変彩の宝石譚

Kokonuca.

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 接待の場だ、本来ならば朱雀はヴィクトールをもてなすために、酌の一つでもしなければならない。けれど朱雀は何もせず、冷ややかな笑みを浮かべるばかりだった。

 朱雀が来るまでこの場を持たせていたラブラドライトの宝石人である「三日月」が、ムッとした気配を感じた。
 三日月だけではなかった。
 二人の商人のためにふんだんに用意された山海の珍味と透き通るような琥珀色の酒、その間を忙しくしているのはプレシャス(上級品)の下にあるセミ(中級品)やメレ(下級品)たちだ。彼らはゴウなりヴィクトールなりに気に入られようとたおやかな指先で酒を注ぎ、あるいは扇を翻して芸を披露していると言うのに、朱雀はそんなことに興味がなさそうな様子だ。

 絶対的なゴウからの寵愛。

 それを背負って立つに相応しい容姿と宝石の品質を誇るからこそ、できる態度だった。
 しかも、周りがいくら媚を売ったところで、この二人の商人の目当てが「不死鳥」から動く気配がない。
 メレはともかく、セミの宝石人はそれなりにプライドもある。
 自分の輝きを無視されていい気分ではないのだろう、話を弾ませる商人たちの目を盗んで、鋭い視線を朱雀に送っていた。
 シオンは、自分に向けられていないと分かっていても、その痛みを感じるほどの視線に怯み、恐ろしさに気配を消すように身を縮めている。

 叡智を宿した商人たちの会話と、美しさの極致にいる宝石たちのやり取りは、シオンには無用のものだった。

 宝石人は自身の宝石を表さないとその価値はない。未分化を示すレイテンシ・グレーの瞳はその宝石人が幼いと教えると同時に、宝石人として完璧でないと教えるものでもある。
 シオンは自分の灰色の瞳を隠すための前髪を引っ張り、目立たないようにとうなだれた。

 シオンの年齢ならもうレイテンシ・グレーから何らかの宝石に変わっていてもおかしくはなかった。

 けれど…………

「隣国じゃあ、あんたのおかげで最高級のダイヤモンドに酌をしてもらって、随分と良い思いをさせてもらったからな!」

 ゴウの豪快な声に、シオンははっと思考の海から引きずり戻される。

「朱雀はそのお返しだ。もっとも、見るだけだぞ? こいつは俺以外の指一本触れさせん」

 自慢したいがよそのおとこに触れられるのは我慢ならないのだと、ゴウは事前にはっきりと告げた。
 商談の場、隣国の宝石商人と言えども軽んじてはならないはずなのに、ゴウは一歩も譲らない。

「そうは言わず、紹介ぐらいはしてくれないか? まさか他の男の名前すら耳に入れたくないと?」
「その通りだ! と、言いたところだが、ヴィクトール殿に随分と融通してもらったからな」
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