例えば乙女ゲームだとしたら

ユウ

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オタクにはリア充は眩しいのですが

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人生初の異性から抱きしめられてる感がヤバい。
だって身長高いし、腕とかいい感じに引き締まってて、いい匂…………っは!
イヤイヤ!
決しておじさんみたいな思考ではない!
うん!……多分。

「……雪ぃ!……無事でよかった!」

でも、知らない人は知らない。
この人はきっと私と同じ『雪』って子を想っているのだろう。

「あの、すみません……くるしい……です……」

本当に残念で、惜しい場面だと思うのだが、息が限界に達していたためにギブアップを申し込んだ。

「あ、あぁスマンなぁ。なんせ、お前がやっと目を……さま……したんじゃからな……」

また、男性の目から涙が伝う。
見てるこっちが辛いわっ!

「い、イケ……ごほんっ!お、お兄さん泣かないで!」

「!!!!お、お兄ちゃんって、今呼んだか?!」

ガバッと顔を上げたお兄さん。

「え、呼びました…………よ?!」

『よ』の声が裏返ったのは気のせいか。
もしくは私の目が別の世界を映しているのか。

「あ、ああぁぁあ秋人お兄さん?!」

「ああ! お前の兄じゃよ、雪ぃ!」

何度も頷くとまた『秋人お兄さん』は涙を流し、私を強く抱きしめた。

そうして、奇跡の面会を果たした兄妹は仲良く病院を後にしましたとさ、めでたしめでたし…………



んな訳あるかァァァァ!



え、ちょい待って!
どゆこと?
ヘイ、神様よ、事情をお話くだされ!

この目の前にいる人物は、あの『ルルシュ』の登場人物であるお方ではないのかね?

「笹倉さん、ドクターをお呼びしましたよ!」

そんな混乱する頭の中で、先程の看護師が医者と共に入る足音を、私は最後に聞いたのだった。
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