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第15章 運河攻撃作戦
15.8章 迎撃戦4
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「翔鶴」に座乗した酒巻少将に米編隊探知の報告が上がってきた。
「北北西、120海里(222km)、米軍の編隊です。我々に向けて飛行してきます」
「やはり、我が艦隊にも米軍は攻撃隊を仕向けてきたのか。上空の迎撃機を向けよ。どうも米軍は誘導弾の対抗策を行使しているようだ。追加の戦闘機も発艦させる」
西方の一航戦と二航戦の艦隊に対する攻撃では、米爆撃機が対空誘導弾の誘導電波を妨害したとの情報が「衣笠」から五航戦に通知されていた。セオリー通りだが、直衛機によりできる限り遠方で数を減らしておきたい。
この時、五航戦の周囲には24機の烈風改が上空警戒のために飛行していた。このほかに夜間戦闘と昼間戦闘を兼ねた12機の複座型烈風が艦隊を周回していた。
佐藤大尉は、母艦からの指示により、北北西に向かって飛行していた。艦隊の西方を航行していた「霧島」の電探が爆撃隊を既に探知していた。母艦からの連絡で、高度8,000mを飛行していることや、爆撃隊の前方にはおそらく戦闘機隊と思われる編隊が飛行していることもわかっていた。
母艦からくぎを刺された通り、米軍の編隊の前方には、戦闘機と思われる小型機が飛行していた。戦闘機は双発のP-38だと思っていたが、どうやら新型機のようだ。
「前方に戦闘機の編隊が約20機だ。初めて見る新型の液冷戦闘機だ。油断するな」
無線で編隊に注意するように話しながらも、大尉は新型の米戦闘機を観察していた。どこかで見たような機体だと思える。
(そうか。陸軍の飛燕に似ているのだ。性能も同程度だろうか。これは油断ならないぞ)
大尉は、陸軍基地を視察した時に、当時配備が始まっていた飛燕の飛行を目撃していた。この米戦闘機とよく似た飛燕の性能はかなり優れていたはずだ。この米戦闘機も如何にも高性能な細身の胴体の形状だ。
P-51マスタングは、エンジンをアリソンからパッカード製のマーリンに換装したB型になって大幅に性能が向上していた。高度9,000mで速度が毎時435マイル(700km/h)に向上していた。
24機の烈風改と18機のP-51の戦闘が始まった。P-51は2段過給器をマーリンエンジンが備えていたおかげで、8,000mの高空でも680km/hで飛行できた。一方、烈風改のエンジンは2速と言えども1段過給器なので、6,000mの全開高度以上に上がると徐々に速度が低下し始める。最高速度702km/hの烈風32型もこの高度では、670km/h程度に低下していた。
上昇性能は、自重に対するエンジン馬力の大きな烈風改が本来優れるはずだが、高高度の影響で出力が低下したためにほぼ程度になっていた。旋回性能については、翼面荷重の小さな烈風改がやや優れていた。
飛行性能の近いP-51Bと烈風改の空戦は一進一退となっていった。それでも、やや数の多い烈風改が次第に優勢になる。しかも、P-51Bが4挺の12.7mm機銃を装備していたのに比べて、烈風改は4挺の超銃身20mmだった。単発機であれば、多少防弾装備があっても20mm弾が命中すれば一撃で撃墜された。6機のP-51が撃墜されてゆく。その間に3機の烈風改が撃墜された。
B-17爆撃隊のアーウィン少佐は、P-51による護衛の効果を認めていた。
(敵の戦闘機に対して我が軍のマスタングは十分対抗できる。しかも、こんな遠距離まで侵攻できる航続性能を加味すれば、日本のサムよりも優れているかもしれないな。しかし、数が少なすぎる。この3倍は必要だ。おかげで、こちらの爆撃隊の護衛はゼロだ。すきを見て日本軍機が攻撃してくるぞ)
少佐の心配はすぐに現実になった。P-51と烈風改が空戦を繰り広げている間に、空母の上空を警戒していた複座型烈風が、B-17の編隊の編隊にとりついて攻撃を始めたのだ。さすがに防弾装備を完備しているB-17は、烈風の長銃身20mm機銃でも一撃で撃墜されることはない。複数機が次々と攻撃して、1機が黒煙を噴き出しながら機首を落としていった。
細身の液冷戦闘機の数が減ると佐藤大尉は、B-17の攻撃を開始した。
「空の要塞を攻撃しろ。我々の任務は爆撃機から艦隊を守ることだ」
四発機は、既に数機が撃墜されていたがまだ30機近くが飛行していた。佐藤大尉は正面からの反航戦を選んだ。B-17は機首の防御機銃が弱いと聞いていたからだ。その上、命中すれば、航空機の双方の速度が加算されて機銃弾の威力が大きく増加するはずだ。
大尉機が正面から接近してゆくと、胴体背面の防御機銃が前方を向いて撃ち始めた。曳光弾が烈風改の周りを通り過ぎてゆくが、気にせず20mmを連射する。やや長めに射撃すると、機首から操縦席あたりに命中した機銃弾が連続的に爆発した。複数の酸素ボンベが次々に破裂したのだろうか、20mm弾の爆発に続いて爆発炎が球形に広がった。爆発により、主翼前縁から前方の胴体と操縦席がごっそり脱落すると墜落していった。
(やはり、正面攻撃は難しいが、成功すれば威力は大きいな。一撃で重爆撃機を撃墜できる)
大尉の列機も後続のB-17に正面から向かってゆく。2機の烈風改が正面から銃撃すると1機が胴体から激しく炎を噴き出してきりもみになって墜ちていった。
アーウィン少佐にとっては、がっちりと編隊を組んで、防御機銃で日本軍機の攻撃に対抗するしかない。この次は恐るべき日本のミサイル攻撃が控えているはずだ。
「水平線上に日本の艦艇が見えている。日本の対空ミサイル攻撃に備えよ」
少佐の機体でも、爆撃手が発射機のスイッチを確認しながら欺瞞弾の準備を始めた。
佐藤大尉に母艦から連絡が入った。
「対空砲の射撃を開始する。3分以内に退避せよ」
上空の戦闘機が南東方向に避退してゆくと、防空巡洋艦の「摩耶」とその南東側の防空戦艦に改修された「霧島」が対空誘導弾を発射した。西側を航行していた「摩耶」がまず2発の誘導弾を発射した。すぐに「霧島」の後部から4発の誘導弾が激しい煙を噴き出して上昇を開始した。艦隊前方の東側を航行していた防空巡洋艦の「羽黒」も2発の誘導弾を発射した。
海上を凝視していたアーウィン少佐の目にも、巡洋艦と戦艦の後部が閃光を発するのが良くわかった。
「編隊各機に命令。欺瞞弾を発射せよ。繰り返す、ミサイルの欺瞞弾を全機発射だ!」
25機のB-17が、あらかじめ準備していた赤外線と金属箔の欺瞞弾を一斉に発射した。赤外線を発する燃焼弾も同時に発射する。電波欺瞞弾は編隊の前方で爆発すると金属箔の雲が広がった。日本の防空艦が発射した8発の誘導弾はいずれも雲の中で爆発して、米軍の編隊には1発も届かなかった。
既に、一航戦と二航戦への攻撃時に電波を反射する金属箔が使用されたことは伝達済みだった。加えて「衣笠」の計算機が高角砲射撃によりそれを拡散させる作戦を導き出したことも、五航戦の護衛艦艇に伝えられていた。
「霧島」艦長の岩淵大佐は無線電話で「比叡」の西田艦長とこのような場合の対策について、直前に相談していた。
既に「比叡」は、零式榴弾を全ての主砲に装填していた。左舷に向けて、ほとんど仰角を最大に上げている。
「米編隊に向けて主砲射撃。照準が完了次第撃ってよし。全砲門射撃開始」
砲術長の竹谷中佐にとっても、高高度の目標を主砲で狙うという奇妙な砲撃は初めてだった。高高度の目標に向けて、計算を繰り返して照準を完成させた。
「テーッツ」
「翔鶴」の北西側を航行していた「比叡」が左舷の斜め上を向いた8門の主砲から零式榴弾を射撃した。45口径の36cm砲は約40度の仰角で射撃すると、13,000mの水平距離で高度8,000mを超えて上昇していった。距離19,000mでは高度9,000mを超えた。砲術長は砲弾の到達高度と距離が米爆撃隊に一致するように照準を合わせていた。
「霧島」も艦首の4門の主砲を射撃した。「比叡」と「霧島」合わせて、12発の36cm砲弾が撃ちだされた。
主砲弾には、榴弾と同時に制式化された零式時限信管が装着されていた。もちろん、主砲弾が爆撃機に命中することはなかった。しかし、空中に広がった金属箔の雲の近辺で次々と爆発した。高角砲弾に比べれば圧倒的に爆圧の大きな砲弾の爆発により、金属箔の雲は一撃で薄くなった。
アーウィン少佐は前方や下方で次々と発生した大爆発にあっけにとられた。すぐに、呉の空襲でモンスター戦艦が主砲弾の射撃で攻撃機を撃墜したことを思い出した。すぐに戦艦が主砲を発砲したということに気づいた。
「主砲を撃ってきたぞ。欺瞞弾を無効化する作戦だ。欺瞞弾を追加で発射せよ。アルミ箔の密度を薄めることが敵の作戦だ」
爆撃隊から追加で欺瞞弾が発射されたが、日本艦隊も猛烈な対空射撃を開始していた。戦艦と巡洋艦の主砲に加えて、射程に捉えた10cm高角砲も一斉に撃ち始めた。圧倒的な火力が、爆撃隊の欺瞞弾を上回った。
霧島の艦上では、金属箔の密度が減少してきたことをすぐに知ることができた。電探に表示されている雲の画像を監視していれば、密度が弱くなったか否かが判明する。同時にそれは、誘導弾の命中が期待できることを意味する。
砲術長の樋口中佐は、妨害されていた誘導用電探の表示を見ていて邪魔の雲の濃度が薄くなったと感じると、すぐさま対空誘導弾の発射を命じた。一時的に中断していた誘導弾の全力射撃が始まった。
わずか5分の間に「霧島」は6回の射撃で24発の誘導弾を発射した。同様に「摩耶」は12発を、「羽黒」は10発を発射していた。40発を超える誘導弾が発射されて18機のB-17を撃墜した。
その間にも、「初月」と「涼月」が10cm高角砲で4機を撃墜した。残った3機のB-17は艦隊前方の海面に爆弾を投下するとそのまま南方に退避していった。34機のB-17編隊は五航戦の迎撃戦で完全に消滅した。
米軍の攻撃を退けると被害のなかった五航戦は直ちに残っていた銀河を発艦させた。第二次攻撃隊の準備が終わったところで、米軍機の攻撃が始まったために格納庫内にとどまっていたのだ。
五航戦よりも遅れて、攻撃を受けた混乱から立ち直って、一航戦と二航戦からも第二次攻撃隊がパナマに向けて発進していた。「蒼龍」が被害を受けたために、発進できた機数は、第一次攻撃隊よりも少数になっていた。
五航戦第二次攻撃隊:銀河21機
一航戦、二航戦第二次攻撃隊:烈風改25機、烈風6機、彗星10機、流星27機、天山5機、偵察型天山5機
「北北西、120海里(222km)、米軍の編隊です。我々に向けて飛行してきます」
「やはり、我が艦隊にも米軍は攻撃隊を仕向けてきたのか。上空の迎撃機を向けよ。どうも米軍は誘導弾の対抗策を行使しているようだ。追加の戦闘機も発艦させる」
西方の一航戦と二航戦の艦隊に対する攻撃では、米爆撃機が対空誘導弾の誘導電波を妨害したとの情報が「衣笠」から五航戦に通知されていた。セオリー通りだが、直衛機によりできる限り遠方で数を減らしておきたい。
この時、五航戦の周囲には24機の烈風改が上空警戒のために飛行していた。このほかに夜間戦闘と昼間戦闘を兼ねた12機の複座型烈風が艦隊を周回していた。
佐藤大尉は、母艦からの指示により、北北西に向かって飛行していた。艦隊の西方を航行していた「霧島」の電探が爆撃隊を既に探知していた。母艦からの連絡で、高度8,000mを飛行していることや、爆撃隊の前方にはおそらく戦闘機隊と思われる編隊が飛行していることもわかっていた。
母艦からくぎを刺された通り、米軍の編隊の前方には、戦闘機と思われる小型機が飛行していた。戦闘機は双発のP-38だと思っていたが、どうやら新型機のようだ。
「前方に戦闘機の編隊が約20機だ。初めて見る新型の液冷戦闘機だ。油断するな」
無線で編隊に注意するように話しながらも、大尉は新型の米戦闘機を観察していた。どこかで見たような機体だと思える。
(そうか。陸軍の飛燕に似ているのだ。性能も同程度だろうか。これは油断ならないぞ)
大尉は、陸軍基地を視察した時に、当時配備が始まっていた飛燕の飛行を目撃していた。この米戦闘機とよく似た飛燕の性能はかなり優れていたはずだ。この米戦闘機も如何にも高性能な細身の胴体の形状だ。
P-51マスタングは、エンジンをアリソンからパッカード製のマーリンに換装したB型になって大幅に性能が向上していた。高度9,000mで速度が毎時435マイル(700km/h)に向上していた。
24機の烈風改と18機のP-51の戦闘が始まった。P-51は2段過給器をマーリンエンジンが備えていたおかげで、8,000mの高空でも680km/hで飛行できた。一方、烈風改のエンジンは2速と言えども1段過給器なので、6,000mの全開高度以上に上がると徐々に速度が低下し始める。最高速度702km/hの烈風32型もこの高度では、670km/h程度に低下していた。
上昇性能は、自重に対するエンジン馬力の大きな烈風改が本来優れるはずだが、高高度の影響で出力が低下したためにほぼ程度になっていた。旋回性能については、翼面荷重の小さな烈風改がやや優れていた。
飛行性能の近いP-51Bと烈風改の空戦は一進一退となっていった。それでも、やや数の多い烈風改が次第に優勢になる。しかも、P-51Bが4挺の12.7mm機銃を装備していたのに比べて、烈風改は4挺の超銃身20mmだった。単発機であれば、多少防弾装備があっても20mm弾が命中すれば一撃で撃墜された。6機のP-51が撃墜されてゆく。その間に3機の烈風改が撃墜された。
B-17爆撃隊のアーウィン少佐は、P-51による護衛の効果を認めていた。
(敵の戦闘機に対して我が軍のマスタングは十分対抗できる。しかも、こんな遠距離まで侵攻できる航続性能を加味すれば、日本のサムよりも優れているかもしれないな。しかし、数が少なすぎる。この3倍は必要だ。おかげで、こちらの爆撃隊の護衛はゼロだ。すきを見て日本軍機が攻撃してくるぞ)
少佐の心配はすぐに現実になった。P-51と烈風改が空戦を繰り広げている間に、空母の上空を警戒していた複座型烈風が、B-17の編隊の編隊にとりついて攻撃を始めたのだ。さすがに防弾装備を完備しているB-17は、烈風の長銃身20mm機銃でも一撃で撃墜されることはない。複数機が次々と攻撃して、1機が黒煙を噴き出しながら機首を落としていった。
細身の液冷戦闘機の数が減ると佐藤大尉は、B-17の攻撃を開始した。
「空の要塞を攻撃しろ。我々の任務は爆撃機から艦隊を守ることだ」
四発機は、既に数機が撃墜されていたがまだ30機近くが飛行していた。佐藤大尉は正面からの反航戦を選んだ。B-17は機首の防御機銃が弱いと聞いていたからだ。その上、命中すれば、航空機の双方の速度が加算されて機銃弾の威力が大きく増加するはずだ。
大尉機が正面から接近してゆくと、胴体背面の防御機銃が前方を向いて撃ち始めた。曳光弾が烈風改の周りを通り過ぎてゆくが、気にせず20mmを連射する。やや長めに射撃すると、機首から操縦席あたりに命中した機銃弾が連続的に爆発した。複数の酸素ボンベが次々に破裂したのだろうか、20mm弾の爆発に続いて爆発炎が球形に広がった。爆発により、主翼前縁から前方の胴体と操縦席がごっそり脱落すると墜落していった。
(やはり、正面攻撃は難しいが、成功すれば威力は大きいな。一撃で重爆撃機を撃墜できる)
大尉の列機も後続のB-17に正面から向かってゆく。2機の烈風改が正面から銃撃すると1機が胴体から激しく炎を噴き出してきりもみになって墜ちていった。
アーウィン少佐にとっては、がっちりと編隊を組んで、防御機銃で日本軍機の攻撃に対抗するしかない。この次は恐るべき日本のミサイル攻撃が控えているはずだ。
「水平線上に日本の艦艇が見えている。日本の対空ミサイル攻撃に備えよ」
少佐の機体でも、爆撃手が発射機のスイッチを確認しながら欺瞞弾の準備を始めた。
佐藤大尉に母艦から連絡が入った。
「対空砲の射撃を開始する。3分以内に退避せよ」
上空の戦闘機が南東方向に避退してゆくと、防空巡洋艦の「摩耶」とその南東側の防空戦艦に改修された「霧島」が対空誘導弾を発射した。西側を航行していた「摩耶」がまず2発の誘導弾を発射した。すぐに「霧島」の後部から4発の誘導弾が激しい煙を噴き出して上昇を開始した。艦隊前方の東側を航行していた防空巡洋艦の「羽黒」も2発の誘導弾を発射した。
海上を凝視していたアーウィン少佐の目にも、巡洋艦と戦艦の後部が閃光を発するのが良くわかった。
「編隊各機に命令。欺瞞弾を発射せよ。繰り返す、ミサイルの欺瞞弾を全機発射だ!」
25機のB-17が、あらかじめ準備していた赤外線と金属箔の欺瞞弾を一斉に発射した。赤外線を発する燃焼弾も同時に発射する。電波欺瞞弾は編隊の前方で爆発すると金属箔の雲が広がった。日本の防空艦が発射した8発の誘導弾はいずれも雲の中で爆発して、米軍の編隊には1発も届かなかった。
既に、一航戦と二航戦への攻撃時に電波を反射する金属箔が使用されたことは伝達済みだった。加えて「衣笠」の計算機が高角砲射撃によりそれを拡散させる作戦を導き出したことも、五航戦の護衛艦艇に伝えられていた。
「霧島」艦長の岩淵大佐は無線電話で「比叡」の西田艦長とこのような場合の対策について、直前に相談していた。
既に「比叡」は、零式榴弾を全ての主砲に装填していた。左舷に向けて、ほとんど仰角を最大に上げている。
「米編隊に向けて主砲射撃。照準が完了次第撃ってよし。全砲門射撃開始」
砲術長の竹谷中佐にとっても、高高度の目標を主砲で狙うという奇妙な砲撃は初めてだった。高高度の目標に向けて、計算を繰り返して照準を完成させた。
「テーッツ」
「翔鶴」の北西側を航行していた「比叡」が左舷の斜め上を向いた8門の主砲から零式榴弾を射撃した。45口径の36cm砲は約40度の仰角で射撃すると、13,000mの水平距離で高度8,000mを超えて上昇していった。距離19,000mでは高度9,000mを超えた。砲術長は砲弾の到達高度と距離が米爆撃隊に一致するように照準を合わせていた。
「霧島」も艦首の4門の主砲を射撃した。「比叡」と「霧島」合わせて、12発の36cm砲弾が撃ちだされた。
主砲弾には、榴弾と同時に制式化された零式時限信管が装着されていた。もちろん、主砲弾が爆撃機に命中することはなかった。しかし、空中に広がった金属箔の雲の近辺で次々と爆発した。高角砲弾に比べれば圧倒的に爆圧の大きな砲弾の爆発により、金属箔の雲は一撃で薄くなった。
アーウィン少佐は前方や下方で次々と発生した大爆発にあっけにとられた。すぐに、呉の空襲でモンスター戦艦が主砲弾の射撃で攻撃機を撃墜したことを思い出した。すぐに戦艦が主砲を発砲したということに気づいた。
「主砲を撃ってきたぞ。欺瞞弾を無効化する作戦だ。欺瞞弾を追加で発射せよ。アルミ箔の密度を薄めることが敵の作戦だ」
爆撃隊から追加で欺瞞弾が発射されたが、日本艦隊も猛烈な対空射撃を開始していた。戦艦と巡洋艦の主砲に加えて、射程に捉えた10cm高角砲も一斉に撃ち始めた。圧倒的な火力が、爆撃隊の欺瞞弾を上回った。
霧島の艦上では、金属箔の密度が減少してきたことをすぐに知ることができた。電探に表示されている雲の画像を監視していれば、密度が弱くなったか否かが判明する。同時にそれは、誘導弾の命中が期待できることを意味する。
砲術長の樋口中佐は、妨害されていた誘導用電探の表示を見ていて邪魔の雲の濃度が薄くなったと感じると、すぐさま対空誘導弾の発射を命じた。一時的に中断していた誘導弾の全力射撃が始まった。
わずか5分の間に「霧島」は6回の射撃で24発の誘導弾を発射した。同様に「摩耶」は12発を、「羽黒」は10発を発射していた。40発を超える誘導弾が発射されて18機のB-17を撃墜した。
その間にも、「初月」と「涼月」が10cm高角砲で4機を撃墜した。残った3機のB-17は艦隊前方の海面に爆弾を投下するとそのまま南方に退避していった。34機のB-17編隊は五航戦の迎撃戦で完全に消滅した。
米軍の攻撃を退けると被害のなかった五航戦は直ちに残っていた銀河を発艦させた。第二次攻撃隊の準備が終わったところで、米軍機の攻撃が始まったために格納庫内にとどまっていたのだ。
五航戦よりも遅れて、攻撃を受けた混乱から立ち直って、一航戦と二航戦からも第二次攻撃隊がパナマに向けて発進していた。「蒼龍」が被害を受けたために、発進できた機数は、第一次攻撃隊よりも少数になっていた。
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