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第15章 運河攻撃作戦
15.4章 攻撃隊発進
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パナマの南方海上でB-24を飛行させていたバンクス大尉のところにも、偵察機が攻撃されたとの連絡があった。同時に司令部から想定海域を捜索するように命令された。大尉の機体が飛行していたのはパナマの真南530マイル(853km)の地点だった
「パナマから200度、580マイル(933km)の地点で偵察機が日本軍戦闘機に攻撃された。日本艦隊の位置と編制を調査しろという命令だ。我々の位置から西方に飛行すれば、目的のエリアに到着できる」
航法士のマクファーランド中尉が計算結果を持ってきた。
「示された座標は我々の位置から30分程度で到着できるはずです。戦闘機に撃墜されたとのことなので、我々も無策で接近すれば、撃墜されますよ」
「その通りだ。被疑海域の前方100マイル(161km)の位置から低空飛行に移行する。時々上昇してレーダで付近を捜索するとしよう」
しばらく西に向けて飛行した後に、B-24は連絡された海域に向けて高度を下げていった。10分程度飛行した後に、機長は上昇することを告げて、高度を上げ始めた。発見される危険性はあるが、低空では視界が狭い。レーダーで遠方を探索するためにも、ある程度は高度を上げる必要がある。
上昇しながら5分ほど飛行してゆくと、マクファーランド中尉がレーダーの探知を報告した。
「2時方向にレーダーの反応が出ました。方位110度、30マイル(48km)に複数の艦艇の反射です」
「護衛戦闘機を伴った日本艦隊だ。今にも戦闘機に攻撃されるかもしれない。日本艦隊の発見をすぐに報告してくれ。朝日が昇ったので、目視でも何か見えるだろう。海上を監視していてくれ」
東から日本艦隊に接近することになったB-24は、夜明け直後の明るくなりつつある空を飛行していた。機首のキャノピーから前方を監視していた爆撃手のマクミラン少尉が叫んだ。
「南西方向、水平線上に戦艦らしきマスト、周囲にも別の艦のマストが見えます」
ほぼ同時に、バンクス大尉は1時方向、自分の機体よりもやや高い高度を飛行してくる影を発見した。まだ点にしか見えないが、この場所で飛行してくるのは、間違いなく日本軍の戦闘機だ。
「前方に日本軍機だ。銃手は戦闘配備。攻撃される可能性があるぞ」
大尉は機首を北西に向けて、機体を急降下させた。低高度に下りてレーダーから逃れると共に海面反射に紛れて上空から見つけにくくなることを期待していた。
……
二階堂大尉は、「愛宕」の電探が東方に敵機を探知したとの報告を受けて、指示された方角に向かっていた。前方に爆撃機の影を発見したが、接近する前に低空に降下したようで見失った。目を凝らして低空を探していたが、曹長なので海の上はまだ暗い。艦隊から離れるように退避していった機体を見つけることはできなかった。
「衣笠」の司令部にも接近した米軍機を取り逃がしたことが報告されてきた。小沢中将は冷静に報告を聞いていた。
「偵察機に見つかることは想定範囲内だ。我々の位置が判明すれば、もっと多くの米軍機がやってくるだろう。上空警戒の戦闘機を増やしてくれ」
……
ハーマン少将はアリューシャンの戦闘報告にも目を通していたので、爆撃隊を出撃させる場合には、戦闘機による護衛が絶対に必要だと考えていた。しかも、驚異的な撃墜率を誇る日本の対空ミサイルへの防御装備も欠かせない。少将は、これらの対策が確認できるまでは攻撃隊を発進させるつもりはなかった。
しばらく待っていると、第6空軍の戦闘機部隊指揮官であるランドール准将から待ち望んでいた報告が入ってきた。
「新型のP-38の出撃準備が整いました。昨年末から配備が進んでいる新型のP-38ならば、増槽を搭載して1800マイル(2896km)以上の飛行が可能です。この性能ならば、日本艦隊の上空で空戦をしても、基地まで戻ってくることが十分可能です。しかも最近配備されたP-51についても胴体後部に燃料タンクを増備した型ならば、十分爆撃隊の護衛が可能です」
更に手元にあったメモを少将に見せた。
「この書類にあるように、P-51は当初から航続性能が優れていたのですが、胴体内の操縦席の後ろに85ガロン(322リットル)の燃料タンクを追加した最新型は、1,300マイル(2,092km)を飛行できます。この機体に75ガロン(284リットル)の増槽を搭載させれば、航続距離は2,000マイル(3,219km)を超えます。目標海域まで進出して、空戦をしても十分戻ってくることが可能です、爆撃隊と行動を共にしていれば、航法の不安もありません」
「その返事を待っていたぞ。巡航速度の遅い爆撃機を先に離陸させる。発進が終わったら、P-38とP-51の戦闘機隊はそれを追いかけてくれ」
続いて、もう一つの報告が入ってきた。爆撃軍団指揮官のアレン大佐が爆撃隊の準備状況を知らせにきたのだ。
「爆撃隊の準備が終わりました。以前から改修工事を進めてきた電波と赤外線に対する欺瞞弾も全て搭載済みです。初めての実戦になりますが、欺瞞弾は有効だと信じています」
妙に力を込めた話し方だった。無理もない。日本のミサイルに対する対策がどこまで通用するのか判然としないのだ。それでも、ここで踏みとどまることはできない。装備の有効性を信じて、出撃するしかないのだ。
「確かに、欺瞞弾は実戦では初めての使用になるが、我が国の技術者が研究した結果を信じようではないか。本国からのレポートでは、ミサイルを模擬した試験を実施して効果的だったと書いてあるぞ。我が国もいつまでも無策じゃないということを証明しよう」
さすがに、アレン大佐も上官の思いがわかったので、強くうなずく。
会話をしている間に、もう一つ重要な報告がもたらされた。バンクス大尉が発見した日本艦隊の情報だ。偵察機が撃墜されなかったおかげで、最初の報告よりも詳しい情報が含まれている。通報には、日本艦隊の詳細な座標に加えて、東西の2隊の空母を含む艦隊に分かれて航行していることと、速度を上げながら北上していることが含まれていた。
「やっと敵艦隊の詳細情報を入手できたな。まずは今の情報を基にした想定位置に向けて発進する。引き続き偵察機からの報告があるだろうが、それは飛行中に通知すればいいだろう。直ちに、攻撃隊を発進させる」
「私も攻撃隊の爆撃機に搭乗します。爆撃隊のほとんどの機体が出撃するのです。指揮官が前線に出ないわけにはいきません。よろしいですね?」
ハーマン少将は、姿勢を正してアレン大佐に敬礼することでそれに応えた。
陸軍航空隊のアルブルック基地からは、配備機のほぼ全数に相当する56機のB-24と34機のB-17が出撃した。続いて、バルボア港北西のハワード基地から32機のB-26が離陸した。運河西方の戦闘機が配備されていたリオ・ハト基地からは、護衛として38機のP-38が出発した。南方に飛行してゆく途中の海上で、爆撃隊と合流する予定だ。
続いて報告を受けたココ・ソロ海軍基地からも、21機のPBYが発進した。その後に、増槽の準備ができた18機のP-51マスタングがハワード基地を離陸していった。
パナマ米爆撃隊:B-24リベレーター 56機、B-17フライングフォートレス 34機、B-26マローダー 32機、P-38ライトニング 38機、P-51マスタング18機、PBYカタリナ 21機
……
西側の日本艦隊は一航戦の「赤城」と「加賀」、更に、二航戦の「蒼龍」と「飛龍」が中心になっていた。艦隊は、北側から米軍機の攻撃を受けることを想定して、防空能力の高い艦艇を北側に先行させていた。10cm高角砲を搭載した防空駆逐艦の「秋月」と「照月」が最も北側を航行していた。そのやや南方に対空誘導弾を搭載した「愛宕」と「足柄」が続いていた。双方の巡洋艦共にアリューシャン沖の防空戦で誘導弾の威力を既に実証していた。今回の戦いでも強力な防空能力を発揮してくれるものと期待されていた。
「愛宕」の右舷側には、改修された「榛名」が航行していた。「榛名」は呉の空襲で受けた被害の復旧時に誘導弾の搭載艦に改修されていた。後部艦橋よりも後方の三番と四番砲塔を撤去して、後部甲板を平らにした。その後に、長方形の巨大な誘導弾格納庫と後方に誘導弾の揚弾と発射器を作動させる動力室を設置した。誘導弾格納庫の前方にはやや小型の構造物として、計算機と電探を格納した電子機器室を追加していた。誘導弾発射用のカタパルトは4基を装備して、防空巡洋艦に比べて、多数機が飛来した場合の同時対処能力を高めていた。
更に、対空砲として、従来の高角砲を撤去して秋月型と同じ10cm連装砲を左舷と右舷にそれぞれ3基、合計6基搭載した。加えて、37mm四連装機銃も9基装備して、遠距離から近距離まで強力な対空能力を有する防空艦へと変身していた。
同様に、東側艦隊の「翔鶴」と「瑞鶴」には、防空駆逐艦の「初月」と「涼月」が艦隊の北側を護衛していた。防空巡洋艦の「摩耶」と「羽黒」、加えて防空戦艦に改修された「霧島」が航行していた。
「霧島」は珊瑚海で受けた被害の復旧時に、後部砲塔を撤去して「榛名」と同様の誘導弾搭載と対空火器強化の改装が完了していた。
「衣笠」の艦上は、米偵察機から2度の接触を受けて緊張感が高まっていた。今頃はパナマの陸軍基地から四発や双発の爆撃隊が離陸しているかもしれない。しかし、こちらは艦載機が主力なのだ。もっと距離を詰めなければ、攻撃可能距離に入ってこない。ここは我慢の時だ。
空母航空隊の編制については、特殊作戦ということで、五航戦は本来の搭載機である彗星と天山を降ろして特殊攻撃機の銀河を搭載していた。艦戦については、改良型の烈風改に更新して、更に電探を搭載した複座型の烈風夜戦も搭載していた。
一航戦についても烈風改の搭載と、艦攻と艦爆を合わせて新型の流星への更新が間に合った。一方、二航戦は、依然として艦載機は烈風、彗星、天山のままだった。
「偵察型天山を艦隊の150海里(278km)まで前進させました。これで、米爆撃隊が接近すれば、要撃可能な時間を確保できます」
事前に発見できればそれだけ、迎撃の時間が取れることになる。万が一、日本の攻撃隊が発進している時にやってくるならば、少しでも余裕をもって事前に発見することは重要だ。
「うむ、それでよい。余りに遠くまで飛ばすと電探搭載機の間隔が開いて、見逃す可能性があるからな。ところでどれほど運河に接近したのだ?」
「まもなくパナマまで450海里(833km)を切りました。そろそろ、発艦を開始しますか?」
小沢長官はしばらく考えていた。400海里(741km)まで接近するならば、まだ2時間近くを要するだろう。そんなに時間をかければ米軍の爆撃機がやってくる可能性が高い。発艦時に攻撃を受ければ、艦隊は大混乱に陥ることになる。
「この後、1時間北上してから発進を開始しよう。予定通り、帰途を短縮させるために発進後も艦隊を北上させる」
1時間後には、第一次攻撃隊の発進が始まった。西側で艦隊を編制していた「赤城」と「加賀」「飛龍」「蒼龍」も第一攻撃隊を発艦させた。
一航戦、二航戦第一次攻撃隊:烈風改48機、烈風12機、彗星24機、流星30機、偵察型天山8機
なお、彗星と流星が混在しているのは、二航戦が彗星を搭載しているためだ。
ほぼ同時に東に離れて航行していた「翔鶴」と「瑞鶴」から、特殊爆撃機銀河の攻撃隊が発進した。電探反射を減らして探知を避けるという機体の特性上、銀河隊は他の編隊とは離れた攻撃経路をとることになっていた。
五航戦第一次攻撃隊:銀河33機
「翔鶴」に座乗していた酒巻少将は、奇妙な形状の航空機が空母から発艦してゆく様子を眺めていた。
「あんな奇妙な形状で、よくも飛べるもんだな」
隣に立っていた大橋中佐が答えた。
「それでもあの形状のおかげで、電探の探知を避けられるということです。今回の作戦はこの機体がなければ成立しませんよ」
少将はわかっているようにうなずいた。
「銀河の特徴については資料で読んだよ。それでも直感的に大丈夫かと思ってしまう。ところで戦闘機の準備はできているだろうな。『衣笠』の計算機が出した戦術のようだが、確かに私にも有効だと思える」
「大丈夫です。銀河とは別働隊として24機の烈風改と2機の偵察型天山を発進させます。烈風改の戦闘機隊は強力なので、必ず敵の戦闘機を殲滅してくれるはずです」
電波の低反射機である銀河に、護衛の烈風改を随伴させれば、戦闘機の電波反射で発見されてしまう。それで、爆撃隊とは離れて、遊撃隊のように行動させる戦闘機隊を飛ばすことで、迎撃の戦闘機を引き寄せようと考えたのだ。この作戦は、爆撃機の護衛を気にせずに自由に空戦ができるので、戦闘機隊から受けが良かった。
「パナマから200度、580マイル(933km)の地点で偵察機が日本軍戦闘機に攻撃された。日本艦隊の位置と編制を調査しろという命令だ。我々の位置から西方に飛行すれば、目的のエリアに到着できる」
航法士のマクファーランド中尉が計算結果を持ってきた。
「示された座標は我々の位置から30分程度で到着できるはずです。戦闘機に撃墜されたとのことなので、我々も無策で接近すれば、撃墜されますよ」
「その通りだ。被疑海域の前方100マイル(161km)の位置から低空飛行に移行する。時々上昇してレーダで付近を捜索するとしよう」
しばらく西に向けて飛行した後に、B-24は連絡された海域に向けて高度を下げていった。10分程度飛行した後に、機長は上昇することを告げて、高度を上げ始めた。発見される危険性はあるが、低空では視界が狭い。レーダーで遠方を探索するためにも、ある程度は高度を上げる必要がある。
上昇しながら5分ほど飛行してゆくと、マクファーランド中尉がレーダーの探知を報告した。
「2時方向にレーダーの反応が出ました。方位110度、30マイル(48km)に複数の艦艇の反射です」
「護衛戦闘機を伴った日本艦隊だ。今にも戦闘機に攻撃されるかもしれない。日本艦隊の発見をすぐに報告してくれ。朝日が昇ったので、目視でも何か見えるだろう。海上を監視していてくれ」
東から日本艦隊に接近することになったB-24は、夜明け直後の明るくなりつつある空を飛行していた。機首のキャノピーから前方を監視していた爆撃手のマクミラン少尉が叫んだ。
「南西方向、水平線上に戦艦らしきマスト、周囲にも別の艦のマストが見えます」
ほぼ同時に、バンクス大尉は1時方向、自分の機体よりもやや高い高度を飛行してくる影を発見した。まだ点にしか見えないが、この場所で飛行してくるのは、間違いなく日本軍の戦闘機だ。
「前方に日本軍機だ。銃手は戦闘配備。攻撃される可能性があるぞ」
大尉は機首を北西に向けて、機体を急降下させた。低高度に下りてレーダーから逃れると共に海面反射に紛れて上空から見つけにくくなることを期待していた。
……
二階堂大尉は、「愛宕」の電探が東方に敵機を探知したとの報告を受けて、指示された方角に向かっていた。前方に爆撃機の影を発見したが、接近する前に低空に降下したようで見失った。目を凝らして低空を探していたが、曹長なので海の上はまだ暗い。艦隊から離れるように退避していった機体を見つけることはできなかった。
「衣笠」の司令部にも接近した米軍機を取り逃がしたことが報告されてきた。小沢中将は冷静に報告を聞いていた。
「偵察機に見つかることは想定範囲内だ。我々の位置が判明すれば、もっと多くの米軍機がやってくるだろう。上空警戒の戦闘機を増やしてくれ」
……
ハーマン少将はアリューシャンの戦闘報告にも目を通していたので、爆撃隊を出撃させる場合には、戦闘機による護衛が絶対に必要だと考えていた。しかも、驚異的な撃墜率を誇る日本の対空ミサイルへの防御装備も欠かせない。少将は、これらの対策が確認できるまでは攻撃隊を発進させるつもりはなかった。
しばらく待っていると、第6空軍の戦闘機部隊指揮官であるランドール准将から待ち望んでいた報告が入ってきた。
「新型のP-38の出撃準備が整いました。昨年末から配備が進んでいる新型のP-38ならば、増槽を搭載して1800マイル(2896km)以上の飛行が可能です。この性能ならば、日本艦隊の上空で空戦をしても、基地まで戻ってくることが十分可能です。しかも最近配備されたP-51についても胴体後部に燃料タンクを増備した型ならば、十分爆撃隊の護衛が可能です」
更に手元にあったメモを少将に見せた。
「この書類にあるように、P-51は当初から航続性能が優れていたのですが、胴体内の操縦席の後ろに85ガロン(322リットル)の燃料タンクを追加した最新型は、1,300マイル(2,092km)を飛行できます。この機体に75ガロン(284リットル)の増槽を搭載させれば、航続距離は2,000マイル(3,219km)を超えます。目標海域まで進出して、空戦をしても十分戻ってくることが可能です、爆撃隊と行動を共にしていれば、航法の不安もありません」
「その返事を待っていたぞ。巡航速度の遅い爆撃機を先に離陸させる。発進が終わったら、P-38とP-51の戦闘機隊はそれを追いかけてくれ」
続いて、もう一つの報告が入ってきた。爆撃軍団指揮官のアレン大佐が爆撃隊の準備状況を知らせにきたのだ。
「爆撃隊の準備が終わりました。以前から改修工事を進めてきた電波と赤外線に対する欺瞞弾も全て搭載済みです。初めての実戦になりますが、欺瞞弾は有効だと信じています」
妙に力を込めた話し方だった。無理もない。日本のミサイルに対する対策がどこまで通用するのか判然としないのだ。それでも、ここで踏みとどまることはできない。装備の有効性を信じて、出撃するしかないのだ。
「確かに、欺瞞弾は実戦では初めての使用になるが、我が国の技術者が研究した結果を信じようではないか。本国からのレポートでは、ミサイルを模擬した試験を実施して効果的だったと書いてあるぞ。我が国もいつまでも無策じゃないということを証明しよう」
さすがに、アレン大佐も上官の思いがわかったので、強くうなずく。
会話をしている間に、もう一つ重要な報告がもたらされた。バンクス大尉が発見した日本艦隊の情報だ。偵察機が撃墜されなかったおかげで、最初の報告よりも詳しい情報が含まれている。通報には、日本艦隊の詳細な座標に加えて、東西の2隊の空母を含む艦隊に分かれて航行していることと、速度を上げながら北上していることが含まれていた。
「やっと敵艦隊の詳細情報を入手できたな。まずは今の情報を基にした想定位置に向けて発進する。引き続き偵察機からの報告があるだろうが、それは飛行中に通知すればいいだろう。直ちに、攻撃隊を発進させる」
「私も攻撃隊の爆撃機に搭乗します。爆撃隊のほとんどの機体が出撃するのです。指揮官が前線に出ないわけにはいきません。よろしいですね?」
ハーマン少将は、姿勢を正してアレン大佐に敬礼することでそれに応えた。
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続いて報告を受けたココ・ソロ海軍基地からも、21機のPBYが発進した。その後に、増槽の準備ができた18機のP-51マスタングがハワード基地を離陸していった。
パナマ米爆撃隊:B-24リベレーター 56機、B-17フライングフォートレス 34機、B-26マローダー 32機、P-38ライトニング 38機、P-51マスタング18機、PBYカタリナ 21機
……
西側の日本艦隊は一航戦の「赤城」と「加賀」、更に、二航戦の「蒼龍」と「飛龍」が中心になっていた。艦隊は、北側から米軍機の攻撃を受けることを想定して、防空能力の高い艦艇を北側に先行させていた。10cm高角砲を搭載した防空駆逐艦の「秋月」と「照月」が最も北側を航行していた。そのやや南方に対空誘導弾を搭載した「愛宕」と「足柄」が続いていた。双方の巡洋艦共にアリューシャン沖の防空戦で誘導弾の威力を既に実証していた。今回の戦いでも強力な防空能力を発揮してくれるものと期待されていた。
「愛宕」の右舷側には、改修された「榛名」が航行していた。「榛名」は呉の空襲で受けた被害の復旧時に誘導弾の搭載艦に改修されていた。後部艦橋よりも後方の三番と四番砲塔を撤去して、後部甲板を平らにした。その後に、長方形の巨大な誘導弾格納庫と後方に誘導弾の揚弾と発射器を作動させる動力室を設置した。誘導弾格納庫の前方にはやや小型の構造物として、計算機と電探を格納した電子機器室を追加していた。誘導弾発射用のカタパルトは4基を装備して、防空巡洋艦に比べて、多数機が飛来した場合の同時対処能力を高めていた。
更に、対空砲として、従来の高角砲を撤去して秋月型と同じ10cm連装砲を左舷と右舷にそれぞれ3基、合計6基搭載した。加えて、37mm四連装機銃も9基装備して、遠距離から近距離まで強力な対空能力を有する防空艦へと変身していた。
同様に、東側艦隊の「翔鶴」と「瑞鶴」には、防空駆逐艦の「初月」と「涼月」が艦隊の北側を護衛していた。防空巡洋艦の「摩耶」と「羽黒」、加えて防空戦艦に改修された「霧島」が航行していた。
「霧島」は珊瑚海で受けた被害の復旧時に、後部砲塔を撤去して「榛名」と同様の誘導弾搭載と対空火器強化の改装が完了していた。
「衣笠」の艦上は、米偵察機から2度の接触を受けて緊張感が高まっていた。今頃はパナマの陸軍基地から四発や双発の爆撃隊が離陸しているかもしれない。しかし、こちらは艦載機が主力なのだ。もっと距離を詰めなければ、攻撃可能距離に入ってこない。ここは我慢の時だ。
空母航空隊の編制については、特殊作戦ということで、五航戦は本来の搭載機である彗星と天山を降ろして特殊攻撃機の銀河を搭載していた。艦戦については、改良型の烈風改に更新して、更に電探を搭載した複座型の烈風夜戦も搭載していた。
一航戦についても烈風改の搭載と、艦攻と艦爆を合わせて新型の流星への更新が間に合った。一方、二航戦は、依然として艦載機は烈風、彗星、天山のままだった。
「偵察型天山を艦隊の150海里(278km)まで前進させました。これで、米爆撃隊が接近すれば、要撃可能な時間を確保できます」
事前に発見できればそれだけ、迎撃の時間が取れることになる。万が一、日本の攻撃隊が発進している時にやってくるならば、少しでも余裕をもって事前に発見することは重要だ。
「うむ、それでよい。余りに遠くまで飛ばすと電探搭載機の間隔が開いて、見逃す可能性があるからな。ところでどれほど運河に接近したのだ?」
「まもなくパナマまで450海里(833km)を切りました。そろそろ、発艦を開始しますか?」
小沢長官はしばらく考えていた。400海里(741km)まで接近するならば、まだ2時間近くを要するだろう。そんなに時間をかければ米軍の爆撃機がやってくる可能性が高い。発艦時に攻撃を受ければ、艦隊は大混乱に陥ることになる。
「この後、1時間北上してから発進を開始しよう。予定通り、帰途を短縮させるために発進後も艦隊を北上させる」
1時間後には、第一次攻撃隊の発進が始まった。西側で艦隊を編制していた「赤城」と「加賀」「飛龍」「蒼龍」も第一攻撃隊を発艦させた。
一航戦、二航戦第一次攻撃隊:烈風改48機、烈風12機、彗星24機、流星30機、偵察型天山8機
なお、彗星と流星が混在しているのは、二航戦が彗星を搭載しているためだ。
ほぼ同時に東に離れて航行していた「翔鶴」と「瑞鶴」から、特殊爆撃機銀河の攻撃隊が発進した。電探反射を減らして探知を避けるという機体の特性上、銀河隊は他の編隊とは離れた攻撃経路をとることになっていた。
五航戦第一次攻撃隊:銀河33機
「翔鶴」に座乗していた酒巻少将は、奇妙な形状の航空機が空母から発艦してゆく様子を眺めていた。
「あんな奇妙な形状で、よくも飛べるもんだな」
隣に立っていた大橋中佐が答えた。
「それでもあの形状のおかげで、電探の探知を避けられるということです。今回の作戦はこの機体がなければ成立しませんよ」
少将はわかっているようにうなずいた。
「銀河の特徴については資料で読んだよ。それでも直感的に大丈夫かと思ってしまう。ところで戦闘機の準備はできているだろうな。『衣笠』の計算機が出した戦術のようだが、確かに私にも有効だと思える」
「大丈夫です。銀河とは別働隊として24機の烈風改と2機の偵察型天山を発進させます。烈風改の戦闘機隊は強力なので、必ず敵の戦闘機を殲滅してくれるはずです」
電波の低反射機である銀河に、護衛の烈風改を随伴させれば、戦闘機の電波反射で発見されてしまう。それで、爆撃隊とは離れて、遊撃隊のように行動させる戦闘機隊を飛ばすことで、迎撃の戦闘機を引き寄せようと考えたのだ。この作戦は、爆撃機の護衛を気にせずに自由に空戦ができるので、戦闘機隊から受けが良かった。
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歴史・時代
第一次世界大戦において国家総力戦の恐ろしさを痛感した日本海軍は、ドレットノート竣工以来続いてきた大艦巨砲主義を早々に放棄し、個艦万能主義へ転換した。世界の海軍通はこれを”愚かな判断”としたが、この個艦万能主義は1940年代に置いてその真価を発揮することになる…
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