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椰子ふみの

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第一章

告白後 レオナルド視点

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 恋人になったんだから、キスぐらいしたかったなあ。
 マリアの恥ずかしそうな顔が頭に浮かぶ。
 マリアの世界では恋人同士はどこまでが許される範囲なんだろう。貴族なら、やはり、婚約前にキスは許されないが、平民なら大丈夫だと思ったが。

 そんなことを考えながら歩いていたら、いつのまにか、アルバ屋敷に到着していた。任命式後は騎士団寮に入ることになっているが、それまではエスメラルダに甘えて、泊まらせてもらっている。

「誰だ! 名を名乗れ」

 中に入ろうとすると、門で誰何されてしまった。アルバ屋敷は辺境領の文化が息づいていて、お客を迎える意識より、不審者を通さないという意識が強い。出発した時と同じ門番に見えるが、交代した別の人なのだろうか。

「レオナルドだ」

 名乗っても、不思議そうな顔をしている。

「昨日から滞在している者だ。疑問があれば、エスメラルダかハロルドに確認してくれ」

 バタバタと一人が中へ確認しに行った。すぐにハロルドが現れる。

「レオナルド……」

 そこまで言って、腹を抱えて笑い出す。

「お前、髭を剃って、髪を切るだけで、本人と認識されなくなるなんて」
「も、申し訳ありませんでした」

 門番たちが深々と頭を下げる。

「いや、気にしないでくれ」

 ハロルドと一緒に中に入った。

「エスメラルダは出かけているんだが、帰ってきてお前を見たらびっくりするだろうな。髭を剃ったら子供の頃の面影が残ってるじゃないか」
「そうかな。自分の顔じゃないみたいだ。それに顔が涼しい」

 自分の顔を撫でてみると、意外と滑らかだ。
 出てきたお茶を飲むと、髭が汚れないように気をつけなくていいのが気楽だ。

「さっき、お茶を持って来た侍女、お前の顔を見て、ポーッとなってたぞ」
「そうか。まあ、マリアが魅力的にしてくれたんだから、そんなこともあるだろう」

 そう言うと、ハロルドがニヤニヤとこちらを見た。

「なるほど、マリアさんと上手くいったから、他の女性は目に入らないってところか」

 思わず、にやりと笑い返す。

「マリアは俺が髪を切る前から魅力的だったって」
「あー、恋人ができたからって、いきなり、のろけるか」

 ハロルドは頭をかいた。

「まだ、エスメラルダには何も言ってないのか」
「ああ。今はエスメラルダにとって、大事な時期だ。急いで気持ちをかき乱したくない」

 エスメラルダは婚約者がいたこともあって、感情をはっきり出さない癖がついている。
 でも、ハロルドのことが好きだと思うんだけどなあ。
 恋愛慣れしていない俺がいらない口は挟まない方がいいとは思うが。

「告白するなら、マリアに髪を整えてもらってからすればいい。髪を切らなくても、きっと、かっこよくしてくれるから」
「そうだな。エスメラルダもきれいになった」

 ハロルドがエスメラルダのことを思い浮かべている顔になった。
 俺もマリアの顔を思い浮かべた。
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