153 / 166
第四章
子守唄①
しおりを挟む
〈兄:ウィルフリードSide〉
タウンハウスの自室に戻り、エルをベッドにそっと寝かせる。
今のままの格好では寝づらいであろうと、アメリアとアンネリースにエルの着替えをさせた。
「ご苦労さま。お前達も下がって休め」
「「はい。かしこまりました。何かあればいつでもお呼びください。それでは失礼いたします」」
すっと一礼をし、アメリアとアンネリースが下がっていく。
すやすやと眠るエルの横に、僕もそっと横になる。
エルの腕の中にいたシロガネは、応接室に残った。
エルの側にいつも居るペルルも応接室に残っている。
これからカーラについての話し合いが行われるのであろう。
すぅすぅ眠るエルの、背中の中程まで伸びたセレストブルーの髪を梳く。
エルの髪は幼子特有の柔らかさがあり、とても触り心地が良い。
エルの髪を撫でながら、先程までの事を考える。
僕は自分自身で感情のコントロールは完璧にできていると思っていた。
しかし、カーラに襲われそうになり、酷い言葉をぶつけられるエルを目の前にして、僕は怒りの感情を爆発させてしまった。
怒りの感情の赴くままに魔力を使い、雷を降らせ、部屋中を凍てつかせた。
感情のコントロールができない今のままでは、エルが僕の弱点となり、僕がエルの弱点になってしまう。
僕は自分が思っている以上に未熟だった…。
愛しいエルがこれ以上傷つく事が無い様に、より一層精進せねば。
「…ぅ…っ…、ひっく…。うぇっ…うぅぅ……っ!!うわぁぁぁ~~~っん…!!!!」
はっ!!!!
エルの泣き声に目が覚める。
どうやら僕はエルの頭を撫でている内に、うたた寝をしてしまった様だ。
体を起こし確認すると、エルは泣きじゃくり魘されていた。
僕は泣きじゃくるエルを抱きかかえ、背中を擦る。
「エル、エル。大丈夫だよ。もう怖い事は何も無いよ。それにお兄様が側に居る。お兄様がエルを必ず護るからね」
「うわぁぁぁ~~ん…、ひっく…ひぃっく…。いっちゃぁ~っ…、みっちゃぁ~っ…。ふぇぇぇ~~ん…っ…」
エルが赤ちゃん返りをしてしまったかの様に、左手の親指をしゃぶりながら泣き続ける。
普段のお日様の様に温かく、ふんわり笑うエルの姿と、余りにもかけ離れた姿に胸が痛む。
エル自身は自分で何度も“大丈夫”と言っていたが、やはり心は傷ついていたのだ。
それにしても、『いっちゃ』と『みっちゃ』か…。
何処かで聞いたことがある様な…。
そういえば、エルが造った四つの神像の中に、『イツキ』と『ミツキ』という名前の、この国では見たことがない衣を纏った神像があったな。
確か、エルがエルとして生まれる前から、ずっと見守ってくれていると言っていた。
エルが神像として側に置き、毎日話し掛ける神…。
神に嫉妬しても意味は無いなだろうが、今、エルが助けを求めるのが自分では無い事実に腸が煮えくり返りそうだ。
「エル…。もう泣かないで…。イツキやミツキじゃなくて、君を抱きしめている僕を見て…?お願いだ…」
どんなに優しく抱きしめても、背中擦っても、声を掛けても泣きやんでくれそうに無いエルに、僕自身が不甲斐なくて情けなくて、泣きそうになる。
お願いだよエル…。泣きやんで?
そして君のその美しい瞳に僕を映して欲しいんだ…。
♪~♪~
バラの花は 風に揺れて
夢の歌を うたいます
ねむれぼうや 静かな夜
花の中で 朝をまつの
空の星は ひかり青く
夢の国へ さそいます
ねむれぼうや はるかな空
星の中を かけてゆくの
♪~♪~
何処からともなく子守唄が聴こえる。
その声は高く低く、そして全てを包み込む様に柔らかい。
赤・橙・黄・緑・青・藍・紫。
優しい子守唄と共に、ふわふわと七色の光が溢れ出す。
溢れ出した光がひとつにまとまり、ひとりの少女の姿を創り出す。
七色の美しい蝶の羽根。足元までうねる長い髪とその瞳は虹の様なグラデーションをしており、その少女の神秘性が増している。
《はじめましてなの。わたしは精霊女王ラーレなの。
さっきはうちの子達がごめんなさいなの。
本当はエルちゃんがもう少し大きくなってから会いに来る予定だったけど、うちの子達がいっぱい迷惑かけたから、お詫びに来たのなの》
タウンハウスの自室に戻り、エルをベッドにそっと寝かせる。
今のままの格好では寝づらいであろうと、アメリアとアンネリースにエルの着替えをさせた。
「ご苦労さま。お前達も下がって休め」
「「はい。かしこまりました。何かあればいつでもお呼びください。それでは失礼いたします」」
すっと一礼をし、アメリアとアンネリースが下がっていく。
すやすやと眠るエルの横に、僕もそっと横になる。
エルの腕の中にいたシロガネは、応接室に残った。
エルの側にいつも居るペルルも応接室に残っている。
これからカーラについての話し合いが行われるのであろう。
すぅすぅ眠るエルの、背中の中程まで伸びたセレストブルーの髪を梳く。
エルの髪は幼子特有の柔らかさがあり、とても触り心地が良い。
エルの髪を撫でながら、先程までの事を考える。
僕は自分自身で感情のコントロールは完璧にできていると思っていた。
しかし、カーラに襲われそうになり、酷い言葉をぶつけられるエルを目の前にして、僕は怒りの感情を爆発させてしまった。
怒りの感情の赴くままに魔力を使い、雷を降らせ、部屋中を凍てつかせた。
感情のコントロールができない今のままでは、エルが僕の弱点となり、僕がエルの弱点になってしまう。
僕は自分が思っている以上に未熟だった…。
愛しいエルがこれ以上傷つく事が無い様に、より一層精進せねば。
「…ぅ…っ…、ひっく…。うぇっ…うぅぅ……っ!!うわぁぁぁ~~~っん…!!!!」
はっ!!!!
エルの泣き声に目が覚める。
どうやら僕はエルの頭を撫でている内に、うたた寝をしてしまった様だ。
体を起こし確認すると、エルは泣きじゃくり魘されていた。
僕は泣きじゃくるエルを抱きかかえ、背中を擦る。
「エル、エル。大丈夫だよ。もう怖い事は何も無いよ。それにお兄様が側に居る。お兄様がエルを必ず護るからね」
「うわぁぁぁ~~ん…、ひっく…ひぃっく…。いっちゃぁ~っ…、みっちゃぁ~っ…。ふぇぇぇ~~ん…っ…」
エルが赤ちゃん返りをしてしまったかの様に、左手の親指をしゃぶりながら泣き続ける。
普段のお日様の様に温かく、ふんわり笑うエルの姿と、余りにもかけ離れた姿に胸が痛む。
エル自身は自分で何度も“大丈夫”と言っていたが、やはり心は傷ついていたのだ。
それにしても、『いっちゃ』と『みっちゃ』か…。
何処かで聞いたことがある様な…。
そういえば、エルが造った四つの神像の中に、『イツキ』と『ミツキ』という名前の、この国では見たことがない衣を纏った神像があったな。
確か、エルがエルとして生まれる前から、ずっと見守ってくれていると言っていた。
エルが神像として側に置き、毎日話し掛ける神…。
神に嫉妬しても意味は無いなだろうが、今、エルが助けを求めるのが自分では無い事実に腸が煮えくり返りそうだ。
「エル…。もう泣かないで…。イツキやミツキじゃなくて、君を抱きしめている僕を見て…?お願いだ…」
どんなに優しく抱きしめても、背中擦っても、声を掛けても泣きやんでくれそうに無いエルに、僕自身が不甲斐なくて情けなくて、泣きそうになる。
お願いだよエル…。泣きやんで?
そして君のその美しい瞳に僕を映して欲しいんだ…。
♪~♪~
バラの花は 風に揺れて
夢の歌を うたいます
ねむれぼうや 静かな夜
花の中で 朝をまつの
空の星は ひかり青く
夢の国へ さそいます
ねむれぼうや はるかな空
星の中を かけてゆくの
♪~♪~
何処からともなく子守唄が聴こえる。
その声は高く低く、そして全てを包み込む様に柔らかい。
赤・橙・黄・緑・青・藍・紫。
優しい子守唄と共に、ふわふわと七色の光が溢れ出す。
溢れ出した光がひとつにまとまり、ひとりの少女の姿を創り出す。
七色の美しい蝶の羽根。足元までうねる長い髪とその瞳は虹の様なグラデーションをしており、その少女の神秘性が増している。
《はじめましてなの。わたしは精霊女王ラーレなの。
さっきはうちの子達がごめんなさいなの。
本当はエルちゃんがもう少し大きくなってから会いに来る予定だったけど、うちの子達がいっぱい迷惑かけたから、お詫びに来たのなの》
122
あなたにおすすめの小説
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
裏の林にダンジョンが出来ました。~異世界からの転生幼女、もふもふペットと共に~
あかる
ファンタジー
私、異世界から転生してきたみたい?
とある田舎町にダンジョンが出来、そこに入った美優は、かつて魔法学校で教師をしていた自分を思い出した。
犬と猫、それと鶏のペットと一緒にダンジョンと、世界の謎に挑みます!
公爵令嬢やめて15年、噂の森でスローライフしてたら最強になりました!〜レベルカンストなので冒険に出る準備、なんて思ったけどハプニングだらけ〜
咲月ねむと
ファンタジー
息苦しい貴族社会から逃げ出して15年。
元公爵令嬢の私、リーナは「魔物の森」の奥で、相棒のもふもふフェンリルと気ままなスローライフを満喫していた。
そんなある日、ひょんなことから自分のレベルがカンストしていることに気づいてしまう。
「せっかくだし、冒険に出てみようかしら?」
軽い気持ちで始めた“冒険の準備”は、しかし、初日からハプニングの連続!
金策のために採った薬草は、国宝級の秘薬で鑑定士が気絶。
街でチンピラに絡まれれば、無自覚な威圧で撃退し、
初仕事では天災級の魔法でギルドの備品を物理的に破壊!
気づけばいきなり最高ランクの「Sランク冒険者」に認定され、
ボロボロの城壁を「日曜大工のノリ」で修理したら、神々しすぎる城塞が爆誕してしまった。
本人はいたって平和に、堅実に、お金を稼ぎたいだけなのに、規格外の生活魔法は今日も今日とて大暴走!
ついには帝国の精鋭部隊に追われる亡国の王子様まで保護してしまい、私の「冒険の準備」は、いつの間にか世界の運命を左右する壮大な旅へと変わってしまって……!?
これは、最強の力を持ってしまったおっとり元令嬢が、その力に全く気づかないまま、周囲に勘違いと畏怖と伝説を振りまいていく、勘違いスローライフ・コメディ!
本人はいつでも、至って真面目にお掃除とお料理をしたいだけなんです。信じてください!
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流
犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。
しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。
遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。
彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。
転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。
そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。
人は、娯楽で癒されます。
動物や従魔たちには、何もありません。
私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる