暈がした。
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