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しおりを挟むやっぱり綺麗って感想が一番に出て、今自分が危ないんだってことは頭からポーンと吹っ飛んでいた。
熱い吐息が耳をくすぐって、思ったよりも細くて柔らかな髪が頬をくすぐって、銀色の眼鏡が押されてカチャと小さな音を立てる。
「ト……マ、さま?」
ふぅ ふぅ と荒い息が耳元で繰り返される。
激しい衝動のこもったそれは僕の肌を容赦なく舐め、ゾクゾクと肌を粟立てるような感覚を与えて……
「しばらくじっとしててくれたらいい」
荒い呼吸の合間の早口の願いは否を許さない。
僕はただギュッと目を閉じて、小刻みに動き始めたトーマの手の振動をやりすごすだけだ。
見なくても何をしているのかがわかる律動と熱い息、堪えきれずに時折溢れる悩ましげな声。
僕にしがみつく腕の強さと隙間で擦り潰された汗の匂いと……鼻先を掠める少し青臭い匂い。
昼間のことがあったから、抑制剤と一緒に頓服も飲んでおいてよかったって心から思う。
どんどんと濃さを増していくトーマのフェロモンはそれだけ魅力的だったし、僕に覆い被さっている熱は身を委ねたくなるくらい気持ちがよかった。
「――――っ」
荒い呻き声、何度目かわからない絶頂が訪れて……次の瞬間にトーマの体の力が抜けて床へとずり落ちていく。
「わっ! わわ……トーマさま⁉︎」
なんとか腕を掴んで床に激突を避け、ゆっくりとラグの上に降ろす。
最後に見た赤い顔とは一転して、少し血の気の引いた顔は疲れのせいかやつれて見える。
「トーマ、さま?」
問いかけてみても返事はない。でも呼吸は安定しているし体温が高すぎたり低すぎたりもしていないから……出すものを出して気絶するように寝ちゃった……のかな?
発情期の期間は僕でも経験のあることだし、辺りにぶちまけられたモノの量を見るとそうなってもおかしくないと思う。
本来なら……怒鳴ってビンタして飛び出してもいい状況だと思うんだけど、それをするにはトーマの縋りつく熱の記憶が邪魔をした。
「振り解けなかったのは……確かだしね」
もにょ と自分に言い訳して、僕は手早くティッシュで辺りを掃除して、申し訳ないと思ったけれどお湯で絞ったタオルでトーマの体をささっと吹いていく。
あくまでこれは片付け! 掃除! って心の中で繰り返しながらも、つい目が入ったそこに視線は釘付けられてしまう。
「ぁ……膨らんでる」
吐き出すだけ吐き出したからもう興奮はしてないけれど、根本が膨らんでいるのを見てしまった。
保健の授業なんかで話に聞いたことはあったけれど、もちろん見るのは初めてで……
「っ!」
慌てて目をそらしてトーマの体を拭き上げる。
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