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しおりを挟む政治にも疎く、貴族のやり取りの機微も面倒と思う俺は確かに兄やエルよりは頭は良くないのだろう、けれどそれを出会い頭に指摘されるのは流石に不愉快だ。
「なんですか、藪から棒に」
苛立ちを隠しもしない兄を睨み上げていると、兄の後ろからエルが追いかけてくるのが見えた。
「こちらでしたか!」
「エル!王はどうされたんだ!」
八つ当たりのように怒鳴ると、うんざりとした顔で一瞬首を仰け反らせたエルはいやいやと首を振って姿勢を正して見せる。
「先程、はるひの友人にお会いになりまして」
「っ⁉︎」
何を勝手なことを と怒りが湧いたが、こちらが怒鳴るよりも前に兄が「不愉快だ!」と怒鳴り出す。
「そうか……それで何をそこまで怒っているんです?」
先に怒られてしまうと俺まで怒り出すことができず、理由のわからなさに胡乱な顔を向けてしまうと、それを見下ろして兄は不服そうに尻尾を鳴らした。
不貞腐れたような表情の兄に代わり、さっと人の行き来を確認したエルが小さな声で兄の怒りの原因を教えてくれる。
「テリオドス小辺境伯がはるひとの婚姻許可を申し出たんですよ」
「 っ」
ざわ と総毛立つような感覚に身が震えたが、それが一番いいことなのだ と胸の中で沸き起こる感情を押さえつけて「そうか」と言葉を絞り出した。
もう少し先の話かと思っていただけにその言葉は胸に圧しかかる重石のようだ。
「そんなに怒るならお会いにならなければよろしかったのに。好奇心に負けるからですよ」
エルにたしなめられて……図星だったのか唇をむっと引き結んで兄は黙ってしまった。
何か言い返したそうにしてはいるが、何を言っても言い返されるのがわかっているだけに、そうするしかないんだろう。
「……では、婚姻許可の取り下げを改めてお願いいたします」
「だからお前は馬鹿だと言っているっ!」
そう何度も何度も繰り返し言われなくとも、自分が愚かなことをしているのは百も承知だ。
それでも、こうすること以外にはるひを幸せにしてやれる答えを見つけることができないのだからしかたがない。
「 っ!お前はっ‼︎」
腑抜け?
大馬鹿?
なんと言われるだろうかと覚悟を決めたが、兄から続けて言葉が出る雰囲気はなく、ただただ乱暴に尻尾が振られているだけだ。
鼻息の荒い兄を見上げ、どうしたらいいかと問うように後ろに立つエルに視線を移す。
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