変彩の宝石譚

Kokonuca.

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 ヴィクトールの指がシオンの顎から頬を通り、まだ震えている唇へと滑る。シオンは自分に向けられる強烈な意志と男の体温に、呼吸をすることさえ忘れたように凍りついていた。
 自分を見上げるレイテンシ・グレーの瞳が一瞬固まり、ヴィクトールをはっきりと捉える。

 相手の瞳に自分が映っただけ、ただそれだけなのに、ヴィクトールは胸を蹴りつけられたように息ができなくなった。

「あの……お心遣い、ありがとうございます。ですが、今はこのような格好ですので……」

 乱されたシオンの服は、まるで暴行を受けた後のような有様だ。

「では失礼しま   ――――っ」

 この少年は自分との縁を切りたがっている!
 そう感じたヴィクトールは何かを考える前にシオンの細い手首を掴んでしまっていた。右手から伝わる躊躇を無視し、廊下の隅にある物置部屋へと強引に引き摺り込む。

「あ……っ、お客様……?」

 埃っぽい、しまいこまれた道具の古い臭い、それから淀んだ空気の臭い……シオンが逃げようとする間もなく、木の扉は閉ざされて灯りのない部屋は隙間から入り込む灯りだけが頼りの、薄暗い密室へと変貌する。
 本能的に良くないことだ と悟ったシオンは扉の方へ走り出そうとしたが、ヴィクトールはシオンの肩を掴むと壁と棚の間の狭い隙間に押し込むようにして押さえつけてしまう。
 右の壁、左の棚……そして真正面をヴィクトールで塞がれて、シオンは呼吸を忘れて身を縮める。

 けれど、ヴィクトールの手は容赦がなかった。

 シオンが抵抗の声を出すことも許さず、フラグメントたちが着用している灰色の着物を左右に大きく割った。
 元々乱れていた帯は役に立たず、無作法な男の目の前で薄暗い闇に浮かび上がるような白い裸体が晒される。

「ぁ  っ」
「隠すことは許さない」

 思わず体を隠そうとしたシオンに短い命令が飛ぶ。

 本来ならフラグメントに採掘者はおらず、ヴィクトールは異邦からの客人で、命令を聞く必要はなかった。
 けれど、光を見せない漆黒の瞳に覗き込むようにのしかかられてしまうと、シオンは恐ろしさのあまり動けなくなり……結果として、易々諾々とヴィクトールの言葉に従うことになってしまう。

「……何だ。何も教わっていない、本当にただの石ころだったのか」

 冷徹な視線が、男に触れられたことのないシオンの未成熟な身体を剥き出しにする。

 一糸まとわぬ体には、房事を仕込まれたような色気はない。先ほどのフラグメントたちに暴力を振るわれていたのだろう、脇腹に赤い痕があるだけでそれ以外は痩せている印象があるだけで綺麗なものだった。
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