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第四章
子守唄②
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〈兄:ウィルフリードSide〉
《はじめましてなの。わたしは精霊女王ラーレなの。
さっきはうちの子達がごめんなさいなの。
本当はエルちゃんがもう少し大きくなってから会いに来る予定だったけど、うちの子達がいっぱい迷惑かけたから、お詫びに来たのなの》
精霊女王ラーレ。全ての精霊の母としてその名前は知られているが、誰もその姿を見たものは居ない。
当然だ。精霊女王は精霊と同じで気まぐれではあるが、普段から精霊の森に住み、その森から滅多に出る事は無いのだから。
だが、その精霊女王はエルに精霊樹を与え、今はこうして姿を現している。
【精霊女王よ、おぬしは何をしに来たのだ?】
シロガネの声と共に、ふわっとシロガネとペルルが現れ、トンッとベッドに着地する。
《四聖獣が一体、白虎シロガネ、そして願いの守護獣ペルル、はじめましてなの。
さっきはうちの子達がごめんなさいなの。いっぱい迷惑かけちゃったのなの。だからお詫びに来たのなの》
〔お詫び?今更お詫びに来てもらったところで、迷惑をかけられた回数の方が多くて、たった1回のお詫びでは足りないくらいだけど?〕
《むぅ~なの》
ペルルの厳しい言葉に拗ねる精霊女王。
【精霊女王よ、おぬしは本当に何をしに来たのだ?】
進まないの会話にシロガネが再度問いかける。
《エルちゃん、魘されてるのなの。ちゃんと魘される原因を取り除かないと、エルちゃんはこの先もずっと魘され続け衰弱していくのなの。
だから、ラーレは今までのお詫びとして、エルちゃんを助けに来たのなの》
エルがこのまま魘されて衰弱するだと!?
そんなのはダメだっ!!
「突然話し掛ける無礼をお許しください。精霊女王ラーレ様。どうすればエルを…、エルシーアを救う事ができますか!?
愛しいエルシーアを救う為なら何でも致しますっ!!どうか…、どうかこの私にエルシーアを救う手助けをさせてはいただけないでしょうか…!!」
僕は未だ泣きながら魘されるエルを強く抱きしめ、精霊女王ラーレに頭を下げる。
《無理なの。君には何もできないのなの》
「そんな…っ!!」
苦しむエルが腕の中に居るのに、僕には何もできないのか…。
何故だ…っ!!何故エルが苦しまなければならないっ!!
やはりあの女は消しておくべきだった。
エルの虹色の魔力で浄化された僕の心が、再び怒りに染まっていく。
《落ち着いてなの。ちゃんとエルちゃんを助ける方法はあるのなの。
君には無理だけど、この子にお願いすれば大丈夫なの》
そう言った精霊女王の両手のひらから現れたのは、一匹の見慣れない動物。
白と黒のその姿は子豚の様で、そうではない。
全長は10cm程だろうか。
【精霊女王よ、そやつは?】
《この子は幻獣でもあり、夢喰い妖怪でもある獏ちゃんなの》
《ばくぅ~っ》
〔ボクと同じ幻獣ねぇ?精霊女王は普段から精霊の森に居るのによく連れてこれたね〕
《この獏ちゃんは、創造神であらせられるエアネスト様から託されたのなの》
《ばっくぅ~んっ》
何だろう…。精霊女王の両手のひらの上で、何故か夢喰い獏がドヤって居る。
【エアネスト様が…。そうか。あい、わかった。
精霊女王よ、早速エルが魘される原因の悪夢を食べさせよ】
《わかったのなの。
でもその前に、エルちゃんをベッドに横たえてなの。抱き上げられたままだと、獏ちゃんの作業の邪魔になっちゃうのなの》
シロガネとペルルに視線を向けられ、僕は精霊女王に言われたとおり、エルをベットに寝かせる。
「精霊女王ラーレ様。手だけは…、どうか手だけは握っていてもいいでしょうか?」
《それぐらいなら構わないのなの。
じゃあ獏ちゃん、エルちゃんの悪夢を全部食べちゃってなの》
《ばくぅ~ばくぅっ!!》
まるで任せろと言わんばかりの返事をする夢喰い獏を、精霊女王はエルの枕元に下ろす。
《それじゃあ、獏ちゃん、やっちゃってなの》
《ばくぅ~っ、ばくばくばくぅ~っ!!》
夢喰い獏がエルの頭に顔を近づけ、口をもごもご動かし何かを食べる仕草をする。
すると、エルの頭から黒いモヤが溢れ出し、そのモヤを夢喰い獏が吸い込みもぐもぐ咀嚼する。
《もっぐぅ、もっぐぅ、ごきゅんっ!!》
ごくんっと最後のモヤを夢喰い獏が食べきった時、夢喰い獏の体が一回り大きくなった。
《けっぷぅ~っ》
《獏ちゃん、よく頑張ったのなの。ありがとうなの。これでエルちゃんはもう魘され無いなの》
もう魘され無い。
精霊女王のその言葉を聞いて、エルの様子を確認する。
するとエルは泣き止み、穏やかな寝息を立てていた。
エルの目元に残る涙を指先でそっと拭う。
「よかった…」
〔本当にこれで大丈夫なんだよね?〕
《もちろんなの。だけど、魘されてちゃんと眠れていなかったから、後は深い眠りに誘うだけなの。
君も疲れているでしょ?君もエルちゃんと一緒に寝るのなの》
精霊女王がベットをポンポンと叩き、僕にも寝るようにと促してくる。
「ですが…」
〔ウィルフリード、お前も眠れ。
話し合いはまだまだ終わらない。ボクとシロガネがこっちに来たのもあって、一時中断しているし、まだ時間がかかる。だから安心して眠ればいい〕
そうか。話し合いが行われると思っていたが、まだまだ続くのか。
「では、お言葉に甘えて…」
僕はエルの横にそっと横たわる。
《おやすみなさいなの》
精霊女王が手で僕の瞼を覆い、眠りを促す子守唄を歌い始めた。
♪~♪~
花は静かに 月影うけて
頭をたれて 朝を待つ
秘かにささやく 花のこえは
眠れ 眠れ 愛しい我が子
眠りの精は 窓に覗き
眠れぬ子どもを 見つけ出す
閉じない眼に 魔法をまくよ
眠れ 眠れ 愛しい我が子
眠りの精は 外に去り
愛しい我が子 おめめを閉じた
明るい朝 起きるまで
眠れ 眠れ 愛しい我が子
♪~♪~
《ふふふっ。よく眠ってるのなの。
目が覚めたらまた会いに来るのなの。
それまではゆっくりおやすみなさいなの》
精霊女王はエルシーアの額に、ちゅっとおやすみのキスを贈る。
すると一瞬だがエルシーアの額がふわっと光り、光はそのままエルシーアの額に消えていった。
{※長くなってしまって、ごめんなさい…}
《はじめましてなの。わたしは精霊女王ラーレなの。
さっきはうちの子達がごめんなさいなの。
本当はエルちゃんがもう少し大きくなってから会いに来る予定だったけど、うちの子達がいっぱい迷惑かけたから、お詫びに来たのなの》
精霊女王ラーレ。全ての精霊の母としてその名前は知られているが、誰もその姿を見たものは居ない。
当然だ。精霊女王は精霊と同じで気まぐれではあるが、普段から精霊の森に住み、その森から滅多に出る事は無いのだから。
だが、その精霊女王はエルに精霊樹を与え、今はこうして姿を現している。
【精霊女王よ、おぬしは何をしに来たのだ?】
シロガネの声と共に、ふわっとシロガネとペルルが現れ、トンッとベッドに着地する。
《四聖獣が一体、白虎シロガネ、そして願いの守護獣ペルル、はじめましてなの。
さっきはうちの子達がごめんなさいなの。いっぱい迷惑かけちゃったのなの。だからお詫びに来たのなの》
〔お詫び?今更お詫びに来てもらったところで、迷惑をかけられた回数の方が多くて、たった1回のお詫びでは足りないくらいだけど?〕
《むぅ~なの》
ペルルの厳しい言葉に拗ねる精霊女王。
【精霊女王よ、おぬしは本当に何をしに来たのだ?】
進まないの会話にシロガネが再度問いかける。
《エルちゃん、魘されてるのなの。ちゃんと魘される原因を取り除かないと、エルちゃんはこの先もずっと魘され続け衰弱していくのなの。
だから、ラーレは今までのお詫びとして、エルちゃんを助けに来たのなの》
エルがこのまま魘されて衰弱するだと!?
そんなのはダメだっ!!
「突然話し掛ける無礼をお許しください。精霊女王ラーレ様。どうすればエルを…、エルシーアを救う事ができますか!?
愛しいエルシーアを救う為なら何でも致しますっ!!どうか…、どうかこの私にエルシーアを救う手助けをさせてはいただけないでしょうか…!!」
僕は未だ泣きながら魘されるエルを強く抱きしめ、精霊女王ラーレに頭を下げる。
《無理なの。君には何もできないのなの》
「そんな…っ!!」
苦しむエルが腕の中に居るのに、僕には何もできないのか…。
何故だ…っ!!何故エルが苦しまなければならないっ!!
やはりあの女は消しておくべきだった。
エルの虹色の魔力で浄化された僕の心が、再び怒りに染まっていく。
《落ち着いてなの。ちゃんとエルちゃんを助ける方法はあるのなの。
君には無理だけど、この子にお願いすれば大丈夫なの》
そう言った精霊女王の両手のひらから現れたのは、一匹の見慣れない動物。
白と黒のその姿は子豚の様で、そうではない。
全長は10cm程だろうか。
【精霊女王よ、そやつは?】
《この子は幻獣でもあり、夢喰い妖怪でもある獏ちゃんなの》
《ばくぅ~っ》
〔ボクと同じ幻獣ねぇ?精霊女王は普段から精霊の森に居るのによく連れてこれたね〕
《この獏ちゃんは、創造神であらせられるエアネスト様から託されたのなの》
《ばっくぅ~んっ》
何だろう…。精霊女王の両手のひらの上で、何故か夢喰い獏がドヤって居る。
【エアネスト様が…。そうか。あい、わかった。
精霊女王よ、早速エルが魘される原因の悪夢を食べさせよ】
《わかったのなの。
でもその前に、エルちゃんをベッドに横たえてなの。抱き上げられたままだと、獏ちゃんの作業の邪魔になっちゃうのなの》
シロガネとペルルに視線を向けられ、僕は精霊女王に言われたとおり、エルをベットに寝かせる。
「精霊女王ラーレ様。手だけは…、どうか手だけは握っていてもいいでしょうか?」
《それぐらいなら構わないのなの。
じゃあ獏ちゃん、エルちゃんの悪夢を全部食べちゃってなの》
《ばくぅ~ばくぅっ!!》
まるで任せろと言わんばかりの返事をする夢喰い獏を、精霊女王はエルの枕元に下ろす。
《それじゃあ、獏ちゃん、やっちゃってなの》
《ばくぅ~っ、ばくばくばくぅ~っ!!》
夢喰い獏がエルの頭に顔を近づけ、口をもごもご動かし何かを食べる仕草をする。
すると、エルの頭から黒いモヤが溢れ出し、そのモヤを夢喰い獏が吸い込みもぐもぐ咀嚼する。
《もっぐぅ、もっぐぅ、ごきゅんっ!!》
ごくんっと最後のモヤを夢喰い獏が食べきった時、夢喰い獏の体が一回り大きくなった。
《けっぷぅ~っ》
《獏ちゃん、よく頑張ったのなの。ありがとうなの。これでエルちゃんはもう魘され無いなの》
もう魘され無い。
精霊女王のその言葉を聞いて、エルの様子を確認する。
するとエルは泣き止み、穏やかな寝息を立てていた。
エルの目元に残る涙を指先でそっと拭う。
「よかった…」
〔本当にこれで大丈夫なんだよね?〕
《もちろんなの。だけど、魘されてちゃんと眠れていなかったから、後は深い眠りに誘うだけなの。
君も疲れているでしょ?君もエルちゃんと一緒に寝るのなの》
精霊女王がベットをポンポンと叩き、僕にも寝るようにと促してくる。
「ですが…」
〔ウィルフリード、お前も眠れ。
話し合いはまだまだ終わらない。ボクとシロガネがこっちに来たのもあって、一時中断しているし、まだ時間がかかる。だから安心して眠ればいい〕
そうか。話し合いが行われると思っていたが、まだまだ続くのか。
「では、お言葉に甘えて…」
僕はエルの横にそっと横たわる。
《おやすみなさいなの》
精霊女王が手で僕の瞼を覆い、眠りを促す子守唄を歌い始めた。
♪~♪~
花は静かに 月影うけて
頭をたれて 朝を待つ
秘かにささやく 花のこえは
眠れ 眠れ 愛しい我が子
眠りの精は 窓に覗き
眠れぬ子どもを 見つけ出す
閉じない眼に 魔法をまくよ
眠れ 眠れ 愛しい我が子
眠りの精は 外に去り
愛しい我が子 おめめを閉じた
明るい朝 起きるまで
眠れ 眠れ 愛しい我が子
♪~♪~
《ふふふっ。よく眠ってるのなの。
目が覚めたらまた会いに来るのなの。
それまではゆっくりおやすみなさいなの》
精霊女王はエルシーアの額に、ちゅっとおやすみのキスを贈る。
すると一瞬だがエルシーアの額がふわっと光り、光はそのままエルシーアの額に消えていった。
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