僕(Ω)は貴方(α)の家政夫(β)ですから!

Kokonuca.

文字の大きさ
72 / 139

72

しおりを挟む


 いつもなら夕飯の準備を終えて、ルカをお風呂に入れて……って時間帯だ。

「ルカさまは……」
「風呂に入ってもう食卓に着いている」

 そう言うとふぃと背中を向けて出ていってしまうから、僕はルカが一人でお風呂に入ったのか? とか、今一人で椅子に座っているのか? 落ちたら危ない! とか色々なことを瞬時に考えた。
 大慌てで階段を駆け降りると、リビングのローテーブルの前でじっと座っているルカがいる。

「あ、れ?」
「この方が安全だろう? 君もゆっくり食べられるはずだ」

 ルカは僕を見るとパッとこちらに駆け寄ろうとしたが、トーマに「座りなさい」と注意を受けて渋々とした様子を隠しもせずに元々座っていたところに戻った。

「夕食は用意した。……とはいえ、君が作り置きしておいたものばかりだが」

 トーマが示す先に並んでいるのは確かに僕が夜中に作ったものばかりだったけれど、きちんと皿に取り分けられているし、作った記憶のない味噌汁も並んでいる。

「味噌汁くらいは、な。君のような味にはならなかったのが残念だ」
「あ、ありがとうございます! 嬉しいです!」
「うーし?」
「はい、嬉しいですよ」

 柔らかに返すと、ルカはキラキラとした笑顔で僕を見て、それからトーマを見て嬉しそうに声をあげて笑う。
 三人で夕飯を食べられるのが楽しいみたいで、ちょっと興奮気味だった。
 キッチンのテーブルよりもリビングのローテーブルは小さいから、その分自然とお互いの距離が近くなる。

 それがなんだか……嬉しかった。





「作り置きをしてくれていて助かったよ」
「明日の夜にもう一度、明後日の分を作っておきますね」
「ああ、しっかり診てもらってきなさい」

 ここから、かかりつけのバース病院まで行くと電車賃はどれくらいかな? ってちょっと頭の中で考える。
 僕のお財布の中は、もう小銭が少しと金色のカエルが入っているだけだった。

「まずい……」

 片道の電車賃でも無理かもしれない。
 IC系カードもないし、ここはやっぱりクレジットカード? それとも……ちら とトーマに視線をやった。

 リンにはキツくトーマを煩わせるなって言われているけれど、今日は二度も介抱させているし、ルカの面倒も見させてしまって……煩わせるというなら、もうこれ以上ないってくらい面倒をかけている。
 リンとは歩み寄ろうとしても会話にすらならなくて、休みの話もできなかったくらいだ。
 これ以上、リンに頼んでもずっと無視される可能性があるんじゃないかなって思ったら、トーマに直接言うべきだって考えに辿り着いた。

「やはり美味くないだろう? 味噌汁は残しなさい」


しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

運命よりも先に、愛してしまった

AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。 しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、 2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。 その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。

辺境伯は嵌められた元令息から目が離せない

コムギ
BL
冤罪により、辺境の地へ追いやられた元侯爵令息ユベール。 だが彼は、あまりのことに気を病んで――はいなかった。 野山を駆け回り、虫を捕まえ、草花をスケッチし、のんびり釣りをする。 それはすべて、侯爵家の跡取りとして縛られていた頃には許されなかった自由だった。 そんな生活から一年。 冤罪を証明できそうだと、幼なじみの王太子から報せが届く。 ――王都へ戻れる。 それは同時に、あの窮屈で冷たい場所へ戻るということでもあった。 迷うユベールの前に現れたのは、これまで静かに見守るだけだった辺境伯ラドヴァン。 「ならば、ずっとここにいろ」 「俺と婚約すればいい」 不器用に、しかし真っ直ぐに差し伸べられた手。 優しく(時に暑苦しく)包囲してくる辺境伯と、元侯爵令息の恋物語。 ※他サイトにも掲載しています。

【書籍化決定/完結】カメラ越しのシリウス イケメン俳優と俺が運命なんてありえない!

野原 耳子
BL
★執着溺愛系イケメン俳優α×平凡なカメラマンΩ 平凡なオメガである保(たもつ)は、ある日テレビで見たイケメン俳優が自分の『運命』だと気付くが、 どうせ結ばれない恋だと思って、速攻で諦めることにする。 数年後、テレビカメラマンとなった保は、生放送番組で運命である藍人(あいと)と初めて出会う。 きっと自分の存在に気付くことはないだろうと思っていたのに、 生放送中、藍人はカメラ越しに保を見据えて、こう言い放つ。 「やっと見つけた。もう絶対に逃がさない」 それから藍人は、混乱する保を囲い込もうと色々と動き始めて―― ★リブレ様にて紙書籍・電子書籍化が決定しました! 応援してくださった皆様のおかげです! 本当にありがとうございます! 発売日などの詳細は、決まり次第、作者のXや近況ボードなどでご報告させていただきますのでお待ちいただければ幸いです。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

処理中です...