例えば乙女ゲームだとしたら

ユウ

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第2章

心は雨模様、乙女は純情なり

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今朝の騒ぎも授業で忘れかけた頃、昼近くになり晴れていた空は次第に曇ってきていた。
 
「お兄ちゃん凄い……」

確かにこれは一雨来そうだな。
兄よエスパーかよ?

あちこちで「傘もってきた?」「あ、俺もってるぜ」などの声がチラホラ聞こえてきた。

「おーい佐倉、はよ学食に行こうや?」 

あの入学式以来、虚弱体質設定で確実に私はぼっち学園生活になるはずだったのだが、限りある時間を使って学友とまで呼べる程お昼を食べる仲まで進展した史也君と凛君。

勿論とわたしは笑顔で頷き一緒に学食に向かう。

やっぱり友達というのは良いですな……。
前世のオタク友達の事はやっぱり気になるが、今は私の死をかけた人生。
攻略者と一緒にいないと把握しきれない時もあるしね!
べ、別に、私が天使とご飯食べたい訳じゃないからね!

「何をブツブツ言っているんですか?佐倉さんの席無くなっちゃいますよ?」

最初はあんなにトゲトゲだった凛君もお友達ステータス上げたおかげなのか、名前呼びになる程親しくなったと思うんだよ!

「あ、はい!行きましょう!」

食堂はそこそこ席が埋まっていたが、2人はパパっと注文して戻ってくると窓際に向かって歩き出す。

まぁまだ分岐点まであと3日あるわけだし、今ぐらいは夢を見させて欲しい……。
せめて死ぬとなった時用の思い出は欲しいからね!

お兄ちゃん特性の二段弁当を手に2人のあとを歩く。

「あ、文也くんあそこの席空いてますよ」

つんつんと史也君の袖を引っ張る凛君。
……え、何その仕草、可愛いわぁ。

「佐倉さんは……こっち」

浮かれていると、テーブル席なのだが、何故か2人と向き合う形で座るハメに。

んん?何故……?
え、私もお隣がいいよ?!
ズルくない?お友達でしょ?!

「……あのりり、凛君……?」

「はい?」

返事しつつもしっかりうどんを頬張る九条君。

彼の好物は確かきつねうどんだったな…….。

ふと彼を見た瞬間に脳内記憶の攻略本設定を思い出した私。

「な、なんでもないよ!今日はきつねうどんにしたんだなぁって思ったんだ!」

「今日は、じゃなくて今日『も』やけどな?」

「むぅ……良いじゃないですか、僕の昼食ですから」

  「別に悪くはないけどな、口端にネギついてんで~。ガキかいな~」

「が、ガキじゃないですよ!史也くん煩いです!」
 
「まぁまぁそう怒らんと~」

ケラケラと笑いながら凛君にティッシュを渡してあげる史也君。

·····やっぱり私この席で満足です。 

「ここ空いてる?」

そんな光景を拝んでいるとスっと隣に誰かが座った。

·····え、何気なく溶け込む君は一体?

「おお!なんや、誰かと思ったら音羽かいな!珍しいなお前が学食なんて」

「んん?ふみふぁふん、どムグ·····ムグ·····なたですか?」

凛君が私の隣へと視線を向ける。

「せや、紹介しとらんかったな。こいつは音羽 翼や。この間友達になってん!面白いヤツやで!」

「どーも。二階堂の紹介もどうかと思うけど、まぁよろしく」  

「そーゆー所が面白いと思うんやけどな~。九条も佐倉も仲良うしたってな!」

「史也君のお友達でしたか。宜しく御願いします。九条凛といいます」

「ん、宜しく」

目の前で和気あいあいと談笑する美少年たち。

え、待て待て待って。
今私の横にどなたがいらっしゃると?

壊れかけた歯車のようにギギギと横に顔を向けると、そこにはまぁ、なんていうことでしょう!
間近で見てもサラッサラの黒髪、少し眠そうだけれどキリッとした目元に黒縁メガネが似合い、薄い唇や色白肌には色気すら感じる………!

そう!
あの、世(前世から)のおねー様方からの超絶人気であり私の推しでもあったあの『音羽 翼』君ですか!

「おぉぉぉぉお…音羽君……?」

やばす、声が裏返る。

「なんや佐倉は知っとったんか~。まぁ、大抵の女子はイケメンの把握はしとるからなぁー分からんでもない」

1人納得している史也殿。
いや1ミリもかすっては無いが遠からず、只々今の状況が分からない。

「えーっと、アンタは?」

「あ、はい!佐倉 雪です!音羽君こんにちは!」

よし、自己紹介ちゃんとできた!
でも、心臓がバクバク音を立ててるから声ふるえてないかな……?

「ん、こんにちは。よろしく佐倉さん」

幾度となく聴いてきた音羽君の生声が、今再生された‼
オタクでよかった瞬間ですよ!
ありがとう神様、今死んでも恨まないよ!

といいますが、推しとご飯を食べているというシチュをやっっと理解出来たからなのか、現在進行形でお箸折れそう。頬がプルプル震える。
兄お手製のお弁当の味がしなくなった。

え、もうこれで栄養過多で心臓破裂と言う名の病名で死ぬんじゃない?
まだ本編にも入ってないのに?
でも、それはそれでいいかも……。
 
「──というのを食堂のおばちゃんから聞いたんや」

「ふーん、確かにそれ気になるね」

「ですね。僕も気になります…。佐倉さんはどう思いますか?」

「え、あ、うん!私もそうだと思うよ?!」

いけない…音羽君のお隣が嬉しすぎて、ぜんぜっん聞いてなかった。

「よし、なら善は急げや!明後日の放課後食堂前に集合やな!」

「了解」

「わかりました!食堂のおばちゃんたちのためにも、早期解決しましょう」

「う、うん…」

そして満場一致という事で話は進み、昼休み終了を告げるのチャイムと共に一同は解散となった。

私は惜しみながらも音羽君と別れつつ史也君達の後をついて歩いてく。

それにしてもさっきの食堂の話があがってたよね…。
どこかで聞いたことがある内容だったような?

「そや、佐倉次の課題はなんやったか?」

「え?あーっと、次は英語だったかなー?」

「それや!俺まだ課題途中やねん!お前ら2人どちらかノート見せてや~!」

「またですか?!史也君前にも言ったでしょう!」

プリプリと怒る凛君に『頼むぅ~九条様ァ!』とすがる史也君。
それすらも可愛いと思いつつ灰色空の下、推しに会えた喜びを胸に、先ほど浮かんだモヤモヤは忘れていった。
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