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第四章
大人達の会議①
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〈父:フリッツィSide〉
「それでは、皆さま失礼しますね」
ウィルフリードが外行きの、それもとびっきりの笑顔を浮かべ、眠るエルを抱きしめ応接室を出ていく。
余りの突然の事に一瞬ぽかんとしてしまう。
してやられたっ!!
絶対にこの後面倒くさい事になるとわかっていて、真っ先に回避したのだ。
「はぁぁぁ~っ…」
「あなた?」
「いや…、何でもないよ。今はこの状況を片付けようか」
とにかくハンナ夫人とカーラ嬢をベッドで休ませなくては。
それにバルドリックとルイーザも休ませた方がいいだろう。
例えエルの魔力に助けられたとはいえ、魔力暴走一歩手前まで行ったのだから。
「ミラ、チャールズを呼べ。客室にハンナ夫人を案内し、カーラ嬢をベットに運び寝かせるんだ。その後は侍医を手配し、ふたりの診察を」
「かしこまりました。直に手配します」
ミラはそう言って一礼すると応接室を後にする。
いくらミラがハイエルフとはいえ、かなり衝撃を受けているだろうに申し訳ない。
私達が話し合いをしている間にゆっくり休んでもらおう。
「兄上、何から何まで申し訳ありません」
「気にしなくていいよ…と言いたいことろだけど、事が事だけにね…。流石にそうは言えないかな。
まずはハンナ夫人にゆっくり休んでもらおう。顔色が余り良くないからね。詳しい話はその後にじっくり聞かせてもらうよ」
「わかりました。全てお話します」
アーデルハードが神妙な顔持ちで頷く。
「さて、バルドリックにルイーザ。君達も休みなさい」
「でも…っ!!」
「ですが…っ!!」
「バルドリック、ルイーザ。旦那様の言うとおりよ。
体はエルちゃんの魔力で大丈夫かもしれない。でも、心まではそうはいかないわ。
いくら自分では大丈夫と思っていても、本当は心が悲鳴を上げている事があるの。
だからね、今はゆっくり休みなさい。
それに、ウィルフリードなんて、エルちゃんを連れてさっさと休みに行ったわよ?ねっ?」
バルドリックとルイーザが、妻の説得に渋々頷く。
「バルちゃん、ルイーザちゃん。ふたりが眠りにつくまで、わたくしが側に居てあげるわん。だから安心してお休みなさいなん。
フリッツィ、ちょっと客室を借りてもいいかしらん?」
「あぁ。構わない。そして助かるよ」
「ふふっ。いいのよぉ~ん」
「ふたりとも、今はゆっくり休みなさい」
「「はい、わかりました」」
「さっ、ふたりとも行くわよんっ!!」
エミリーがバルドリックとルイーザの背中を押し、応接室から出て行くのを見送る。
あのふたりはエミリーに任せておけば大丈夫だろう。
コンコンコンッ
「失礼致します。旦那様、ミラでございます。
客室の準備と侍医の手配が整いましたので、チャールズを連れて参りました」
「あぁ、ありがとう。入ってくれ」
「「失礼致します」」
ミラとチャールズが応接室に入ってくる。
恐らくチャールズは応接室で起きたおおよその事をミラから聞いているはずだ。
ペルル殿やシロガネ殿に許可を得て、チャールズ達にもエルが愛し子である事を伝えねばなるまい。
やらねばならない事が盛り沢山だな…。
「チャールズ、他の仕事中に急にすまないね。
ソファーで眠っているカーラ嬢を客室まで運んで欲しいんだ。
後は客室に着いたら、ハンナ夫人とカーラ嬢の診察を侍医に頼んでくれ」
「かしこまりました。では、失礼して…」
チャールズがソファーで眠っているカーラ嬢を抱き上げる。
「アーデルハード様、ハンナ夫人。客室にご案内します」
「アーデルハード、話し合いは30分後にサロンで行う。
それまではハンナ夫人とカーラ嬢に寄り添ってやりなさい」
ミラの先導に続き、ハンナ夫人を支え歩き出すアーデルハードに声をかける。
「考え、気持ちを整理する時間を与える。
後はアーデルハード次第だが、誤魔化すことは赦されない。わかるね?」
「えぇ…。ありがとう…、兄上」
ぎゅっと唇を噛みしめ、応接室を出ていくアーデルハードを背中を見送る。
「あなた、お疲れ様」
「あぁ…、本当に疲れたね。ハリーも疲れただろう?話し合いまでにはまだ時間がある。それまでハリーも部屋で休みなさい。
デルミーラ、ハリーを部屋へ連れて行って、何か気分が落ち着くハーブティーでも出してやってくれ」
「かしこまりました。では奥様、参りましょう」
「ねぇ、あなた。部屋で休む前に、少しだけハンナ夫人を見舞ってもいいかしら」
「そうだね。少しだけなら構わないよ」
「ありがとう。それであなたはどうするの?」
「私かい?私はサロンで休憩するから大丈夫だよ。
それに話し合いまでにペルル殿やシロガネ殿に聞いておきたい事やお願いしたい事があるからね」
「そう…。わかったわ。でもあなたもちゃんと休憩してね?無理は禁物よ?
ベアティ、ちゃんと旦那様の事を見張って居てね?」
ハリーが左手を腰に当て、右手は人差し指を立てて“メッ”のポーズで注意をしてくる。
そんな妻のおちゃめなポーズに癒やされ、私はこの後の話し合いも何とか乗り切れそうだと思ったのだった。
「それでは、皆さま失礼しますね」
ウィルフリードが外行きの、それもとびっきりの笑顔を浮かべ、眠るエルを抱きしめ応接室を出ていく。
余りの突然の事に一瞬ぽかんとしてしまう。
してやられたっ!!
絶対にこの後面倒くさい事になるとわかっていて、真っ先に回避したのだ。
「はぁぁぁ~っ…」
「あなた?」
「いや…、何でもないよ。今はこの状況を片付けようか」
とにかくハンナ夫人とカーラ嬢をベッドで休ませなくては。
それにバルドリックとルイーザも休ませた方がいいだろう。
例えエルの魔力に助けられたとはいえ、魔力暴走一歩手前まで行ったのだから。
「ミラ、チャールズを呼べ。客室にハンナ夫人を案内し、カーラ嬢をベットに運び寝かせるんだ。その後は侍医を手配し、ふたりの診察を」
「かしこまりました。直に手配します」
ミラはそう言って一礼すると応接室を後にする。
いくらミラがハイエルフとはいえ、かなり衝撃を受けているだろうに申し訳ない。
私達が話し合いをしている間にゆっくり休んでもらおう。
「兄上、何から何まで申し訳ありません」
「気にしなくていいよ…と言いたいことろだけど、事が事だけにね…。流石にそうは言えないかな。
まずはハンナ夫人にゆっくり休んでもらおう。顔色が余り良くないからね。詳しい話はその後にじっくり聞かせてもらうよ」
「わかりました。全てお話します」
アーデルハードが神妙な顔持ちで頷く。
「さて、バルドリックにルイーザ。君達も休みなさい」
「でも…っ!!」
「ですが…っ!!」
「バルドリック、ルイーザ。旦那様の言うとおりよ。
体はエルちゃんの魔力で大丈夫かもしれない。でも、心まではそうはいかないわ。
いくら自分では大丈夫と思っていても、本当は心が悲鳴を上げている事があるの。
だからね、今はゆっくり休みなさい。
それに、ウィルフリードなんて、エルちゃんを連れてさっさと休みに行ったわよ?ねっ?」
バルドリックとルイーザが、妻の説得に渋々頷く。
「バルちゃん、ルイーザちゃん。ふたりが眠りにつくまで、わたくしが側に居てあげるわん。だから安心してお休みなさいなん。
フリッツィ、ちょっと客室を借りてもいいかしらん?」
「あぁ。構わない。そして助かるよ」
「ふふっ。いいのよぉ~ん」
「ふたりとも、今はゆっくり休みなさい」
「「はい、わかりました」」
「さっ、ふたりとも行くわよんっ!!」
エミリーがバルドリックとルイーザの背中を押し、応接室から出て行くのを見送る。
あのふたりはエミリーに任せておけば大丈夫だろう。
コンコンコンッ
「失礼致します。旦那様、ミラでございます。
客室の準備と侍医の手配が整いましたので、チャールズを連れて参りました」
「あぁ、ありがとう。入ってくれ」
「「失礼致します」」
ミラとチャールズが応接室に入ってくる。
恐らくチャールズは応接室で起きたおおよその事をミラから聞いているはずだ。
ペルル殿やシロガネ殿に許可を得て、チャールズ達にもエルが愛し子である事を伝えねばなるまい。
やらねばならない事が盛り沢山だな…。
「チャールズ、他の仕事中に急にすまないね。
ソファーで眠っているカーラ嬢を客室まで運んで欲しいんだ。
後は客室に着いたら、ハンナ夫人とカーラ嬢の診察を侍医に頼んでくれ」
「かしこまりました。では、失礼して…」
チャールズがソファーで眠っているカーラ嬢を抱き上げる。
「アーデルハード様、ハンナ夫人。客室にご案内します」
「アーデルハード、話し合いは30分後にサロンで行う。
それまではハンナ夫人とカーラ嬢に寄り添ってやりなさい」
ミラの先導に続き、ハンナ夫人を支え歩き出すアーデルハードに声をかける。
「考え、気持ちを整理する時間を与える。
後はアーデルハード次第だが、誤魔化すことは赦されない。わかるね?」
「えぇ…。ありがとう…、兄上」
ぎゅっと唇を噛みしめ、応接室を出ていくアーデルハードを背中を見送る。
「あなた、お疲れ様」
「あぁ…、本当に疲れたね。ハリーも疲れただろう?話し合いまでにはまだ時間がある。それまでハリーも部屋で休みなさい。
デルミーラ、ハリーを部屋へ連れて行って、何か気分が落ち着くハーブティーでも出してやってくれ」
「かしこまりました。では奥様、参りましょう」
「ねぇ、あなた。部屋で休む前に、少しだけハンナ夫人を見舞ってもいいかしら」
「そうだね。少しだけなら構わないよ」
「ありがとう。それであなたはどうするの?」
「私かい?私はサロンで休憩するから大丈夫だよ。
それに話し合いまでにペルル殿やシロガネ殿に聞いておきたい事やお願いしたい事があるからね」
「そう…。わかったわ。でもあなたもちゃんと休憩してね?無理は禁物よ?
ベアティ、ちゃんと旦那様の事を見張って居てね?」
ハリーが左手を腰に当て、右手は人差し指を立てて“メッ”のポーズで注意をしてくる。
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