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第一章
閑話(家族との別れ)
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天照大御神の力により、紗代は親族の夢の中へと渡った。
✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶
ここが大和の夢の中…。
どうやら大和は自分の子どもの頃から現在までの紗代やいつき、みつきと過ごした日々の夢を視ているようだった。
あっ…。いつきちゃんにイタズラされてる。
それは大和が子どもの頃、寝ている時に枕を抜かれるというイタズラだった。
「おぉ~いっ!大和や~い。お姉ちゃんだよ~」
紗代は現在の大和を探すため、辺りをキョロキョロと見渡す。
「紗代姉っ!?!?」
大和の声と共に、夢の中のシーンが子どもの頃から大和の現在の自室へと切り替わる。
「あっ!!大和、元気だった??」
「元気だった??じゃねぇよっ!!なに呑気な事言ってだよっ!!電話中にいきなりスゴい音がしたと思ったら、急に途絶えるし…っ!!それにっ…それに……」
あちゃ~っ…。やっぱり大和にはあの時の音が聞こえていたんだね…。
「大和、ごめん…」
「何がごめんなんだよ…紗代姉…。あの時、何があったんだよ…」
大和がわたしの肩を掴みながら、辛そうな声で問いかけて来る。
そしてその手は震えている…。
わたしはそんな大和の手に、自分の手をソッと添え、じっと目を見つめながら、声をかける。
「大和…。あのね、よく聞いて欲しいんだ。わたしね、どうやらあの時に死んじゃったみたい…ごめんね…」
「はぁっ!?!?どういう事だよっ!!!!なんだよそれっ…!!!!」
大和が声を荒げて聞いてくる。こんなに声を荒らげる大和を初めて見た。
そうだよね…。
やっぱりビックリして戸惑うよね…。
「うん…。そうだよね…。いきなり“わたしは死にました”なんて言われても戸惑うだけだよね。
大和、今からその事についての説明をするけど、落ち着いてよく聞いてね??
実はねあの時───」
わたしは、異世界の神のゴタゴタに巻き込まれて死んだこと。
気がついたら神界と呼ばれる場所に居て、そこでいつきちゃんとみつきちゃん、天照大御神様という神様に会ったこと。
死んだ原因となった異世界の神様に謝罪をされて、それを受け入れたこと。
そして、本来の寿命を多く残して死んだため、その分の人生をやり直す為に異世界に転生すること。
わたしが神界で目覚めてから今までの経緯を、体が縦半分に真っ二つになったこと以外を順を追って説明した。
「───だからね、転生する前にちゃんと最期のあいさつを家族としたいってお願いして、天照大御神様の力をお借りして、今この場に居ます。
これで全部だよ。大和、わかってくれたかな??」
「はっ…ははっ…なんだよそれ…」
そう言いながら、わたしの肩を掴んでいた手の力は抜け、項垂れてしまった。
そうだよね。こんな夢みたいな、それこそラノベみたいな展開をいきなり説明されても納得できないよね…。
「大和…。」
「いや…。紗代姉、ごめん。大丈夫だ。いきなりな展開でついていけないというか、驚きすぎてさ…
でも納得した。だからあの時いつきとみつきは怒って消えたんだな…。突然湊(大和の息子)が激しく泣き出すから何事かと思ったんだ」
大和は俯いていた顔を上げた。
何とか納得してくれたかな?
湊ちゃんにも悪い事しちゃったな…。
「それでね、大和。今度の事なんだけど、わたしは急な海外赴任をして永住することになってます。
あとね、遺骨は後からいつきちゃんとみつきちゃんが届けてくれるから、清水家のお墓に入れてもらってもいいかな??
こんな事頼んでごめんね…」
本当に申し訳ないと思いながら、大和にお願いする。
「…ああ。任せとけ」
渋々納得したって感じかな…。
「紗代姉…。親父とおふくろにはもう会ったのか?」
「うん…。会ったよ。大和と同じように説明したけど、やっぱり泣かれちゃった。“親より早く死ぬなんて…”って…。
わたしもね、泣いちゃったよ。最近全然帰って来れなかったのに、こんな事になってさ…。
大和、お父さんとお母さんの事、頼んでもいいかな??」
「…わかったよ」
「うん。お願いね。
さてっ!!湿っぽいのは終わり、終わりっ!!」
最期はやっぱり笑顔でお別れしないとね。
最期の記憶が泣き顔だなんて悲しいしねっ!!
「大和、あんたがオススメしてくれたラノベの知識、役立ちそうだよ~。なんせ転生後は剣と魔法の世界でお貴族さまだからねっ!
向こうの世界に行っても、いつきちゃんとみつきちゃんはずっと見守ってくれるって約束してくれたし、うんと楽しんで来るねっ!!」
「はっ…。なんだよそれ。まぁ、紗代姉らしいっちゃらしいけど」
うん。大和も笑ってくれた。
これでもう思い残す事はないかな。
「大和、元気でね。さっきも言ったけど、お父さんとお母さんことお願いします。あと、茜さん(大和の妻)と湊ちゃんにもよろしく伝えてね。
じゃあね、大和。後は頼んだっ!!お姉ちゃんは行っていますっ!!」
✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶
「なんだよそれ、紗代姉のバカヤロウ…」
朝、大和はそう呟きながら起きた。
頬が濡れている。どうやら涙を流していたようだ。その涙をぐっとパジャマの袖で拭うと、
「さてと、起きるか。今日も1日忙しくなりそうだ。親父とおふくろにも確認して、茜と湊にも説明しないとな…。
やれやれ、紗代姉のヤツめ」
そう言いながら、大和はリビングへと向った。
────────────────────
〈作者(◉ɷ◉ )より〉
家族との最期のあいさつ編、思った以上に長くなりました。
2部に分けようかなぁ~と悩みましたが、やっぱり長くても少しでも雰囲気が伝わればと思い、このようになりました。
さてさて、これにて第一章は終わりとなります。
ここまでお付き合いいだき、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
第二章は紗代ちゃんの転生後の生活となります。
今後ともどうぞよろしくお願いしますっ!!
✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶
ここが大和の夢の中…。
どうやら大和は自分の子どもの頃から現在までの紗代やいつき、みつきと過ごした日々の夢を視ているようだった。
あっ…。いつきちゃんにイタズラされてる。
それは大和が子どもの頃、寝ている時に枕を抜かれるというイタズラだった。
「おぉ~いっ!大和や~い。お姉ちゃんだよ~」
紗代は現在の大和を探すため、辺りをキョロキョロと見渡す。
「紗代姉っ!?!?」
大和の声と共に、夢の中のシーンが子どもの頃から大和の現在の自室へと切り替わる。
「あっ!!大和、元気だった??」
「元気だった??じゃねぇよっ!!なに呑気な事言ってだよっ!!電話中にいきなりスゴい音がしたと思ったら、急に途絶えるし…っ!!それにっ…それに……」
あちゃ~っ…。やっぱり大和にはあの時の音が聞こえていたんだね…。
「大和、ごめん…」
「何がごめんなんだよ…紗代姉…。あの時、何があったんだよ…」
大和がわたしの肩を掴みながら、辛そうな声で問いかけて来る。
そしてその手は震えている…。
わたしはそんな大和の手に、自分の手をソッと添え、じっと目を見つめながら、声をかける。
「大和…。あのね、よく聞いて欲しいんだ。わたしね、どうやらあの時に死んじゃったみたい…ごめんね…」
「はぁっ!?!?どういう事だよっ!!!!なんだよそれっ…!!!!」
大和が声を荒げて聞いてくる。こんなに声を荒らげる大和を初めて見た。
そうだよね…。
やっぱりビックリして戸惑うよね…。
「うん…。そうだよね…。いきなり“わたしは死にました”なんて言われても戸惑うだけだよね。
大和、今からその事についての説明をするけど、落ち着いてよく聞いてね??
実はねあの時───」
わたしは、異世界の神のゴタゴタに巻き込まれて死んだこと。
気がついたら神界と呼ばれる場所に居て、そこでいつきちゃんとみつきちゃん、天照大御神様という神様に会ったこと。
死んだ原因となった異世界の神様に謝罪をされて、それを受け入れたこと。
そして、本来の寿命を多く残して死んだため、その分の人生をやり直す為に異世界に転生すること。
わたしが神界で目覚めてから今までの経緯を、体が縦半分に真っ二つになったこと以外を順を追って説明した。
「───だからね、転生する前にちゃんと最期のあいさつを家族としたいってお願いして、天照大御神様の力をお借りして、今この場に居ます。
これで全部だよ。大和、わかってくれたかな??」
「はっ…ははっ…なんだよそれ…」
そう言いながら、わたしの肩を掴んでいた手の力は抜け、項垂れてしまった。
そうだよね。こんな夢みたいな、それこそラノベみたいな展開をいきなり説明されても納得できないよね…。
「大和…。」
「いや…。紗代姉、ごめん。大丈夫だ。いきなりな展開でついていけないというか、驚きすぎてさ…
でも納得した。だからあの時いつきとみつきは怒って消えたんだな…。突然湊(大和の息子)が激しく泣き出すから何事かと思ったんだ」
大和は俯いていた顔を上げた。
何とか納得してくれたかな?
湊ちゃんにも悪い事しちゃったな…。
「それでね、大和。今度の事なんだけど、わたしは急な海外赴任をして永住することになってます。
あとね、遺骨は後からいつきちゃんとみつきちゃんが届けてくれるから、清水家のお墓に入れてもらってもいいかな??
こんな事頼んでごめんね…」
本当に申し訳ないと思いながら、大和にお願いする。
「…ああ。任せとけ」
渋々納得したって感じかな…。
「紗代姉…。親父とおふくろにはもう会ったのか?」
「うん…。会ったよ。大和と同じように説明したけど、やっぱり泣かれちゃった。“親より早く死ぬなんて…”って…。
わたしもね、泣いちゃったよ。最近全然帰って来れなかったのに、こんな事になってさ…。
大和、お父さんとお母さんの事、頼んでもいいかな??」
「…わかったよ」
「うん。お願いね。
さてっ!!湿っぽいのは終わり、終わりっ!!」
最期はやっぱり笑顔でお別れしないとね。
最期の記憶が泣き顔だなんて悲しいしねっ!!
「大和、あんたがオススメしてくれたラノベの知識、役立ちそうだよ~。なんせ転生後は剣と魔法の世界でお貴族さまだからねっ!
向こうの世界に行っても、いつきちゃんとみつきちゃんはずっと見守ってくれるって約束してくれたし、うんと楽しんで来るねっ!!」
「はっ…。なんだよそれ。まぁ、紗代姉らしいっちゃらしいけど」
うん。大和も笑ってくれた。
これでもう思い残す事はないかな。
「大和、元気でね。さっきも言ったけど、お父さんとお母さんことお願いします。あと、茜さん(大和の妻)と湊ちゃんにもよろしく伝えてね。
じゃあね、大和。後は頼んだっ!!お姉ちゃんは行っていますっ!!」
✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶✶
「なんだよそれ、紗代姉のバカヤロウ…」
朝、大和はそう呟きながら起きた。
頬が濡れている。どうやら涙を流していたようだ。その涙をぐっとパジャマの袖で拭うと、
「さてと、起きるか。今日も1日忙しくなりそうだ。親父とおふくろにも確認して、茜と湊にも説明しないとな…。
やれやれ、紗代姉のヤツめ」
そう言いながら、大和はリビングへと向った。
────────────────────
〈作者(◉ɷ◉ )より〉
家族との最期のあいさつ編、思った以上に長くなりました。
2部に分けようかなぁ~と悩みましたが、やっぱり長くても少しでも雰囲気が伝わればと思い、このようになりました。
さてさて、これにて第一章は終わりとなります。
ここまでお付き合いいだき、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
第二章は紗代ちゃんの転生後の生活となります。
今後ともどうぞよろしくお願いしますっ!!
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