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第一章
取り調べ
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今日もミルルに起こされる前にきちんと目が覚めた。休みでもゆっくりしてはいられない。
昨日の晩は前の晩と同じ四人のヘアメイクをした。フランチェスカさん曰く、私が何か変なことをしないように仕事の範囲を限定するって。何も変なことなんてしてないのにねえ。だから、お風呂場で叫ぶのも禁止。ただ、新しいかんざしが届いたので、それに合わせてメイクの色を変えたりして、楽しかった。
デルバールは年中無休だけど、従業員は交代で五日ごとに一日、休みがもらえる。働き始めて五日もたっていないのに、私が休みになったのはジェシーさんから取り調べに来ると連絡があったからだ。
私が落ち人だということを隠すため、デルバールでジェシーさんが話を聞くことになったらしい。
ジェシーさんは仕事なのに私服で来た。これも、仕事ではないと思わせるためらしい。
「フランチェスカさん、私一人でも大丈夫ですよ」
私の部屋で取り調べすることになったが、フランチェスカさんが付き添ってくれると言う。
「この国の常識だから、覚えておいて。家族でない男性と二人きりで部屋にこもるというのは怪しい関係だと疑われるからね。ドアを開けるか、付き添いをつけるんだ。この取り調べは秘密だから、ドアを開けておくわけにはいかないからね」
「遮音の魔法をかけるから大丈夫ですよ」
ジェシーさんをにらんで、フランチェスカさんは私の横、ベッドの上に座った。椅子が一つしかないので、それはジェシーさんに使ってもらう。
ジェシーさんが鞄から水晶玉を取り出して、机の上に置いた。その上に手をかざすと、ぼうっと青白く光った。
「録音します。これから、真実のみを語ることを誓いますか」
「はい」
「あなたの名前は」
「甘川真理亜です」
「年齢は」
「25才です」
年齢を言うと、ジェシーさんとフランチェスカさんが驚いた顔になった。異世界でも日本人は若く見られるのかな。まあ、スッピンで子ども服を着ているんだもんなあ。
それから、山賊たちの様子を延々と聞かれた。人数、覚えている人相、見聞きした犯罪内容。きっと、捕まえた人の供述と付き合わせたり、逃げた人がいないか、チェックするんだろう。
怖かった。痛かった。不安だった。
被害者になったのは初めてだったし、あの時の気持ちを思い出して、変に疲れてしまった。
「はい、終了です。お疲れ様」
ジェシーさんが水晶玉に手をかざすと光が消えた。録音が終わった今、きちんと言っておかなくては。
「ジェシーさん、あの時、治療していただいて、本当にありがとうございました。それで、あの、青の騎士団の皆様にもお礼を言いたいのですが、無理でしょうか」
「うん、直接はちょっとね。伝言しておくよ」
「よろしくお願いします。それから、言葉だけでなく、ジェシーさんにお礼をしたいんですが」
「いいって」
「ジェシーさんにはデルバールを紹介していただきましたし」
そのおかげで私はヘアサロン開業の夢に歩き出せた。
「じゃあ、その堅苦しいしゃべり方、やめてよ」
「あ、はい。でも、それじゃ、お礼になりません。……ならないし」
意識すると、喋りづらい。
「紹介したのも仕事のうちだから、気にしなくていいよ」
「でも、仕事でも適当にする人ときちんとする人がいて、ジェシーさんがきちんとしてくれたので、私はすごく助かったんです。だから、お礼したいんです」
ジェシーさんが顔を押さえた。耳が赤いような。もしかして、照れてる?
「ジェシーさん……」
「じゃあ、俺とデートしてよ」
「へ?」
思わず、変な声が出た。
「お礼なら、今から食事に付き合ってよ。お昼を男一人っていうのも侘しいし」
あ、びっくりした。デートなんて言うから。でも、いいのかな。
「俺がきちんと仕事をしているのはこの街が好きだからなんだ。でも、マリアちゃんはいいところを見ていないでしょ。山賊のアジトに闇オークション会場にデルバール。もっと、いいところを見てもらいたいんだ」
そっか、私のために言ってくれてるんだ。本当、優しい人。
「デルバールはいいところだよ」
フランチェスカさんが口をはさんだ。
「でも、普通のいいところを見てないもんね。せっかくだから、案内してもらいな」
「じゃあ、よろしくお願いします」
私が立ち上がると、フランチェスカさんがジロリとにらんだ。
「まさか、そのまま行くんじゃないだろうね。誘われたら、きちんとおしゃれするのが礼儀というもんだ。ジェシー、ちょっと、ロビーで待っていておくれ」
フランチェスカさんはジェシーさんを追い出すと、代わりにサラサさんを呼んだ。
「マリアにデート用の服を貸してやってよ。着ない服もいっぱいあるだろう」
「え、デート? 誰とデートなの?」
「あの、デートというのではなくて、私がこの街に不慣れなので、親切な人が案内してくれるって」
サラサさんがニヤニヤする。
「で、誰なの、その親切な人って」
「ジェシーさんです」
ここを紹介してくれたぐらいだから、知ってるよね。
サラサさんはぷっと吹き出した。
「確かに。女の子みんなに親切だもんね」
ジェシーさんをチャラいと思ったのは合っていたらしい。
サラサさんは張り切ってワンピースを貸してくれた。張り切り過ぎかもしれない。ふわりとふくらむ裾、薄いピンクの小花柄。もう少し地味なのが良かったんだけど、借りるのに文句は言えない。メイクは服に合わせて、ピンクでまとめる。
うん、私、メイクも上手いかも。ずいぶん、可愛く見える。短い髪を後ろにまとめて、布でくるんでお団子みたいにする。これなら、中の髪は長いように錯覚するだろう。
「すみません、お待たせしました」
ジェシーさんに声をかけると、また、驚いた顔になった。
「可愛いよ」
まったく、この人は。顔が熱くなる。私のメイク力のすごさ、わかったでしょ。
「じゃあ、どうぞ」
ジェシーさんが軽く腕を曲げる。
これって、エスコートだ! 私はそっと、手を差し入れ、デートは始まった。
昨日の晩は前の晩と同じ四人のヘアメイクをした。フランチェスカさん曰く、私が何か変なことをしないように仕事の範囲を限定するって。何も変なことなんてしてないのにねえ。だから、お風呂場で叫ぶのも禁止。ただ、新しいかんざしが届いたので、それに合わせてメイクの色を変えたりして、楽しかった。
デルバールは年中無休だけど、従業員は交代で五日ごとに一日、休みがもらえる。働き始めて五日もたっていないのに、私が休みになったのはジェシーさんから取り調べに来ると連絡があったからだ。
私が落ち人だということを隠すため、デルバールでジェシーさんが話を聞くことになったらしい。
ジェシーさんは仕事なのに私服で来た。これも、仕事ではないと思わせるためらしい。
「フランチェスカさん、私一人でも大丈夫ですよ」
私の部屋で取り調べすることになったが、フランチェスカさんが付き添ってくれると言う。
「この国の常識だから、覚えておいて。家族でない男性と二人きりで部屋にこもるというのは怪しい関係だと疑われるからね。ドアを開けるか、付き添いをつけるんだ。この取り調べは秘密だから、ドアを開けておくわけにはいかないからね」
「遮音の魔法をかけるから大丈夫ですよ」
ジェシーさんをにらんで、フランチェスカさんは私の横、ベッドの上に座った。椅子が一つしかないので、それはジェシーさんに使ってもらう。
ジェシーさんが鞄から水晶玉を取り出して、机の上に置いた。その上に手をかざすと、ぼうっと青白く光った。
「録音します。これから、真実のみを語ることを誓いますか」
「はい」
「あなたの名前は」
「甘川真理亜です」
「年齢は」
「25才です」
年齢を言うと、ジェシーさんとフランチェスカさんが驚いた顔になった。異世界でも日本人は若く見られるのかな。まあ、スッピンで子ども服を着ているんだもんなあ。
それから、山賊たちの様子を延々と聞かれた。人数、覚えている人相、見聞きした犯罪内容。きっと、捕まえた人の供述と付き合わせたり、逃げた人がいないか、チェックするんだろう。
怖かった。痛かった。不安だった。
被害者になったのは初めてだったし、あの時の気持ちを思い出して、変に疲れてしまった。
「はい、終了です。お疲れ様」
ジェシーさんが水晶玉に手をかざすと光が消えた。録音が終わった今、きちんと言っておかなくては。
「ジェシーさん、あの時、治療していただいて、本当にありがとうございました。それで、あの、青の騎士団の皆様にもお礼を言いたいのですが、無理でしょうか」
「うん、直接はちょっとね。伝言しておくよ」
「よろしくお願いします。それから、言葉だけでなく、ジェシーさんにお礼をしたいんですが」
「いいって」
「ジェシーさんにはデルバールを紹介していただきましたし」
そのおかげで私はヘアサロン開業の夢に歩き出せた。
「じゃあ、その堅苦しいしゃべり方、やめてよ」
「あ、はい。でも、それじゃ、お礼になりません。……ならないし」
意識すると、喋りづらい。
「紹介したのも仕事のうちだから、気にしなくていいよ」
「でも、仕事でも適当にする人ときちんとする人がいて、ジェシーさんがきちんとしてくれたので、私はすごく助かったんです。だから、お礼したいんです」
ジェシーさんが顔を押さえた。耳が赤いような。もしかして、照れてる?
「ジェシーさん……」
「じゃあ、俺とデートしてよ」
「へ?」
思わず、変な声が出た。
「お礼なら、今から食事に付き合ってよ。お昼を男一人っていうのも侘しいし」
あ、びっくりした。デートなんて言うから。でも、いいのかな。
「俺がきちんと仕事をしているのはこの街が好きだからなんだ。でも、マリアちゃんはいいところを見ていないでしょ。山賊のアジトに闇オークション会場にデルバール。もっと、いいところを見てもらいたいんだ」
そっか、私のために言ってくれてるんだ。本当、優しい人。
「デルバールはいいところだよ」
フランチェスカさんが口をはさんだ。
「でも、普通のいいところを見てないもんね。せっかくだから、案内してもらいな」
「じゃあ、よろしくお願いします」
私が立ち上がると、フランチェスカさんがジロリとにらんだ。
「まさか、そのまま行くんじゃないだろうね。誘われたら、きちんとおしゃれするのが礼儀というもんだ。ジェシー、ちょっと、ロビーで待っていておくれ」
フランチェスカさんはジェシーさんを追い出すと、代わりにサラサさんを呼んだ。
「マリアにデート用の服を貸してやってよ。着ない服もいっぱいあるだろう」
「え、デート? 誰とデートなの?」
「あの、デートというのではなくて、私がこの街に不慣れなので、親切な人が案内してくれるって」
サラサさんがニヤニヤする。
「で、誰なの、その親切な人って」
「ジェシーさんです」
ここを紹介してくれたぐらいだから、知ってるよね。
サラサさんはぷっと吹き出した。
「確かに。女の子みんなに親切だもんね」
ジェシーさんをチャラいと思ったのは合っていたらしい。
サラサさんは張り切ってワンピースを貸してくれた。張り切り過ぎかもしれない。ふわりとふくらむ裾、薄いピンクの小花柄。もう少し地味なのが良かったんだけど、借りるのに文句は言えない。メイクは服に合わせて、ピンクでまとめる。
うん、私、メイクも上手いかも。ずいぶん、可愛く見える。短い髪を後ろにまとめて、布でくるんでお団子みたいにする。これなら、中の髪は長いように錯覚するだろう。
「すみません、お待たせしました」
ジェシーさんに声をかけると、また、驚いた顔になった。
「可愛いよ」
まったく、この人は。顔が熱くなる。私のメイク力のすごさ、わかったでしょ。
「じゃあ、どうぞ」
ジェシーさんが軽く腕を曲げる。
これって、エスコートだ! 私はそっと、手を差し入れ、デートは始まった。
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