僕(Ω)は貴方(α)の家政夫(β)ですから!

Kokonuca.

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「暴れんなよ?」

 尾張おわりの注意に、こくこくと素直に頷いてから小さな手を伸ばして……あの時、僕に助けを求めた掌がゆっくりと胸を撫でて「たーい?」と問いかけてくるから、ゆるく首を振り返した。

「ルカさまが撫でてくれたので、もう痛くないですよ」
「ぶ?」
「はい、もう大丈夫です」

 お互いによしよしってしていると、もう一度ドアが開いて最初はじめが顔を覗かせる。
 
「何それ、俺もよしよししてよ」

 何言ってんの って言おうとして、最初はじめの“天使ちゃん”の顔に傷がついていることに気づく。
 最初はじめは僕がそれに気づくと、小さな絆創膏を大袈裟に押さえて泣くふりをして駆け寄ってくる。

「にぃ! すごく痛くて、ショックで倒れちゃいそうなんだけど」
「ど……どうしたの⁉︎ なんでケガなんか……」

 最初はじめが説明しようとする前に尾張おわりが割り込んで「犯人取り押さえる時に爪が引っかかったんだ」って、簡潔に説明してくれた。
 大袈裟に痛がる理由がなくなって、最初はじめはちょっと不貞腐れていたようだけれど、頰の傷以外ないみたいでほっとした。

「大丈夫そうだね。ルカさまも痛いところはないですか?」
「ん、ぶ!」
 
 点滴を入れている手は怖がらせちゃうから、右手でヘーゼルナッツ色の髪を撫でる。
 懸命に僕の様子を聞いてくるルカの目の縁は赤く腫れているし、まつ毛には雫がついたままだ。どれだけ怖い思いをしたのか考えると、胸が潰されそうな気持ちになる。

 ぎゅっと抱きしめてよしよしと背中を撫でると、やっとそこで安心したのかしくしくと泣き始めて……

「りぃくん、その……バイクの人は?」

 腕の中にルカがいる状態でリンのことを口に出すのは憚られて、視線だけで尋ねかけると尾張おわりは小さく頷き返してくれた。

「話を聞いてる最中だよ」

 ふわっとした言い方だったけれどその険しい表情が、事態はもっと深刻だと教えてくれる。
 警察に連れて行かれて事情聴取中なんだろう。
 事態を正確に把握するために大事なことだとわかってはいても、腕の中で静かに泣き続けるルカを見ると沸々とした怒りが湧き上がって、どうしてそんなことをしたのかを聞くよりも前に殴りつけてやりたかった。

 握りしめた拳が震えて赤い血が透明な管を通って逆流して……

「にぃ」

 ぽんぽんと優しく手の甲を叩かれて、自分がすごく険しい表情をしていたことに気づく。 

「ちびもいるし。な?」
「うん……」
「それに、親父もきてるからいいようにしてくれるよ」

 お父さんが?

 一瞬、そっか、安心安心ってなったけど……それは僕にとっての安心だって気づいて「えっ⁉︎」って声が出る。
 せっかく泣き止みそうだったルカが怯えて再び泣き出してしまったけれど、僕は大急ぎで立ち上がった。


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