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第三章
裏会議④
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〈父:フリッツィSide〉
ある女性の命…。まさか…っ!!!!
私は思わずシロガネ殿の顔を伺う。
だが、シロガネ殿はフルフルと首を振り、“その件は追求するな”と態度で示す。
なんて事だ…。それがもし本当ならエルシーアは…。
「こっほんっ!!!!」
私の考えを遮るように咳払いをするシロガネ殿。
「さて、邪神は封印されたが、聖神国の邪神教そのものが無くなった訳では無い。
邪神の力を借りて反魂の術を繰り返していた聖神国は今焦っている。
まぁ、反魂の術で大金をせしめ、甘い汁を吸っていた教会にとって、邪神が居ないと今までの様な生活ができないと困っている訳だ。
そこで奴らはな、邪神の復活を考えた」
「ねぇ、シロガネちゃん。邪神そのものはちゃんと封印されたのよねん?それなのに、再び邪神が復活する事ってあり得るのかしらん…」
エミリーがシロガネ殿に質問をする。
そうだ。聖神国だって邪神が封印されたのを知らないはずは無い。それなのに、復活を願うなんて無謀だ。
「わからない…。何時だって『怒り』『憎しみ』『悲しみ』といった負の感情は消える事は無い。
だから奴らはより強い負の感情『絶望』と強い魔力を持つ者を探している」
「もしかして…、まさか…」
エミリーが信じたくないっといった表現でブルブルと震える。
「そうだ。諸君らの考えている通り、奴らの最終目的はエルシーアの命になるだろう…」
「そんな…っ!!!!」
私の隣に座り、今まで静かに話を聞いていた妻のハリエットが顔を両手で覆い、はらはらと涙を流している。私は妻の肩を抱き、慰める。
今まで私達だって考えなかった訳では無い。そのためにエルシーアが生まれてから今日まで、ずっと慈しみ護って来たのだから。
ただ、私達の考えが現実になるかもしれない。その可能性が高まってしまった…。
「幸いと言って良いか分からないが、聖神国はまだエルシーアの存在には気がついていない。だが、いつ気がつくとも知れない。
それにな、最近の王都から、聖神国と同じ嫌な匂いが風に乗って届くのじゃ。
フリッツィ、最近の王都の様子はどうなっておる?」
「シロガネ殿、確かに我が国にも聖神国の者が出入りする様になっています。常に見張りを付けていますが、今の所は特におかしな動きはありません。
シロガネ殿、聖神国と同じ嫌な匂いと言うのは?それは我が国で聖神国と同じ事が起こると言う事ですか?」
我が一族は王家の裏の番犬。王国の裏を取り仕切る真の暗部であり、多くの優秀な密偵を抱えている。
そんな密偵が何かを見落としている?
「今すぐにどうこうなる訳では無いが、この国の子どもは7歳になると教会に行き、祈りを捧げ、魔力属性とスキルの鑑定を受けるな?」
「ええ、この国の主要な教会には魔力属性とスキルを鑑定するマジックアイテムがあります。そのため、貴族、平民関わらず、まずは7歳のお披露目の儀で鑑定、発表をします。まさか…」
「うむ。そのまさかじゃ。奴らは狙っているのじゃ。魔力量が高いものを攫う絶好の機会じゃからの」
シロガネ殿が重々しく頷く。
まさか、我が国で古くから続く慣例が仇になるなんて考えた事が無かった…。
しかし、王都での貴族子息、令嬢のお披露目の儀式までには時間がない。どうすれば…。
「落ち着くのじゃ。まず差し迫っている王都のお披露目の儀で、事の自体を公表し、注意喚起せよ。さすれば、誘拐を企てている者達も手を出しにくいだろうよ」
「しかし、そのためには陛下に許可を得なければなりません。私の言葉だけで動いてくれればいいのてすが…」
「この国の王は、己の民を護るために協力をしない愚かな王なのか?」
「いえ、そういう訳では…。ただ私の言葉に信憑性が欲しいのです。いかがしたものか…」
この国の王であり、私の同級生で友人あるデドリックは悪い奴では無いし、話を聞かない奴でも無い。
私が王国の裏の番犬であることも知っている。
だがしかし、私の発言の信憑性を強めるためにも、もうひと押し欲しいのが事実だ。
「むふ…。仕方ないの。どれ、ここはひとつ我がひと肌脱いでやろうではないか」
「ありがとうございます。ですが、エルシーアが愛し子である事、シロガネ殿が側にいる事をを王家に知られたくは無いのです」
「エルシーアが王家に利用されない様にしたいと言う事か」
「その通りです」
「あいわかった。その辺は上手くやる。任せておけ」
「「「「「ありがとうございます」」」」」
私達一家は深々と頭を下げた。
「うむ。諸君らに話しておくことは以上だ。
明日からはしばらく王都での生活となる。王都では何が起こるかわからない。気を引き締めよ。
エルシーアの心と体を護るため、そのために今まで隠していた秘密を話したのだ。
ここに居る者達は普段からエルシーアに接する機会が多いからの。
我とペルルも常に側につき護るが、諸君らも常日頃からエルシーアの事を気にかけて欲しい。なに、特別な事はせんで良い。今まで通り、エルシーアがやらかしそうなら諫め、やらかしたら怒り、普段から愛情をたっぷり注げば良いのだ。
そして諸君ら自身の体のことも気にかけるのだ。諸君らに何かあれば悲しむのはエルシーアだからな」
「かしこまりました。お話をしてくださりありがとうございます。
陛下への報告については、連絡がつき次第報告致します」
「うむ。では、我はエルと共に昼寝をしてくる」
〔ボクもエルのところに帰るね〕
シロガネ殿とペルル殿はそう言うと転移でエルシーアの元へと帰って行った。
ある女性の命…。まさか…っ!!!!
私は思わずシロガネ殿の顔を伺う。
だが、シロガネ殿はフルフルと首を振り、“その件は追求するな”と態度で示す。
なんて事だ…。それがもし本当ならエルシーアは…。
「こっほんっ!!!!」
私の考えを遮るように咳払いをするシロガネ殿。
「さて、邪神は封印されたが、聖神国の邪神教そのものが無くなった訳では無い。
邪神の力を借りて反魂の術を繰り返していた聖神国は今焦っている。
まぁ、反魂の術で大金をせしめ、甘い汁を吸っていた教会にとって、邪神が居ないと今までの様な生活ができないと困っている訳だ。
そこで奴らはな、邪神の復活を考えた」
「ねぇ、シロガネちゃん。邪神そのものはちゃんと封印されたのよねん?それなのに、再び邪神が復活する事ってあり得るのかしらん…」
エミリーがシロガネ殿に質問をする。
そうだ。聖神国だって邪神が封印されたのを知らないはずは無い。それなのに、復活を願うなんて無謀だ。
「わからない…。何時だって『怒り』『憎しみ』『悲しみ』といった負の感情は消える事は無い。
だから奴らはより強い負の感情『絶望』と強い魔力を持つ者を探している」
「もしかして…、まさか…」
エミリーが信じたくないっといった表現でブルブルと震える。
「そうだ。諸君らの考えている通り、奴らの最終目的はエルシーアの命になるだろう…」
「そんな…っ!!!!」
私の隣に座り、今まで静かに話を聞いていた妻のハリエットが顔を両手で覆い、はらはらと涙を流している。私は妻の肩を抱き、慰める。
今まで私達だって考えなかった訳では無い。そのためにエルシーアが生まれてから今日まで、ずっと慈しみ護って来たのだから。
ただ、私達の考えが現実になるかもしれない。その可能性が高まってしまった…。
「幸いと言って良いか分からないが、聖神国はまだエルシーアの存在には気がついていない。だが、いつ気がつくとも知れない。
それにな、最近の王都から、聖神国と同じ嫌な匂いが風に乗って届くのじゃ。
フリッツィ、最近の王都の様子はどうなっておる?」
「シロガネ殿、確かに我が国にも聖神国の者が出入りする様になっています。常に見張りを付けていますが、今の所は特におかしな動きはありません。
シロガネ殿、聖神国と同じ嫌な匂いと言うのは?それは我が国で聖神国と同じ事が起こると言う事ですか?」
我が一族は王家の裏の番犬。王国の裏を取り仕切る真の暗部であり、多くの優秀な密偵を抱えている。
そんな密偵が何かを見落としている?
「今すぐにどうこうなる訳では無いが、この国の子どもは7歳になると教会に行き、祈りを捧げ、魔力属性とスキルの鑑定を受けるな?」
「ええ、この国の主要な教会には魔力属性とスキルを鑑定するマジックアイテムがあります。そのため、貴族、平民関わらず、まずは7歳のお披露目の儀で鑑定、発表をします。まさか…」
「うむ。そのまさかじゃ。奴らは狙っているのじゃ。魔力量が高いものを攫う絶好の機会じゃからの」
シロガネ殿が重々しく頷く。
まさか、我が国で古くから続く慣例が仇になるなんて考えた事が無かった…。
しかし、王都での貴族子息、令嬢のお披露目の儀式までには時間がない。どうすれば…。
「落ち着くのじゃ。まず差し迫っている王都のお披露目の儀で、事の自体を公表し、注意喚起せよ。さすれば、誘拐を企てている者達も手を出しにくいだろうよ」
「しかし、そのためには陛下に許可を得なければなりません。私の言葉だけで動いてくれればいいのてすが…」
「この国の王は、己の民を護るために協力をしない愚かな王なのか?」
「いえ、そういう訳では…。ただ私の言葉に信憑性が欲しいのです。いかがしたものか…」
この国の王であり、私の同級生で友人あるデドリックは悪い奴では無いし、話を聞かない奴でも無い。
私が王国の裏の番犬であることも知っている。
だがしかし、私の発言の信憑性を強めるためにも、もうひと押し欲しいのが事実だ。
「むふ…。仕方ないの。どれ、ここはひとつ我がひと肌脱いでやろうではないか」
「ありがとうございます。ですが、エルシーアが愛し子である事、シロガネ殿が側にいる事をを王家に知られたくは無いのです」
「エルシーアが王家に利用されない様にしたいと言う事か」
「その通りです」
「あいわかった。その辺は上手くやる。任せておけ」
「「「「「ありがとうございます」」」」」
私達一家は深々と頭を下げた。
「うむ。諸君らに話しておくことは以上だ。
明日からはしばらく王都での生活となる。王都では何が起こるかわからない。気を引き締めよ。
エルシーアの心と体を護るため、そのために今まで隠していた秘密を話したのだ。
ここに居る者達は普段からエルシーアに接する機会が多いからの。
我とペルルも常に側につき護るが、諸君らも常日頃からエルシーアの事を気にかけて欲しい。なに、特別な事はせんで良い。今まで通り、エルシーアがやらかしそうなら諫め、やらかしたら怒り、普段から愛情をたっぷり注げば良いのだ。
そして諸君ら自身の体のことも気にかけるのだ。諸君らに何かあれば悲しむのはエルシーアだからな」
「かしこまりました。お話をしてくださりありがとうございます。
陛下への報告については、連絡がつき次第報告致します」
「うむ。では、我はエルと共に昼寝をしてくる」
〔ボクもエルのところに帰るね〕
シロガネ殿とペルル殿はそう言うと転移でエルシーアの元へと帰って行った。
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