例えば乙女ゲームだとしたら

ユウ

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第2章

やらかし

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午後の授業は、先生の音読子守唄とともに静かな眠りを堪能した。

まぁ、とったつもりのノートはかろうじて読める程度の文字と眠気覚ましに描いた落書きが四隅にあったから、眠る前にでも書き直しておけばいっか!

乙女ゲームだと知っていながらも、授業を受けるとか掃除をするとかは学生の時と変わらないから忘れてしまいそうになる。

「佐倉さん」

「ん?凛君どうかした?」

ホームルームを終えた教室で職員室に行った文也君を凛君と2人で待っていたら、不意に声をかけられた。
しかも何故か赤面で。

あ、その顔好きだったなぁー。
えーっと確かこの顔の時は確か──。

「貴方にお聞きしたいことがあるんですが!」

「は、はい!」

よそに行きかけていた意識が急に戻ってきた。

「あ、あの女子に人気のか、カフェってご存じですか…」

「え……………あぁ、は、い…」

唐突な質問に困惑しながらも返事を返すと、パァっと笑顔になった凛君。
んん?
これはもしや…かも知れませんぞ。

「いや、その、実は先程忘れ物を届けていただいた方にお礼をしたくて…。いや、特に意味は無いけど…」

モジモジと恥じらう凛君は可愛い。
おねーさん的にはGood!
あ、いや今はそこじゃないよね。

とにかく頭に浮かんだカフェをそのまま伝える。

「ルブランが今オススメだよ!その店はパフェが1番美味しいの」

以前兄と行った可愛いカフェ。
あのパフェ食べたらもう幸せになるよ…!

「パフェ……ですか。分かりました。それと僕……ちょっと用があったの忘れてたのでこれで失礼しますね」

ありがとうございます、と彼はそう言い残すとそそくさと教室を出ていった。

「あの顔は……もしや…」

うむ、青春だねぇー。
しっかし、あの凛君が……。
浮かぶのは初対面の冷たい目。
いやはや今の関係友達になるまでは長い道のりだったのにな……!

「なんや凛のやつ、だらしない顔しとったで?」

職員室から戻ってきた文也君が重そうなノートの山を抱えていた。

「凛君はこれから待ち合わせがあるそうなのだよ文也君」

それを手伝いつつ、自分の荷物を整理する。

「へーーーー……ってはい?!凛が!これから⁉」

「はい、あの凛君が」

「嘘やろ?!だって今日こそお前が元気だからみんなと一緒に帰れると思ったのに?!」

そういえば、授業中に回ってきた紙で一緒に帰らないかとお誘いをいただいたな!
すっかり凛君のことで頭からぬけておりました。申し訳ない。
文也君がここまで驚く理由は、入学してから何かとそれぞれ予定があったり私の体調不良等で、不思議と一緒に帰ったことがないからだ。
だから、今日みんなで帰ろうと文也君なりに行動していたわけか。
そんな文也くんにポンと肩を叩く。

「まぁ、今日だけだと思うから、明日誘ってみようよ?私の体調も問題ないし、明日ことは一緒に帰れるよ!」

「佐倉……そうやな、俺たちももう帰たちも帰ろか…」

よほどショックだったのだろう。フラフラとおぼつかない足取りの文也君とカバンをもって教室をでる。
まぁ、凛君のあの様子だときっとルルちゃんとカフェに行ってパフェ食べて、それから雨が止むまで本屋でデートするんだよね~!
若いってセイシュ──…………………。

「ん?」

私、今なんて考えたの?

ルルちゃんとカフェ?でーと?

「ああああああああ!」

そうだよ……凛君だけ特別に雨の日のイベントが確かあったはず。
……でも、そのイベントは高確率で発生しない超レアイベント。
だってそのイベント発生条件は、凛君の【ペンダント】を探し出して渡すことと、雨の日に再会すること。
ペンダントは課金のうえ会員特典だから、金なしの無課金勢の私はそのスチルは攻略していなかった……。
その内容を知ったのは小さなネットサイトのマニアからしいれた情報だった。
しかも、それをしているしてないで、好感度の数値が通常よりも多くもらえるのだ。

え、もしかしなくてもそれって、今からが恋愛コウリャクスタートじゃ……?

「……!」

そしたらストーリーがどんどん進んでって、私の死期も早まるんじゃ…?

ってそんなこと悠長に考えている場合ではない。
とにかく凛君追っかけよう。
それしか頭に浮かばない。
文也君が何か言っているがごめん、聞こえない。

「あ、おい佐倉どこいくんや⁈」

重く感じる足を無理やり動かして靴箱へ走る。

大丈夫大丈夫。
まだ・・大丈夫。

「まって」

「………っ!」

駆け出そうとした私の腕を誰かが掴んだ。
こんな時に誰さ!
キッと睨みつけると、思わぬ人物が隣に居た。

「え、音羽く…ん?」

「どうしたの、顔青いよ」

イケメンと称された彼の眉が下がって困り果てている。
そんな顔をさせているのは私だ。

彼の瞳に映る私は今にでも死にそうな顔。

なんと滑稽なことか。
あんなにも『死』が嫌だとほざいていた割には、頭から忘れて、自由な日々を過ごしていたのか。

あぁこれはきっと罰なんだ。

不思議と世界がフェードアウトしていく。

「あ、ちょっと!」

慌てる彼の声が揺らぐ景色の中、頭に響いた。 

 


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